ナブメトン
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a692022 |
法的規制 | |
薬物動態データ | |
血漿タンパク結合 | > 99%(活性代謝物) |
代謝 | 肝臓、活性代謝物6-メトキシ-2-ナフチル酢酸(6-MNA)への代謝, |
半減期 | 23時間(活性代謝物) |
排泄 | 腎臓 |
データベースID | |
CAS番号 | 42924-53-8 |
ATCコード | M01AX01 (WHO) |
PubChem | CID: 4409 |
IUPHAR/BPS | 7245 |
DrugBank | DB00461 |
ChemSpider | 4256 |
UNII | LW0TIW155Z |
KEGG | D00425 |
ChEBI | CHEBI:7443 |
ChEMBL | CHEMBL1070 |
化学的データ | |
化学式 | C15H16O2 |
分子量 | 228.29 g/mol |
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ナブメトン(Nabumetone)とは、2-(3-オキソブチル)-6-メトキシナフタレンのことである。つまり、ナフタレンの2位と6位に置換基が付いた化合物である。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)には酸性を示す官能基を持った化合物が多数存在する中で、ナブメトンは非ステロイド性抗炎症薬の1種でありながら酸性の化合物でないという特徴を持つ。CAS登録番号は42924-53-8。なお、ナブメトンには様々な別名が存在するものの、本稿では以降、ナブメトンという呼称に統一する。
構造
[編集]ナブメトンの化学式はC15H16O2であり[1][2][3][4]、モル質量は228.291 g/molである[3]。
薬理
[編集]ナブメトンはプロドラッグであり[1][3]、体内で活性化体に変換されて初めて非ステロイド性抗炎症薬としての薬効を発揮する。ナブメトンの投与経路としては、しばしば経口投与が用いられる。経口投与されたナブメトンの消化管からの吸収性は良好とされている[1]。体内に吸収された後、主に肝臓において代謝されて活性化体となる[1][3]。この活性化体が6-メトキシ-2-ナフチル酢酸であり、これがシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する[1][5]。これにより、プロスタグランジン類の生成が妨げられるので、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬として作用する。参考までに、活性化体の6-メトキシ-2-ナフチル酢酸になる割合は、例えばナブメトン1000 mgを経口投与した場合であれば、約35%ほどであるとのデータがある[1]。こうして生成した6-メトキシ-2-ナフチル酢酸は、細胞質のタンパク質との結合率が99%以上と高いことが知られている[1]。なお、6-メトキシ-2-ナフチル酢酸はCOX1もCOX2も共に阻害するものの、どちらかと言えば、COX1よりも、COX2を強く阻害することが知られている[1][注 1]。肝臓で生成した6-メトキシ-2-ナフチル酢酸の体内から半減期は、一般的なヒトにおいて約23時間である[1]。このような比較的長い半減期を持つために、ナブメトンは通常1日1回投与で用いられる[注 2]。ただし、ナブメトンとその代謝物は、最終的には主に尿中に排泄されることもあって[注 3]、腎疾患が存在すると、この半減期は延長することが知られている[1]。
代謝
[編集]先述の通り、ナブメトンはプロドラッグであり肝臓で活性化体に変換される。ナブメトンはCYP1A2で代謝されることが知られている[1]。
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副作用
[編集]ナブメトンの副作用は、同じ薬理作用、つまり、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を持った他の非ステロイド性抗炎症薬と類似している[5]。ただし、ナブメトンはプロドラッグであって肝臓で活性化体に変換される上に、ナブメトンの活性化体である6-メトキシ-2-ナフチル酢酸がCOX1よりもCOX2を強く阻害するためか[注 4]、他の非ステロイド性抗炎症薬と比べると、ナブメトンの副作用として起こる胃腸障害の頻度は少し少ないと言われている[1]。
危険性
[編集]この他に特筆すべきこととして、ナブメトンには心臓発作のリスクを増やすという問題が見つかった[6][注 5]。このリスクは、ナブメトンの用量が多いほど高くなると考えられる[6]。なお、服用開始後比較的短期間に心臓発作が起こる場合もあるので、ナブメトンを投与している場合は油断することなく、もしもそのような兆候が見られたら、すぐに対処できるように備えておくべきである[6]。
過量投与の報告
[編集]17歳の女性がナブメトンを原薬量に換算して合計15 gも摂取した過量投与事例の報告が存在する[注 6]。1例だけの報告なので信頼性が充分だとは言えないものの、少なくとも、この17歳の女性の場合は、特に問題は起こらなかったとのこと[1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ シクロオキシゲナーゼ(COX)のうち、COX1よりも、COX2を強く阻害する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、何もナブメトンだけではない。例えば、エトドラクもそのようなNSAIDsである。また、コキシブ系NSAIDsのセレコキシブなどに至っては、COX2を選択的に阻害する。
- ^ 参考までに、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のヒト生体内での半減期を幾つか挙げておく。いずれも健康なヒトの成体の場合、かつ、徐放製剤になっていない場合で、イブプロフェンの半減期は約2時間、ジクロフェナクの半減期は約3時間。なお、ナブメトンの活性化体である6-メトキシ-2-ナフチル酢酸とほぼ同じ構造を持つナプロキセンの半減期は、約14時間と比較的長い。ただし、アンピロキシカムの半減期が約40時間、オキサプロジンの半減期が約50時間であるように、ナブメトンの半減期はNSAIDsの中で最長というわけではない。
- ^ 参考までに、ナブメトンの活性化体である6-メトキシ-2-ナフチル酢酸とほぼ同じ構造を持つナプロキセンもまた、腎臓から尿中へと排泄されやすいことが知られている。
- ^ COX1は様々な組織で恒常的に発現しており、例えば、胃ではCOX1がプロスタグランディン類を合成することで粘液の生成を促すしているのに、このCOX1が阻害されてしまうと胃の粘液が減少して胃に障害が出やすくなる。つまり、非ステロイド性抗炎症薬の代表的な副作用である胃障害は、COX1を阻害することに大きな原因があると考えられている。まして、プロドラッグではない非ステロイド性抗炎症薬を経口投与した場合は、胃に直接悪影響を与えかねない。これに対してCOX2は、何らかの異常事態が発生した時、例えば、炎症が起こっている場所などに発現するので、このCOX2だけを阻害できれば、理屈の上では、抗炎症作用のように都合の良い作用だけを引き出せて、COX1を阻害したことによる様々な副作用を起こさなくて済むというわけである。ナブメトンの場合は、COX1よりもCOX2を強く阻害するだけであるものの、理屈の上では、ナブメトンの用量が少なければ、COX2は比較的強く阻害されているのに、COX1はあまり阻害されないということが起こり得る。
- ^ 参考までに、シクロオキシゲナーゼ(COX)のうち、COX2を選択的に阻害するコキシブ系NSAIDsのセレコキシブにも同様の問題が見つかっている。同じくCOX2を選択的に阻害するコキシブ系NSAIDsのロフェコキシブなどに至っては、この問題によって市場からの撤退を余儀なくされた。既述の通り、ナブメトンはCOX2を選択的にとまではゆかないものの、COX2をより強く阻害する。
- ^ 17歳の女性の場合、2016年現在の日本では1日1回800 mgが標準的な投与量とされている。15 g は、その18.75倍に当たる。
出典
[編集]外部リンク
[編集]- “Nabumetone (DB00461)”. DrugBank. 2017年6月12日閲覧。
- “ナブメトン(D00425)”. KEGG. 2017年6月12日閲覧。
- “Nabumetone(CID:4409)”. PubChem. 2017年6月12日閲覧。