ぼくが電話をかけている場所
ぼくが電話をかけている場所 | ||
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著者 | レイモンド・カーヴァー | |
訳者 | 村上春樹 | |
イラスト | 落田謙一 | |
発行日 | 1983年7月25日 | |
発行元 | 中央公論社 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 184 | |
コード | 0097-001644-4622 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『ぼくが電話をかけている場所』は、アメリカの小説家レイモンド・カーヴァーの短編小説集。日本で最初に翻訳出版された短編集で、作品のセレクトと翻訳は村上春樹が行っている。1983年刊行。
1988年5月に本国で出版された、37編から成る精選作品集『Where I'm Calling From: New and Selected Stories』と本書は別のものである。
概要
[編集]文芸誌『海』1983年5月号の特集「今日の海外文学-21- レイモンド・カーヴァー」にカーヴァーの作品が一挙7編掲載される[注 1]。それに「何もかもが彼にくっついていた」を加えたものが本書である。1983年7月25日、中央公論社から刊行された。表紙の絵と装丁は落田謙一。1985年12月25日、中公文庫として文庫化された。
のちにカーヴァーの個人全集を単独で翻訳することになる村上だが、生まれて初めて読み、また最初に訳した作品が「足もとに流れる深い川」(So Much Water So Close to Home)だったという[注 2][3][4]。
村上は1982年から1986年まで『Sports Graphic Number』にアメリカの雑誌や新聞を題材にしたコラム「スクラップ」を連載していたが、同誌1982年7月20日号でいち早くカーヴァーの作品を紹介している。該当箇所は以下のとおり。
「最近では『ニューヨーカー』に載ったレイモンド・カーバーの『僕が電話をかけている場所』(Where I'm Calling From)とドナルド・バーセルミの「落雷」(Lightning)の二冊がお勧め品である。カーバーもいつもながらほれぼれするような好短編である。」[5]
内容
[編集]タイトル | 初出 | 単行本 | 初出(翻訳) | |
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1 | ダンスしないか? Why Don't You Dance? |
Quarterly West, No.7 (Autumn 1978) |
『愛について語るときに我々の語ること』 (クノップフ社、1981年4月20日) |
『海』1983年5月号 |
2 | 出かけるって女たちに言ってくるよ Tell the Women We're Going |
Sou'wester Literary Quarterly, Summer 1971 |
『愛について語るときに我々の語ること』 | 『海』1983年5月号 |
3 | 大聖堂 Cathedral |
The Atlantic Monthly, September 1981 | 『大聖堂』 (クノップフ社、1983年9月15日) |
『海』1983年5月号 |
4 | 菓子袋 Sacks |
Perspective, 17, No.3 (Winter 1974) |
『愛について語るときに我々の語ること』 | 『海』1983年5月号 |
5 | あなたお医者さま? Are You a Doctor? |
Fiction, 1, No.4 (1973) |
『頼むから静かにしてくれ』 (マグロー・ヒル社、1976年3月9日) |
『海』1983年5月号 |
6 | ぼくが電話をかけている場所 Where I'm Calling From |
The New Yorker, March 15, 1982[6] | 『大聖堂』 | 『海』1983年5月号 |
7 | 足もとに流れる深い川 So Much Water So Close to Home |
Spectrum, 17, No.1 (Fall 1975) |
『怒りの季節』 (キャプラ・プレス、1977年11月) |
『海』1983年5月号 |
8 | 何もかもが彼にくっついていた Everything Stuck to Him |
Chariton Review, 1, No.2 (Fall 1975) |
『愛について語るときに我々の語ること』 | 訳し下ろし |
2. 「出かけるって女たちに言ってくるよ」の雑誌掲載時のタイトルは "Friendship"。
4. 「菓子袋」は "The Fling" というタイトルで2冊目の短編集『怒りの季節』(キャプラ・プレス、1977年11月)に収録されている。それを改題・改稿したものが3冊目の『愛について語るときに我々の語ること』に収録された。本書『ぼくが電話をかけている場所』に収められているバージョンは後者。
7. 「足もとに流れる深い川」はロング・バージョンが『怒りの季節』に収録され、その後ショート・バージョンが『愛について語るときに我々の語ること』に収録された。本書『ぼくが電話をかけている場所』に収められているバージョンは前者。なお『怒りの季節』に収録されたバージョンと、1983年4月に出版された『ファイアズ (炎)』収録のバージョンはほぼ同じである[7]。
8. 「何もかもが彼にくっついていた」は "Distance" というタイトルで『怒りの季節』に収録されている。それを改題・改稿したものが『愛について語るときに我々の語ること』に収録された。本書『ぼくが電話をかけている場所』に収められているバージョンは後者。なお、『ファイアズ (炎)』収録のバージョンはそのどちらとも異なり、編集者ゴードン・リッシュによるいくつかの改変部分とテス・ギャラリーの提案部分が反映されている[8]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ このときの『海』の担当編集者が、のちに「生原稿流出事件」で知られる安原顯であった。村上はカーヴァーの訳書のあとがきで安原に謝辞を述べたあと、次のように述懐している。「僕が『レイモンド・カーヴァーというとても面白いアメリカの作家がいるんだけど』と話を持っていくと、『いいよ、それ次で特集やろう』ということであっというまに話がまとまった。そのころにはレイ・カーヴァーの名前を知る人もろくにいなかったわけだから、そんな気楽なことがよくできたものだと今にしてみれば思う。」[1]
- ^ 村上春樹は次のように述べている。「僕がカーヴァーを最初に見つけたのは、たまたま The West Coast Fictions というアンソロジーを読んでまして、カーヴァーのところにきたら、もうそこのページだけが光り輝いているんです。ビリビリくるのね。そのときに読んだのは "So Much Water So Close to Home"、『足もとに流れる深い川』と訳したっけ。僕は読んでもう本当に胸が震えるぐらいびっくりしたんです。『これだ!』と思った」[2]
出典
[編集]- ^ レイモンド・カーヴァー 『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』中公文庫、350-351頁。
- ^ 村上春樹・柴田元幸 『翻訳夜話』文藝春秋、2000年10月、196-197頁。
- ^ キャロル・スクレナカ 『レイモンド・カーヴァー 作家としての人生』中央公論新社、2013年7月、解説、729頁。
- ^ レイモンド・カーヴァー 『THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 2 愛について語るときに我々の語ること』中央公論社、1990年8月、295頁。
- ^ 村上春樹 『THE SCRAP 懐かしの一九八〇年代』文藝春秋、1987年2月、24頁。
- ^ WHERE I'M CALLING FROM BY RAYMOND CARVER, March 15, 1982The New Yorker
- ^ レイモンド・カーヴァー 『ビギナーズ』中央公論新社、2010年3月30日、「『ビギナーズ』のためのノート」(ウィリアム・L・スタル、モーリーン・P・キャロル)、497頁。
- ^ レイモンド・カーヴァー『ビギナーズ』前掲書、501-502頁。