利用者:YellowSmileyFace/ケタンジ・ブラウン・ジャクソンの米国最高裁判所判事指名

ジョー・バイデン大統領とケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事、大統領執務室にて

ケタンジ・ブラウン・ジャクソンの最高裁判所判事指名（ケタンジ・ブラウン・ジャクソンのさいこうさいばんしょはんじしめい、英：Ketanji Brown Jackson Supreme Court nomination）は、アメリカ合衆国最高裁判所の陪席判事であるスティーブン・ブライヤーの退官に伴い、2022年2月に、ジョー・バイデン米国大統領が、コロンビア特別区連邦控訴裁判所判事であるケタンジ・ブラウン・ジャクソンを指名した出来事である。2022年4月7日、アメリカ合衆国上院は、賛成53、反対47で彼女を承認し、ジャクソンが最高裁判所判事に就任することが決定した。黒人女性が合衆国最高裁判事に指名されるのは、史上初のことであった。

背景

アメリカ合衆国憲法の任命条項（第2条第2節）に基づき、判事の任命はアメリカ合衆国上院の助言と同意を得た後、アメリカ合衆国大統領によって行われる。今回退官するブライヤー判事は、ハリー・ブラックマン判事の退官によって、1994年8月3日にビル・クリントンによって最高裁判所に指名、任命された。ブレイヤーは87対9の投票で上院によって承認された。ブレイヤーはリベラル派であった。

ブライヤー判事の退官

2022年1月26日、NBCニュースが、ブライヤー判事が今期の終わりで退官する予定だと報道した。ジェン・サキホワイトハウス報道官は、「いつ最高裁判事が退官し、またそれを表明するのはその判事の決定である」などと投稿した。バイデン大統領は、自身が1987年から1997年にかけて上院司法委員会に入っていた経験を、ブライヤー判事に似た候補を見つけるための原動力として引用した。

最高裁判事の空席が迫る中、民主党などのグループは、バイデンが指名する判事を促進するため、数百万ドルにのぼるキャンペーンを実施すると発表した。民主主義者の非営利団体である「デマンド・ジャスティス」は、指名された判事を上院が承認するために、いくらでも費やすと言った。

指名

ジャクソン、2022年

候補者

2022年1月27日、バイデンは、彼のキャンペーン中の公約である黒人女性を指名することを再び主張した。この数日後に実施されたABCニュース/イプソスによる調査によると、アメリカ人の76%がバイデンがすべての候補者を検討するべきだとしており、バイデンが黒人女性のみを候補者として検討するといった公約を守るべきだとしていたのは、23%のみであった。似たようなモーニング・コンサルト/ポリティコによる調査では、51%がバイデンによる黒人女性指名を支持しており、それには民主党員の82%と無所属の47%が含まれていた。2月初旬に行われたデータ・フォー・プログレスによる調査では、民主党員93%と無所属59%を含む64%のアメリカ人が、バイデンが黒人女性を指名することを支持した。

一部の共和党員は、2005年にバイデンが、保守的なジャニス・ロジャーズ・ブラウンコロンビア特別区巡回区控訴裁判所判事が最高裁判所に指名された場合は彼女を妨害すると脅したことに触れ、バイデンが黒人女性を指名することを偽善的だと批判した。

2022年2月22日ごろ、バイデンが候補者の上位3人であるケタンジ・ブラウン・ジャクソン、J.ミシェル・チャイルズ、レオンドラ・クルーガーと面会していたことが報道された。

発表

2022年2月25日、バイデン大統領がジャクソンを指名することが発表された。発表で、バイデンは「実用主義、歴史的な視点、知恵、そして性格」を指名の基準であり、ジャクソンによる判決を「慎重で、先例に従っており、法律が人々に影響していることについて敬意を表している」と述べた。また、彼女が弁護士、第一審裁判所判事、アメリカ合衆国量刑委員会メンバーを経験していることを引用した。

分析

ファイブサーティエイトの分析によると、ジャクソンは最高裁判所の他の民主党に指名された判事と同様に判決を下す可能性が高く、司法コモンスペースによると、彼女はほかの民主党指名の判事よりもわずかに穏健であり、彼らよりも少々リベラル派であると評した。

指名への反応

支持

上院司法委員会委員長ディック・ダービンとジャクソン

上院多数党院内総務であるチャック・シューマーや、エイミー・クロブシャー、パトリック・リーヒなどを含む司法委員会の民主党員は、ジャクソンの指名について、支持を表明した。

以前バイデンにJ.ミシェル・チャイルズを指名するよう働きかけた下院多数党院内幹事ジム・クライバーンは、ジャクソンへの支持を表明し、承認での「2党の強力な支持」を求めた。

