せかいのおきく
せかいのおきく | |
---|---|
Okiku and the World | |
監督 | 阪本順治 |
脚本 | 阪本順治 |
製作 | 近藤純代 |
製作総指揮 | 原田満生 |
出演者 |
黒木華 寛一郎 池松壮亮 眞木蔵人 佐藤浩市 石橋蓮司 |
音楽 | 安川午朗 |
撮影 | 笠松則通 |
編集 | 早野亮 |
制作会社 | ACCA |
製作会社 |
FANTASIA Inc. YOIHI PROJECT |
配給 |
東京テアトル U-NEXT リトルモア |
公開 | 2023年4月28日 |
上映時間 | 89分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『せかいのおきく』は、2023年4月28日公開の日本映画。監督は阪本順治、主演は黒木華。
概要
[編集]幕府が外国から開国を迫られていた激動の江戸末期を舞台に、つらい現実を懸命に生きながら、ふん尿は肥料として農村に売り、循環型社会を支えた下肥買いの若者らの青春を描いた物語[1]。
阪本順治にとって本作は30作目にして初めてのオリジナル脚本による時代劇作品となる[2]。
2023年2月1日、第52回ロッテルダム国際映画祭のビッグスクリーンコンペティション部門でワールドプレミアとして上映された[3]。
映画の美術セットや小道具、衣装などは通常新しく作り、撮影後はゴミとして捨てられる事が多いが、江戸の循環型社会を描いている本作では「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」映画として、新しいものは一切使用せずに古材を使用し、衣装も仕立て直したものが使用され、撮影終了後も次の作品で使えるよう保管されている[4]。
あらすじ
[編集]幕末の動乱が続く安政5年(1858年)の江戸。武家育ちの娘・おきく(黒木華)は現在は浪人の身となった父・源兵衛(佐藤浩市)と二人で貧しい長屋に暮らし、寺子屋で子供たちに読み書きを教えている。初夏のある日、土砂降りの雨宿り中に、おきくは紙屑買いの中次(寛一郎)と、厠の糞便を買う汚穢(おわい)屋の矢亮(池松壮亮)という二人の青年と出会う。可憐なおきくが気になる矢亮と中次。勝ち気で弁の立つおきくは二人を追い払ったが、実はおきくは、たまに見かける中次が気になる様子だった。
紙屑を買って問屋に売るよりは金になりそうな中次の汚穢屋を手伝い、江戸で集めた糞尿を農家に売る仕事を始める中次。おきくの住む長屋も担当して、飄々とした父の源兵衛とも顔見知りになった。そんな時、昔の同僚の武士から果たし状を受け取る源兵衛。ある事件で藩を追われて浪人した源兵衛は、深い恨みを買っていたのだ。
約束の日に、おきくに黙って家を出た源兵衛は、厠で出会った中次に“せかい”という言葉を知っているかと尋ねた。惚れた相手には、世界で一番好きだと言えと教えて出かけて行く源兵衛。父が帯刀して出たことで事情を察したおきくも懐剣を掴んで後を追ったが、親子とも武士たちの手にかかってしまった。源兵衛は絶命し、おきくは一命を取り留めたが、喉を切られたおきくは声を出す事ができなくなった。
傷が癒えても家に閉じ籠もるおきくを気遣う中次や長屋の人々。寺子屋の子供たちに、また文字を教えて欲しいと懇願されたおきくは、ようやく復帰を決意した。そんなおきくに、授業に必要な手本の文字を書く半紙の束を贈る中次。矢亮と共に汚穢屋の仕事をしながら中次は、文字を覚えてこの仕事から脱出したいと夢を語った。
