シリア軍
シリア・アラブ軍 | |
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紋章 | |
シリア軍旗 | |
創設 | 1946年 |
再組織 | 1971年 |
派生組織 |
シリア陸軍 シリア海軍 シリア空軍 シリア防空軍 シリア軍事情報部 シリア空軍情報部 |
本部 | ダマスカス |
指揮官 | |
大統領 | バッシャール・アル=アサド |
国防大臣 | アリ·アブドラ·アイユーブ |
総人員 | |
兵役適齢 | 18歳 |
徴兵制度 | あり |
適用年齢 | 18-49歳 |
財政 | |
予算 | 18億ドル(公称,2011年) |
軍費/GDP | 3.5% |
シリア軍(シリアぐん、アラビア語:アラビア語: القوات المسلحة العربية السورية、英語:Syrian Armed Forces)は、シリアの軍隊である。正式にはシリア・アラブ軍と称する。
シリア軍の法律上の最高司令官は大統領だが、事実上の指揮権はシリア政府の長である首相が有している。
シリア軍の管理・運営は国防省 (Ministry of Defence) が担当する。
現在、シリア軍は徴兵制度を採っており、男子は18歳に達すると兵役の義務がある[1]。兵役期間は2005年に2年半から2年に短縮され、2008年には21ヶ月に、2011年には1年半へとシリア内戦前までは短縮されつつあった[2]。
戦歴
[編集]- スレイマン・アル=ムルシードに指導されたアラウィー派の反乱(1946年)
- 第一次中東戦争(1948-1949年)
- アトラシュ家に指導されたドゥルーズ派の反乱(1953-1954年)
- 1964年ハマー暴動(1964年)
- 第三次中東戦争(1968年)
- 第四次中東戦争(1973年)
- レバノン内戦介入(1976-1990年)
- 1981年ハマー虐殺(1981年)
- ハマー虐殺(1982年)
- 湾岸戦争(1991年)
- シリア内戦(2011年-継続中)
人員
[編集]内戦勃発以前
[編集]組織 | 現役 | 予備役 |
陸軍 | 215,000 | 500,000 |
海軍 | 5,000 | 4,000 |
空軍 | 40,000 | 20,000 |
防空軍 | 40,000 | 20,000 |
内戦勃発以後(推計値)
[編集]組織 | 現役 | 予備役 |
陸軍 | 125,000[3] | 不明 |
海軍 | 5,000[4] | 不明 |
空軍および防空軍 | 63,000[4] | 不明 |
機構
[編集]軍種
[編集]シリア軍は、陸軍、海軍、空軍、防空軍の4つの軍種から成る。
軍情報機関
[編集]シリア軍は、2つの情報機関を有す。
シリア陸軍
[編集]シリア陸軍は内戦勃発以前、平時で22万人の兵力を保有していた。シリア内戦では、自由シリア軍やムジャヒディーンの軍、ヌールッディン・アル・ザンキー運動などの比較的穏健とされるスンニ派武装組織の他、アル=ヌスラ戦線やISIL、イスラーム軍、シャーム自由人イスラーム運動などのイスラム過激派武装組織を数多く含む、反体制武装勢力と激しい攻防を展開している。また、これらの組織はISILを除き協力関係にある。
内戦初期には体制への不満や反体制武装勢力の攻勢により軍から離脱する将兵も多く、特に陸軍において顕著であった。離脱者は、概ね脱走者と離反者に分かれ、後者が先述の自由シリア軍を形成した。また、脱走者および徴兵忌避者は難民として国外へ流出した者も多い。
2013年3月14日に発表されたイギリスの国際戦略研究所の分析では、正規の陸軍兵力は平時定員の半分に満たない10万人まで減少したと推定されたが[5]、その後の戦時動員による徴兵強化や戦局の好転により兵力は若干回復し、現在は13万人弱であると推定されている。しかし、有事下の現有兵力は内戦以前の平時定員すら充足しておらず、正規軍の兵力不足は慢性的となっている。
