コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

サミュエル・ティン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
丁肇中 (Dīng Zhàozhōng)
Samuel Chao Chung Ting
丁 肇中
丁 肇中(2010)
生誕 (1936-01-27) 1936年1月27日(88歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ミシガン州アナーバー
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究機関 CERN
コロンビア大学
マサチューセッツ工科大学
出身校 ミシガン大学
博士課程
指導教員
マーチン・パール
主な業績 ジェイプサイ中間子
主な受賞歴 ノーベル物理学賞(1976)
プロジェクト:人物伝
テンプレートを表示
丁肇中
各種表記
繁体字 丁肇中
簡体字 丁肇中
拼音 Dīng Zhàozhōng
和名表記: てい ちょうちゅう
テンプレートを表示
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:1976年
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:ジェイプサイ中間子の発見

サミュエル・ティンSamuel C. C. Ting、中国名:丁肇中1936年1月27日 - )は中国系アメリカ人の研究者。バートン・リヒターと共にジェイプサイ中間子の発見により1976年ノーベル物理学賞を受賞した。

経歴

[編集]

ティンの祖籍は山東省日照県華僑で、父クァンハイ・ティン(丁觀海)と母ツァンイン・ジーン・ワン(王財英)はミシガン州で学生時に出会い、アナーバーで生まれた息子が2ヶ月のときに中国へ帰国した[1]日中戦争の混乱で教育体制が途絶したため、ティンはそれぞれ光华大学(華東師範大学)と交通大学とミシガン大学で教育を受け科学物理学の大学教授であった父と母から家庭教育を授けられる[1]。中国の内戦に続く国の分割の折、一家は台湾に逃れ、両親はやがてそれぞれ国立台湾大学(NTU)で工学を教え始める。

サミュエル・ティンは1948年に台北市立建国高級中学(建中)から台湾省立工学院(現・国立成功大学)に進学、20歳の時にアメリカへ戻り[2][3]ミシガン大学1959年に数学と物理学で学位を得る。1962年に物理学で博士号を受け、1963年原子核の研究を欧州原子核研究機構(CERN)で行なうと、1965年よりコロンビア大学で教鞭をとり、同校在籍中にドイツ電子シンクロトロン研究所でも研究した[2][4]

1969年からはマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授[2]。宇宙空間から高エネルギーの宇宙線を観測してダークマターの存在などを研究するアルファ磁気分光器を提唱し、1998年にスペースシャトルに搭載されたAMS-01、2011年に国際宇宙ステーションに搭載されたAMS-02による国際観測プロジェクトの指揮を執っている。

ノーベル賞

[編集]

1976年、ティン(MIT)はSLAC国立加速器研究所スタンフォード大学)のバートン・リヒターと共同でジェイプサイ中間子(J/ψ中間子)の発見でノーベル物理学賞を受賞。ノーベル委員会の発表によると授賞理由は「新種の重い小粒子の発見における先駆的な研究」だという[5]。この発見は1974年にティンがMITの研究チームと高エネルギー粒子物理学の新しい領域の検索を目指していたときに実現した[6]

1976年12月10日の受賞パーティーのスピーチで、ティンは実験的研究の重要性を強調した[7]

「現実には、自然科学の理論には実験的な基礎が不可欠で、物理学は特に実験的な仕事に裏打ちされる学問である。私にノーベル賞を授けてくださったことから途上国出身の学生が実験的研究に関心を示し、その重要性が認識されることを願ってやまない。」

アルファ磁気分光器

[編集]
サミュエル・ティン (後列・右) と1976年ノーベル賞受賞者。時計回りにイジドール・イザーク・ラービ楊振寧ヴァル・フィッチジェイムズ・クローニン

超伝導超大型加速器計画の中断により地上の高エネルギー実験物理学の先行きが危ぶまれた1995年、ティンはアルファ磁気分光器計画により宇宙空間における宇宙線検知を提案する。計画が承諾されるとティンは自ら主な出資者として関わり、国際観測プロジェクトの指揮を執っている。プロトタイプ機AMS-01は1998年にスペースシャトルのミッションSTS-91に搭載して実験を行い、続いて後継器AMS-02をシャトルで国際宇宙ステーションに運ぶ計画が実行される[8]

1.5億アメリカドルの予算と16カ国56研究機関から研究者500人を集めたプロジェクトであったが、NASAは2003年のコロンビア号空中分解事故を受け、シャトル計画を2010年までに終息すること、以降の飛行計画マニフェストAMS-02の搭載は載せないと発表する。ティンは議会ロビー活動を展開しさらに広くアメリカ社会に訴えて、宇宙実験を再度、シャトル上で行うことが決定する。同時期、検出器の非常に繊細で調整の難しい大型モジュールの製作は、数多くの技術的問題に突き当たっていた。分光器は2011年5月16日にシャトル・ミッションSTS-134で打ち上げに成功、同月19日に国際宇宙ステーションに設置される[9][10]

