コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

食物 (栄養学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
人間が摂取するマグネシウムを含む食品の一部。人間の食事は多岐にわたる。

栄養学において、食物(しょくもつ、: diet)とは、人や他の生物が摂取する食べ物の総称である[1]。ダイエットという言葉は、健康や体重を管理するために特定の栄養を摂取する意味でよく用いられる(この2つはしばしば関連している)。人は雑食性だが、それぞれの文化あるいはそれぞれの人が、食の好みや食のタブーを持っている。これは個人的な嗜好や倫理的な理由によるものかもしれない。個々の食の選択は、多かれ少なかれ健康的なのかもしれない。

完全栄養には、ビタミンミネラル、タンパク質に由来する必須アミノ酸、脂肪を含む食品からの必須脂肪酸、さらに炭水化物タンパク質脂肪の形で食物エネルギーが摂取され吸収される必要がある。食生活の習慣と選択は、生活の質健康、そして長寿に重要な役割を果たす。

健康

[編集]

健康的な食事は最適な健康状態を改善し、維持することができる。先進国では、豊かさによってカロリー摂取量に制限がなく、不適切な食品を選んでしまうこともできる[2]

保健機関は、エネルギー密度の高い食品や甘い飲み物の摂取を控え、植物由来の食品を食べ、赤肉や加工肉の消費やアルコール摂取を制限することによって、人々が正常な体重を維持することを推奨している[3]

日本人の食事摂取基準や、米国人の食事摂取基準英語版は、政策立案者や医療専門家が健康的な栄養について一般の人々に助言するために用いる、証拠に基づく情報源である。

食物の選択

[編集]
Raw food tacos prepared with guacamole, non-fried beans and sour cream.
ワカモレ、ノンフライ豆、サワークリームで調理されたローフードタコス。生食主義では、調理していない食品の摂取を推奨する。

健康上の理由、道徳上の問題、あるいは環境への個人的な影響を軽減するために、さまざまな見方で動物由来の食品を食べない人もいるが(たとえば準菜食主義ペスカタリアニズム菜食主義ヴィーガニズム)、どの食事[どれ?]がより低い影響を与えるかという一般的な推測は正しくないことが知られている[4]。上記の食生活の中で、ヴィーガニズムは最も選択性が高いものである[5]。バランスの取れたビーガン食は、必要な栄養素をすべて摂取することができるが、タンパク質カルシウム亜鉛ビタミンB12などの栄養素の摂取に特に注意する必要があるかもしれない[6]

生食主義(ローフード)は、もう一つの現代的な傾向である。

体重管理

[編集]

体重の減少または増加を促進するために、特別の食事療法が選択されることがある。被験者の食事摂取を変更する(またはダイエットをする)と、エネルギー収支が変化し、体に蓄えた脂肪の量が増減することがある。「健康的な食事」と「体重管理のための食事(ダイエット)」という言葉は、健康的な体重管理を促すことから、しばしば関連している[7][8]。太り過ぎや肥満の人は、摂取カロリーより燃焼カロリーが多い食事やライフスタイルに変えることで、健康全般が改善され、心臓病糖尿病など体重に起因する病気を予防できる可能性がある[9]。逆に、病気や栄養失調のために体重が不足している人は、体重増加を促すために食事を変えることもある。意図的な体重の変化は有益なことが多いが、あまり急激に起こると体に害を及ぼす可能性がある。意図しない急激な体重変化は、何らかの薬に対する体の反応によって起こることもあれば、病気の中でも甲状腺の問題やなどの重大な医学的問題の兆候という可能性もある[10]

摂食障害

[編集]

摂食障害とは、正常な食物摂取に支障を来たす精神疾患である。これは、異常な食習慣や食物に関する考えによって定義され、必要以上に食べたり、食べなかったりすることがある[11]。一般的な摂食障害には、神経性食欲不振症神経性過食症過食性障害がある[12]。摂食障害は、あらゆる性別、年齢、社会経済状況、および体格の人々が罹患する[12]

宗教的、文化的な食事の選択

[編集]

文化や宗教によっては、どの食品が食事に使用できるかについての制限がある。たとえば、ユダヤ教ではカーシェール食品が許され、イスラム教ではハラール食品のみが許されている。仏教は一般的に菜食主義であるが、宗派によっては慣習が異なり、肉食が許されている場合がある[13]ヒンドゥー教では、菜食主義が理想とされている。ジャイナ教は厳格な菜食主義であり、さらに根菜類(例: ジャガイモ、ニンジン)の摂取は許されていない。

キリスト教では、食べることができる動物の種類に制限はないが[14][15]、キリスト教の中でもさまざまななグループが、さまざまな理由から特定の食事制限を行っている[16]キリスト教徒で最も一般的な食事は、地中海食菜食である[17][18][19][20]

