コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

C級駆逐艦 (初代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
C級駆逐艦
基本情報
種別 水雷艇駆逐艦 (TBD)
運用者  イギリス海軍
就役期間 1897年 - 1920年
前級 B級
次級 D級
要目
常備排水量 345~430トン
全長 65.23~70.94 m
最大幅 6.1~7.48 m
吃水 2.39~2.77 m
ボイラー 水管ボイラー×4缶
主機 レシプロ蒸気機関×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 5,800~6.300馬力
速力 30ノット
航続距離 1,170~1,300海里 (11kt巡航時)
燃料 石炭50~75トン
乗員 60名
兵装40口径7.6cm砲×1門
40口径5.7cm砲×5門
・45cm単装魚雷発射管×2基
テンプレートを表示

C級駆逐艦英語: C-class destroyer)は、イギリス海軍水雷艇駆逐艦(TBD)の艦級[1]。1913年に駆逐艦の艦級がアルファベット順に整理された際に、30ノッター型: Thirty knotter class)として建造された艦のうち、3本煙突の艦がこの艦級に再種別されたものである[2]

来歴

[編集]

青年学派を背景としたフランス海軍水雷艇戦力の拡充に対抗するため、1892年度より、イギリス海軍水雷艇駆逐艦(TBD)と呼ばれる新艦種の整備に着手した[3]。これは水雷艇を拡大した軽量の船体、および水管ボイラーを採用した軽量大出力機関の搭載を基本としており、最初に建造された各型は27ノットの速力を実現した[4]

この27ノッター型(後にA級に再種別)の成功を確認したイギリス海軍は、1894年度計画より、更なる速力向上を図った発展型として30ノッター型の整備に着手し、1903年までに74隻を建造した。その後、1913年に駆逐艦の艦級がアルファベット順に整理された際に、このうちの3本煙突の艦がC級として再種別された[2]

設計

[編集]

27ノッター型(A級)と同様、細部の設計は各造船所に任されたことから、煙突数を除けば艦型は極めて多彩である。基本構造はA級と同様で、いずれも水雷艇を強化・拡大したものとなっている。敵からの発見を遅らせるため、乾舷の低い平甲板型とされたことから、艦首が波浪に突っ込んだときに海水をすくい上げないように、水はけの良い亀甲型(タートルバック)とされた。また艦首よりやや後方の外板には波の打上げを減少させるためフレアが付されているほか、艦橋付近から艦尾付近までは、吃水線付近が最も幅広く、乾舷は船体内向きに内傾しているタンブルホームの形状を採用した。なお艦尾艦底部には、プロペラ先端の一部を納めるための凹みが付されている[5]

ボイラーはいずれも石炭専焼式の水管ボイラーで、ヤーロウ式、ソーニクロフト式、ノルマン式、リード式があった。蒸気性状は圧力220–250 lbf/in2 (15–18 kgf/cm2)、飽和温度であった。主機関は、A級の大部分と同様、水雷艇で主流だった3段膨張3気筒レシプロ蒸気機関が踏襲された。機関出力は5,800~6,300馬力を基本とする。海上公試では、一部を除いて30ノットという所期の速力を達成した[6]。その後、1895年にフランス海軍の航洋水雷艇「フォルバン」が海上公試で31.03ノットの速力を記録したことから、1896-7年度計画で、B級の「アラブ」「エクスプレス」とともに本級の「アルバトロス」が高速艦として試作されることになり、主機出力は7,500馬力に強化された。しかし33ノットの目標速力に対して、公試速力は31.5ノット程度となり、レシプロ蒸気機関の限界が確認された[2][6]

海軍では既にこの問題を認識しており、B級の「コブラ」と同様、1897年度の「ヴァイパー」は新開発のパーソンズ直結タービンを搭載して建造された。同艦では4軸推進が採用されており、両外軸に高圧タービン、両内軸に低圧タービンと後進タービンを結合した。また減速機を持たない直結タービンであるため、高回転下で効率的にタービン出力を推力に変換するため、各推進軸に2個ずつの推進器を備えた。これにより、同艦は30ノッター型として最速の36.869ノットを記録した。また1901年に「コブラ」「ヴァイパー」が事故で沈没したことから、同年度計画で代艦として「ヴェロックス」が建造された。これはパーソンズ直結タービン2基による4軸推進艦という点では「ヴァイパー」と同様だが、低速時の燃費改善のため、巡航機として小型のレシプロ蒸気機関を搭載し、こちらでも13ノットの巡航速力を発揮できた。公試速力は27.5ノットと他の30ノッター型に劣った一方、11ノットで1,173海里とレシプロ艦に匹敵する航続距離を確保した。またその後、主力艦の巡航速力の向上を受けて、1906年には巡航機を小型の蒸気タービンに換装し、巡航速力を16ノットに向上させた。以後の駆逐艦でも、低速時の燃費向上を目的とした巡航タービンの装備が踏襲された[6]

