アーティカイン
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
Drugs.com | monograph |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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薬物動態データ | |
代謝 | 肝臓、血漿 |
半減期 | 30 min |
排泄 | 肝臓、血漿エステラーゼ[1] |
識別 | |
CAS番号 | 23964-57-0 |
ATCコード | N01BB08 (WHO) |
PubChem | CID: 32170 |
DrugBank | DB09009 |
ChemSpider | 29837 |
UNII | D3SQ406G9X |
KEGG | D07468 |
ChEMBL | CHEMBL1093 |
別名 | Carticaine |
化学的データ | |
化学式 | C13H20N2O3S |
分子量 | 284.37 g/mol 320.836 g/mol (HCl) |
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アーティカイン(またはアルチカイン)は、欧米で広く用いられているアミド型局所麻酔薬である[2]。 チオフェン環を含む唯一の局所麻酔薬であり、高い脂溶性を示す[3]。
歴史
[編集]1969年、ドイツにおいてラッシングによって最初に合成され、1984年までは「Carticaine」と呼称されていた。1983年には「Ultracaine」という名称で、北米市場に持ち込まれ、特許保護終了後は、多くの後発医薬品が登場している。
2000年4月には10万分の1エピネフリン添加アーティカインがFDAによる承認を受け、2か月後に発売を開始した。
日本国内では、岡山大学病院が主管となり、2016年10月より第I相試験が、2018年8月より第II相試験が、2021年6月より第III相試験が実施されている[4]。
2023年10月現在、日本国内におけるアーティカインの使用は未認可である。
構造と代謝
[編集]アーティカインの構造は、ベンゼン環の代わりにチオフェン環を有する点で他のアミド型局所麻酔薬と大きく異なっている。血中での分解が速やかであり、半減期は20分[5][6]であるため、反復使用を行う際の全身に対するリスクは他の麻酔薬と比較して少ないといわれている[7]。
臨床使用
[編集]アーティカインは主として歯科治療時の麻酔薬として用いられる[8]。伝達麻酔に利用する際には神経損傷のリスクが高くなるともいわれている[9]が、下顎骨の大臼歯部などに見られるような緻密な皮質骨であっても、アーティカインは他の局所麻酔薬と比較した場合に浸潤性が高いため、主に浸潤麻酔で用いられている。
リドカインとアーティカインを比較した研究では、下顎第一大臼歯部の浸潤麻酔において、リドカインよりも効果的であることが示されており、リドカインと比較して3.81倍の除痛に成功している[10]。
伝達麻酔について、リドカインよりアーティカインが優れているとする報告は存在しないものの[11]、リドカインによる伝達麻酔後の術野に対する補足的な浸潤麻酔としての使用に関して、リドカインより優れていることが示されている[12]。
2021年7月現在、日本国内では未承認であるが、岡山大学病院にて最終治験が行われており[4]、早期の国内承認が期待されているものの2022年12月末の時点では治験の遅延が報告されている[13]。
禁忌
[編集]- アミド型麻酔薬に対するアレルギー
- メタ重亜硫酸塩に対するアレルギー[14]
- 特発性または先天性メトヘモグロビン血症 [15] (使用量が少ないため、歯科診療では問題にならない[16])
- 鎌状赤血球症などの異常ヘモグロビン症
アーティカインのチオフェン環と、スルホンアミドの間に交差反応性はないため、サルファ剤アレルギーの患者に対して禁忌とはならない[17]。
感覚異常についての議論
[編集]感覚異常(パレステジア、Paresthesia)は、アーティカインの臨床応用以前より、局所麻酔薬の注入に伴う合併症としてよく知られている[18][19]。
アーティカインと感覚異常については、1993年のHaas and Lennonによる報告に議論の端を発している[20]。21年間にわたる調査の結果、4%アーティカインの使用により、一時的または持続的な感覚異常を惹起する可能性が高いことが示されている。
著者らは、「感覚異常の全体的な発生率は非常に低く、1993年に行われた推定1100万回の注射のうち報告された感覚異常は14例である。」としながらも、「アーティカインまたはプリロカインが使用された場合に感覚異常の発生率が高い傾向にあるという示唆を支持する結果である。」としている。
1994年の報告では、4%アーティカインの使用において感覚異常の発生率は100万回に2.05回(0.000205%)の割合であったと結論付けている[21]。
2000年に発表された追跡調査では、プリロカインおよびアーティカインの使用による感覚異常の発生率は50万分の1程度であると結論付けた[22]。なお、一般的な歯科医師は、年間約1,800回の注射を行うとされている[23]。
報告されている感覚異常のほぼ全てが、歯科用に用いられた場合に限定しており、また4%アーティカインの使用が直接的な原因として科学的に証明されておらず[24]、感覚異常の原因として針による神経損傷の可能性が指摘されている[25][26]。
参考文献
[編集]- ^ Oertel R, Ebert U, Rahn R, Kirch W. Clinical pharmacokinetics of articaine. Clin Pharmacokinet. 1997 Dec;33(6):421
- ^ Oertel R, Ebert U, Rahn R, Kirch W. Clinical pharmacokinetics of articaine. Clin Pharmacokinet. 1997 Dec;33(6):418.
- ^ Snoeck, Marc (2012-06-05). “Articaine: a review of its use for local and regional anesthesia”. Local and Regional Anesthesia 5: 23–33. doi:10.2147/LRA.S16682. ISSN 1178-7112. PMC 3417979. PMID 22915899 .
- ^ a b “歯科麻酔剤アルチカイン 最終治験 岡山大病院、早期国内承認目指す”. 岡山の医療健康ガイド MEDICA. 2021年7月18日閲覧。
- ^ HornkeI, Eckert HG, Rupp W. Pharnakokinetik und Metabolismus von Articain nach intramuskularer Injektion am mannlichen Probanden. Dtsch Z Mund Kiefer Gesichts Chir 1984; 8:67-71
- ^ Kirch W, Kitteringham N, Lambers G, et al. Die klinische Pharmakokinetik von Articain nach intraoraler und intramuskularer Application. Schweiz Monatsschr Zahnheilkd 1983; 93: 713-9
- ^ Oertel R, Ebert U, Rahn R, Kirch W. Clinical pharmacokinetics of articaine. Clin Pharmacokinet. 1997 Dec;33(6):420.
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- ^ Malamed SF. Handbook of local anaesthesia, p. 320, 5th ed. St. Louis, Mosby; 2004.
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