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リラの花咲くけものみち

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リラの花咲くけものみち
酪農学園大学へ続く白樺並木の道
酪農学園大学へ続く白樺並木の道
著者 藤岡陽子
イラスト 金子幸代
発行日 2023年7月20日
発行元 光文社
ジャンル 長編小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判
ページ数 384
公式サイト kobunsha.com
コード ISBN 978-4-334-91541-4
ウィキポータル 文学
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リラの花咲くけものみち』(リラのはなさくけものみち)は藤岡陽子小説[1]

小説宝石』(光文社)に2022年5月号から2023年1・2月合併号まで掲載され[2]、2023年7月に加筆修正の上、同社より単行本が刊行された[1][2]。2023年に第7回未来屋小説大賞、2024年に第45回吉川英治文学新人賞を受賞している[3][4]

引きこもりだった女性・岸本聡里が北海道で大学の獣医学生として過ごす6年間に仲間の学生やさまざまな動物、獣医師たちと出会い、数々の試練が訪れる命の現場で少しずつ成長し、強くなっていく姿が描かれる。

本作品は、動物が大好きで幼少の頃からずっと獣医になることが夢だったという作者の娘が北海道江別市にある酪農学園大学に進学したことをきっかけとして、獣医学をテーマとした作品として執筆されており[5]、作品中に登場する「北農大学」はこの酪農学園大学がモデルとなっている[6]

NHK総合土曜ドラマ枠でテレビドラマ化され、2025年2月1日から放送予定[3]

あらすじ

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東京に住む女性・岸本聡里は小学4年生の時に母・有紀子を亡くしており、小学6年の時に父・孝之が再婚した。中学進学時に継母・友梨との間に娘が産まれたのと時期を同じくして孝之は福岡に単身赴任し、友梨は前妻に関係するものは家具やインテリア雑貨、調理器具など何もかも処分していく。聡里のことも疎ましく思っており、聡里が愛犬パールを手放すことを拒んで以来、あからさまに聡里を無視している。孝之からも気に懸けてもらえず、聡里は中学の3年間を引きこもってしまっていた[注 1]

そんな日々の中、聡里の15歳の誕生日に祖母の牛久チドリが訪ねてきて、聡里の姿[注 2]を見るなり悲鳴を上げて泣き出してしまう。そして、孝之の帰りを待って[注 3]、怒りをたぎらせて聡里を引き取ると言い放ち、彼女とパールを自宅に連れ帰った。

チドリと暮らし始めた聡里は都立のチャレンジスクールに進学する。チドリの家にはパール以外にも老犬のハッサクと猫のモモ、兎のアンズがおり、好きな動物たちの世話をするだけでも幸せだったが、パールの病気に早く気づけていたらという思いや、担任の先生や通い始めていた塾の三元先生、そしてチドリの勧めもあって、聡里は大学の獣医学部に入学し、獣医師になることが目標となった。

そして北海道の北農大学に合格し、チドリの援助[注 4]もあり無事に獣医学群[注 5]に入学すると、人付き合いの苦手な聡里にとっては、慣れない女子寮生活が始まる。面倒見のよい寮長の静原夏菜や先輩たち、初めは気難しかったが後に親友となる梶田綾華たちルームメイト、同級生らに囲まれ、授業や臨床実習、動物病院でのバイトに奮闘していく。

そんなある日、臨床実習の途中で夏菜の家で馬のお産を見学した時に、獣医師の仕事は命を救うだけでなく、時には命を絶つ辛い選択をしなければならないことがあると思い知る。そして、自分には獣医師は無理だと思い、実習を途中で投げ出して東京に逃げ帰り、一時は大学を続けることができないとまで思い詰める。

だが、チドリから母・有紀子の思いを聞かされたことや綾華からの親身な連絡を受けて、大学の実習に戻っている。その後も次々に試練が訪れるが、聡里は仲間たちとともに少しずつ成長し、牛・馬などの大動物の獣医師となることを決心して前向きに生きるたくましさを身に付けていく。

