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Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考/放射性炭素年代測定 20230111

選考終了日時:2023年1月25日 (水) 00:04 (UTC)

  • 賛成  今や考古学には欠かせない技術であり、考古学関係の一般向けニュースでも普通に見かける言葉ですが、きっちりした定義や測定方法などについては、案外知らない人も多いと思います(もちろん私もその一人です)。その技術について、歴史や原理や実際の測定方法や誤差要因など基本的な内容が十分に、かつ「百科事典」として不必要なほどには細かすぎない、という程度に適切に解説されており、内容的なバランスの取れた良い記事だと思います。
物の本で「放射性炭素年代測定による」とされる年代値は、生の測定データがそのまま引用されているものと思っていましたが、最大で五千年近く較正された値であったとは初めて知ったことです。その他にも本記事の主題とは直接関係ないのですが、海洋バイオマスは陸上のそれに比べて重量レベルで半分以下、炭素レベルではなんと数%しかない(何となく海洋バイオマスは陸上バイオマスの数倍以上あると思い込んでいた)、とか冬季になると海藻を餌にするヒツジがいる、とかとにかく目からウロコの話も多く、面白く読ませてもらいました。
冒頭
  • 「ただし特殊な試料調製法によってそれより古い年代を測定できる場合もある。リビーはこの研究により1960年のノーベル化学賞を受賞した。 」
この文章では、リビーの主な業績が「特殊な試料調製法」であるかのように読めてしまいます。リビーのノーベル賞受賞の文は「シカゴ大学のウィラード・リビーによって発明された」の直後に置くのが良いでしょう。
  • 14Cの半減期(ある核種について存在量の半数が崩壊するのにかかる時間)が約5730年であることから、信頼性のある年代測定が行えるのは最大で約5万年前までに限られる。」
原理的には無限の過去まで測定できるはずですが、最大で半滅期の10倍くらいまで、ということは、が約1000分の1なので、14Cの量が元の0.1%程度に減少したあたりが測定限界ということでしょうか。つまり、「5730年」と「約5万年前」の間にどういう関係があるのか、という解説が欲しいところです。
§1.1 歴史
  • 「コルフが高層大気中で14Nと熱中性子が反応して14Cが生成すると予想した」注釈「コルフの論文では「遅い中性子(→slow neutron)」と表現されていた。この言葉はコルフの時代から現在までの間に意味が限定され、ある特定の範囲に収まるエネルギーを持つ中性子を特に指すようになった。「熱中性子(→thermal neutron)」はそれとは別の範囲のエネルギーを持つ中性子を指す」
注釈を読んで意味がわからなくなりました。結局のところコルフが予想していたものは、現代の意味での「熱中性子」ではなかった、ということでしょうか。それとも逆に、コルフが論文で表現した「遅い中性子」が現代の「熱中性子」に相当するものだった、ということでしょうか。
§1.3 測定原理
  • 「試料の14C/12C比は最初大気と等しかったと仮定する。さらに試料の量は既知なので試料中の全炭素原子数は算出でき、それらから試料の初期14C原子数 N0 が求められる。」
その二つの値でどうやって求めるのでしょうか。私の計算では、試料中の全炭素原子数というのは、現在の(試料中の)14Cの原子数と12C原子数の和ですから、試料中の14C12Cの原子数のどちらかを測定しておかないと初期14C原子数は求められないと思うのですが。
§1.4 炭素リザーバー
  • 「海洋表層で生活する生物は周囲の海水と等しい14C/12C比を持つため、体内の14Cは大気に比べると少ない。その影響で海洋生物の放射性炭素年代は400年近い値になる」
これ以下の解説で、「海洋生物(海水)の見かけの放射性炭素年代は400年(数百年)近い値になる」という表現が何回も出て来ますが、この「400年/数百年」というのは「放射性炭素年代による推定値」の意味なのか「誤差」の意味なのか、正確な意味が不明です。つまり、「(実際はほぼ同じ年代だったとしても)海洋生物の放射性炭素年代は陸上生物における推定値に比べて400年近く異った値になる」という意味なのか、「(実際は数万年くらいの古い試料であっても)海洋生物の放射性炭素年代は400年程度の値にしかならない」という意味なのか。もちろん両者の意味合いは大きく違いますが、文脈を見てもあまりよくわからないので、もう少し明確な表現にしていただきたいと思います。たとえば、§2.3.3「その他の効果」にある「のカルデラ地域に自生する植物は見かけの年代が250年から3320年に及ぶことが分かっている」という表現であれば、範囲が大きいので確実に「実際の測定による推定値」であることが解るのですが。