内戦による荒廃によって兵の応召は機能不全に陥っており、正規軍の兵力不足を補うために予備役部隊が創設され、他にもバアス党の民兵組織やシーア派民兵組織のヒズボラ、アル=アッバス旅団、AAH、カターイブ・ヒズボラ等に加え、シリア社会民族党民兵組織、ドゥルーズ派民兵組織、アラウィー派民兵組織ならびにパレスチナ人の民兵組織など、シリア人のみならずレバノン人やイラク人、パレスチナ人などによって構成される数多くの親政府武装組織が活動している(予備役部隊および国内を拠点とする親政府武装組織については、次節にて詳述)。ゆえに正規軍自体の兵力は平時定員に満たないが、予備役部隊および各種親政府などの非正規軍と正規軍を合算した広義の政府軍の兵力は、内戦勃発以前における陸軍正規軍の平時定員を上回っている(ただし、内戦以前の陸軍予備役は50万人であり、有事定員には満たない規模である)。
また、ロシア・イランは政府軍に軍事顧問を派遣しており、イランはそれに加えて自国民兵およびハザラ人民兵を派遣し、ロシアは海上戦力および航空戦力と、シリアにおけるロシア空・海軍根拠地防衛のための地上戦力を派遣している。
陸軍の戦力のうち最精鋭は、共和国防衛隊と第4機甲師団、および空挺部隊・装甲部隊などを含む2個特殊戦力師団と6個独立特殊戦力連隊である。このうち共和国防衛隊は、3個機械化旅団・1個砲兵連隊および、警護部隊にあたる2個歩兵連隊を有し、バアス党の党員資格を持つ者で構成される(シリア・バアス党の中核支持層は、アラウィー派・キリスト教徒・ドゥルーズ派・イスマーイール派の他、スンニ派世俗層の一部も含まれる)。また第4機甲師団は3個機甲旅団・1個機械化旅団・1個砲兵連隊および、特殊戦力にあたる1個空挺連隊を有し、大部分は現大統領バッシャール・アル=アサドの出身宗派であるアラウィー派によって構成されているとされる。そして特殊戦力師団は3個特殊戦力連隊を有し、6個独立特殊戦力連隊は特殊戦力司令部に属す。なお、共和国防衛隊に関しては内戦勃発後、隷下に一個旅団が増設され[6]現在は少なくとも4個旅団を有する他、女性兵士部隊が新規編成された(本部隊の規模は、旅団もしくは連隊であるが詳細は不明)。内戦以前における共和国防衛隊と第4機甲師団の規模の差は、共和国防衛隊が第4機甲師団を数個大隊分上回る程度に過ぎなかったが、前記のような戦時の部隊増設により、数個連隊分の差となっている。
政府の権力基盤であるこれら精鋭部隊のうち共和国防衛隊と特殊戦力司令部および第4機甲師団の指揮権は軍参謀本部の所轄である(共和国防衛隊は大統領直轄との説もある)が、第4機甲師団は現大統領の弟マーヘル・アル=アサドの強い影響下にあるため、実質的に当該人物が指揮権を握っており、軍参謀本部の指揮権は表面的とされる(マーヘル・アル=アサドの階級は准将であり、名目上は同師団隷下の一個機甲旅団の旅団長に過ぎない)。また、特殊戦力師団は第一軍団隷下である。シリア陸軍は前記した軍参謀本部直属の精鋭部隊、特殊戦力師団の属する第一軍団のほか、第二軍団および第三軍団からなる。また、正規軍の兵力が不足する中、2015年中ごろより、ロシア軍の指導によって予備役部隊を再編した第四軍団の建設が進行中であるが内実は不明である。
一個あたりの定員は、軍団が5万人、師団が5千人弱から1万5千人強まで、また旅団一個あたりの定員は、それぞれ機械化旅団が3500人、機甲旅団および歩兵旅団が2500人、砲兵旅団は不詳である。また特殊戦力連隊ならびに歩兵連隊と砲兵連隊は1500人からなる。そして、大隊の定員は300人から500人程度である。旅団および連隊は大隊を基幹に編成され、師団の編成は、旅団および連隊が基幹となる。
なお、シリア軍は基本的にバアス党によって政治化された軍隊であり、党への加入は強制されないが、上位階級への昇進にはバアス党籍が必須であるとされる。
予備役部隊および親政府武装組織
[編集]徽章または旗章 | 組織名 | 概要 |
国民防衛隊 (National Defence Force) |
イラン革命防衛隊の指導の下、2012年に組織された予備役部隊 アラウィー派・ドゥルーズ派・イスマーイール派・キリスト教徒のほか、スンニ派、アルメニア系など少数民族も所属 現在の兵力は約10万人強[7] | |
バアス大隊 | バアス党の民兵組織 スンニ派のバアス党員を中心として構成されるが、少数宗派のバアス党員も参加する 本拠地はアレッポ | |
颶風の鷲 | シリア社会民族党の民兵組織 東方正教会徒などの少数宗派住民を中心とするシリア社会民族党員により構成 民兵組織の紋章については表右下の画像外部リンクより参照 | |