登場人物

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主要人物

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岸本聡里(きしもと さとり)
北農大学獣医学群獣医学類の学生。小学4年で母を亡くした後、継母との確執などのため、中学の3年間は愛犬のパールと引きこもっていた。
祖母・チドリに引き取られ、高校はチャレンジスクールを卒業したが、人付き合いは大の苦手。
梶田綾華(かじた あやか)
聡里の同級生で、寮のルームメイト。ストレートの髪を白に近い金色に染めている[注 6]。医者一家なのに医学部に落ちたコンプレックスを抱えている[注 7]
最初は聡里を毛嫌いし、寮の部屋替えを望んでいたが[注 8]、聡里から過去の境遇を打ち明けられた後は打ち解け、やがて親友となっている。
久保残雪(くぼ ざんせつ)[注 9]
聡里の同級生。父が鳥類学者で本人も鳥類オタク。聡里のことを細やかに気遣ってくれる。卒業後は釧路にある鳥の研究所で勤務し、後に聡里と結婚することになる。
牛久チドリ(うしく チドリ)
78歳。聡里の母方の祖母。継母の友梨や父・孝之の聡里に対する扱いに怒りと悲しみのあまり、当時15歳の聡里を家に引き取っている。
いつも前向きに聡里を応援しており、聡里の心の支えとなっている。聡里の学費捻出のため[注 10]、自宅を売却して団地に転居している。

北農大学の関係者

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加瀬一馬(かせ かずま)
獣医学類の5年生で、男子寮の寮長。優しい先輩で聡里が密かに思いを寄せている。
祖父が元獣医師で動物愛護センター施設長を定年退職後は動物保護団体の会長をしている。
静原夏菜(しずはら なつな)
獣医学類3年生。大学の女子寮「あけぼの寮」の寮長。獣医師だった父を早くに亡くし[注 11]、母方の実家である牧場で馬と親しみながら育った。しっかり者で時に厳しい一面もあるが、面倒見がよく頼りになる先輩。
奥野美里(おくの みさと)、 柳本乃絵(やなぎもと のえ)
聡里の同級生。寮の4人部屋のルームメイト。
芝田真耶(しばた まや)
聡里の同級生。気さくな性格で、入学して間もない時から飲み会に誘ってくれるなど親しく接してくれる。
野田響(のだ ひびき)
聡里の次年度に入寮してきた獣医学類の後輩。聡里を慕って気安く話しかけてくれる。

獣医師

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久恒(ひさつね)
ナナカマド動物病院の院長。一馬のバイト先、保護犬や保護猫は無償で診ている。聡里はこの病院に出入りし後にバイトもするようになる中で、「伴侶動物」と呼ばれるペットの獣医学を実地に学ぶ。
能見正也(のうみ まさや)
「産業動物」「大動物」と呼ばれる牛、馬など家畜専門の獣医師。聡里が最初に立ち会った馬の出産で、母馬を救うためにやむを得ず厳しい選択をし、獣医師という仕事の厳しさを身をもって教える。

