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ホンダ・HSV-010

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

HSV-010(エイチエスブイ-ゼロイチゼロ)は、本田技研工業NSXの後継車種として開発していたスポーツカー。試作車のみで量産されず、発売に至らなかった。Honda Sports Velocityの頭文字を車名としている[1]

本項では、HSV-010をベースに開発されたレーシングカーHSV-010 GTについても記述する[2]

HSV-010

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初代NSXの後継車として、アキュラブランドで2010年の発売を予定して開発されていた。当初は次期アキュラブランドの頂点(フラグシップモデル)と位置付けられていた[3]HSCをベースに開発されていると一部で報道されたが[4]、2005年7月にホンダの福井威夫社長(当時)は記者会見の席上で、NSX後継車を(HSCとは関係なく)新たに開発中とした[5]。2007年1月に米国ミシガン州デトロイトで開催された北米国際オートショーで次世代スポーツカーのデザインコンセプト「Acura Advanced Sports Car Concept」として披露[6]、2008年6月にニュルブルクリンクで走行テストが行われた[7][8]。エンジンはV型10気筒を搭載する予定[6][9]で、バンク角は90°、最高出力は405kW、燃費向上および排出ガス規制適合のために片バンクを休止する気筒休止機構(VCM)を採用していた[10]。また、後輪駆動をベースとしたSH-AWDを採用していた[6]

しかし、2008年12月に世界的な景気悪化に伴い開発を白紙化することが発表され[9]、開発が中止された。2009年に後述のSUPER GT用マシンが発表された際、そのベース車両としてHSV-010と名称が発表された[11]

HSV-010 GT

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ホンダ・HSV-010 GT
SUPER GT GT500仕様
ウイダー HSV-010
ARTA HSV-010 GT
概要
設計統括 白井裕
滝敬之介
ボディ
乗車定員 1人
ボディタイプ 2ドア クーペ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン HR10EG型:3.4L V8 DOHC
最高出力 370kW (500PS) 以上
最大トルク 392N·m (40.0kgf·m) 以上
変速機 6速シーケンシャル
パドルシフト (EGS)
ダブルウィッシュボーン
ダブルウィッシュボーン
車両寸法
ホイールベース 2,700mm
全長 4,675mm
全幅 2,000mm
車両重量 1,100kg以上
系譜
先代 NSX-GT
後継 NSX CONCEPT-GT
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NSX-GTの後継車種として、2010年から2013年までSUPER GTに参戦したレーシングカーである[11]日本自動車連盟(JAF)より「JAF-GT500基本車両資格登録」の承認[11]を得ており、3.4L V8FRレイアウトとし[12]、2009年からのSUPER GT車両レギュレーションに準拠[13]している。

エンジンは、ホンダがフォーミュラ・ニッポン用に供給しているHR10Eをベースに、GT向けにチューニングが施されたHR10EGが搭載される。排気管は8-4-2-1集合レイアウトを採用しており、フォーミュラカー的な甲高い音を出している。 2013年仕様からは排気管レイアウトの変更により、従来の甲高い音から低めのエンジン音になった。[14]

プロジェクトリーダーである瀧敬之介によると、HSV-010 GTはNSX-GTを超える究極のコーナリングマシンを目指したとのこと。操縦性についてレーシングドライバーのラルフ・ファーマンは、「アンダーステア、オーバーステアがゆっくりと出るので運転しやすい」と語っている[15]

ベース車両が市販されずに終わったマシンはGT300クラスでは複数例あるが、GT500ではHSV-010が唯一である。なお、当車のギヤボックス、クラッシャブルストラクチャー、リヤウィングなどはGT300で使われていたCR-Zにも流用されている。