(追記) あるいは、「海洋生物は、海水の影響で生きているときから放射性炭素年代測定値は400年近い値になる」という意味でしょうか。つまり、陸上生物は死後すぐに測定すれば(当然ながら)0年という値になるのに対し、海洋生物は死後すぐに測定しても400年近い値になってしまう、ということでしょうか。だから海洋生物の場合は陸上生物と同じ方法で推定された放射性炭素年代から400年ほど引いて補正する必要がある、という話になるのでしょうか。2023-01-15 追記
§2.2 同位体分別
  • 「表層海水の年代は見かけ上400年となる」
上と同様、これも意味がよくわかりませんが、「実際の経過年数に関係なく、表面海水の放射性炭素年代の推定値は一様に400年程度の値になる」という意味でしょうか。§2.3.1「海洋効果 」の「クジラやアザラシのような海棲哺乳類もこの効果の影響を受けるので見かけの放射性炭素年代が数百年になる」は「誤差」のようにも読めますが、こちらも「実際の経過年数に関係なく、測定結果は一様に数百年という値になる」という意味でしょうか。
とは何でしょうか。PDB標準値のことでしょうか。


§3.1 物質ごとの注意点
  • 「還元雰囲気中で焼かれた骨」
具体的にはどういう環境なのでしょうか。窯のような場所で、もしくは全体が炎上した建物の中で、蒸し焼きに近い状態で焼かれた場合でしょうか。
§4.5 較正
  • 「ブリストルコーンパイン(英語版)」
生物名は標準和名で、ということですが、Bristlecone pine の和名が「ブリストルコーンパイン」である準拠はありますでしょうか。検索してみると「ブリッスルコーンパイン」「イガゴヨウ」などもあるようですが、いずれにしても準拠できるほどの信頼あるデータが見当たりません。また Bristlecone pine は、単一種ではなく亜節 の総称なので、可能なら樹種の学名の方がよいと思います。原論文自体が Bristlecone pine となっていたのなら仕方ないですが。
  • 「それより短い数十年周期の変動(「ウィグル」と呼ばれる)である。スースはウィグルが宇宙放射線の変動に由来すると考えていた。ウィグルが真に存在するかはすぐには明らかにならなかったが、現在では広く認められた事実である」
この文脈における「真に存在する」の意味がよくわかりません。「数十年周期の変動」が単なる測定誤差ではなく実際に変動していた、という意味でしょうか。
  • 「材料シーケンス」「 シーケンス」
この「 シーケンス」が「試験所が報告した放射性炭素年代の値」とどう違うのかわかりません。分析化学では常識的な用語なのだろうと思われるので、本記事内での解説までは求めませんが、シーケンスを見ても該当しそうな解説が見当らない(生物学の「シーケンス」とは違いますよね)のでシーケンスの方にでも解説を加筆していただけるとありがたいです。また、§5.2「考古学以外での利用」での「堆積シーケンス」はまた別のものを指しているようですが、これは「地層剥ぎ取り標本」あるいは「堆積物コア」のことでしょうか。
§5.1 解釈
英語版の内容は「歴史的街道」のようですが、文脈から考えてもこれは木道として良いのではないでしょうか。
出典
あちこちで何度も言っていることですが、特に本記事のように出典の多い記事は短縮型の出典情報から書誌情報をチェックするのにリンクがないと非常に面倒なので、お手数ですが短縮形の出典情報から書誌情報へのアンカーリンクをお願いします。
--Loasa会話) 2023年1月14日 (土) 06:24 (UTC)§1.4「 炭素リザーバー」に疑問点を追記しました--Loasa会話2023年1月15日 (日) 13:01 (UTC)[返信]
返信 詳細なコメントありがとうございました。一気に回答するには時間がかかりますので、申しわけありませんが小分けにさせてください。
冒頭
  • 「ただし特殊な試料調製法によって…」
ご指摘の通りと思います。文章を一部入れ替えました。
  • 14Cの半減期(ある核種について存在量の半数が崩壊するのにかかる時間)が約5730年であることから…」
この方法の測定限界には、装置の精度・試料中14C量のゆらぎ・利用可能な試料サイズ・自然放射線バックグラウンドの大きさ等々、テクニカルな要素が多数関わってきます。測定限界が半減期の約10倍であることに簡潔な説明はつけられないでしょう。出典68(Walker 2005 p.23)をアーカイブで見ると、単に現在のレコードがそのくらいだという書き方でした。
Another approach to extending the radiocarbon timescale is to use large-volume, high-precision counters such as those at the Groningen laboratory in the Netherlands in which very old samples (up to ten half-lives) can be measured.