聡里の家族・関係者

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岸本有紀子(きしもと ゆきこ)
聡里の母。故人。聡里が小学4年の時に心臓の疾患で亡くなっている。聡里が一緒に過ごした10年間、いつも楽しそうにしていた。
岸本友梨(きしもと ゆり)
聡里の継母。聡里が小学6年の時に父が再婚した。父の職場の部下。当時33歳。家具やインテリア雑貨、調理器具、家庭菜園など、前妻・有紀子に関係するものはすべて処分している。
愛犬・パールを手放すよう聡里に言うが、聡里に拒まれると犬を部屋から出さないように言い、その後は聡里をあからさまに無視した[注 12]
岸本唯(きしもと ゆい)
聡里の異母妹。友梨と孝之の娘。聡里が家を出たときにはまだ幼稚園にも通っていなかった。父親から聡里の写真を見せられているという。
聡里が生家の近くに立ち寄った時、聡里おねえちゃんと親しげに話しかけ、母が作ったという袋に入ったブラウニーをくれた。
岸本由真(きしもと ゆま)
唯の妹。聡里の異母妹。
岸本孝之(きしもと たかゆき)
聡里の父。再婚後は友梨を気遣うだけで、辛い思いをしている聡里のことは放置した。チドリが亡くなった後、聡里に家に帰るよう話すが、断られている。
それでも、聡里からは15歳から18歳までの間に月3万円の仕送りをしてくれたことへの感謝を丁寧に伝えられている。
菊池フサエ(きくち フサエ)
チドリの妹。聡里を自身の孫のように大切にしてくれる。チドリが聡里の学費捻出のため、大田区の一軒家を売却して団地に転居した後は、飼っていた動物をすべて引き取ってくれている。
菊池和重(きくち かずしげ)
フサエの夫。交友関係が広く、チドリの家を売却するときに和重の不動産会社の知り合いのおかげで相場よりも高額になったとチドリが感謝している。
三元(みつもと)
聡里が高校1年の冬から通っていた学習塾・三元塾の教師。聡里の生物の成績が優秀なことと動物好きなことから、大学の獣医学部進学を勧める。
最初は無理だと思った聡里からも獣医学部を目指したいとはっきりと伝えられる。そして国立の受験を失敗した聡里に私立を受験させてほしいと祖母に頼み込んでいる。
呉山のどか(くれやま のどか)
聡里の幼稚園・小学校の同級生。電車の中で偶然再会する。中学1年の時も家を何度か訪ねてくれて、手紙もくれていたが、聡里が中学3年間不登校になり、それ以来疎遠となっていた。
パール
聡里の愛犬。聡里が幼稚園の時に母の友人から譲られた。聡里が楽しい気分の時は一緒に飛び跳ね、悲しい気分の時は体を擦りつけ慰めてくれた。
聡里は継母の友梨が家に来てからの地獄と思える3年半をパールがいたおかげで耐えることができたと思っている。聡里が高校2年の時に脳腫瘍で亡くなっている。

書誌情報

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テレビドラマ

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リラの花咲くけものみち
リラ(ライラック)の花
ジャンル 連続ドラマ
原作 藤岡陽子
脚本 水橋文美江
演出 谷口正晃
出演者 山田杏奈
當真あみ
萩原利久
佐藤寛太
山崎静代
甲本雅裕
石橋静河
風吹ジュン
音楽 平井真美子
国・地域 日本の旗 日本
言語 日本語
製作
制作統括 黒沢淳(テレパック
勝田夏子(NHK
プロデューサー 室谷拡
三本千晶(テレパック)
制作 NHKエンタープライズ
製作 NHK
放送
放送チャンネルNHK総合
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間2025年2月1日 -(予定)
放送時間土曜 22:00 - 22:49
放送枠土曜ドラマ
放送分49分
回数全3回(予定)
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2025年2月1日からNHK総合の「土曜ドラマ」枠で放送予定[3]。主演は山田杏奈[3][11]

キャスト

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岸本聡里(きしもと さとり)
演 - 山田杏奈
北農大学獣医学類の学生。小学4年で母を亡くした後、継母とうまく行かず、中学の3年間は引きこもっていた。
祖母・チドリに引き取られ、チャレンジスクールを卒業。愛犬を亡くしたことをきっかけに獣医師を志ざしている。
梶田綾華(かじた あやか)
演 - 當真あみ[3]
聡里の同級生で、寮のルームメイト。医学部に落ちたコンプレックスを抱える。
久保残雪(くぼ ざんせつ)
演 - 萩原利久[3][11]
聡里の同級生。父が鳥類学者で本人も鳥類オタク。
加瀬一馬(かせ かずま)
演 - 佐藤寛太[3][12]
獣医学類の上級生。聡里が思いを寄せる。
久恒先生(ひさつねせんせい)
演 - 山崎静代[3]
ナナカマド動物病院の院長。一馬のバイト先。聡里がこの病院で「伴侶動物」と呼ばれるペットの獣医学を実地に学ぶ。
能見正也(のうみ まさや)
演 - 甲本雅裕[3]
獣医師。牛、馬など「産業動物」「大動物」と呼ばれる家畜専門。
静原夏菜(しずはら なつな)
演 - 石橋静河[3][12]
獣医学類の上級生。面倒見のいい女子寮の寮長。
牛久チドリ(うしく チドリ)
演 - 風吹ジュン[3]
聡里の母方の祖母。