ムワヒッディーン軍 | ドゥルーズ派住民により構成される民兵組織 スワイダー県・ダマスカス郊外県・クネイトラ県にて活動[8][9] | |
シリアのレジスタンス | アラウィー派住民を中心に構成される民兵組織 本拠地はラタキア トルコのハタイ県出身者も多く含まれる | |
祖国の盾 | ドゥルーズ派住民により構成 スワイダー県にて活動[10] 紋章のみの参照は表右下の画像外部リンクより | |
海岸の盾旅団 | アラウィー派住民により構成される民兵組織 ラタキア県を中心に活動 共和国防衛隊の傘下にあり、ラタキア県北東部における軍事行動を支援しているとされる[11] 紋章のみの参照は表右下の画像外部リンクより | |
クドス旅団 | シリア国内のパレスチナ人により構成される民兵組織 本拠地はアレッポ | |
パレスチナ解放人民戦線総司令部 | PFLP-GC。シリア・レバノン在住のパレスチナ人により構成される民兵組織 本拠地はダマスカス | |
東部地域人民抵抗 | 本拠地デリゾールとその周辺地域の住民からなる反ISIL民兵組織 スンニ派住民を中心に構成され、ISILによる迫害を逃れたシェイタト部族出身者などを多く含む | |
ISISハンターズ | 民間軍事会社ワグネル・グループにより創設された反ISIL民兵組織。本拠地はパルミラ ワグネル・グループのロシア人とパルミラの義勇兵により構成される。 | |
アラブ民族主義防衛隊 | エジプト・イラク・レバノン・チュニジア・シリアなどのアラブ諸国出身者からなる民兵組織 | |
リダー部隊 | シリア国内に拠点を置くヒズボラの民兵組織の中核をなす組織 部隊名は8代目であるアリー・リダーに因む 本組織は内国人集団であり、構成員はホムス県・アレッポ県・ダラア県・ダマスカス郊外県などの出身 レバノンのヒズボラから指導・監督を受けるが、12イマーム派だけでなくスンニ派の住民も参加する[12] 他にNIR(The National Ideological Resistance in Syria)などもシリアに拠点を置くヒズボラ民兵組織である[13] | |
アル=アッバス旅団 | イラク人により構成される民兵組織 本拠地はダマスカス |
画像外部リンク | |
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[2] 颶風の鷲の紋章[14] | |
[3] 祖国の盾の紋章[15] | |
[4] 海岸の盾旅団の紋章[16] |
これら上記の武装組織は、内戦が長期化する中、損耗の激しい正規軍とともに作戦に参加している。 そして先述のごとく、これらの国内を拠点とする組織の他にもレバノンのヒズボラをはじめ、国外を拠点とするいくつかのシーア派民兵組織が正規軍を支援するためシリア国内にて活動している。
ただし、シーア派民兵組織のうちアル=アッバス旅団は、イラク人を中心とする武装組織であるが2012年にシリア国内において結成されたものである。アル=アッバス旅団の構成員は、2006年以後激化したイラク国内の宗派間暴力から逃れシリアに住み着いた人々(内戦以前のシリア国内には120万人に上るイラク人難民が存在し、うち十二イマーム派の人々が集住したのがサイイダ・ザイナブ市であった。)と、シリア内戦勃発後にシリアへ来援したマフディー軍関係の要員からなる。また、当該武装組織の類似組織としてイラク国内で活動するアル=アッバス部隊がある。また、ヒズボラについてもレバノン人のみならず、シリア人の十二イマーム派住民が参加しているとされる。
この他、 シリア社会民族党民兵およびドゥルーズ派民兵には、シリア国内の住民のみならずレバノンからの来援者も含まれる。[17]
シリア海軍
[編集]シリア海軍は5,000人の兵力を保有している。第四次中東戦争やラタキア沖海戦でイスラエル軍と戦闘を行った。
シリア空軍
[編集]シリア空軍は60,000人の人員を保有する。このうち現役は40,000人で、20,000人は予備役である。装備する航空機はロシアから購入しており、主力はSu-22・MiG-23・MiG-21等の旧式機で、現代的な航空機は少ないがSu-24・MiG-25・ MiG-29等を保有する。 また前大統領ハーフィズ・アル=アサドの古巣という事もあり、四軍の中でも政権に対する忠誠心が高いとされる。
シリア防空軍
