イワタイゲキ
イワタイゲキ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Euphorbia jolkinii Boiss.[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
イワタイゲキ |
イワタイゲキ(岩大戟、学名: Euphorbia jolkinii Boiss.[1])は、トウダイグサ科トウダイグサ属に分類される多年草の海浜植物の1種である[3][4][5][6]。シノニムに Galarhoeus jolkinii (Boiss.) H.Hara が存在する[2]。和名は岩石地に生育し、中国原産のタカトウダイ、別名・生薬名タイゲキ(大戟)に似ていることに由来する[6]。
特徴
[編集]全体に無毛で、群生し[6]、地下茎がよく発達し、岩の隙間などに深く伸びる[3]。茎は太く[3]肉質[5]、白い液が多く乳液は皮膚をかぶれさせ[7]、直立し、高さ30-50 cm[6](30-80 cm[8])。島嶼部のものは大型となる[5]。葉はびっしりと互生する[3]。葉は長さ4-7 cm(3-8 cm[8])、幅6-15 mm[8]、長楕円形-倒披針形[4]、鈍頭で、縁に鋸歯はなく、新葉は淡黄色[5]。茎の先に多数の葉を輪生する。葉腋から放射状に短い枝を多数(5本以上)だし[5]、枝先に杯状花序を頂生し三又分枝、ついで二又分枝を繰り返す[5]。花序の下側につく卵形の苞葉は黄色[4]、総苞葉は幅約2 mmの腎形[3]。子房の表面には乳頭状の突起が密にあり、蒴果になっても残り[3]、熟すと直径5 mm以上になる[5]。花期は4-6月[3][4][5]。晩秋の頃にまだ若い茎の上に新しい茎が出て、紅葉して年を越す[6]。
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葉は長楕円形-倒披針形、紅葉して年を越す
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杯状花序を頂生し、花序の下側につく卵形の苞葉は黄色
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子房の表面には乳頭状の突起が密にあり、蒴果になっても残る
吐噶喇列島平島では魚毒植物として用いられていた[9]。根に大腸菌(Escherichia coli)、クローバー根粒菌(Rhizobium trifolii)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、エンドウマメ根粒菌(Rhizobium leguminosarum)などの細菌に強い抗菌力を持つ成分、没食子酸メチルを含む[10]。
分布と生育環境
[編集]台湾、朝鮮半島南部、日本に分布する[5][6]。日本では、本州(関東地方南部
[5]以西、伊豆以西[8])、四国、九州、沖縄に分布し[4]、北限が石川県[7]。本種は海流により分布を広げる海流散布植物と考えられている[7]。
種の保全状況評価
[編集]日本では環境省による国レベルのレッドリストの指定を受けていないが[11]、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。瀬戸内海国立公園、大山隠岐国立公園で指定植物のひとつに選定されている[12]。
- 絶滅危惧IA類(CR) - 神奈川県[13]、石川県[7]
- 重要保護生物(B) - 千葉県[14]
- Bランク - 兵庫県[15]
- 絶滅危惧II類(VU) - 愛知県[16]、香川県[17]
- 準絶滅危惧(NT) - 三重県[18]、島根県[19]、岡山県[12]、広島県[20]、徳島県[21]、大分県[22]
脚注
[編集]- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イワタイゲキ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2021年8月19日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イワタイゲキ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2021年8月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g 門田 (2013)、339頁
- ^ a b c d e f 林 (2009)、364頁
- ^ a b c d e f g h i j k 佐竹 (1982)、226頁
- ^ a b c d e f g 牧野 (1982)、284頁
- ^ a b c d “いしかわレッドデータブック2020、植物編” (PDF). 石川県. pp. 93. 2021年8月19日閲覧。
- ^ a b c d 日本大百科全書(ニッポニカ). “イワタイゲキとは”. コトバンク. 2021年8月25日閲覧。
- ^ 東 (1974)、68頁
- ^ 東 (1974)、72頁
- ^ “環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年8月19日閲覧。
- ^ a b “岡山県版レッドデータブック2020” (PDF). 岡山県. pp. 211. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “神奈川県レッドリスト〈植物編〉2020”. 神奈川県. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “千葉県レッドデータブック・レッドリスト”. 千葉県. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “維管束植物-兵庫県版レッドデータブック2020-” (PDF). 兵庫県. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “レッドデ-ータブックあいち2020” (PDF). 愛知県. pp. 498. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “香川県レッドデータブック2021” (PDF). 香川県. pp. 178. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “三重県レッドデータブック2015” (PDF). 三重県. pp. 631. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “改訂しまねレッドデータブック2013植物編” (PDF). 島根県. pp. 166. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “絶滅のおそれのある野生生物(「レッドデータブックひろしま2011」)レッドデータブックについて”. 広島県. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “徳島県版レッドデータブック(レッドリスト)”. 徳島県. 2021年8月19日閲覧。
- ^ “レッドデータブックおおいた2011” (PDF). 大分県. 2021年8月19日閲覧。
参考文献
[編集]- 東四郎、阿部美紀子、岩川哲夫、長谷綱男「イワタイゲキ(Euphorbia jolkini Boiss.)の根の抗菌性物質について」『鹿児島大学理学部紀要 地学・生物学』第7号、鹿児島大学、1974年12月、67-73頁、NAID 120001393290。
- 門田裕一、畔上能力、平野隆久『野に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年3月30日。ISBN 978-4635070195。
- 佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年3月17日。ISBN 458253502X。
- 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
- 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。全国書誌番号:85032603 。
外部リンク
[編集]- イワタイゲキ 植物図鑑
- イワタイゲキの標本 国立科学博物館標本・資料統合データベース
- イワタイゲキの標本(1988年5月4日に鹿児島県トカラ列島口之島西之浜で採集) 島根大学生物資源科学部デジタル標本館
- イワタイゲキの標本(1986年4月に採集) 牧野標本館
- イワタイゲキ 広島大学デジタル博物館
- イワタイゲキ 筑波実験植物園
- イワタイゲキ 吉野熊野国立公園宇久井ビジターセンター
- Euphorbia jolkinii Boiss. (The Plant List)
- 『イワタイゲキ』 - コトバンク