スタッフ

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脚注

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注釈

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  1. ^ 自分のいない間に友梨に愛犬パールを捨てられるのを恐れ、外出ができなくなり、パールだけを心の支えにしていたため。
  2. ^ 胸のあたりまで伸びた髪は黒ゴムで束ねたまま何年も切っておらず、身につけているのは窮屈な子ども服だった。
  3. ^ その日は単身赴任先から帰ってきて、聡里の部屋に行くこともなく、友梨と2歳になる娘の唯を連れてディズニーランドに出かけており、夜の10時過ぎに帰宅している。
  4. ^ 聡里の学費捻出のため、大田区の自宅を売却して団地に転居している。
  5. ^ モデルとなった酪農学園大学では「獣医学部獣医学科」ではなく「獣医学群獣医学類」となっており、作品に描かれている北農大学でもこれに倣う表記をしている。
  6. ^ 後には茶髪のセミロングとなっているが、迫力のあるヘアスタイルのせいもあって、近寄りがたい雰囲気だった。
  7. ^ 父が都内の総合病院を経営していて、兄2人は医師。
  8. ^ 聡里からなぜ部屋替えしたいのか聞かれ、「気持ち悪いから」と言い放つ。聡里のロッカーの上に置かれた箱の中を見たこと、聡里が夜中にその箱を取り出してくることがその理由と言われたため、聡里は中に入っているのは愛犬・パールの遺骨であること、中学3年間引きこもっていたのは自分のいない間に継母にパールを捨てられるのを恐れたためなどと打ち明けた[7]
  9. ^ 「残雪」の名前の由来は、椋鳩十の『大造じいさんとガン』に登場する誇り高いガンの名前から[8]
  10. ^ 国立大学の入試は不合格で、私立の獣医学部は全国6校のどこを選んでも1500万円近くかかり、奨学金を受けたとしても出せる金額ではなかった[9]
  11. ^ 獣医師の日々の重圧に耐えかねて、精神を病んでしまって夏菜が3歳の時に自死している。
  12. ^ 聡里は自分のいない間にパールが捨てられるのではないかと恐れ、それから3年間家から出られなくなり、不登校となってしまっている[10]

出典

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  1. ^ a b c リラの花咲くけものみち”. 版元ドットコム. 版元ドットコム有限責任事業組合. 2024年9月29日閲覧。
  2. ^ a b 藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』光文社、2023年7月20日、382頁。 
  3. ^ a b c d e f g h i j k 山田杏奈主演で「リラの花咲くけものみち」ドラマ化、獣医師を目指す少女の成長描く”. 映画ナタリー. ナターシャ (2024年9月28日). 2024年9月28日閲覧。
  4. ^ リラの花咲くけものみち/藤岡陽子”. リラの花咲くけものみち 特設サイト. 光文社. 2024年9月30日閲覧。
  5. ^ 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント”. 好書好日. 朝日新聞社 (2023年11月29日). 2024年6月6日閲覧。
  6. ^ 本学がモデルの小説「リラの花咲くけものみち」著者・藤岡陽子さんのトークショーを開催”. 酪農学園大学. 学校法人酪農学園 (2023年11月10日). 2024年9月30日閲覧。
  7. ^ 藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』光文社、2023年7月20日、80-85頁。 
  8. ^ 藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』光文社、2023年7月20日、106、107、320-323頁。 
  9. ^ 藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』光文社、2023年7月20日、27頁。 
  10. ^ 藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』光文社、2023年7月20日、15-16頁。 
  11. ^ a b c d e f 土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち」制作決定のお知らせ”. NHK. 日本放送協会 (2024年9月28日). 2024年9月30日閲覧。
  12. ^ a b c d 『リラの花咲くけものみち』山田杏奈主演でドラマ化!共演に當真あみ、萩原利久”. クランクイン!. ブロードメディア (2024年9月28日). 2024年9月30日閲覧。

外部リンク

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NHK総合 土曜ドラマ
前番組 番組名 次番組
3000万
(2024年10月5日 - 11月23日)
リラの花咲くけものみち
(2025年2月1日 -〈予定〉)
水平線のうた
(2025年3月1日 -〈予定〉)