雅言集覧
『雅言集覧』 | |
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言語 | 日本語 |
類型 | 古辞書 |
編者・監修者 | 石川雅望 |
出版地 | 日本 |
最初の出版日 | 1826年 ~1849年 |
バリエーション |
刊行分と写本 版本 合冊再版本 |
排列 | いろは順 |
派生辞書 |
『俚言集覧』(名称に影響) 保田光則編『雅言集覧増補』1863年 同編『雅言集覧続篇』 中島広足編『増補雅言集覧』 臨川書店再版本 |
数量 ; 大きさ | 50巻21冊 |
『雅言集覧』(がげんしゅうらん)は、江戸時代に石川雅望が編纂した国語辞書。
概要
[編集]全50巻21冊。『俚言集覧』および『和訓栞』とともに「近世の三大(国語)辞書」として並称されることがある[2][3][4][5][6]。また『和訓栞』とともに双璧をなすと言われることもある[7]。
沿革
[編集]いろは順に配列している。「い~か」を収めた6冊は1826年(文政9年)、「よ~な」を収めた3冊は1849年(嘉永2年)に刊行され、「ら」以下を収めたのこりの12冊は未刊のまま写本で伝わった[8]。
刊行された部分は1863年(文久2年)に保田光則編の『雅言集覧増補』(全13冊)として再版され、「ら」以下も保田は『増補雅言集覧続篇』(全32巻)として独自に編纂した。のちに写本部分が発見され、1887年(明治20年)に中島広足篇の『増補雅言集覧』(全57冊)が刊行された。1903年(明治36年)から1904年(明治37年)にかけて廣益圖書から再版本(全3冊)が刊行された[8][注 1]。
内容
[編集]しばしば付される語釈は極めて簡略なものであるが、古代語の語彙をほぼ網羅している。平安時代の和文学(『源氏物語』や『勅撰和歌集』)を主として、記紀のほかに、『万葉集』『今昔物語集』および『文選』をはじめとする漢籍の古訓などから用例を豊富に収集し、その出典および流布本の丁数を記しているため、明治以降も古代語研究に欠かせない索引の役割を果たし続けている[9][10]。
受容
[編集]曲亭馬琴の日記に『雅言集覧』を購読した記述が見られる[11]。また、喜多村信節の『嬉遊笑覧』にも『雅言集覧』に関する記述が確認できる[11]。
明治以降でも、古典の用例を提供するデータベースのような存在として長く活用された。たとえば明治政府が近代化政策の一環して編集が企図された『官版 語彙』には、『雅言集覧』の影響を強く受けていることが指摘されている[12]。また、大槻文彦が編纂した国語辞典『言海』には、用例に『雅言集覧』『増補雅言集覧』の影響が指摘されている[13][14][15]。さらにジェームス・カーティス・ヘボンの『和英語林集成』第3版「和英の部」においても、古典語の増補にあたって『和訓栞』『雅言集覧』などの近世辞書が編纂資料として参照されているが、特に『雅言集覧』から用例が採用されたとみられる例もある[16]。
復刻・影印
[編集]- 『増補雅言集覽』上巻(い-よ)・中巻(た-け)・下巻(ふ-す)、臨川書店、1965年。
- 『増補雅言集覽索引』木下正俊・久山善正共編、臨川書店、1965年。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 木村義之 (2015), p. 107.
- ^ 岡田希雄 (1942), p. 33.
- ^ 湯浅茂雄 (1995), pp. 238–240.
- ^ 湯浅茂雄 (2000), p. 64.
- ^ 木村義之 (2015), p. 103.
- ^ 木村一 (2021), p. 154.
- ^ 花岡安見 (1902), p. 114.
- ^ a b c 木村一 (2024), pp. 72–73.
- ^ 古田啓 (1983), p. 228.
- ^ 湯浅茂雄 (1995), pp. 239–240.
- ^ a b 木村義之 (2015), p. 117.
- ^ 犬飼守薫 (1999), pp. 32–49.
- ^ 湯浅茂雄 (1997), pp. 10–11.
- ^ 内田久美子 (2016), p. 117.
- ^ 河瀬真弥 (2022), p. 66.
- ^ 湯浅茂雄 (2002), pp. 81–82.
参考文献
[編集]- 図書
- 花岡安見『国語学研究史』明治書院、1902年6月 。
- 犬飼守薫『近代国語辞書編纂史の基礎的研究:『大言海』への道』風間書房、1999年3月。ISBN 4-7599-1124-3。
- 論文
- 岡田希雄「俚言集覧伊部上巻の発見」『国語国文』第12巻第9号、1942年9月、33-46頁。
- 河瀬真弥「『言海』における『増補雅言集覧』利用法について:をしね(小稲)の用例」『京都大学國文學論叢』第47号、京都大学大学院文学研究科国語学国文学研究室、2022年9月、51-78頁。
- 古田啓「雅言集覧」『研究資料日本古典文学』 12巻、明治書院、1983年。
- 湯浅茂雄 著「江戸時代の辞書」、西崎亨 編『日本古辞書を学ぶ人のために』世界思想社、1995年5月、223-254頁。ISBN 4-7907-0555-2。
- 湯浅茂雄「「言海」と近世辞書」『国語学』第188号、国語学会、1997年3月、1-14頁。
- 湯浅茂雄「江戸の国語辞典あれこれ」『月刊しにか』第11巻第3号、大修館書店、2000年3月、57-64頁。
- 湯浅茂雄「『訂正増補 和英英和語林集成』「和英の部」の増補と『和訓栞』『雅言集覧』『官版 語彙』」『国語学』第53巻第1号、国語学会、2002年1月、70-83頁。
- 内田久美子「『言海』と先行辞書について:『雅言集覧』を中心に」『清泉語文』第5号、清泉女子大学日本語日本文学会、2016年3月、108-121頁。
- 木村一 著「中世(後期)・近世の辞書」、沖森卓也・木村義之 編『辞書の成り立ち』朝倉書店〈日本語ライブラリー〉、2021年11月、151-157頁。ISBN 978-4-254-51619-7。
- 木村一 著「雅言集覧」、沖森卓也 編『図説 日本の辞書100冊』武蔵野書院、2023年9月。ISBN 978-4-8386-0660-3。
- 木村義之「近世の辞書:『倭訓栞』『雅言集覧』『俚言集覧』」『悠久』第139号、おうふう、2015年2月、103-121頁。