黒岩信忠
黒岩 信忠 くろいわ のぶただ | |
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生年月日 | 1947年(76 - 77歳) |
出生地 | 日本 群馬県吾妻郡草津町[1] |
出身校 | 草津町立草津中学校[1] |
現職 | 草津町長 |
当選回数 | 4回 |
在任期間 | 2010年1月30日[2] - 現職 |
草津町議会議員 | |
当選回数 | 7回 |
在任期間 | 1983年[1] - 2010年 |
黒岩 信忠(くろいわ のぶただ、1947年 - )は、日本の政治家。群馬県草津町町長(4期)。元草津町議会議員(7期)。元草津町議会議長。草津温泉の改革[1]や草津白根山の噴火対応などで注目された[3]。
経歴
[編集]1963年、草津町立草津中学校卒業[1]。卒業後は電気工を経て、燃料販売会社を起業。東京にビルを持つほどに成長させる[1]。
1983年、草津町議会議員に当選[1]。その後、町議会議員を7期務め、町議会議長も務める[4]。
2022年、草津町長選挙で新井祥子元町議ら2人を破って4選[4][5]。
※当日有権者数:5,239人 最終投票率:56.46%(前回比:+0.60pts)
候補者名 | 年齢 | 所属党派 | 新旧別 | 得票数 | 得票率 | 推薦・支持 |
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黒岩信忠 | 74 | 無所属 | 現 | 2,484票 | 90.10% | |
新井祥子 | 52 | 無所属 | 新 | 141票 | 5.11% | |
海老根篤 | 74 | 無所属 | 新 | 132票 | 4.79% |
強制わいせつ冤罪被害
[編集]2019年11月12日、新井祥子町議(当時)が「2015年1月に町長室で黒岩信忠町長と性行為をした」という内容の電子書籍(飯塚玲児著)を配信した。その上で同月29日に新井は記者会見を開き、黒岩に「いきなりキスされ、床に押し倒された」「町に住む弱い女性の立場をもっと尊いものにするため、町長を告発することにした。最終的には町長の辞任を目指す」と主張した[6]。当該の電子書籍では、「町長室で町長より身体を求められて肉体関係を持った」とあり、「身体を求められて嬉しい反面、不安や複雑な気持ちを感じながら、拒んだら町長の気持ちが離れてしまうので受け止めることしかできなかった」と記載されていた[7]。出版後の記者会見やメディア取材などでは強制的な性被害を受けた旨のことを述べており、メディアによって電子書籍の内容の言及には「性交渉」[6]、「セクハラ被害」[8]、「性被害」[9]などと表記の揺れがある。
黒岩は事実無根とし、新井と執筆した飯塚を名誉毀損で告訴した[6]。また、この時点では新井が被害届を警察に提出していなかったため、黒岩は「(「性被害」が事実と主張するなら)強制わいせつ罪で訴えなさい」と反論していた[8]。2019年12月2日の町議会本会議において、新井は本の内容を引用して、黒岩を「町長として欠格がある」と非難し、黒岩に対する不信任決議案を提出した。しかし、賛成は新井と中沢康治町議のみであり反対多数で否決された[8]。さらに、この時の新井の発言が「議会の品位を傷つけた」として懲罰動議が発議され、新井は失職した[8][10]。また、中沢も不信任決議案に際して電子書籍の内容に触れたことを問題視され、同月6日に懲罰動議において謝罪を行った[11]。黒岩は同月16日、新井、飯塚、中沢に対する総額4400万円の慰謝料と、記事の削除、謝罪広告掲載などを求めて、前橋地裁に民事訴訟を提訴した[12]。
2019年12月9日、新井は山本一太群馬県知事に処分の取り消しを求める審決申請書を提出した[13]。翌2020年2月7日、群馬県は除名処分の執行を一時停止する通知を出し、新井の議席が回復した[14]。その後、8月6日に新井の訴えが認められ正式に除名処分が取り消され、完全に復職した[15]。
