プリン代謝
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プリン代謝(プリンたいしゃ)とは、生物に含まれているプリン塩基の合成および分解の代謝経路である。
合成
[編集]プリン塩基はリボース-5-リン酸と結合したヌクレオチド(リボチド)として合成される。この点で塩基として合成されてからヌクレオチドになるピリミジン塩基とは対照的である。プリンの生合成はまずホスホリボシル二リン酸(PRPP)からイノシン酸(IMP)を合成し、IMPからそれぞれグアニル酸(GMP)とアデニル酸(AMP)が誘導される。
IMP
[編集]プリン骨格の4つの窒素原子はそれぞれ1つのアミノ酸に由来しており、グルタミン、グリシン、グルタミン、アスパラギン酸の順番で取り込まれる。このうちグリシンだけは2つの炭素原子も利用されるが、それ以外はアミノ基のみを利用する。残り3つの炭素原子は炭酸水素イオンと2つのギ酸に由来しており、ギ酸は10-ホルミルテトラヒドロ葉酸の形で供給される。
制御点として重要なのはホスホリボシル二リン酸(PRPP)の合成で、これを触媒するPRPP合成酵素の活性はプリンリボヌクレオチドにより負に制御される。ただしPRPPはピリミジン代謝やサルベージ経路にも利用される代謝中間体であり、PRPP合成酵素自体はプリン生合成の初発酵素ではない。
EC番号 | 酵素名 | 基質 | 生成物 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2.7.6.1 | リボースリン酸ジホスホキナーゼ | R5P | ATP | AMP | PRPP | ||
1 | 2.4.2.14 | アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ | PRPP | Gln, H2O | Glu, PPi | PRA | |
2 | 6.3.4.13 | GARシンテターゼ | PRA | Gly, ATP | ADP, Pi | GAR | |
3 | 2.1.2.2 | GARホルミルトランスフェラーゼ | GAR | ホルミルTHF | THF | FGAR | |
3a | FGARシンテターゼ | ATP, ギ酸 | ADP, Pi | ||||
4 | 6.3.5.3 | FGAMシンテターゼ | FGAR | Gln, ATP, H2O | Glu, ADP, Pi | FGAM | |
5 | 6.3.3.1 | AIRシンテターゼ | FGAM | ATP | ADP, Pi | AIR | |
6 | 4.1.1.21 | AIRカルボキシラーゼ | AIR | CO2 | CAIR | ||
6a | 6.3.4.18 | N5-CAIRシンテターゼ | AIR | ATP, HCO3- | ADP, Pi | N5-CAIR | |
6b | 5.4.99.18 | N5-CAIRムターゼ | N5-CAIR | CAIR | |||
7 | 6.3.2.6 | SAICARシンテターゼ | CAIR | Asp, ATP | ADP, Pi | SAICAR | |
8 | 4.3.2.2 | アデニロコハク酸リアーゼ | SACAIR | フマル酸 | AICAR | ||
9 | 2.1.2.3 | AICARホルミルトランスフェラーゼ | AICAR | ホルミルTHF | THF | FAICAR | |
9a | 6.3.4.23 | FAICARシンテターゼ | ATP, ギ酸 | ADP, Pi | |||
10 | 3.5.4.10 | IMPシクロヒドロラーゼ | FAICAR | H2O | IMP |
GMP
[編集]EC番号 | 酵素名 | 基質 | 生成物 | ||
---|---|---|---|---|---|
1.1.1.205 | IMPデヒドロゲナーゼ | IMP | NAD+, H2O | NADH, H+ | XMP |
6.3.5.2 | GMPシンターゼ | XMP | ATP, Gln, H2O | AMP, PPi, Glu | GMP |
1.7.1.7 | GMPレダクターゼ | GMP | NADPH, H+ | NADP+, NH3 | IMP |
AMP
[編集]EC番号 | 酵素名 | 基質 | 生成物 | ||
---|---|---|---|---|---|
6.3.4.4 | アデニロコハク酸シンターゼ | IMP | GTP, Asp | GDP, Pi | アデニロコハク酸 |
4.3.2.2 | アデニロコハク酸リアーゼ | アデニロコハク酸 | フマル酸 | AMP | |
3.5.4.6 | AMPデアミナーゼ | AMP | H2O | NH3 | IMP |
分解
[編集]食物由来のプリンはいくつかの酵素によって分解される。
グアニン
[編集]- ヌクレアーゼ - ヌクレオチドを遊離
- ヌクレオチダーゼ - グアノシンに分解
- プリンヌクレオシドホスホリラーゼ - グアノシンをグアニンに分解
- グアニンデアミナーゼ - グアニンをキサンチンに分解
- キサンチンオキシダーゼ - キサンチンを尿酸に分解
アデニン
[編集]- ヌクレアーゼ - ヌクレオチドを遊離
- プリンヌクレオシドホスホリラーゼ - イノシンをヒポキサンチンに分解
- キサンチンオキシダーゼ - ヒポキサンチンをキサンチンに分解
- キサンチンオキシダーゼ - キサンチンを尿酸に分解
サルベージ
[編集]食物の核酸から分解されたプリンは新しいヌクレオチドとしてサルベージされ、再利用される。
- アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT) - アデニンをサルベージ
- ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT) - グアニンとヒポキサンチンをサルベージ。