元控訴裁判所の判事であり共和党の大統領に指名されたThomas B. GriffithやJ. Michael Luttigも、ジャクソンの指名を支持した。ケイトー研究所の法学担当上級副長であるクラーク・M・ネイリーも、ジャクソンの指名に賛成した。

3月中、83人の元州検事総長が、ジャクソンの指名を支持する上院司法委員会への書簡に署名した。正式な支持ではない者の、アメリカ法曹協会の連邦司法常任委員会は、ジャクソンが最高裁判所の判事になる資格が「十分にある」と、満場一致で評価した。

反対

一部の共和党トップや上院議員が反対したものの、多くはジャクソンの指名について、のちに判断するとした。ミッチ・マコーネル上院少数党院内総務は、「裁判所の正当性や構造を長年をかけて攻撃している極左のダークマネー（非営利団体による政治献金）グループのお気に入りだ」と、共和党全国委員会は、「バイデンの危険な課題に、よく考えずに賛成してしまう過激な左翼活動家」とジャクソンを評した。過去にジャクソンがコロンビア特別区巡回区控訴裁判所の判事になる際は賛成した共和党上院議員のリンゼー・グラムは、この指名は、「過激な左翼が再びバイデン大統領を勝ち取ったことを意味する」と主張した。U.W.クレモン元地方裁判所判事は、ジャクソンを最高裁判事に指名しないよう手紙を書いた。

マーシャ・ブラックバーン、ジョシュ・ホーリー、テッド・クルーズなどの一部の共和党上院議員は、ジャクソンの児童ポルノ犯罪者へのの判決ガイドラインを下回る判決と、彼女の米国量刑委員会での児童ポルノ犯罪者の最低限の刑罰の削減または削除に対する支持を批判した。それに対し、ニューヨークタイムズは、彼女の児童ポルノ犯罪者の判決は寛大ではなく、量刑委員会での彼女の推薦が他のメンバーによってほぼ満場一致で支持されたため、この主張は誤解を招くとした。

世論調査

2月25日から27日にかけて、登録者によるポリティコとモーニング・コンサルトへの投票では、投票者の46%はジャクソンの指示を支持し、17%はそれに反対し、36%はどちらともいえないと回答した。3月1日から18日にかけてのギャラップの調査では、回答者の58%が指名に賛成し、30%が反対し、どちらともいえないと回答したのは12%であった。ファイブサーティエイトは、2月25日から3月22日までに実施された14の世論調査を集めた。その結果、平均では、47%のアメリカ人は指示を支持し、23%が反対し、30%はどちらともいえないと回答していた。

公聴会

3月2日、民主党上院議員は、4月上旬にある議会のイースター休会の前に公聴会を終わらせる狙いで、公聴会を3月21日から24日にスケジュールした。

3月21日、ジャクソンは委員会で開会声明を発表し、承認プロセスと彼女の過去を認め、彼女の助言者や家族に感謝した。22人委員会のメンバー数人は、これまでのジャクソンの指名や、彼女の資格、そして公選弁護人としての彼女の経験は、「弁護士を雇う余裕がなかった人々の目を通して、彼女が私たちの司法制度を独特に理解するのに役立つ」と、民主党と共に冒頭陳述をした。共和党は、ジャクソンの児童ポルノに関する判決や、「ジャクソン判事が憲法の原則に献身しているかどうか」などの、調査を意図したことに関して、懸念を示した。テッド・クルーズは、「赤ちゃんが人種差別的であると子供に教えられていると書いてあるこの本に同意しますか」と質問し、ジャクソンは本を読んだことがないが、子供たちを人種差別者や犠牲者、また抑圧者と感じさせるのには反対すると回答した。このやり取りにより、アンチレイシストな赤ちゃんの売り上げが劇的に伸びた。

3月22日、ジャクソンは13時間にわたり、上院司法委員会の上院議員20人から質問を受けた。質問は批判的人種理論、ブラックマネー、妊娠中絶、性同一性、司法積極主義、最高裁判所の拡大の可能性や、彼女の児童ポルノに関する判決記録などにわたった。マーシャ・ブラックバーンに女性の定義を訊かれると、ジャクソンは「私は生物学者ではない」と言い、回答することを拒否した。また、コリー・ブッカーは、彼女が2人の母親であることと仕事をどのように両立しているか、と尋ねた。ほかの共和党上院議員は、彼女は犯罪に甘いと非難した。

3月23日、ジャクソンは10時間にわたる質問を受け、彼女の司法哲学を説明したり、彼女の判決記録を擁護したりした。彼女は妊娠中絶、銃規制、最高裁拡大などの様々な質問をされた。ハーバード大学顧問委員であるジャクソンは、もし自分が承認されたら「公平な入学選考を求める学生達対ハーバード大学法人」からは忌避すると主張した。

