コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

たずね人 (1977年のテレビドラマ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
松本清張シリーズ
たずね人
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張
演出 重光亨彦
出演者 林隆三
音楽 加古隆
国・地域 日本の旗 日本
言語 日本語
話数 全1話
制作プロデューサー 沼野芳脩(NHK
放送
放送チャンネルNHK総合
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1977年11月5日
放送時間20:00 - 21:15
放送枠土曜ドラマ
放送分75分
回数全1回
テンプレートを表示

たずね人』(たずねびと)は、1977年11月5日の20:00 - 21:15、NHK総合土曜ドラマ枠で放送されたテレビドラマ。主演は林隆三松本清張原作。視聴率16.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)[1]

あらすじ

[編集]

フリーのカメラマンの綾村省三は、オランダで知り合った、インドネシア生まれのルキアという女性を連れて3年ぶりに帰国した。ルキアは戦争中に日本軍人と母との間に生まれ、離れ離れになった父を捜すための来日であった。綾村とルキアはテレビのワイドショーに出演し、父の姓が「斉藤」であったこと、母が父から教わった歌が童謡「砂山」であることを語る。

ルキアの父は元官僚の立花英一郎であった。しかし立花は参議院選挙に立候補中であり、スキャンダルを避ける思惑から、身代わりに同姓の斉藤悟がルキアとテレビに出演する。綾村は斉藤が歌詞を間違えて歌ったことに疑念を抱く。

キャスト

[編集]

スタッフ

[編集]
  • 脚本 - 早坂暁
  • 演出 - 重光亨彦
  • 音楽 - 加古隆
  • プロデューサー - 沼野芳脩(NHK
  • 美術 - 稲葉寿一
  • 技術 - 安藤和夫
  • 効果 - 寺田尚弘

原作

[編集]

本ドラマは松本清張のエッセイ「私のくずかご」[2]の第1節に記された逸話[3]を素材に制作されている。以下は該当箇所の抜粋である。

三年ぐらい前に、私は或る週刊誌に尋ね人の広告を出したことがある。要領は、戦争中東南アジア方面に兵隊として出征したことのある人の所在を求めたのだった。音読みの姓名は分っているが、ここに書くわけにはいかない。

これは或る娘から父親さがしを頼まれたのである。1964年の春、私はオランダのハーグに近いスヘフェニンゲンという海岸の町にいた。ここは海水浴場地で、また夏の歓楽地でもある。そこに中華料理屋があって、その二階で日本料理をやっていた。主人はオランダ人で、マダムは中国人である。私が行ったときは日本料理部が店開きして間もなくで、そこには振袖姿の日本娘が四人いた。彼女らのうち三人は東京から来たのだが、もう一人はジャワ生れであった。十八か九ぐらいのきれいな娘だったが、日本語が少しも話せず、みんなに分る言葉といえば英語だけだった。その娘から日本人の父親さがしを頼まれたのだが、父親の職業の見当は大体ついた。

週刊誌の広告にすぐには反響がなかった。しかし、一年くらいして初めて或る人から手紙をもらった。なんでも、大掃除をするとき、その週刊誌を畳の下に敷いたところ、偶然、私の広告の欄が眼についたというのである。その人は、私が捜している相手に心当りがあると云って住所まで教えてくれたが、私は先方に手紙を出す気になれなかった。もちろん、その人は終戦後故郷で奥さんをもらい、現在は地方公務員をしていて子供もあるということである。私の問合せの手紙がその人の家庭を不幸にするかも分らないからだ。オランダの日本娘のほうにはすまないと思いながら、そのままにしておいた。

去年の春、その料理店のオランダ人亭主が日本に遊びにきた。そのとき彼に会って訊くと、ほかの日本娘三人は辛抱しているが、ジャワ生れの娘だけは間もなく店をやめましたと云った。大体、ああした職業には適さなかったと云った。母親のほうは別な男と結婚しているということだった。

その娘は、父親が判れば日本に行きたいと云っていた。店を辞めた彼女はジャワに帰ったともいうし、また別な土地に行ったともいうが、店主のオランダ人は、そのへんの事情を詳しくは私に云わなかった。

すると、一週間くらい前、遠い地方都市から私に電話がかかり、三年前の週刊誌の告知板をはじめて見たが、あなたがさがしている相手はつい近くにいる人だと知らせてくれた。電話の人は、どうして私がその人物を捜しているのかと訊いたが、それは当人でなければ話せないと断り、直接本人から手紙をもらいたいと頼んだ。その手紙はまだもらっていない。

だが、相手の人がたとえオランダにいたジャワ生れの日本娘の父親であっても、私はもうその人には手紙で何も書かないつもりだ。

その広告を出すときは、父娘対面の場面を考えないでもなかったが、今はそれを知らせても双方が不幸になるような気がする。それに、父親捜しを熱心に頼んだあの娘も、ヨーロッパのどこかで夫と幸福に暮していれば、その熱情も冷めているかも分らないのである。 —  「私のくずかご」1節(抜粋)

脚注

[編集]
  1. ^ 林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版
  2. ^ オール讀物』1967年5月号-1968年4月号掲載。
  3. ^ 書籍としては『松本清張全集』第34巻(1974年、文藝春秋)や『実感的人生論』(2004年、中公文庫)などに収録された。

外部リンク

[編集]
NHK 土曜ドラマ
前番組 番組名 次番組
松本清張シリーズ
たずね人
(1977.11.5)
男たちの旅路
(第3部)

(1977.11.12-12.3)