(2023-01-18追記)「14Cの半減期が約5730年であることから」という文言が悪かったですね。そのせいで、半減期の約10倍という測定限界に意味があるように見えてしまいます。表現を変えます。
出典
  • あちこちで何度も言っていることですが、特に本記事のように…
脚注と参考文献を対応づけました。--Deer hunter会話2023年1月16日 (月) 15:03 (UTC)[返信]
返信 途中まで回答いたします。
§1.1 歴史
  • 「コルフが高層大気中で…」
「コルフが論文で表現した「遅い中性子」が現代の「熱中性子」に相当するものだったということでしょうか」 と書いておられますが、私は英語版原文を読んでそう解釈しました(訳文が分かりにくくて申しわけありません)。その記述の裏付けを取ろうと思ったのですが、私のような非専門家には難しいです。ただ少なくとも、注釈についている出典[6]はコルフによる1940年当時の論文そのものですから、中性子の呼び方の変遷に関する出典としては不適切です。記事の主題にとってはあまり重要な内容ではありませんので注釈ごとコメントアウトすることで対応したいと思います。
§1.3 測定原理
  • 「試料の14C/12C比は最初大気と等しかったと...」
この節に書いてあるのは実際の手順ではなく、単純化した計算の流れを説明しているだけです。実際に初期14C原子数 N0 を算出する必要はありません。『考古学のための年代測定学入門』(古今書院、1999年)によると、実際に計算に用いている値は比放射能(ベータ線計数法)や同位体存在比(AMSの場合)です。
現在の試料中の同位体存在比を測定して x = 14C/12C で表すとします。当初の試料中同位体比 x0 は現代の大気中同位体比と等しいと仮定されているので値は既知です。N/N0 = x/x0 が成り立つので、年代計算が行えます。
§1.4 炭素リザーバー
  • 「海洋表層で生活する生物は周囲の海水と等しい14C/12C比を持つため、体内の14Cは大気に比べると少ない…」
「あるいは、「海洋生物は、海水の影響で生きているときから放射性炭素年代測定値は400年近い値になる」という意味でしょうか」 とおっしゃる通りです。分かりにくかったようですので、表現を変更しました。
§2.2 同位体分別
  • 「表層海水の年代は見かけ上400年となる」
「実際の経過年数に関係なく、表面海水の放射性炭素年代の推定値は一様に400年程度の値になる」という意味でしょうか。 と書かれている通りです(ただ400年は全海洋の平均で、すべての海域で一様なわけではありません)。何も補正を行わなかったとしたら、現代海水の放射性炭素年代は同位体分別の効果によって400年ぶん若い方にずらされ、さらに湧昇の効果によって400年ぶん古い方にずらされ(数字がおよそ一致するのは偶然)、結果としてあまり誤差がなくなるはずです。しかし、放射性炭素年代を算出する標準的な過程で同位体分別の効果は補正されるので(注6参照)、湧昇の効果だけが残って400歳という結果になるということです。
これも表現を少し改めます。
  • …」
はPDB標準です。出典のBowman 1995では という表記になっています。その方が分かりやすそうなので書き換えます。
§3.1 物質ごとの注意点
  • 「還元雰囲気中で焼かれた骨」
アーカイブサイトで出典の書籍を読みましたが、具体的な状況は例示されていませんでした。炭焼きのように酸素不足の条件を言っているのではないかと思います。
ご質問とは関係ありませんが、この部分の文章を出典に沿って少し書き直しました。「酸化雰囲気だと測定対象として望ましい軟成分が分解されてしまう」というのが重要なのに、元の書き方だとそれが分かりにくくなっていました。
さらに別の話ですが、元の文章では誤訳がありました。原文の "usable" を "unusable" と空目しており、意味が正反対になっていたのです。申しわけない限りです。--Deer hunter会話2023年1月18日 (水) 11:49 (UTC)[返信]
返信 最後まで回答いたしました。なお、ご指摘の点以外にも、原文や出典を参照して翻訳の校正を行っています。
§4.5 較正
