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十万分の一の偶然

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
十万分の一の偶然
小説中、事故現場となる東名高速道路・沼津インターチェンジ近く、裾野方面のカーブ
小説中、事故現場となる東名高速道路沼津インターチェンジ近く、裾野方面のカーブ
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出週刊文春1980年3月20日 - 1981年2月26日
出版元 文藝春秋
挿絵 濱野彰親
刊本情報
刊行 『十万分の一の偶然』
出版元 文藝春秋
出版年月日 1981年7月5日
装幀 伊藤憲治
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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十万分の一の偶然』(じゅうまんぶんのいちのぐうぜん)は、松本清張の長編小説。『週刊文春』に連載され(1980年3月20日号 - 1981年2月26日号、連載時の挿絵は濱野彰親)、1981年7月、文藝春秋から単行本として刊行された。アマチュア・カメラマンの撮影した一枚の報道写真をめぐって、現代社会の犯罪像を描く、クライム・ミステリー。

1981年2012年にテレビドラマ化されている。

あらすじ

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夜間の東名高速道路下り線・沼津インターチェンジ近くのカーブで、自動車が次々に大破・炎上する、玉突き衝突事故が発生した。アルミバン・トラックが急ブレーキをかけ、横転したことに始まったと推測されるも、事故直後の警察現場検証では、ブレーキをかける原因となるような障害の痕跡は、まったく発見されなかった。

一方、大事故の瞬間を捉えた山鹿恭介の写真「激突」は、カメラの迫真力を発揮した作品として、A新聞社主催の「ニュース写真年間最高賞」を受賞、決定的瞬間の場面に撮影者が立ち会っていたことは奇蹟的、十万に一つの偶然と評された。

しかし、事故で婚約者・山内明子を喪った沼井正平は、状況に不審を抱き、調査を開始する。「十万分の一の偶然」は作られたものなのか。いったい、どのような方法で?

探索の末、「事故」の正体を突き止めたと思い、正平は行動に出るが…。

主な登場人物

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小説中、正平と恭介の対決の舞台となる、東京・品川区の大井埠頭周辺
  • 原作における設定を記述。
沼井正平
東京・祐天寺に住む、元・P大学経済学部助手。婚約者・山内明子の死を契機に大学を辞職。
山鹿恭介
報道写真に強い関心を示すアマチュアカメラマン。本職は、福寿生命保険藤沢支店の外務員。
山内みよ子
山内明子の姉。職業は通訳で、明子の死を知りスイスから帰国。
西田栄三
藤沢のアマチュア写真団体「湘南光影会」の中心メンバーの一人。
米津安吉
事故の際、山内明子の後ろを走っていたライトバンの同乗者。
古家庫之助
報道写真の権威として知られる大家。A新聞社の公募ニュース写真の審査委員長を務める。

エピソード

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  • 藤井康栄によれば、本作のアイデアのきっかけになったのは、1955年5月の紫雲丸事故であり、連載の打ち合わせの時、著者は、同事故の際の報道写真問題を例に出しながら構想を話していたという[1]
  • 本作の担当編集者の鈴木文彦は、作中のトリックが実行可能な、すべての条件を満たす地点を、東名高速上で探すよう、著者から求められ、東京から同道路上をたどり、ようやく見つけたのが沼津インターチェンジ手前であった[2]
  • 著者は、イギリスの作家・ロイ・ヴィカーズの迷宮課シリーズを好み、特に「百万に一つの偶然」に感心したと発言している[3]。推理小説研究家の山前譲は、本作が生まれたのは同作のタイトルからと推定している[4]
  • 本作で描かれる犯罪に関して、劇作家の別役実は、本作刊行後に発生した、韓国のアマチュア・カメラマンが、若い女性をだまして山中に連れ込み、毒を飲ませ、苦悶して死亡するまでの様子をカメラにおさめた事件を取りあげ、「世界は単なる映像に過ぎないと感じ、「死」の映像が必要だったがために、人を殺した」点で、本作のアマチュア・カメラマンと極めてよく似ている、と指摘している[5]