これを受け、除名処分に賛成した町議らは「新井祥子の解職を求める会」を組織し、2020年9月15日から解職請求(リコール)運動を開始した[16]。署名集めを担う受任者として220人以上の町民が活動に参加し、収集期限である10月15日を待たずに、27日時点でリコール発議の必要数である約1795人を上回る3292人分の署名を集め[16]、新井の解職の是非を問う住民投票が11月16日告示され、12月6日投開票で決まった[17]。解職理由には、一連の町長に対する批判やメディアで批判を続けていることのみならず、電子書籍において草津温泉で活躍する多くの女性を貶める発言をしていたこと[注釈 1]や、居住実態がなかった嫌疑も盛り込まれた(後に住所を偽った件で前橋地検に告発が行われる[9])[18]。新井は住民投票が決まったことについて「活動をする町議は経営者が多く、従業員である町民は疑問を感じていても依頼を断れない」と批判したが[16]、12月6日の投開票では賛成が有効投票の9割以上を占める2542票で反対の208票を大きく上回り、新井は即日失職した[19][20]。当日有権者数5283人(男2645人、女2638人)中、投票率は53.66%(男51.76%、女55.57%)であった[20]。地元紙の上毛新聞は、「発端となった新井氏の告白の真偽が不明な中で、町全体を巻き込んだ騒動に対し、多くの町民が早期収束を望んだ結果と言える」「議会での新井氏の発言には疑義もあり、不信感を募らせた町民は多い。一連の騒動が議会の停滞につながったのも事実である」と評した一方で、解職請求を主導したのが黒岩卓議長らの町議であったことにリコールの本来の趣旨を違えているのではないか、として疑問も呈した[20]。
失職した新井は「町の民主主義のため、理不尽と闘いながら黒岩町政に反対を訴えていく」と述べ、中沢と「明るい草津を創る会」を立ち上げて政治活動を続ける意向を示し[9]、あわせて県選挙管理委員会にリコール無効の申し立てを行ったが退けられた[21]。この決定に対し、新井は東京高裁に対して、町議らがリコールを主導したのは制度の濫用として、県選挙管理委員会の裁決取り消しを求める訴訟を起こしたが、2021年6月9日に高裁は解職請求を行うための署名運動を禁じる規定はないとし、この請求を棄却する判決を下した[22][21]。新井は上告したが、同年11月22日に最高裁は原告の訴えを退ける判決を下し、失職が確定した[23]。
2021年1月18日の町議会において、インターネット上などで「セカンドレイプの町」などと誹謗中傷を受けたとして、草津温泉のイメージを回復するための対策を求める請願を賛成多数で採択した[24]。この請願の中では新井が未だ性被害に対して刑事・民事共に訴訟を行っていないことも問題視されていた[24]。
2021年2月7日、中沢を代表とする「新井祥子元草津町議を支援する会」が発足した[25]。
2021年12月13日、新井は前橋市内で記者会見し、黒岩に対する強制わいせつ容疑での告訴状を前橋地検に提出したと報告した[26]。この告訴に対し黒岩は、同月20日に新井を虚偽告訴の疑いで告訴した[27]。同月24日、前橋地検は新井の「強制わいせつ」の訴えに対し、黒岩を不起訴とした[28][29]
2022年1月25日、町議会は「セカンドレイプの町・草津」といった誹謗中傷がインターネット上で拡散されたことによりイメージが低下したとして、「新井祥子元町議を支援する会」の会長である中沢らに対し、約550万円の損害賠償を求める名誉毀損の告訴を行った[30]。
黒岩は「指一本触れていない」として事実無根の作り話であると訴えた。2021年には黒岩は名誉毀損と虚偽告訴の容疑で元町議を逆告訴。2022年10月31日、前橋地検は新井を名誉毀損と虚偽告訴の容疑で、飯塚を名誉毀損の容疑でそれぞれ在宅起訴した[31][32]。
2022年12月7日、飯塚は自身のブログで黒岩に対して謝罪する趣旨の声明を発表。2019年に公開した電子書籍『草津温泉 漆黒の闇5』について「大きな誤りがあり、記事が誤報だと判断せざるを得ないことが判明いたしました」として販売を打ち切ることを明らかにした[33]。
黒岩は、月刊正論2023年2月号(2022年12月26日発売)にて、時間湯の湯長制の廃止に伴って権益を失った勢力による事件であったと推察した。「湯長」とは時間湯という湯治の指導役であったが、活動や運営に不明朗さがあるとして黒岩が廃止を決断していた。さらに東京大学名誉教授の上野千鶴子、全国フェミニスト議員連盟(共同代表、増田薫・千葉県松戸市議、前田佳子・東京都八王子市議)、田嶋みづき(フラワーデモ群馬主催者代表)、山本潤(一般社団法人Spring代表理事)、作家の北原みのりの名を挙げ、フェミニストらが証拠がないにもかかわらず草津町を「セカンドレイプの町」と呼んだと批判した[34]。
2023年11月1日、黒岩が新井、飯塚、中沢らに対して総額4400万円の損害賠償を求めた民事訴訟の口頭弁論が開かれた[35]。ここで新井は初めて、黒岩と肉体関係があったとする電子書籍の内容や記者会見で発言した内容に虚偽があったことを認めた[35]。
2023年12月5日、新井を支援していた一般社団法人Springは新井への支援の撤回を表明した[36]。
