ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ
『ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ』 | ||||
---|---|---|---|---|
ドクター・ジョン の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | ルイジアナ州ニューオーリンズ ウルトラソニック・スタジオ | |||
ジャンル | ブルース、ジャズ、R&B | |||
時間 | ||||
レーベル | ワーナー・ブラザース・レコード | |||
プロデュース | スチュワート・レヴィン | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
| ||||
ドクター・ジョン アルバム 年表 | ||||
|
『ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ[4]』(Goin' Back to New Orleans)は、アメリカ合衆国のミュージシャン、ドクター・ジョンが1992年に発表したスタジオ・アルバム。本作より20年前に発表されたアルバム『ガンボ』と同様、ニューオーリンズ音楽に捧げられた作品である[5]。
背景
[編集]ドクター・ジョンのアルバムとしては初めて、自身の故郷であるニューオーリンズで録音された[5]。レコーディングはウルトラソニック・スタジオで行われ[6]、ネヴィル・ブラザーズが4曲でボーカルを担当して[6]、他にもニューオーリンズ出身のミュージシャンが多数参加した。
ドクター・ジョンは本作のライナーノーツにおいて「ある意味、1850年代から1950年代と、それから先のニューオーリンズ音楽のちょっとした歴史のようなものさ」と説明している[7]。
反響
[編集]スイスでは1992年8月2日付のアルバム・チャートで36位を記録[3]。スウェーデンでは1992年9月2日付のアルバム・チャートで初登場26位となって、2週間トップ40にとどまった[2]。
アメリカでは総合アルバム・チャートのBillboard 200には入っていないが、『ビルボード』のジャズ・アルバム・チャートでは1位を獲得した[8]。
評価
[編集]グラミー賞では最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞を受賞し、自身2度目のグラミー受賞を果たした[8]。
William Ruhlmannはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け「地理的には限定された範囲かもしれないが、スタイルは幅広く、ジャズやブルースからフォークやロックにまで及んでいる」と評した[9]。また、Don McLeeseは『ローリング・ストーン』誌のレビューで5点満点中4点を付け「ドクター・ジョンの音楽はそのルーツから遠く離れることはなかった。そして、このアルバムほどそれらのルーツが喜ばしく、猥雑に、あるいは楽しげに称えられたことはなかった」と評している[10]。
収録曲
[編集]- "Litanie des Saints" (Mac Rebennack, inspired by Louis Moreau Gottschalk) - 4:45
- "Careless Love" (S. Williams, W. C. Handy, M. Koenig) - 4:10
- "My Indian Red" (arr. Danny Barker) - 4:47
- "Milneburg Joys" (Jellyroll Morton, Paul Mayers, Leon Roppola, Charles Melrose) - 2:39
- "I Thought I Heard Buddy Bolden Say" (Ferdinand Morton) - 2:29
- "Basin Street Blues" (Spencer Williams) - 4:27
- "Didn't He Ramble" (Hatty Bolton) - 3:28
- "Do You Call That a Buddy?" (Wesley Wilson, D. Raye) - 3:54
- "How Come My Dog Don't Bark (When You Come Around)" (Prince Partridge) - 4:09
- "Good Night, Irene" (John Lomax, Huddie Ledbetter) - 4:10
- "Fess Up" (Mac Rebennack) - 3:12
- "Since I Fell for You" (Buddy Johnson) - 3:31
- "I'll Be Glad When You're Dead, You Rascal You" (Sam Theard) - 3:26
- "Cabbage Head" (Henry Roland Byrd, Mac Rebennack) - 3:59
- "Goin' Home Tomorrow" (Alvin Young, A. Domino) - 3:01
- "Blue Monday" (D. Bartholomew) - 3:01
- "Scald Dog Medley / I Can't Go On" (H. Smith / A. Domino, D. Bartholomew) - 2:58
- "Goin' Back to New Orleans" (J. Liggins) - 4:10
楽曲解説
[編集]「Litanie des Saints」はドクター・ジョンのオリジナル曲だが、ルイス・モロー・ゴットシャルクが1850年頃に作った曲が大まかな下敷きとなっており[7]、クレジットにもその旨が記載されている。
「Do You Call That a Buddy?」はルイ・ジョーダンによる1940年の録音が広く知られているが、本作ではルイ・アームストロングのヴァージョンに基づいており、歌詞もジョーダンのヴァージョンと異なる[7]。
「Good Night, Irene」はルイジアナ州ムーリングズポート出身のブルース・ミュージシャン、レッドベリーの曲で、元々は「Irene」というタイトルだった[11]。レッドベリーが1933年にルイジアナ州刑務所に収監されていた際、アメリカ議会図書館の職員だったジョン・ロマックスによって録音された曲の一つで[11]、その後レッドベリーは放免された。ドクター・ジョンはこの曲について「ルイジアナ州の政治について、ちょっと話しているようなものさ」と説明している[7]。
ドクター・ジョン自身が作曲したインストゥルメンタル「Fess Up」は、プロフェッサー・ロングヘアに捧げられた[7]。
「I'll Be Glad When You're Dead, You Rascal You」はサム・シアードが1931年に書いた曲で[12]、ルイ・アームストロングが取り上げたことで有名になった[13]。ドクター・ジョンは、この曲が葬儀のセカンド・ラインで演奏されるのをよく耳にしたという[7]。