スペック

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シャーシ
  • 全長 - 4,675mm
  • 全幅 - 2,000mm
  • ホイールベース - 2,700mm
  • トレッド(F/R)- 1,640mm/1,640 mm
  • ホイール - チームで異なる
  • タイヤ - チームで異なる
    • 前: 330/40R18
    • 後: 330/45R17
  • 燃料タンク - ATL[要曖昧さ回避]製100L
  • ギアボックス - リカルド製6速シーケンシャル ザイテックパドルシフト (EGS)
  • 車両重量 - 1,100kg
エンジン
  • 型式 - HR10EG
  • 気筒数・角度 - V型8気筒・90°
  • 弁機構 - DOHC ギア駆動 吸気2 排気2
  • 排気量 - 3,397cc
  • 内径×行程 - 93.0mm×62.5mm
  • リストリクター - φ29.1×2
  • 最高出力 - 370kW (500PS) 以上
  • 最大トルク - 392N·m (40.0kgf·m) 以上
  • マネージメントシステム - ホンダ・PGM-FI
  • 重量 - 120kg
  • 燃料 - 無鉛ハイオクガソリン(サーキットで異なる)
  • 潤滑油 - チームで異なる

年表

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  • 2010年
    • 初参戦となった2010年には5台が投入され、そのうちウイダーホンダレーシング(18号車、ドライバー:小暮卓史/ロイック・デュバル)がドライバーズ/チーム両タイトルを獲得した。
    • 第1戦(鈴鹿)は18号車がポールポジションを獲得するも、決勝ではアクシデント等で100号車の3位が最高位だった。
    • 第2戦(岡山)でも18号車がポールポジションを獲得し、決勝でも終始レースをリード、ポールトゥーウィンで初優勝しファステストラップも記録した。
    • 第5戦(菅生)では17号車と18号車が決勝レース終盤で競り合い、ワンツーフィニッシュで17号車が優勝した。
    • 第6戦(鈴鹿)では8号車がGT初参戦の小林崇志がポールポジションを獲得し、決勝レースでも優勝した。
    • 第8戦(もてぎ)では18号車が2位に入賞し、ドライバーズ/チーム両タイトルを獲得した。
  • 2011年
    • コーナー脱出時の安定性に加えターンインの鋭さを増すべく、GT車両ではあまり例を見ないサイドラジエータのレイアウトを採用した。
    • 第3戦(セパン)で1号車がポールポジションを獲得し、決勝でも終始レースをリード、ポールトゥーウィンで優勝。さらに第5戦(鈴鹿)では雨で不安定な天候の中、1号車が2勝目を挙げた。
    • 特別戦(富士)第2レースで100号車の伊沢拓也がHSV-010で富士初勝利した。
  • 2012年
    • 11年から採用したサイドラジエータの熟成に加え、日産・GT-Rに続き2例目のエアコンシステムを導入した。
    • 第3戦(セパン)では前年に続いて18号車がポールポジションを獲得し、決勝ではライバルに迫られるもポールトゥーウィンで優勝した。しかし、HSV-010の勝利としてはこの1勝に留まった。
  • 2013年
    • エアロダイナミクスの向上と低重心化や、サイド・バイ・サイドでのアクシデントによりラジエーターが破損することを防ぐために、フロントラジエーターのレイアウトに戻した。
    • 第3戦よりダウンフォース向上のため、リアウイングをスワンウイングに改良した。(第3戦は18号車、32号車、100号車が搭載、8号車と17号車は第4戦から搭載、なお、第6戦のみ従来のウイングステーに戻している。)
    • エンジンの高回転化および高出力化の対応と軽量化を図るため、エキゾーストの出口位置と数を後方1本出しから左右2本出しに変更した。(18号車のみ開幕から第3戦セパンは従来の後方1本出しを踏襲したが、第4戦菅生から左右2本出しになった。また、32号車は開幕戦は他の左右2本出しとは違い、他の車両はフロントフェンダー下部にエキゾーストを配置していたが、32号車はより後輪タイヤに近い位置に配置されていた。なお、第2戦より他のブリヂストン勢と同様のエキゾーストの出口位置とした。これは排気熱の影響を受けやすいブリヂストンタイヤ勢向けの改良である。)
    • 18号車は使用するタイヤをブリヂストンからミシュランに変更した。
    • 第1戦(岡山)では17号車と100号車が決勝レース終盤にトップを追い上げ、ワンツーフィニッシュで100号車が優勝した。
    • 第4戦(菅生)では、終盤の雨によりトップグループに襲い掛かったアクシデントの連鎖で有力マシンが続々脱落し、後方から追い上げを図った8号車が逆転優勝した。
    • 第5戦(鈴鹿)では18号車が序盤から終始レースをリードするものの、セーフティーカーの導入で一時 順位を落としたが、再びトップを奪い返し優勝した。