テレビドラマ

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1981年版

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10万分の1の偶然
ジャンル テレビドラマ
脚本 田辺泰志
石田芳子
監督 黒木和雄
出演者 関根恵子
泉谷しげるほか
エンディング 岩崎宏美
聖母たちのララバイ
製作
制作 日本テレビ
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1981年12月29日
放送時間21:02 - 22:54
放送枠火曜サスペンス劇場
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1981年12月29日日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠(21:02-22:54)にて放映。恋人の男性を失った女性・山内明子を主人公に設定している。

キャスト
スタッフ

2012年版

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松本清張没後20年 ドラマスペシャル
十万分の一の偶然
ジャンル テレビドラマ
脚本 吉本昌弘
監督 藤田明二
出演者 田村正和ほか
ナレーター 石坂浩二
音楽 沢田完
製作
チーフ・プロデューサー 五十嵐文郎
プロデューサー 内山聖子(テレビ朝日)、
河瀬光(東映)、
江平光男
制作 テレビ朝日
東映
放送
映像形式文字多重放送
音声形式ステレオ放送
放送国・地域日本の旗 日本
2012年版
放送期間2012年12月15日
放送時間21:00 - 23:06
回数1回
2019年版
(テレビ朝日開局60周年 夏の傑作選)
放送期間2019年8月18日
放送時間日曜21:00 - 23:05
放送枠日曜プライム
放送分125分
回数1回
日曜プライム

特記事項:
テレビ朝日開局55周年記念
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松本清張没後20年・ドラマスペシャル 十万分の一の偶然」。2012年12月15日(21:00 - 23:06)、テレビ朝日開局55周年記念番組第一弾「松本清張没後20年 2週連続ドラマスペシャル」の第一夜として放映(テレビ宮崎は同年12月17日の放映)。視聴率18.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。主演の田村正和はこの作品に魅力を感じ、約1年9か月ぶりに俳優として復帰を果たした[7]

今作においては原作とは異なるアレンジ要素として、原作の主人公の沼井正平を「山内正平」とに改め、彼と山内明子を父娘の関係に設定している。また、原作では明子の姉に当たる山内みよ子は登場しない代わりに、正平の妹の山内恵子が登場したり、明子の婚約者としての役回りの人物として塚本暁が登場するといったアレンジがある。

さらに今作は21世紀の現代日本を舞台としている関係で、原作が発表された1980年代にはまだ存在していない電子料金収受システム(ETC)が犯人が用いるトリックの中に含まれる形で登場する。

今作以降、田村はテレビドラマでの仕事を単発ドラマにほぼ絞り、その中でも特に松本清張作品への主演を中心に(田村最後の清張作品は16年放送)取り組んだ。

2019年8月18日には「テレビ朝日開局60周年 夏の傑作選」の一環として、『日曜プライム』枠で放送された[8]

キャスト
スタッフ

脚注・出典

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  1. ^ 『十万分の一の偶然』(2009年、文春文庫新装版)巻末の藤井による解題を参照。紫雲丸事故に関しては、小説中、「反響」の節などで言及されている。
  2. ^ 同上。
  3. ^ 佐野洋との対談「清張ミステリーの奥義」(『小説推理』1976年6・7月号掲載、後に『発想の原点』(1977年、双葉社、2006年、双葉文庫)に収録)参照。
  4. ^ 『表象詩人』(2014年、光文社文庫)巻末解説参照。
  5. ^ 『松本清張全集 第43巻』(1983年、文藝春秋)巻末の別所による解説を参照。
  6. ^ 当時同時間帯でテレビ朝日系列にて時代劇「文吾捕物帳」を製作していたため
  7. ^ “松本清張×田村正和、『十万分の一の偶然』7年ぶり放送”. ORICON NEWS (oricon ME). (2019年8月18日). https://www.oricon.co.jp/news/2142501/full/ 2024年10月7日閲覧。 
  8. ^ 日曜プライム 十万分の一の偶然”. テレビ朝日. 2019年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月19日閲覧。
  9. ^ 京都府中小企業技術センター 概要”. 京都府中小企業技術センター. 2023年11月25日閲覧。
  10. ^ 蘇生会総合病院 施設概要”. 医療法人社団蘇生会 蘇生会総合病院. 2023年11月25日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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