2024年1月22日、前橋地裁は黒岩に対する名誉毀損の罪に問われた飯塚に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡した[37][38]。
同年4月17日、前橋地裁は新井に対して275万円、飯塚には新井と連帯して110万円を黒岩に支払うよう命じた。中沢に対する請求は棄却した[39]。新井は判決を不服として控訴したが[40]、同年11月7日に東京高裁は、飯塚が110万円弁済した分を減額し、その他の請求を棄却し、新井に対して165万払うよう命じた[41][42]。
テレビ出演
[編集]- 日経スペシャル カンブリア宮殿 逆襲温泉スペシャル 〜日本の宝を磨いて、町を変えろ!〜(2019年3月28日、テレビ東京)- 草津町長として出演[43]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i “逆襲温泉スペシャル 〜日本の宝を磨いて、町を変えろ!〜”. 日経スペシャル カンブリア宮殿. テレビ東京 (2019年3月28日). 2019年12月3日閲覧。
- ^ 群馬県 - 市町村長任期満了日一覧
- ^ “【話の肖像画】群馬県草津町長・黒岩信忠(1)町長選当選2日後の噴火”. 産経新聞. 産業経済新聞社 (2018年4月23日). 2019年12月3日閲覧。
- ^ a b “黒岩氏が4選 大差で2新人退ける 草津町長選”. 上毛新聞. (2022年1月24日). オリジナルの2022年1月24日時点におけるアーカイブ。 2023年11月6日閲覧。
- ^ “黒岩氏が4選 群馬・草津町長選”. 産経ニュース. 産経デジタル (2022年1月23日). 2022年1月23日閲覧。
- ^ a b c 「群馬・草津町長が女性町議らを名誉毀損容疑で告訴「記事は全て嘘で、私は潔白」」『産経新聞』2019年11月29日。2023年11月6日閲覧。
- ^ 飯塚玲児、兵頭喜十郎「第四章:告白の覚悟と肉体関係……告白文書その二!」『草津温泉 漆黒の闇 5: 『温泉失格』の著者が覚悟の糾弾!★草津町長が町長室で不適切な関係!?女性議員が真相を激白!これ以上、草津の女を虐げないで!』〈草津温泉 漆黒の闇〉2019年11月12日。
- ^ a b c d 泉野尚彦「「町長からセクハラ」告発の女性町議、懲罰動議で失職」『朝日新聞』2019年12月3日。2023年11月6日閲覧。
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- ^ 「群馬・草津町長が女性町議らを名誉毀損容疑で告訴「記事は全て嘘で、私は潔白」」『上毛新聞』2019年12月3日。オリジナルの2019年12月4日時点におけるアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ 泉野尚彦「「町長からセクハラ」告発、同調の85歳町議も懲罰動議」『朝日新聞』2019年12月6日。2023年11月6日閲覧。
- ^ 「群馬・草津町長が提訴 ライターや町議3人に慰謝料4400万円求め」『産経新聞』2019年12月16日。2023年11月6日閲覧。
- ^ 「「町長室で性交渉」と告白の元草津町議、除名処分取り消し求め審決申請書提出」『産経新聞』2019年12月9日。2023年11月6日閲覧。
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- ^ 「県が町議の失職取り消し 群馬県草津町」『産経新聞』2020年8月6日。オリジナルの2020年12月14日時点におけるアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ a b c 「草津・新井町議のリコール運動 必要数上回る3292人が署名」『上毛新聞』2020年9月28日。オリジナルの2020年11月26日時点におけるアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ 「県が町議の失職取り消し 群馬県草津町」『産経新聞』2020年10月19日。
- ^ a b “草津町議会議員 新井祥子 解職投票の告示に伴う請求代表者の「解職請求書」及び 草津町議会議員 新井祥子 氏の「弁明書」の公表について”. 草津町議会. 2020年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月12日閲覧。
- ^ 柳沼広幸「失職町議「告白は真実。裁判で明らかに」政治活動は継続」『朝日新聞』2020年12月7日。2023年11月6日閲覧。