家庭

[編集]

1960年にケイ・キューネ(Kay Kuhne)と結婚しジーンとエイミーの2女をもうけるが、1985年にはスーザン・キャロル・マークス(Susan Carol Marks)博士と結婚して息子クリストファーが生まれた[3]

栄誉、栄典

[編集]

出版物

[編集]
国際会議予稿集の書籍化
  • (英語) Electromagnetic interactions; a rapporteur's summary given at the XIVth International Conference on High Energy Physics at Vienna, September 1968. ハンブルク: Deutsches Elektronen-Synchrotron. (1968). OCLC 9928695 
  • (英語) Hadron and photon production of J particles and the origin of J particles : a rapporteur's summary at the EPS International conference on high-energy physics. パレルモ: 欧州原子核研究機構 [Geneva]. (1975年6月). OCLC 637079059 
  • Bellini, Gianpaolo; Ting, S C C (1984) (英語). The search for charm, beauty, and truth at high energies. Ettore Majorana international science series; Physical sciences. 16. New York: Plenum Press. ISBN 0306413574. NCID BA06276799. OCLC 9488989  - 会期:1981年11月15–22日、会場:イタリア・トラーパニ県エーリチェ [Proceedings of a Europhysics Study Conference on High-Energy Physics]
  • Ting, Samuel C C (1997) (英語). Experimental results and future opportunities in particle physics. Physics reports. 279. アムステルダム: Elsevier Science  - 会期:1996年8月15日、会場:中国・北京 [presented at XVII International Symposium on Lepton-Photon Interactions]
論文
ビデオ
  • S C C Ting; Bill D Moyers [取材者]; Mi Ling Tsui [製作者], Thirteen/WNET (Television station : New York, N.Y.); Films for the Humanities (Firm) (2003). Becoming American : personal journeys. A conversation with Samuel Ting (DVDビデオ; クローズドキャプション). A Bill Moyers Special (英語). ニュージャージー州プリンストン: Films for the Humanities & Sciences. OCLC 52344680 - 著名な中国系アメリカ人のインタビュー集の1巻。PBSで放送した映像。

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b Ng, Franklin (1995) (英語). The Asian American encyclopedia. en:Marshall Cavendish. pp. 1, 490. ISBN 978-1-85435-684- 0. https://books.google.com/books?id=B4gYAAAAIAAJ 
  2. ^ a b c d About The Programs - Personal Journeys: Samuel C.C. Ting [プログラムについて - 人生の旅路:サミュエル・C・C・ティン]” (英語). A Bill Moyers Special - Becoming American - The Chinese Experience [ビル・モイヤーズ - 特別番組「アメリカ人になる - 中国の経験」] (2003年). 2014年6月2日閲覧。
  3. ^ a b Samuel Chao Chung Ting - Biographical [履歴 - サミュエル・C・C・ティン]” (英語). ノーベル財団 (1976年). June 3, 2014閲覧。
  4. ^ (英語) Electromagnetic interactions; a rapporteur's summary given at the XIVth International Conference on High Energy Physics at Vienna, September 1968. ハンブルク: Deutsches Elektronen-Synchrotron. (1968). OCLC 9928695 
  5. ^ The Nobel Prize in Physics 1976 [1976年ノーベル物理学賞]” (英語). ノーベル財団. 2009年10月9日閲覧。
  6. ^ “Experimental Observation of a Heavy Particle J” (英語). en:Physical Review Letters 33 (23): 1404-1406. (1974). Bibcode1974PhRvL.3.3.1404A. doi:10.1103 / PhysRevLett.33.1404. 
  7. ^ Samuel Chao Chung Ting - Banquet Speech [サミュエル・チャオチュン・ティン - 受賞パーティーのスピーチ]” (英語・中国語). ノーベル財団 Nobel Media AB 2013. (1976年12月10日). 2014年6月1日閲覧。
  8. ^ Alpha Magnetic Spectrometer - 02 (AMS-02) [アルファ磁気分光器2号機 (AMS-02)]” (英語). NASA (2009年8月21日). 2009年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月3日閲覧。
  9. ^ Hsu, Jeremy. “Space Station Experiment to Hunt Antimatter Galaxies [宇宙ステーションの実験で反物質銀河を狩る]” (英語). Space.com. 2009年9月2日閲覧。
  10. ^ A Costly Quest for the Dark Heart of the Cosmos [暗黒の宇宙の中心の探求は金食い虫]”. ニューヨーク・タイムズ (2010年11月16日). 2018年9月24日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]
ノーベル賞
人物情報
著述