戦績

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No. マシン エントラント ドライバー Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 Rd.6 Rd.7 Rd.8 ポイント ランキング
2010 8 ARTA HSV-010 B AUTOBACS RACING TEAM AGURI アイルランドの旗 ラルフ・ファーマン
日本の旗 井出有治
日本の旗 小林崇志(Rd.6)
Ret 6th 11th 11th 12th 1st 中止 7th 29 11th
17 KEIHIN HSV-010 B KEIHIN REAL RACING 日本の旗 金石年弘
日本の旗 塚越広大
7th 7th 5th 12th 1st 4th 3rd 53 3rd
18 ウイダー HSV-010 B ウイダー ホンダ レーシング 日本の旗 小暮卓史
フランスの旗 ロイック・デュバル
Ret 1st 7th 3rd 2nd 9th 2nd 67 1st
32 EPSON HSV-010 D NAKAJIMA RACING 日本の旗 道上龍
日本の旗 中山友貴
10th 11th 9th Ret 11th 7th 9th 9 14th
100 RAYBRIG HSV-010 B TEAM KUNIMITSU 日本の旗 伊沢拓也
日本の旗 山本尚貴
3rd 8th 10th 5th 8th 3rd 6th 40 8th
2011 1 ウイダー HSV-010 B ウイダー ホンダ レーシング 日本の旗 小暮卓史
フランスの旗 ロイック・デュバル
7th 13th 1st Ret 1st 4th 11th 6th 57 3rd
8 ARTA HSV-010 B AUTOBACS RACING TEAM AGURI 日本の旗 武藤英紀
日本の旗 小林崇志
12th 9th 9th 10th 9th 14th 12th 13th 7 15th
17 KEIHIN HSV-010 B KEIHIN REAL RACING 日本の旗 金石年弘
日本の旗 塚越広大
3rd 8th 3rd 6th 12th 3rd 6th 7th 50 4th
32 EPSON HSV-010 D NAKAJIMA RACING 日本の旗 道上龍
日本の旗 中山友貴
10th 15th 12th 3rd 13th 12th 8th 5th 21 12th
100 RAYBRIG HSV-010 B TEAM KUNIMITSU 日本の旗 伊沢拓也
日本の旗 山本尚貴
2nd 12th 7th 7th Ret 5th 14th 4th 37 9th
2012 8 ARTA HSV-010 B AUTOBACS RACING TEAM AGURI アイルランドの旗 ラルフ・ファーマン
日本の旗 小林崇志
6th Ret 12th Ret 7th 9th 11th 13th 12 16th
17 KEIHIN HSV-010 B KEIHIN REAL RACING 日本の旗 金石年弘
日本の旗 塚越広大
3rd 6th 7th 9th 10th 5th 14th Ret 30 12th
18 ウイダー HSV-010 B ウイダー ホンダ レーシング 日本の旗 小暮卓史
オランダの旗 カルロ・ヴァン・ダム
7th 9th 1st 7th 8th Ret 9th 7th 40 6th
32 EPSON HSV-010 D NAKAJIMA RACING 日本の旗 道上龍
日本の旗 中山友貴
Ret 11th 11th 11th Ret 14th 2nd 3rd 26 14th
100 RAYBRIG HSV-010 B TEAM KUNIMITSU 日本の旗 伊沢拓也
日本の旗 山本尚貴
2nd 2nd 6th 8th 11th 12th 8th 9th 43 5th
2013 8 ARTA HSV-010 B AUTOBACS RACING TEAM AGURI アイルランドの旗 ラルフ・ファーマン
日本の旗 松浦孝亮
9th 8th 8th 1st 12th 8th 14th 15th 31 11th
17 KEIHIN HSV-010 B KEIHIN REAL RACING 日本の旗 塚越広大
日本の旗 金石年弘
2nd Ret 5th Ret 7th 2nd 3rd 2nd 67 2nd
18 ウイダー モデューロ HSV-010 M ウイダー モデューロ 童夢 レーシング 日本の旗 山本尚貴
フランスの旗 フレデリック・マコヴィッキィ
5th 10th 4th 13th 1st 5th 5th 7th 56 4th
32 EPSON HSV-010 D NAKAJIMA RACING 日本の旗 道上龍
日本の旗 中嶋大祐
11th 13th 12th 8th 13th Ret 10th 11th 4 15th
100 RAYBRIG HSV-010 B TEAM KUNIMITSU 日本の旗 伊沢拓也
日本の旗 小暮卓史
1st 7th 3rd 12th 10th Ret 12th 12th 37 7th

