鬼瓦
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鬼瓦(おにがわら)は、瓦葺きの屋根の端などに設置される装飾性のある瓦の総称[1]。
単に「鬼」と呼ばれることもある。厄除けと装飾が目的とされるものも多い。
歴史
[編集]ローマ帝国のパルミラにおいて、建物の入口の上に厄除けとしてメドゥーサを設置する文化(ゴルゴネイオン)があった。この文化がシルクロード経由で中国に伝来し、日本では奈良時代に唐文化を積極的に取り入れだした頃、急速に全国に普及したとされる。[要出典]
特色
[編集]鬼瓦は、棟の末端に付ける雨仕舞いの役割を備えた瓦。凹凸が少ない古段階のものを鬼板と呼ぶこともある。一般的に鬼瓦といえば、鬼面の有無にかかわらず棟瓦の端部に付けられた役瓦のことをいい[2]、機能を表す呼称として棟端飾瓦もあるが一般的ではない。鬼瓦に付される鬼のモティーフは辟邪(魔よけ)の意味をもつとされる[1]。
近世以降の鬼瓦には。鬼の顔を彫刻したものから、シンプルな造形の「州浜」(すはま)や「陸」(ろく)と呼ばれるものや蓮の華をあらわしたもの、また、家紋や福の神がついたものなどがある。
古くは日本では蓮の文様が多かったが、奈良時代以降は鬼面(きめん)が主流になったため、鬼瓦と呼ばれるようになった[1]。後には、鬼面がなくとも鬼瓦と呼ばれるようになった[3]。
産地
[編集]鬼瓦を製作する瓦職人を鬼師と呼び、2021年(令和3年)時点で全国に70人から80人の鬼師がいるとされるが、うち約50人は三河国の三州瓦の製造地域を拠点としている[4]。
- 愛知県西三河地域 - 主要産地は同県の高浜市、碧南市、半田市。三州鬼瓦工芸品が県の伝統的工芸品に指定[5]。
- 山梨県南アルプス市 - 同市の加賀美地区が主な産地。江戸時代に三河の職人から技術が伝わった[6]。甲州鬼瓦が県の伝統的工芸品に指定[7]。
- 埼玉県小川町 - 明治時代から鬼瓦の生産が盛んにおこなわれた[8]。鬼瓦・武州磨き本瓦が埼玉県伝統的手工芸品とされる[9]。
- 兵庫県南あわじ市 - 旧西淡町が主要生産地。淡路鬼瓦が県の伝統的工芸品に指定[10]。
- 滋賀県大津市 - いぶし鬼瓦が県の伝統的工芸品に指定[11]。
さまざまな鬼瓦
[編集]作品
[編集]- 狂言
- 鬼瓦(お笑い)
- セイクリッドセブン(アニメ)
- キャラクターとして「鬼瓦」が登場する。鎌倉大仏殿の鬼瓦がセイクリッドセブンという隕石に触れたことで自我を得たというキャラクターで、いつもヒロインと一緒に登場するためペットのような存在として描かれている。
- 火の鳥 鳳凰編 我王の冒険(TVゲーム、ファミリーコンピュータ用ソフト)
- アイテムとして登場、足場にしたりモンスターの足止めに使用する。
- がきデカ
- 魔除けが効き過ぎる鬼瓦のせいで、こまわりの父親が病気になったエピソードがある。
- さんかく屋根街アパート
- 藤末さくらによる漫画作品。鬼師になるために帰郷した女性を描く。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 大宰府式鬼瓦 (PDF) 九州歴史資料館、2020年4月10日閲覧。
- ^ 近藤豊著『古建築の細部意匠』大河出版 1972年
- ^ 平凡社編『新版 日本史モノ事典』平凡社、2017年6月21日、223頁。ISBN 9784582124293。
- ^ 「MIKAWAサーチ (14) 三州の鬼師先駆者の功績」『中日新聞』2021年1月18日
- ^ “あいちの伝統的工芸品及び郷土伝統工芸品”. 愛知県 (2023年12月11日). 2024年3月22日閲覧。
- ^ 『甲州鬼瓦』 - コトバンク
- ^ “伝統工芸品”. 山梨県. 2024年3月22日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2022年9月28日). “鬼瓦の表札で伝統の技つなぐ 埼玉・小川町の職人奮闘”. 産経ニュース. 2022年12月28日閲覧。
- ^ 『鬼瓦・武州磨き本瓦』 - コトバンク
- ^ “兵庫県の伝統的工芸品の紹介”. 兵庫県. 2024年3月25日閲覧。
- ^ “滋賀県の伝統的工芸品について”. 滋賀県. 2024年3月25日閲覧。
関連項目
[編集]- 鯱
- 鴟尾
- アンテフィクサ
- シーサー
- ガーゴイル
- 小沢治三郎 - 顔面を負傷した後遺症で表情を変えられなかったことからこのあだ名がついた。
- 原型師
- 千木・鰹木 - 神社の屋根飾り
- 切妻屋根 - ドイツのGienbelschmuckという飾りは、もとは茅葺屋根の端に設置される風除けの板であった。Pferdeköpfe (Giebelschmuck)など馬を互い違いにしたものなどがある。
外部リンク
[編集]- 鬼瓦(瓦歴史資料館、石野瓦工業)
- 鬼師(プロフェッショナル 仕事の流儀、2007年7月10日放送)