装備

[編集]

装備面では、27ノッター型(A級)のものが踏襲された。水雷艇撃攘のための艦砲は駆逐艦の第一の武器とされており、主砲としては40口径7.6cm砲(QF 12ポンド砲)1基、副砲として40口径5.7cm砲(6ポンド砲)5基が搭載された[7]。主砲は艦首甲板直後のプラットフォームに搭載された[2]

また、水雷艇撃攘と同時に、水雷艇と同様の雷撃任務も求められたことから、18インチ魚雷発射管2基も搭載されている[2]

同型艦一覧

[編集]
発注/購入 造船所 艦名 竣工 解体/売却
1895-6年 ヴィッカース
バロー
エーヴォン
HMS Avon
1899年2月 1920年
ビターン
HMS Bittern
1897年4月 1918年4月衝突沈没
オッター
HMS Otter
1900年3月 1916年
1896-7年 レパード
HMS Leopard
1899年7月 1919年
1899年 ヴィクセン
HMS Vixen
1902年3月 1921年
1895-6年 J&Gトムソン ブレイズン
HMS Brazen
1900年7月 1919年
イレクトラ
HMS Electra
1920年
リクルート
HMS Recruit
1900年10月 1915年5月1日 戦没
ヴァルチャー
HMS Vulture
1900年5月 1919年
1896-7年 ケストレル
HMS Kestrel
1900年4月 1921年
1896-7年 ドックスフォード ヴァイオレット
HMS Violet
1898年6月 1920年
シルヴィア
HMS Sylvia
1898年1月 1919年
1897-8年 リー
HMS Lee
1901年3月 1909年10月 難破沈没
1896-7年 ホーソン・
レスリー
マーメイド
HMS Mermaid
1899年6月 1919年
チアフル
HMS Cheerful
1900年2月 1917年6月 戦没
1898年 ヴァイパー
HMS Viper
1900年 1901年8月 座礁沈没
1899年 グレイハウンド
HMS Greyhound
1902年1月 1919年
レースホース
HMS Racehorce
1902年3月 1920年
ローバック
HMS Roebuck
1919年
1896-7年 フェアフィールド オスプリィ
HMS Osprey
1898年7月 1919年
フェアリィ
HMS Fairy
1898年8月 1918年5月31日 戦没
ジプシー
HMS Gipsy
1898年7月 1921年
1897-8年 リーヴェン
HMS Leven
1899年7月 1920年
1899年 オストリッチ
HMS Ostrich
1901年12月 1920年
ファルコン
HMS Falcon
1918年4月 衝突沈没
1896-7年 アール ダブ
HMS Dove
1901年7月 1920年
ブルフィンチ
HMS Bullfinch
1919年
1895-6年 パルマーズ スター
HMS Star
1898年9月
ホワイティング
HMS Whiting
1897年6月
バット
HMS Bat
1897年8月
クレイン
HMS Crane
1898年4月
シャモス
HMS Shamois
1897年11月 1904年事故沈没
フライング・フィッシュ
HMS Flying Fish
1898年6月 1919年
1896-7年 フォーン
HMS Fown
1898年12月 1919年
フラート
HMS Flirt
1899年4月 1918年10月27日 戦没
1901年 ヴェロックス
HMS Velox
1904年2月 1915年10月25日 戦没
1900年 ブラウン ソーン
HMS Thorn
1901年6月 1919年
タイガー
HMS Tiger
1908年4月 衝突沈没
ヴィジラント
HMS Vigilant
1920年
1896-7年 ソーニクロフト アルバトロス
HMS Albatross
1900年7月

参考文献

[編集]
  1. ^ Roger Chesneau, ed (1988). Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905. Conway Maritime. pp. 93-98. ISBN 978-0851771335 
  2. ^ a b c d e 「イギリス駆逐艦史」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、19頁、ISBN 978-4905551478 
  3. ^ ウィリアム・ハーディー・マクニール「第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年」『戦争の世界史(下)』中公文庫、2014年、91-180頁。ISBN 978-4122058989 
  4. ^ 中川務「イギリス駆逐艦建造の歩み」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、149-155頁、ISBN 978-4905551478 
  5. ^ 岡田幸和「船体 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、158-163頁、ISBN 978-4905551478 
  6. ^ a b c 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、164-171頁、ISBN 978-4905551478 
  7. ^ 高須廣一「兵装 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、172-179頁、ISBN 978-4905551478