[編集]シリア防空軍は40,000人の人員を保有する。Lavochkin CP-75 Dvina/S-75M VolgaやIsayev S-125 Neva/S-125M Pechoraなどロシア製のものを多数保有している。
情報機関・治安警察組織
[編集]シリア軍の一部として組織されている軍事情報局と空軍情報部は内務省所管の総合情報部や政治治安部、バアス党シリア地域指導部所管の民族治安局は、国軍参謀本部所管、ないしは大統領直轄である共和国防衛隊と共に「真の権力装置」と言われるムハーバラートを構成している[18]。
これらムハーバラートの内、軍事情報局は軍参謀本部所轄であり、首都ダマスカスの治安維持やパレスチナ人の監視などを主な任務としている。加えて、2005年4月まではレバノン実効支配を統括していた。また空軍情報部はシリア空軍によって別途所轄され、国内外における治安・諜報活動を担っているが、1990年代以後、地位が低下したとされる。
これに対して内務省は、既述のとおり総合情報部や政治治安部を所轄しており、国内の政治組織および活動家の監視を任されている。 また、民族治安局は2009年の国民安全保障会議の発足と同時に解体された。国民安全保障会議の成員には、従来の情報機関・治安組織の高官の他に文民も含まれ、軍事情報局、空軍情報部および総合情報部、政治治安部の統括が設置の目的とされるが、具体的な活動内容は知られていない。
脚注
[編集]- ^ [1]
- ^ “Syria reduces compulsory military service by three months”. Xinhua News Agency. China Daily. (20 March 2011). オリジナルの3 May 2011時点におけるアーカイブ。 6 October 2012閲覧。
- ^ Barnard, Anne (28 April 2015). “/ An Eroding Syrian Army Points to Strain”. New York Times. 2015年8月18日閲覧。
- ^ a b “外務省:シリア”. 日本外務省. 2015年8月18日閲覧。
- ^ “中国の国防費、10年後に米国並み ミリタリーバランス”. 朝日新聞. (2013年3月14日) 2013年3月15日閲覧。
- ^ http://aranews.net/2015/06/pro-assad-forces-establish-new-brigade-to-combat-rebels-in-latakia/
- ^ “The Shia crescendo”. The Economist. (28 March 2015) 20 November 2015閲覧。
- ^ http://www.aymennjawad.org/14038/the-druze-militias-of-southern-syria
- ^ http://www.aymennjawad.org/14059/more-on-the-druze-militias-in-southern-syria
- ^ http://www.aymennjawad.org/17695/the-new-druze-militia-factions-of-suwayda-province
- ^ http://www.aymennjawad.org/17614/the-coastal-shield-brigade-a-new-pro-assad-militia
- ^ http://www.aymennjawad.org/17665/quwat-al-ridha-syrian-hezbollah
- ^ http://www.aymennjawad.org/15484/the-national-ideological-resistance-in-syria
- ^ “Emblem of Nusur al-Zawba'a”. 2016年2月23日閲覧。
- ^ “Dir' al-Watan”. 2016年2月23日閲覧。
- ^ “Emblem of the Coastal Shield Brigade”. 2016年2月23日閲覧。
- ^ http://syriaarabspring.info/?p=520
- ^ 松本弘:編『中東・イスラーム諸国 民主化ハンドブック』明石書店、2011年。