公明選挙区
公明選挙区(こうめいせんきょく)とは公明党の候補者が立候補する選挙区のこと。
概要
[編集]主に当選者が1人である小選挙区制(正確には小選挙区比例代表並立制、日本の衆議院では1994年に導入され、1996年から実施)における衆議院議員総選挙で公明党候補が立候補する選挙区のことを指す。
1999年から自公連携という形で自公連立政権が誕生し、2000年以降の衆議院議員総選挙では289から300までの小選挙区のうち公明党の地盤が強い一部の選挙区で公明党が候補者を擁立する一方で自由民主党(自民党)が候補者を擁立せずに自民党支持層が公明候補を応援するという構図が一部の地域で発生するようになった。
2000年衆院選では公明党候補は7人が比例ブロックの重複立候補をした。基本的には公明党が候補者を擁立した選挙区では自民党は候補者を擁立しなかったが、一部の選挙区(千葉県第2区[1]や東京都第17区[2]や高知県第1区[3])では公明候補が立候補している選挙区で自民候補も立候補して競合することとなった(3つとも公明候補が落選した)。
2003年衆院選以降は公明党候補は重複立候補制度をせずに小選挙区のみの立候補となっている。またこの衆院選から公明候補が立候補している選挙区で自民候補が立候補して競合することはなくなり、公明選挙区は自民選挙区とで完全に棲み分けが行われるようになった(公明選挙区において地方議員や国会議員の経験がある自民系無所属候補が立候補した例はある)。
2005年衆院選では郵政国会で自民党衆議院議員ながら党議拘束に反して郵政民営化法案に反対した反郵政民営化自民系候補に自民党執行部が郵政民営化賛成派候補(いわゆる「刺客」)を擁立する小泉劇場となったが、東京都第12区では自民党と公明党でコスタリカ方式が取られ、2003年には公明党の太田昭宏が選挙区候補となり自民党の八代英太が比例単独上位に回り、次回衆院選では太田が比例上位に回って八代が選挙区に回る予定だった。しかし、八代が郵政法案に造反したことで自民党の公認候補となれなかったことで離党して無所属として選挙区での立候補を表明したことで、太田は選挙区での立候補をすることとなり。東京都第12区は自民系郵政造反組が立候補する選挙区の中で唯一公明選挙区となった(結果は太田が当選し、八代は落選した)[4]。
2009年衆院選で8つの小選挙区で公明候補を擁立したが、政権交代への期待から民主旋風が起こったことで、小選挙区で立候補していた公明党候補は8人全員が落選する事態となった。
2012年衆院選では新たに北海道第10区[5]を加えた9つの小選挙区で公明候補を擁立したが、公明党は自民党だけでなく橋下徹大阪市長が創設者である大阪維新の会を母体とする日本維新の会は小選挙区で立候補した公明候補を推薦するという形で競合を避けたことで、公明選挙区の公明候補は自民候補や維新候補と競合することなく選挙戦を戦うことが出来た。
2014年衆院選では、橋下徹大阪市長が創設者である大阪維新の会を母体とする維新の党は大阪地方政治における課題である大阪都構想の進め方に公明党と齟齬が生まれたことで、当初は公明選挙区での維新候補擁立も辞さない構えを見せていたが、最終的に2012年衆院選と異なって推薦はしないものの維新候補は公明選挙区で擁立しないこととなり、公明候補は自民候補や維新候補と競合することなく選挙戦を戦うことが出来た。
2017年衆院選や2021年衆院選では大阪維新の会を母体とする日本維新の会は2017年衆院選では神奈川県第6区[6]、2021年衆院選では東京都第12区[7]と、維新候補を公明選挙区で擁立したことで、一部の選挙区で公明候補と維新候補が競合することになったが、維新発祥地で強い地盤を持つ大阪府や維新勢力が浸透している兵庫県では公明選挙区で維新候補を擁立しなかったことで、大阪府や兵庫県の公明選挙区では公明候補は自民候補や維新候補と競合することなく選挙戦を戦うことが出来た。
しかし、2024年衆院選では日本維新の会は方針を転換して大阪府と兵庫県の公明選挙区でも擁立して公明候補と維新候補が競合する選挙戦となった。兵庫県(第2区・第8区)[8]は全勝したが大阪府(第3区・第5区・第6区・第16区)[9]では全敗した。大阪府の小選挙区で全敗するのは2009年以来だった。またいわゆる一票の格差是正を目的とした小選挙区の10増10減が行われ増設された都や県の小選挙区に新たに候補者を擁立した。中でも埼玉県第14区から出馬した党代表の石井啓一は同年9月、15年間務めた山口那津男から代わったばかりだったが国民民主党の前職に敗れ2009年の太田以来現職の党代表の落選となった[10]ほか新設の愛知県第16区でも国民民主党の新人に惜敗し愛知県初の小選挙区選出とはならなかった[11]。このほか東京都第28区にも候補者擁立を目指していたが自民党の反対で断念し都内の小選挙区自民党の候補者に推薦を一時は見送る一幕があった[12][13][14][15][16]。党幹事長だった石井は「東京での信頼は地に落ちた」と2023年5月25日両党の幹事長・選挙対策委員長の会談、通称「2幹2選」終了後記者団に当時の自民党幹事長茂木敏充に面と向かって放ったことを明らかにした[17]。同年8月31日当時の首相岸田文雄と当時の党代表山口との会談で東京で解消されていた選挙協力が復活した。日本維新の会への警戒感から関係改善に歩み寄った[18]。更に2012年以来守り続けた北海道第10区でも立憲民主党の前職に惜敗し議席を失った[19]。
公明選挙区における公明党の勝敗
[編集]回 | 年 | 立候補 | 当選 | 落選 |
---|---|---|---|---|
42 | 2000年 | 18 | 7 | 11 |
43 | 2003年 | 10 | 9 | 1 |
44 | 2005年 | 9 | 8 | 1 |
