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俚言集覧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『俚言集覧』
言語 日本語
類型 俗語辞典
編者・監修者 太田全斎
出版地 日本の旗 日本
最新版 『増補俚言集覧』
排列 (俚言集覧)第二音節までを「あ・い・う・え・お」の5集に分け、それぞれを五十音の横段に配列
(増補俚言集覧)五十音順
基になった辞書 『諺苑』
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俚言集覧』(りげんしゅうらん)は、江戸時代に編纂されて明治時代に刊行された国語辞書。全26冊。1797年寛政9年)から1829年文政12年)の間に成立したとみられる。

概要

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題目は石川雅望雅言集覧』に対して俚言(俗語)を採録することからつけられた。『雅言集覧』、『和訓栞』とともに「近世の三大(国語)辞書」として並称されることがある[1][2][3][4][5][6]

かつては原写本の記述から「村田了阿の編纂」とされたが、後に太田全斎の著『諺苑』を増補改編したものであることが明らかになった[7]。なお『諺苑』は、自筆稿本(半紙判横本3冊242葉)が、広島県竹原市竹原の頼春風の故宅・春風館に伝来する[8]

江戸時代から写本のまま伝来したが、明治に井上頼圀近藤瓶城が改編・増補して『増補 俚言集覧』全3冊(1899年 - 1900年)として刊行されたことにより一般に流布した[9]

近世の語彙および方言の資料として重要である[10]。また語源について言及しているものも少なくない[11]

内容

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第二音節までをあ・い・う・え・おの5集に分け、それぞれを五十音の横段に配列(例:アカサタナ…、イキシチニ…)するものであったが、『増補』では普通の五十音順に改組された[12]

俗語を主として、雅語・古語、漢語仏語、方言、固有名詞人名地名)等を収録する。方言の収録は広範囲に及んでおり、題名に反して雅語・古語とみるべきものも含まれる。井上・近藤の『増補』で加えられたのは唐代の小説語、動植物・鉱物の異名、仏語、方言であるが、もとの本の仏語の解説は薄く、井上・近藤の『増補』では語釈が加えられている[13]。また、『増補』が増補した語彙の拠り所になったものとして、『官版 語彙』『言海』『虚字訳文須知』があることから、近世期から明治中期の辞書史上の成果が参照されているという点において、国語学史上の観点からは興味深いものがある[14]

復刻・影印

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  • 『増補俚言集覧』上巻・中巻・下巻、名著刊行会、1965年11月 - 1966年2月。
  • 『増補俚言集覧』上巻・中巻・下巻、名著刊行会、1978年5月。
  • 『増補俚言集覧』上巻・中巻・下巻、大空社、1990年6月。ISBN 4-87236-132-6
  • 『俚言集覧:自筆稿本版』クレス出版

脚注

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  1. ^ 岡田希雄 (1942), p. 33.
  2. ^ 湯浅茂雄 (1995), pp. 238–240.
  3. ^ 湯浅茂雄 (2000b), p. 64.
  4. ^ 木村義之 (2015), p. 103.
  5. ^ 木村一 (2021), p. 154.
  6. ^ 沖森卓也 (2023), pp. 70–71.
  7. ^ 関根正直 (1927), p. [要ページ番号].
  8. ^ 頼惟勤 (1966), p. [要ページ番号].
  9. ^ 藤井乙男 (1944), p. [要ページ番号]「諺苑より俚言集覽へ」
  10. ^ ことわざ研究会 (1986), p. [要ページ番号]「第六・七・八巻解題」
  11. ^ 小松寿雄 (2012), p. 31.
  12. ^ 木村義之 (2015), p. 114.
  13. ^ 伊藤慎吾 (1928), pp. 490–491.
  14. ^ 湯浅茂雄 (2000a), p. 111.

参考文献

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図書
  • ことわざ研究会 編『俚諺資料集成』 8巻、大空社、1986年6月。 
  • 伊藤慎吾『近世国語学史』立川文明堂、1928年5月。 
  • 沖森卓也倉島節尚・加藤知己・牧野武則 編『日本辞書辞典』おうふう、1996年5月。ISBN 4273028905 
  • 沖森卓也 編『図説日本の辞書100冊』武蔵野書院、2023年9月。ISBN 9784838606603 
  • 関根正直『からすかご』六合館、1927年10月。 
  • 太田全斎(著)、藤井乙男(解説)、富永牧太(校訂)『諺苑』養徳社〈古典覆刊:第1〉、1944年12月。 
  • 太田全斎(著)、頼惟勤(解説)、山田忠雄(監修)『春風館本 諺苑』新生社、1966年9月。 
論文
  • 岡田希雄「俚言集覧伊部上巻の発見」『国語国文』第12巻第9号、1942年9月、33-46頁。 
  • 小松寿雄「語源と辞書」『日本語学』第31巻第7号、明治書院、2012年6月、26-35頁。 
  • 湯浅茂雄 著「江戸時代の辞書」、西崎亨 編『日本古辞書を学ぶ人のために』世界思想社、1995年5月、223-254頁。ISBN 4790705552 
  • 湯浅茂雄「『増補俚言集覧』増補語彙依拠資料考」『実践国文学』第57号、実践国文学会、2000年3月、104-113頁。 
  • 湯浅茂雄「江戸の国語辞典あれこれ」『月刊しにか』第11巻第3号、大修館書店、2000年3月、57-64頁。 
  • 道井登「俚言集覧の小説語について:唐話との関係を中心にして」『金沢大学語学・文学研究』第13号、金沢大学教育学部国語国文学会、1984年3月、10-16頁。 
  • 木村一 著「中世(後期)・近世の辞書」、沖森卓也・木村義之 編『辞書の成り立ち』朝倉書店〈日本語ライブラリー〉、2021年11月、151-157頁。ISBN 9784254516197 
  • 木村義之「近世の辞書:『倭訓栞』『雅言集覧』『俚言集覧』」『悠久』第139号、おうふう、2015年2月、103-121頁。 
  • 藁科勝之「『増補俚言集覧』〈小説語〉の出典考察:国語辞書と唐話辞書との一交渉」『国文学研究』第67号、早稲田大学国文学会、1979年3月、109-121頁。 

外部リンク

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