タイヤ= BブリヂストンDダンロップMミシュラン

保存状況

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モビリティリゾートもてぎ併設のホンダコレクションホールにて、2010年型の18号車(ウィダー)[16]、2013年型の100号車(RAYBRIG)[17]が収蔵されており、不定期に展示されている。

脚注

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  1. ^ 本田技研工業:2010年SUPER GTシリーズGT500クラスにHSV-010 GTで参戦、2009年12月22日
  2. ^ HSV-010はレース屋ホンダ、最後の魂!-All About 2010年01月31日記事
  3. ^ 本田技研工業:2005年 年末記者会見 福井社長スピーチ骨子、2005年12月20日
  4. ^ “ホンダ NSX 後継の価格は…!!”. Response. (2005年7月20日). http://response.jp/article/2005/07/20/72724.html 
  5. ^ 本田技研工業:2005年 年央記者会見 福井社長スピーチ骨子、2005年7月20日
  6. ^ a b c 本田技研工業:2007年北米国際自動車ショーで「Acura Advanced Sports Car Concept」を発表、2007年1月9日
  7. ^ AUTO MOTOR UND SPORT:Erwischt Honda NSX(ドイツ語) 2008年6月17日
  8. ^ AUTO MOTOR UND SPORT:Erlkönig Honda NSX(ドイツ語)
  9. ^ a b http://www.honda.co.jp/news/2008/c081217a.html 2008年 年末社長会見 骨子 2008年12月17日HONDAプレスリリース
  10. ^ Honda R&D Technical Review Vol.22 No.2『V10 500馬力エンジンの開発 -高出力と環境性能の両立技術-』2010年9月1日発行(閲覧には登録が必要)
  11. ^ a b c “NSX後継のホンダGT500車両の名は『HSV-010』!?”. AUTO SPORTS. (2009年11月11日). https://www.as-web.jp/past/nsx%e5%be%8c%e7%b6%99%e3%81%ae%e3%83%9b%e3%83%b3%e3%83%80gt500%e8%bb%8a%e4%b8%a1%e3%81%ae%e5%90%8d%e3%81%af%e3%80%8ehsv-010%e3%80%8f 
  12. ^ 本田技研工業:HSV-010 SPEC&STYLING、2010年1月18日
  13. ^ 2009年は、前年までと同様にミッドシップのNSXで参戦しており、駆動方式などがレギュレーションに合致していなかったため、いくつかの性能調節を受け参戦していた。
  14. ^ HSV-010 GT 2013年マシン解説
  15. ^ 二玄社 CAR GRAPHIC 2010年3月号『ホンダの新世代スーパーGTカーがデビュー』より
  16. ^ “歴代シビックとNSXレースカーが大集結! もてぎのホンダコレクションホールで10月7日から企画展開催”. オートスポーツ. (2023年9月23日). https://www.as-web.jp/supergt/993251?all 
  17. ^ “「ホンダコレクションホール開館20周年記念展示」の会場から”. WebCG. (2018年3月22日). https://www.webcg.net/articles/gallery/38496 

関連項目

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外部リンク

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