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スクラップ・アンド・ビルド (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

スクラップ・アンド・ビルド』は、羽田圭介による小説[1]

概要

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初出は『文學界2015年3月号。2015年8月に文藝春秋より出版された121ページに及ぶ作品で[2]、同2015年には又吉直樹の『火花』とともに、第153回芥川龍之介賞を受賞した[3][4]

作者の羽田圭介は、同作において、若者や高齢者などの価値観の異なる人間が、一つ屋根の下で暮らす場合に起こる、縦の異なる価値観の対立とそのおかしさを描いたと述べている[5]

タイトルの由来

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作者の羽田圭介は、本作のタイトルである「スクラップ・アンド・ビルド」について、「ビルド」という言葉を最初に思いついたのちに、そこから派生して最終的に「スクラップ・アンド・ビルド」という題名に落ち着いたと述べている。またタイトルを付ける上で、介護を扱った「病気文学」のジャンルにあたる作品であることから、漢字2文字の湿っぽい名前ではなく「少しバカっぽい感じの名前にする」ため、長いカタカナの題名にしたとも述べている[6]

また作者は、そのタイトルは、身体を鍛えて筋繊維を破壊するとかえって前よりも太くなって再生することと、戦後の高度成長期の日本が、様々なものを押し壊し再構築して(スクラップアンドビルド)活力を得てきたことを、重ね合わせて付けたとも述べている[7]

あらすじ

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主人公の健斗(28歳)は、新卒で入社した会社を退職し、資格試験の勉強をしながら就職活動をする傍ら、母親とともに同居している、87歳で要介護でありながらまだまだ健康体の祖父の介護をしており、「早う死にたか」と毎日呟く祖父に対して母親とともにストレスを感じていた。そこで、健斗はあえて過剰に世話を焼いたり、日々筋力を鍛えたりすることで祖父を弱らせようと考える。そうして恋人の亜美とも交際しながら、介護と就職活動の日々を送る無職の青年の目から、「死への希望」と「生への執着」を同時に持つ祖父の姿を描いている[8][9]

テレビドラマ

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2016年12月17日、同小説を原作としたテレビドラマ(単発土曜ドラマ、73分)がNHK総合テレビで放送された。ドラマ版では、監督を香坂隆史が務め、柄本佑が主演、山下リオ浅香航大秋元才加浅茅陽子山谷初男がキャストを務めた[10][11][12][13]

オーディオブック

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FeBe版

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2015年11月11日、FeBe(現・audiobook.jp)で配信開始された[14]

Audible版

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2016年7月20日Audibleで配信開始された[15]

脚注

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  1. ^ 第153回芥川賞・直木賞:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年11月13日閲覧。
  2. ^ スクラップ・アンド・ビルド”. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2020年11月13日閲覧。
  3. ^ 又吉直樹×羽田圭介、芥川賞受賞から5年のこれまでとこれから”. TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~. 2020年11月13日閲覧。
  4. ^ 羽田圭介|特別インタビュー|自費出版の幻冬舎ルネッサンス新社”. www.gentosha-book.com. 2020年11月13日閲覧。
  5. ^ 「本の話」編集部. “芥川賞作家・羽田圭介さんが語る、ありのままの日常(後編) 『スクラップ・アンド・ビルド』 (羽田圭介 著) | 「本の話」編集部 | インタビューほか”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月13日閲覧。
  6. ^ 「本の話」編集部. “芥川賞作家・羽田圭介さんが語る、ありのままの日常(前編) 『スクラップ・アンド・ビルド』 (羽田圭介 著) | 「本の話」編集部 | インタビューほか”. 文藝春秋BOOKS. 文藝春秋. 2020年11月13日閲覧。
  7. ^ 祝芥川賞受賞!『スクラップアンドビルド』は、閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説だ”. 現代ビジネス. 講談社. 2020年11月13日閲覧。
  8. ^ 『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介 | 単行本”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月13日閲覧。
  9. ^ 野崎泰伸. “羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』における尊厳死の表象に関する一考察”. 大阪大学医学部. 2020年11月13日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ 土曜ドラマ「スクラップ・アンド・ビルド」”. NHKドラマ. 日本放送協会. 2020年11月13日閲覧。
  11. ^ 柄本佑さん主演「スクラップ・アンド・ビルド」制作開始!”. ドラマトピックス. 日本放送協会. 2020年11月13日閲覧。
  12. ^ 番組エピソード 主人公に励まされ、応援したくなる【挑戦ドラマ特集】 NHKアーカイブス、日本放送協会、2024年9月20日閲覧。
  13. ^ 柄本佑主演、羽田圭介氏の『スクラップ・アンド・ビルド』ドラマ化”. ORICON STYLE (2016年8月29日). 2017年3月18日閲覧。
  14. ^ スクラップ・アンド・ビルド”. audiobook.jp. 2022年5月13日閲覧。
  15. ^ a b 浦井健治が芥川賞受賞作を声で表現「リスナーと1対1の臨場感を」”. ステージナタリー (2016年7月20日). 2022年5月20日閲覧。

外部リンク

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