「Goin' Home Tomorrow」「Blue Monday」「I Can't Go On」の3曲はファッツ・ドミノの歌唱で知られる曲。ドクター・ジョンはドミノから多大な影響を受けており、『ローリング・ストーン』誌に寄稿した記事において「ファッツ・ドミノと彼のパートナーのデイヴ・バーソロミューは恐らく、ジョン・レノンとポール・マッカートニーに次いで偉大なソングライターのチームだろう」と評している[14]。ただし、「Blue Monday」はスマイリー・ルイスによる1954年の録音がオリジナルで[15]、ドクター・ジョンはこの曲について「スマイリー、それにニューオーリンズの"ジャンキー・ブルース"を弾く偉大なピアニスト達への、ちょっとしたトリビュートさ」と説明している[7]。
「Goin' Back to New Orleans」は、ジョー・リギンズ&ザ・ハニードリッパーズがスペシャルティ・レコードに録音を残した曲のカヴァーで[16]、ドクター・ジョンはアート・ネヴィルと初めて会った頃に、この曲について語り合ったという[7]。
参加ミュージシャン
[編集]- ドクター・ジョン - ボーカル、ピアノ、オルガン、エレクトリックピアノ、ギター
- トミー・モーガン - ギター
- ダニー・バーカー - バンジョー(on #3, #4, #7, #14, #18)、ギター(on #5)、ボーカル(on #5)
- クリス・セヴェリン - ベース(on #1, #2, #3, #4, #6, #7, #9, #12, #13, #14)
- David Barard - ベース(on #8, #10, #15, #16, #17, #18)
- Freddy Staehle - ドラムス、Wingertree
- アルフレッド・ロバーツ - パーカッション
- チーフ・リックス - パーカッション
- シリル・ネヴィル - ボーカル(on #1, #3, #8, #18)、パーカッション
- チャールズ・ネヴィル - ボーカル(on #1, #3, #8, #18)、ホイッスル(on #1)、テナー・サックス・ソロ(on #18)、パーカッション
- アート・ネヴィル - ボーカル(on #1, #3, #8, #18)
- アーロン・ネヴィル - ボーカル(on #1, #3, #8, #18)
- ステファニー・ウィットフィールド - バックグラウンド・ボーカル(on #1, #10)
- コニー・フィッチ - バックグラウンド・ボーカル(on #1, #10)
- チャック・カーボ - バックグラウンド・ボーカル(on #8)
- シャーリー・グッドマン - バックグラウンド・ボーカル(on #10)
- タラ・ジャネル - バックグラウンド・ボーカル(on #10)
- ピート・ファウンテン - クラリネット・ソロ(on #6, #18)
- ジャミール・シャリフ - トランペット・ソロ(on #2, #5, #7)、トランペット(on #2, #4, #5, #7, #8, #15, #18)
- アル・ハート - トランペット・ソロ(on #18)
- エリック・トラウブ - テナー・サックス・ソロ(on #15)、テナー・サックス(on #2, #4, #7, #8, #15, #16, #17, #18)
- ハーバート・ハーデスティ - テナー・サックス・ソロ(on #16, #17)
- チャーリー・ミラー - トランペット(on #3, #6, #9, #10, #12, #13)、Fuzzle Wissle(on #1)
- ウマー・シャリフ - トランペット(on #3, #6, #9, #10, #12, #13)
- クライド・カー・ジュニア - トランペット(on #4, #8)
- アマディー・キャステネル - テナー・サックス(on #3, #6, #9, #10, #12, #13)
- フレデリック・ケンプ - テナー・サックス(on #3, #6, #9, #10, #12, #13)
- アルヴィン・タイラー - バリトン・サックス(on #2, #4, #7, #8, #15, #16, #17, #18)
- ロジャー・ルイス - バリトン・サックス(on #6, #9, #10, #12)
- ブルース・ハモンド - トロンボーン(on #3, #4, #6, #7, #8, #9, #10, #12, #13)
- カーク・ジョセフ - チューバ(on #3, #4, #7, #14)
脚注
[編集]- ^ Amazon.com: Goin' Back To New Orleans: Dr. John: MP3 Downloads
- ^ a b swedishcharts.com - Dr. John - Goin' Back To New Orleans
- ^ a b Dr. John - Goin' Back To New Orleans - hitparade.ch
- ^ 日本初回盤(WPCP-4898)の表記は『ゴーイン・バック・トゥ・ニューオリンズ』だったが、2012年発売のCD(CRCD-3440)で変更された
- ^ a b Dr. John Goin' Back to New Orleans (Warner… - Chicago Tribune - 2014年3月5日閲覧
- ^ a b Dr. John - Goin' Back To New Orleans (CD, Album) at Discogs
- ^ a b c d e f g h CD英文ライナーノーツ
- ^ a b Dr. John | Awards | AllMusic
- ^ Goin' Back to New Orleans - Dr. John | AllMusic - Review by William Ruhlmann
- ^ Goin' Back To New Orleans | Album Reviews | Rolling Stone - 2014年3月5日閲覧
- ^ a b '(Goodnight) Irene' : NPR - article by Hannah Lord - 2014年3月5日閲覧
- ^ Jazz Standards Songs and Instrumentals ((I'll Be Glad When You're Dead) You Rascal You) - jazzstandard.com - 2014年3月5日閲覧
- ^ Sam Theard | Biography | AllMusic - Artist Biography by arwulf arwulf
- ^ 100 Greatest Artists: Fats Domino | Rolling Stone - 2014年3月5日閲覧
- ^ Blue Monday by Fats Domino | Song Stories | Rolling Stone - 2014年3月5日閲覧
- ^ Joe Liggins & the Honeydrippers - Joe Liggins | AllMusic - Review by Bill Dahl