安息香酸
安息香酸 | |
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Benzenecarboxylic acid | |
別称
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 65-85-0 |
PubChem | 243 |
ChemSpider | 238 |
UNII | 8SKN0B0MIM |
EC番号 | 200-618-2 |
E番号 | E210 (防腐剤) |
DrugBank | DB03793 |
KEGG | D00038 |
MeSH | benzoic+acid |
ChEBI | |
ChEMBL | CHEMBL541 |
RTECS番号 | DG0875000 |
バイルシュタイン | 636131 |
Gmelin参照 | 2946 |
3DMet | B00053 |
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特性 | |
化学式 | C7H6O2 |
モル質量 | 122.12 g mol−1 |
外観 | 無色の結晶性固体 |
匂い | かすかに心地よい香り |
密度 | 1.2659 g/cm3 (15 °C) 1.0749 g/cm3 (130 °C)[2] |
融点 |
122 °C, 395 K, 252 °F [7] |
沸点 |
250 °C, 523 K, 482 °F [7] |
水への溶解度 | 1.7 g/L (0 °C) 2.7 g/L (18 °C) 3.44 g/L (25 °C) 5.51 g/L (40 °C) 21.45 g/L (75 °C) 56.31 g/L (100 °C)[2][3] |
溶解度 | アセトン、ベンゼン、CCl4、CHCl3、アルコール、エチルエーテル、ヘキサン、液体アンモニア、酢酸エステル類に溶ける |
メタノールへの溶解度 | 30 g/100 g (−18 °C) 32.1 g/100 g (−13 °C) 71.5 g/100 g (23 °C)[2] |
エタノールへの溶解度 | 25.4 g/100 g (−18 °C) 47.1 g/100 g (15 °C) 52.4 g/100 g (19.2 °C) 55.9 g/100 g (23 °C)[2] |
アセトンへの溶解度 | 54.2 g/100 g (20 °C)[2] |
オリーブ油への溶解度 | 4.22 g/100 g (25 °C)[2] |
1,4-ジオキサンへの溶解度 | 55.3 g/100 g (25 °C)[2] |
log POW | 1.87 |
蒸気圧 | 0.16 Pa (25 °C) 0.19 kPa (100 °C) 22.6 kPa (200 °C)[4] |
酸解離定数 pKa | |
磁化率 | −70.28·10−6 cm3/mol |
屈折率 (nD) | 1.5397 (20 °C) 1.504 (132 °C)[2] |
粘度 | 1.26 mPa (130 °C) |
構造 | |
結晶構造 | 単斜晶系 |
分子の形 | 平面 |
双極子モーメント | 1.72 D in ジオキサン |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
−385.2 kJ/mol[2] |
標準燃焼熱 ΔcH |
−3228 kJ/mol[4] |
標準モルエントロピー S |
167.6 J/mol·K[2] |
標準定圧モル比熱, Cp |
146.7 J/mol·K[4] |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | JT Baker |
GHSピクトグラム | [8] |
GHSシグナルワード | 危険(DANGER) |
Hフレーズ | H318, H335[8] |
Pフレーズ | P261, P280, P305+351+338[8] |
主な危険性 | 刺激性 |
NFPA 704 | |
引火点 | 121.5 °C (250.7 °F; 394.6 K) [7] |
発火点 | 571 °C (1,060 °F; 844 K) [7] |
半数致死量 LD50 | 1700 mg/kg (ラット, 経口) |
関連する物質 | |
その他の陽イオン | 安息香酸ナトリウム 安息香酸カリウム |
関連するカルボン酸類 | ヒドロキシ安息香酸類 アミノ安息香酸類 ニトロ安息香酸類 フェニル酢酸 |
関連物質 | ベンズアルデヒド ベンジルアルコール 塩化ベンゾイル ベンジルアミン ベンズアミド ベンゾニトリル |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
安息香酸(あんそくこうさん、英: benzoic acid、独: Benzoesäure)は芳香族化合物であり、特に芳香族カルボン酸である。ベンゼンの水素原子1個がカルボキシ基に置換された構造を持つ。水に溶かすと酸性を示し、酸解離定数 pKa は 4.21 である。
安息香酸のカルボキシ基に対してオルト位の水素原子がヒドロキシ基に置換されると、サリチル酸となる。
抗菌・静菌作用があるので、水溶性のナトリウム塩、安息香酸ナトリウム などは清涼飲料等の保存料として添加されている。酸型保存料の一種。殺菌作用はない(既に細菌などの増殖したものに対しては無効)。旧厚生省は安息香酸を天然に存在しない添加物に分類している[9]。
発見と命名
[編集]ユストゥス・フォン・リービッヒとフリードリヒ・ヴェーラーにより、1832年に構造決定がなされた。
安息香(ベンゾイン)は香料として用いられる樹脂の一種であり、この中に安息香酸のエステルが多いことからこの名がとられた。
製法
[編集]安息香酸はアルキル側鎖を1つ持つ芳香族(たとえば、トルエンやエチルベンゼン、クメンなど)を酸化することで得られる。この反応ではベンゼン環に隣接する水素-炭素間の結合が攻撃される。ベンジル位にC-H結合がない場合はベンゼン環が酸化される。 また、ベンズアルデヒドC6H5CHOの酸化によって得ることも出来る。
体内での代謝
[編集]安息香酸は、体内に取り込まれると肝臓にて代謝され馬尿酸となり尿として排泄される。
安全性に関する議論
[編集]2007年、英国食品基準庁は食品添加物と注意欠陥・多動性障害との関係を調査する為に二重盲検法による広域スクリーニングを実施した結果、数種類の合成着色料であるタール色素と、合成保存料の安息香酸ナトリウムを同時に摂取した群に相関を認めたという研究報告があり[10][11]、注意欠陥・多動性障害の子供は、安息香酸を保存料として使用されている食品は避けたほうがいいと勧告している[12]。しかし、欧州食品安全当局(EFSA)は同じ研究報告を評価し、観察された影響の臨床上の意義が不明なことや、研究結果の一貫性の無さ、小さなエフェクトサイズの意義が不明なこと、用量反応性の情報がないこと、食品添加物の行動への影響を誘発させる生物学的メカニズムが考えられないことを挙げ、ADIを変更する根拠にはならないとしている[13]。