- ^ a b c 桜井俊大「新井祥子町議が失職 草津で住民投票 賛成過半数 リコール成立」『上毛新聞』2020年12月7日。オリジナルの2020年12月12日時点におけるアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ a b 村上友里「前草津町議のリコール、裁決取り消し請求棄却 東京高裁」『朝日新聞』2021年6月10日。2023年11月6日閲覧。
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- ^ “草津町長が元町議・新井祥子氏を告訴 虚偽告訴の疑いで”. 上毛新聞. (2021年12月21日). オリジナルの2021年12月21日時点におけるアーカイブ。 2023年11月6日閲覧。
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- ^ “草津町町長を不起訴処分 “強制わいせつ”嫌疑不十分”. FNNプライムオンライン (2021年12月25日). 2021年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ “町のイメージ低下で町議ら提訴へ 草津町が名誉毀損で”. 上毛新聞. (2022年1月26日). オリジナルの2022年1月27日時点におけるアーカイブ。 2023年11月6日閲覧。
- ^ 「元草津町議を名誉毀損罪などで在宅起訴、町長が告訴」『毎日新聞』2022年10月31日。オリジナルの2022年10月31日時点におけるアーカイブ。2022年11月1日閲覧。
- ^ 「「わいせつ行為された」とうその告訴状、元草津町議を在宅起訴…町長「全て作り話だと証明したい」」『読売新聞』2022年11月1日。オリジナルの2022年11月1日時点におけるアーカイブ。2022年11月6日閲覧。
- ^ “「草津町長からの性被害」訴えた電子書籍、著者が「誤報」認める 町長に謝罪、販売打ち切り”. 弁護士ドットコムニュース (2022年12月7日). 2022年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ 産経デジタル (2023年4月17日). “草津町を「セカンドレイプの町」と呼んだフェミニストらの横暴を許すな 黒岩信忠(群馬県草津町長) - 月刊正論オンライン”. 産経ニュース. 2024年2月1日閲覧。
- ^ a b “元草津町議が初めて虚偽認める 前橋地裁” (2023年11月2日). 2023年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月6日閲覧。
- ^ 「セカンドレイプの町」元草津町議の"性被害一部虚偽"で当事者団体が謝罪「多くの人を傷つける表現だった」 - 弁護士ドットコム
- ^ “草津町長への名誉毀損認定 電子書籍著者に有罪判決:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2024年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月22日閲覧。
- ^ “草津町長への名誉毀損罪、著者に有罪判決 元町議の虚偽告白を書籍化:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年1月22日). 2024年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月22日閲覧。
- ^ “草津町長への名誉毀損、元町議らに賠償命令 虚偽内容の書籍出版”. 毎日新聞. (2024年4月17日) 2024年4月18日閲覧。
- ^ “草津町長名誉毀損民事訴訟 元町議が控訴”. 上毛新聞. (2024年5月6日) 2024年5月5日閲覧。
- ^ “草津町長への虚偽の性被害告発「責任は看過しがたい」 2審・東京高裁も元町議の女性に賠償命じる”. 弁護士ドットコム (2024年11月7日). 2024年11月8日閲覧。
- ^ 令和6年(ネ)第2888号
- ^ 逆襲温泉スペシャル 〜日本の宝を磨いて、町を変えろ!〜 - テレビ東京 2019年3月28日
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 町長メッセージ - 草津町
- 黒岩信忠 (@kuroiwa15) - X(旧Twitter)
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