食物の分類表

[編集]
食習慣と食品種類による食物の分類表 (Yes:可 No:不可 Maybe:要注意 Sometimes:特定の場合)
食品種類 雑食 肉食英語版 ペスカタリアン ポロタリアン英語版 準菜食 菜食 ヴィーガン食 果実食 パレオ食 ケトン食 カシェル (ユダヤ) ハラール (イスラム) インド菜食 ジャイナ菜食英語版
Yes No Yes Yes Yes Yes Yes No No Maybe Maybe No Maybe No
果実 Yes No Yes Yes Yes Yes Yes Yes Yes No Yes Yes Yes Maybe
ベリー Yes No Yes Yes Yes Yes Yes Yes Yes Maybe Yes Yes Yes Yes
野菜 Yes No Yes Yes Yes Yes Yes No
[注釈 1]
Yes Yes Yes Yes Yes Yes
葉菜 Yes No Yes Yes Yes Yes Yes No Yes Yes Yes Yes Yes Maybe
豆果 Yes No Yes Yes Yes Yes Yes Maybe No No Yes Yes Yes Yes
種実 Yes No Yes Yes Yes Yes Yes Maybe Yes Maybe Yes Yes Yes Maybe
Yes No No Yes Yes Yes Yes Yes No Maybe
[注釈 2]
No Yes Yes Maybe
穀物 Yes Yes Yes Yes Yes Yes Maybe No No Yes Yes Yes Yes Yes
蜂蜜 Yes No Yes Yes Yes Yes No No Yes No Yes Yes Yes No
乳製品 Yes Maybe
[注釈 3]
Maybe
[注釈 4]
Maybe Maybe Maybe
[注釈 5]
No No No Maybe Yes
[注釈 6]
Yes Yes Yes
Yes Yes Maybe
[注釈 4]
Yes Maybe Maybe
[注釈 7]
No No Yes Yes Yes Yes Maybe No
昆虫 Yes Yes No No Sometimes No No No Yes Yes No
[注釈 8]
No
[注釈 8]
Maybe No
甲殻/ Yes Yes Yes No Sometimes No No No Yes Yes No Maybe
[注釈 9]
Maybe No
Yes Yes Yes No Sometimes No No No Yes Yes Yes Yes Maybe No
Yes Yes No Yes Sometimes No No No Yes Yes Yes Yes Maybe No
Yes Yes No No Sometimes No No No Yes Yes Yes Yes Maybe No
鹿 Yes Yes No No Sometimes No No No Yes Yes Yes Yes Maybe No
Yes Yes No No Sometimes No No No Yes Yes No No Maybe No
Yes Yes No No Sometimes No No No Yes Yes Yes Yes Maybe
[注釈 10]
No

備考

[編集]
  1. ^ トマトナスカボチャズッキーニなど、伝統的に野菜とされてきた植物は許されている。
  2. ^ 通常、キャッサバヤムイモサツマイモは許されているが、ジャガイモは許されていない。
  3. ^ ケトン食のいくつかの変種は旧石器時代を意識して乳製品を排除しているが、ケトジェニックであることを条件に乳製品を許す場合がある。それほど厳しくないアプローチでは、全ての動物由来の食品英語版が許される。[21]
  4. ^ a b ほぼ全ての教派が卵または乳製品のどちらかの摂取を認め、ほとんどが両方を認めている。シーガニズム(seaganism)のような、より厳格なものは、鳥肉や赤身の肉を拒否すると同時に、卵や乳製品も拒否する。
  5. ^ ラクト・ベジタリアン英語版オボ・ラクト・ベジタリアンジャイナ・ベジタリアン英語版は、乳製品を許している。
  6. ^ 乳製品は許されているが、肉類と一緒に調理したり食べることはできない。乳製品は、パレーブ英語版食品と一緒に調理して食べることができる。
  7. ^ オボ・ベジタリアン英語版オボ・ラクト・ベジタリアンのどちらも卵を許す。
  8. ^ a b イナゴ教派によっては許される場合がある。
  9. ^ イスラム教のシーア派では、軟体動物カニのような甲殻類は禁止されている。小エビ/クルマエビは食べられる。
  10. ^ インドの多くの州では、宗教上の理由から牛肉が法律で禁止されているが、ケーララ州など一部の州では禁止していない。これらの州では、牛肉を食べることを選択するヒンズー教徒もいる。[22]

参照

[編集]
  • 減量食英語版 - 減量プログラムや治療の一環としてレシピが調整された食品や飲料
  • ダイエット - 人や動物が食べるものや食べること
  • デザート作物英語版 - 日常的あるいは歴史的に使用されない作物または植物の種類
  • 栄養心理学英語版 - 食事の決定などの選択が、栄養、心理、健康全般に及ぼす影響を研究する学問