ドイツ連邦リスク評価研究所 (BfR) の報告によれば、清涼飲料水中に安息香酸とアスコルビン酸が共存する場合には微量のベンゼンが生成する可能性があり、生成量は pH、温度、他の不純物(主に金属イオンが影響するものと思われる)、紫外線の影響を受けるという[14][15]。
ベンゼンの曝露は各種のガンや骨髄性白血病のリスクを高めるが、試験結果によればベンゼン濃度は最大でも 20 ppb 程度に留まり、BfRも現時点でのリスクは評価できないほど小さいとしている。
なお、ベンゼンの摂取許容量(時間加重平均濃度 1 ppm、40年曝露での白血病リスク増加はみとめられなかった)を定量的に考慮すると、直ちに健康被害が発生するとは考えづらい。
2021年に厚生労働省は、安息香酸の食品健康影響評価について、次のような見解を示している。
安息香酸は、食品中に天然に含まれており、また、食品添加物として長年使用されてきた実績から、十分な食経験がある。
飼料添加物として適切に使用される場合にあっては、安息香酸が投与された対象動物(豚)由来の食品からの安息香酸の摂取量は、平均的な豚肉摂取量に基づく見積もりとして、JECFAの設定したADIと比較して大きなばく露幅があると考えられた。また、他の食品に由来する安息香酸を多く摂取していると仮定した場合にあって、さらに安息香酸を飼料添加物として摂取した豚肉に由来する食肉を多量に摂取した場合でも、その影響は僅かであると考えられた。
したがって、安息香酸は飼料添加物としての評価においてはADIを考慮する必要は特段なく、飼料添加物として通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると考えた。[16]
使用基準
[編集]日本の厚生省(当時)は、安息香酸の使用をキャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップ及び醤油のみに認め、安息香酸ナトリウムの使用については、それらに加えて菓子製造に用いる果実ペースト及び果汁のみ認めており、使用量を設定している。[17]
脚注
[編集]- ^ Nomenclature of Organic Chemistry : IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). p. 745. doi:10.1039/9781849733069-00648. ISBN 978-0-85404-182-4
- ^ a b c d e f g h i j “benzoic acid”. chemister.ru. 24 October 2018閲覧。
- ^ Seidell, Atherton; Linke, William F. (1952). Solubilities of Inorganic and Organic Compounds. Van Nostrand
- ^ a b c Benzoic acid in Linstrom, P.J.; Mallard, W.G. (eds.) NIST Chemistry WebBook, NIST Standard Reference Database Number 69. National Institute of Standards and Technology, Gaithersburg MD. http://webbook.nist.gov (retrieved 2014-05-23)
- ^ Harris, Daniel (2010). Quantitative Chemical Analysis (8 ed.). New York: W. H. Freeman and Company. pp. AP12. ISBN 9781429254366
- ^ Olmstead, William N.; Bordwell, Frederick G. (1980). “Ion-pair association constants in dimethyl sulfoxide”. The Journal of Organic Chemistry 45 (16): 3299–3305. doi:10.1021/jo01304a033.
- ^ a b c d Record 労働安全衛生研究所(IFA)発行のGESTIS物質データベース
- ^ a b c Sigma-Aldrich Co., Benzoic acid. Retrieved on 2014-05-23.
- ^ 厚生省「表5 食品添加物の年齢別摂取量」マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 (平成12年12月14日 厚生省) (日本食品化学研究振興財団)
- ^ Donna McCann et al "Food additives and hyperactive behaviour in 3-year-old and 8/9-year-old children in the community: a randomised, double-blinded, placebo-controlled trial" Lancet, 370(9598), 2007 Nov 3, pp1560-7. PMID 17825405
- ^ Schab DW, Trinh NH, "Do artificial food colors promote hyperactivity in children with hyperactive syndromes? A meta-analysis of double-blind placebo-controlled trials"] Journal of developmental and behavioral pediatrics 25 (6), 2004 Dec, pp423-34. PMID 15613992
- ^ Agency revises advice on certain artificial colours (英語) (Food Standards Agency)
- ^ EFSA evaluates Southampton study on food additives and child behaviour Archived 2008年12月1日, at the Wayback Machine.
- ^ BfRによる原著文献(ドイツ語) (PDF)
- ^ P30に国立医薬品食品衛生研究所安全情報部による日本語の摘要 (PDF)
- ^ [1]
- ^ “厚生省行政情報-食品添加物リスト-添加物使用基準リスト 1”. 2013年6月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月3日閲覧。