45 | 2009年 | 8 | 0 | 8 |
46 | 2012年 | 9 | 9 | 0 |
47 | 2014年 | 9 | 9 | 0 |
48 | 2017年 | 9 | 9 | 0 |
49 | 2021年 | 9 | 9 | 0 |
50 | 2024年 | 11 | 4 | 7 |
関連書籍
[編集]- 薬師寺克行『公明党 - 創価学会と50年の軌跡』中公新書、2016年。ISBN 9784121023704。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ “千葉2区 - 第42回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2000年06月25日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “東京17区 - 第42回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2000年06月25日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “高知1区 - 第42回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2000年06月25日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “東京12区 - 第44回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2005年09月11日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “北海道10区 - 第46回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2012年12月16日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “神奈川6区 - 第48回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2017年10月22日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “東京12区 - 第49回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2021年10月31日投票 | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2024年10月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “衆議院選挙2024 兵庫(神戸・姫路など)開票速報・選挙結果 NHK”. www.nhk.or.jp. 2024年10月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “衆議院選挙2024 大阪(堺・岸和田など)開票速報・選挙結果 NHK”. www.nhk.or.jp. 2024年10月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “衆議院選挙2024 埼玉(川越・越谷など)開票速報・選挙結果 NHK”. www.nhk.or.jp. 2024年10月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “衆議院選挙2024 愛知(名古屋・豊橋など)開票速報・選挙結果 NHK”. www.nhk.or.jp. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “自民が公明に「衆院東京28区での候補擁立認めない」 公明は「受け入れ困難」と強気 その理由は :東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “自民、東京28区問題で公明に代替案「12区か15区」 候補者調整:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年5月23日). 2024年10月30日閲覧。
- ^ “東京での選挙協力解消 | ニュース”. 公明党. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “公明「衆院28区擁立断念、東京の自民推薦せず」決定 自民に伝達へ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年5月25日). 2024年10月30日閲覧。
- ^ “自民と公明の亀裂は埋まったのか…その内実は 次期衆院選協力で「東京」は玉虫色の決着:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2024年10月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “「東京での信頼関係は地に落ちた」自民 公明 深まる相互不信”. NHK政治マガジン. 2024年10月30日閲覧。
- ^ “自民・公明、東京の選挙協力を再開 維新警戒で歩み寄り 次期衆院選”. 日本経済新聞 (2023年8月31日). 2024年10月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “衆議院選挙2024 北海道(札幌・函館など)開票速報・選挙結果 NHK”. www.nhk.or.jp. 2024年10月30日閲覧。