  • 「ブリストルコーンパイン(英語版)」
標準和名を調べることにまで頭が回っておりませんでした。ウェスリー・ファーガソンが年輪データの作成に用いた種は Pinus aristata[1][2]、『朝日百科植物の世界』(朝日新聞社、1997年)によれば和名はイガゴヨウマツです。記事本文では「イガゴヨウマツ (Pinus aristata)」という表記にしました。
  • 「それより短い数十年周期の変動(「ウィグル」と呼ばれる)である。スースはウィグルが宇宙放射線の変動に由来すると考えていた。…」
出典の Bowman 1995 によると、数十年周期の変動は系統的な誤差(アーティファクト)ではないかと疑われていました。分かりやすいようにもう少し直接的な表現にします。なお、出典と突き合わせてみると、「スースはウィグルが宇宙放射線の変動に由来すると考えていた」という部分にも誤訳がありました。スースの発言はあまり明瞭な表現ではなく、意図が様々に解釈されているようです。
  • 「材料シーケンス」「 シーケンス」…
「シーケンス(シークエンス)」は「一連のもの、連続的なもの」を指す一般的なカタカナ語としてあまり意識せずに使っていました。たとえば「年代が重なり合う複数の年輪試料から取った14C/12C比のデータシーケンス」とは、年輪一輪ごとに測定した一連の値をまとめたデータ列のことです。「シーケンス」を「データ列」と言い換えられる箇所はそうすることにします。また「堆積シークセンス」は「堆積物の成層構造」のように言い換えます(そういう意味だと思うのですが)。
§5.1 解釈
英語版原文・出典書籍ともに元の言葉は "trackway" です。辞書的な意味に引きずられて「土を踏み固めた道。基礎などで補助的に木材を使っている」と想像していたのですが、調べてみると全体的に木で作られたものもそう呼ばれるようです。青銅器時代ブリテンの trackway の一例はこちらで見られます(様式は細かい地域や時代によって異なると思います)。出典のBowman 1995も確認しましたが、廃材によって "laying or stabilising the track"(→道の敷設や補強?)が行われていたと書かれていました。記事では「木道」という表現にします。--Deer hunter会話2023年1月21日 (土) 15:24 (UTC)[返信]
  • コメント とてもわかりやすく、良い記事にまとまっているものと思います。ちょうど年縞博物館を夏に見学したところだったので、とても面白く読めました。気になるところは、歴史や原理がすべて「背景」のサブセクションになっているところです。歴史も原理も背景とは言い難い気がしますし、これらは重要な節ですから背景節の外に出しても良さそうに思えます。背景節の区分そのものが不要なのでは。また「炭素リザーバー」節で「海洋はそのようなリザーバーの一例で、全炭素の2.4%を貯蔵しているが」とありますが、これは「海洋表層は」ですよね。右側の図と比べると、深層は除外した話をしているのだと理解します。--Tam0031会話2023年1月20日 (金) 14:49 (UTC)[返信]
返信
  • 気になるところは、歴史や原理がすべて「背景」のサブセクションになっているところです。歴史も原理も背景とは言い難い気がしますし、これらは重要な節ですから背景節の外に出しても良さそうに思えます。
「背景」節のサブセクションのうち、「物理的・化学的背景」「原理」「炭素リザーバー」は関連性があるので一つの節にまとめるべきだと思います。「歴史」だけは独立した節を与えた方がいいかもしれません。
  • また「炭素リザーバー」節で「海洋はそのようなリザーバーの一例で、全炭素の2.4%を貯蔵しているが」とありますが…
おっしゃる通りと思います。修正いたしました。--Deer hunter会話2023年1月21日 (土) 15:24 (UTC)[返信]
賛成 ありがとうございます。賛成とさせていただきます。--Tam0031会話2023年1月22日 (日) 15:18 (UTC)[返信]

選考終了時点で、賛成3票、反対0票より、通過。--Family27390会話2023年1月25日 (水) 06:29 (UTC)[返信]