ある冬の朝、長屋で中次と出会ったおきくは、中次が痩せたことが心配で、握り飯を作って後を追った。だが、荷車の男とぶつかって握り飯は轢かれてしまった。潰れた握り飯を持って、遠い中次の長屋を尋ね当てたおきくは、身振り手振りで握り飯をあげたかったと訴えた。おきくの愛情を理解したものの、自分の気持ちを言葉にできない中次は、不器用な身振りで「世界で一番好き」を表現し続けた。苦戦する中次を抱きしめるおきく。
おきくの寺子屋で学び始めた中次は「せかい」の文字を知り、そんな二人を見て矢亮は、「青春だなぁ」とつぶやいた。
キャスト
[編集]スタッフ
[編集]- 監督・脚本 - 阪本順治
- 製作 - 近藤純代
- 企画・プロデューサー・美術 - 原田満生
- 撮影 - 笠松則通
- 照明 - 杉本崇
- 録音 - 志満順一
- 美術プロデューサー - 堀明元紀
- 装飾 - 極並浩史
- 小道具 - 井上充
- 衣装 - 大塚満
- 床山・メイク - 山下みどり
- 結髪 - 松浦真理
- VFX - 西尾健太郎
- 編集 - 早野亮
- 音楽 - 安川午朗
- 音楽プロデューサー - 津島玄一
- マリン統括ディレクター - 中村勝
- 助監督 - 小野寺昭洋
- ラインプロデューサー - 松田憲一良
- バイオエコノミー監修 - 藤島義之、五十嵐圭日子
受賞
[編集]- 第78回毎日映画コンクール 日本映画大賞[5]
- 第97回キネマ旬報ベスト・テン[6]
- 日本映画ベスト・ワン
- 脚本賞(阪本順治)
- 第74回芸術選奨新人賞
関連商品
[編集]- 日本シナリオ作家協会・編『'23年鑑代表シナリオ集』協同組合日本シナリオ作家協会、2024年7月31日発行、ISBN 978-4-907881-14-6 - シナリオを収録[9]。
脚注
[編集]- ^ “江戸の下肥 循環の象徴 映画「せかいのおきく」美術監督・原田満生さんに聞く”. 東京新聞. (2023年4月10日) 2023年4月10日閲覧。
- ^ “阪本順治監督30作目、初オリジナル脚本による時代劇映画『せかいのおきく』主演・黒木華、着物で登場!2度目の共演 寛一郎&佐藤浩市、阪本組初出演 池松壮亮が登壇の完成披露試写会開催!”. シネフィル. (2023年4月6日) 2023年4月10日閲覧。
- ^ “「せかいのおきく」ロッテルダム国際映画祭で上映 阪本順治監督「温かく迎えてもらえた」”. 映画.com. (2023年3月3日) 2023年4月10日閲覧。
- ^ “「せかいのおきく」は究極の3R映画 美術・衣装・小物に新品は一切なし”. 映画.com. (2023年3月17日) 2023年4月10日閲覧。
- ^ “「せかいのおきく」毎日映画コンクールで3冠、主演賞は鈴木亮平と杉咲花”. 映画ナタリー. ナターシャ (2024年1月19日). 2024年1月19日閲覧。
- ^ “キネ旬ベスト・テン1位は「せかいのおきく」「TAR/ター」、趣里と役所広司が主演賞”. 映画ナタリー. ナターシャ (2024年2月1日). 2024年2月1日閲覧。
- ^ “第74回『芸術選奨』受賞者を発表 佐藤浩市、池松壮亮、中村勘九郎、藤井フミヤら”. ORICON NEWS. oricon ME (2024年2月28日). 2024年3月8日閲覧。
- ^ "令和5年度(第74回)芸術選奨文部科学大臣新人賞 贈賞理由" (PDF). 文化庁. 28 February 2024. p. 7. 2024年3月8日閲覧。
- ^ “「'23年鑑代表シナリオ集」発売のご案内”. 日本シナリオ作家協会 (2024年7月22日). 2024年10月19日閲覧。
外部リンク
[編集]- 映画『せかいのおきく』公式サイト
- 映画『せかいのおきく』公式 (@okiku_movie) - X(旧Twitter)