脚注

[編集]
  1. ^ noun, def 1 – askoxford.com
  2. ^ "Told to Eat Its Vegetables, America Orders Fries" article by Kim Severson in The New York Times September 24, 2010, accessed September 25, 2010
  3. ^ Policy and Action for Cancer Prevention Food, Nutrition, and Physical Activity”. World Cancer Research Fund & American Institute for Cancer Research (2010年). 2015年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月28日閲覧。
  4. ^ The embodied energy of food: the role of diet DA Coley, E Goodliffe, J Macdiarmid (1998) Energy Policy 26 (6), 455-460
  5. ^ Vegetarian diet: How to get the best nutrition” (英語). Mayo Clinic. 2021年4月6日閲覧。
  6. ^ Melina, Vesanto; Craig, Winston; Levin, Susan (December 2016). “Position of the Academy of Nutrition and Dietetics: Vegetarian Diets”. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 116 (12): 1970–1980. doi:10.1016/j.jand.2016.09.025. ISSN 2212-2672. PMID 27886704. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27886704/. 
  7. ^ Healthy Eating: How do you get started on healthy eating?”. Webmd.com (2009年10月12日). 2011年12月11日閲覧。
  8. ^ Aphramor, Lucy (2010-07-20). “Validity of claims made in weight management research: a narrative review of dietetic articles” (英語). Nutrition Journal 9 (1): 30. doi:10.1186/1475-2891-9-30. ISSN 1475-2891. PMC 2916886. PMID 20646282. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2916886/. 
  9. ^ Diets”. medlineplus.gov. 2021年5月28日閲覧。
  10. ^ Body Weight”. MedlinePlus. June 26, 2020閲覧。
  11. ^ Eating Disorders”. medlineplus.gov. 2020年4月10日閲覧。
  12. ^ a b NIMH » Eating Disorders”. www.nimh.nih.gov. 2020年4月10日閲覧。
  13. ^ Keown, Damien (26 August 2004). A Dictionary of Buddhism. Oxford University Press. p. 77. ISBN 9780191579172. https://books.google.com/books?id=985a1M7L1NcC&pg=PA77 
  14. ^ Marcos 7:14-23
  15. ^ Mateo 15:10-20
  16. ^ Code of Canon Law”. vatican.va. July 28, 2013閲覧。
  17. ^ James Tabor, The Jesus Dynasty p. 134 and footnotes p. 335, p. 134 – "The Greek New Testament gospels says John's diet consisted of "locusts and wild honey" but an ancient Hebrew version of Matthew insists that "locusts" is a mistake in Greek for a related Hebrew word that means a cake of some type, made from a desert plant, similar to the "manna" that the ancient Israelites ate in the desert on the days of Moses.(ref 9) Jesus describes John as "neither eating nor drinking," or "neither eating bread nor drinking wine." Such phrases indicate the lifestyle of one who is strictly vegetarian, avoids even bread since it has to be processed from grain, and shuns all alcohol.(ref 10) The idea is that one would eat only what grows naturally.(ref 11) It was a way of avoiding all refinements of civilization."
  18. ^ Bart D. Ehrman (2003). Lost Christianities: The Battles for Scripture and the Faiths We Never Knew. Oxford University Press. pp. 102, 103. ISBN 978-0-19-514183-2. https://archive.org/details/lostchristianiti00ehrm/page/102  p. 102 – "Probably the most interesting of the changes from the familiar New Testament accounts of Jesus comes in the Gospel of the Ebionites description of John the Baptist, who, evidently, like his successor Jesus, maintained a strictly vegetarian cuisine."
  19. ^ James A. Kelhoffer, The Diet of John the Baptist, ISBN 978-3-16-148460-5, pp. 19–21
  20. ^ G.R.S. Mead (2007). Gnostic John the Baptizer: Selections from the Mandæan John-Book. Forgotten Books. p. 104. ISBN 978-1-60506-210-5. http://www.sacred-texts.com/chr/gno/gjb/gjb-3.htm  p. 104 – "And when he had been brought to Archelaus and the doctors of the Law had assembled, they asked him who he is and where he has been until then. And to this he made answer and spake: I am pure; [for] the Spirit of God hath led me on, and [I live on] cane and roots and tree-food."
  21. ^ https://journals.lww.com/co-endocrinology/Abstract/2020/10000/Can_a_carnivore_diet_provide_all_essential.11.aspx?context=LatestArticles “Can a carnivore diet provide all essential nutrients?”
  22. ^ Study shows ancient Hindus ate meat-heavy food”. The Pioneer (India). 2022年4月24日閲覧。

外部リンク

[編集]