ハッシュドビーフ
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ハッシュドビーフ (英: hashed beef) は、薄く細切りにした牛肉をドミグラスソースやトマトソースで煮込んだ洋食のひとつである[1]。
イギリス発祥の料理であり、細かく刻んだ野菜と薄切りの牛肉を炒めて煮込んだ料理をハッシュドビーフと呼んでいたことが名前の由来であるが、もともと同国においてはドミグラスソースで煮込んでおらず、日本に伝わってから後年にも知られるものに変わっていったと推察されている[2]。また、この名称が日本に浸透したのは、1989年(平成元年)にハウス食品から「ハウス ハッシュドビーフ」という商品名のハヤシライスのルーが発売されて以降とされている[3]。
他国のハッシュドビーフ
[編集]19世紀以前の欧米の書籍には、Hashed Beef という古いイギリス料理のレシピがしばしば掲載されており、薄切り牛肉の煮込み料理という点では共通している。
- 1788年に発行されたイギリス料理の本に記されたレシピでは、残り物のローストビーフを薄く切ってエシャロットやピクルスと共に煮込む[4]。
- 1862年に発行された料理本には、薄切りにした牛肉をマッシュルームケチャップと肉汁のスープで煮る、ワインビネガーとケチャップを煮詰めたソースで煮る、温めたクルミのピクルスを添えるなどのレシピが記載されている[5]。
- 1881年にアメリカで発行された家庭百科事典では、牛肉の薄切りとたまねぎをアンチョビーソースとマッシュルームケチャップと肉汁のスープで煮込むレシピが紹介されている[6]。
- 1888年に日本で刊行された料理書に、ローストビーフ(原文は「ロースビフ」)とデミグラスソース(原文は「スチウのソース」)を用いる現在のハッシュドビーフに近い味付けの料理が「ハヤシビフ」という名前で登場する[7]。
- 1909年発行の主婦向けの指南書では、小麦粉を炒ってとろみを付けるブラウンソースの手法を用いた「ハヤシビーフ」のレシピが紹介されている[8]。
食べ方
[編集]日本では白飯にかけることが多く、そうすることによってハヤシライスとなると記した資料も存在する[1]。また、バターライスを用いたり、パンやマッシュトポテトを添えたりすることもある。
出典
[編集]- ^ a b 「ハッシュドビーフ」『日本大百科全書、和・洋・中・エスニック』 。コトバンクより2022年12月24日閲覧。
- ^ “ハッシュドビーフとハヤシライスの違いを解説!おすすめレシピもご紹介”. クラシル. dely (2022年8月15日). 2022年12月24日閲覧。
- ^ 澁川祐子『ニッポン定番メニュー事始め』2013年、210頁。ISBN 978-4-7791-1934-7。
- ^ Richard Briggs (1788). The English Art of Cookery. London, England: G. G. J. and J. Robinson. pp. 212-213 (Online version at HathiTrust Digital Library)
- ^ Charles Elmé Francatelli (1862, 2nd Edition). The Cook's Guide, and Housekeeper's & Butler's Assistant. London, England: Richard Bentley. p. 207 (Online version at HathiTrust Digital Library)
- ^ Henry Hartshorne (1881). The Household Cyclopedia of General Information. New York, NY, USA: Thomas Kelley. p. 341 (Online version at Archive.org)
- ^ マダーム・ブラン(口述)、洋食庖人(筆記)、松井鉉太郎(奥付著者)『軽便西洋料理法指南 : 実地応用 一名・西洋料理早学び』新古堂書店、東京、日本、1888年、26-27頁。 (国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 三八光商会編輯部『女道大鑑』三八光商会、東京、日本、1909年、70-71頁。 (国立国会図書館デジタルコレクション)