3月24日、委員会は、アメリカ法曹協会代表、民主党所属のジョイス・ベイティー下院議員、そして共和党所属のスティーブ・マーシャルアラバマ州司法長官からの証言を聞いた。マーシャルが、証言中にジョー・バイデンを「正式に当選し、合法的に尽くしている」と認めなかったことは、大きく報道された。

上院投票

「D」は民主党、「R」は共和党、「I」は無所属を指す。

司法委員会

4月4日、上院司法委員会は、ジャクソンの指名を上院本会議に進める採決を実施した。民主党所属の11人が賛成したが、共和党所属の11人は反対し、賛否同票となった。

上院司法委員会の人事案採決
賛成		反対
党	上院議員	党	上院議員
D	ディック・ダービン	R	チャック・グラスリー
D	パトリック・リーヒ	R	リンゼー・グラム
D	ダイアン・ファインスタイン	R	ジョン・コーニン
D	シェルダン・ホワイトハウス	R	マイク・リー
D	エイミー・クロブシャー	R	テッド・クルーズ
D	クリス・クーンズ	R	ベン・サス
D	リチャード・ブルメンサル	R	ジョシュ・ホーリー
D	メイジー・ヒロノ	R	トム・コットン
D	コリー・ブッカー	R	ジョン・ニーリー・ケネディ
D	アレックス・パディラ	R	トム・ティリス
D	ジョン・オソフ	R	マーシャ・ブラックバーン
結果：賛否同票
出典：

上院本会議

進出

司法委員会での採決が賛否同票だったため、2022年4月4日、ジャクソンの指名の採決を上院本会議へ進めるか、上院で評決が行われた。結果は賛成53（民主党所属48人全員、共和党所属のスーザン・コリンズ、リーサ・マーカウスキー、ミット・ロムニーの三人、無所属二人）、反対47で、上院本会議で採決が行われることが決定された。司法委員会から上院本会議へ、最高裁判事指名の採決を進める際に司法委員会で賛否同票であり上院が採決したのは、1853年以来のことであった。

承認

2022年4月7日、アメリカ合衆国上院は、賛成53、反対47でケタンジ・ブラウン・ジャクソンをアメリカ合衆国最高裁判所陪審判事に承認した。 上院穂会議へ進める際の採決と同じように、民主党所属48人全員と、共和党所属のスーザン・コリンズ、リーサ・マーカウスキー、ミット・ロムニーの3人、そして無所属の2人が賛成し、それ以外の共和党員が反対した。

承認投票最終投票後（C-SPAN)

ジャクソンの承認を知り祝うバイデンとジャクソン

ジャクソン判事指名の承認採決
2022年4月7日	党			計
	民主党	共和党	無所属
賛成	48	3	2	53
反対	0	47	0	47
結果：承認
採決の詳細 上院議員 党 州 票 タミー・ボールドウィン D ウィスコンシン 賛成 ジョン・バラッソ R ワイオミング 反対 マイケル・ベネット D コロラド 賛成 マーシャ・ブラックバーン R テネシー 反対 リチャード・ブルーメンタール D コネチカット 賛成 ロイ・ブラント R ミズーリ 反対 コリー・ブッカー D ニュージャージー 賛成 ジョン・ブーズマン R アーカンソー 反対 マイク・ブラウン R インディアナ 反対 シェロッド・ブラウン D オハイオ 賛成 リチャード・バー R ノースカロライナ 反対 マリア・キャントウェル D ワシントン 賛成 シェりー・ムーア・キャピト R ウエストバージニア 反対 ベン・カーディン D メリーランド 賛成 トム・カーパー D デラウェア 賛成 ボブ・ケイシー・ジュニア D ペンシルベニア 賛成 ビル・キャシディ R ルイジアナ 反対 スーザン・コリンズ R メイン 賛成 クリス・クーンズ D デラウェア 賛成 ジョン・コーニン R テキサス 反対 キャサリン・コルテス・マスト D ネバダ 賛成 トム・コットン R アーカンソー 反対 ケビン・クレイマー R ノースダコタ 反対 マイク・クレイポー R アイダホ 反対 テッド・クルーズ R テキサス 反対 スティーブ・デインズ R モンタナ 反対 タミー・ダックワース D イリノイ 賛成 ディック・ダービン D イリノイ 賛成 ジョニ・アーンスト R アイオワ 反対 ダイアン・ファインスタイン D カリフォルニア 賛成 デブ・フィッシャー R ネブラスカ 反対 カーステン・ギリブランド D ニューヨーク 賛成 リンゼー・グラム R サウスカロライナ 反対 チャック・グラスリー R アイオワ 反対 ビル・ハガティ R テネシー 反対 マギー・ハッサン D ニューハンプシャー 賛成 ジョシュ・ホーリー R ミズーリ 反対 マーティン・ハインリック D ニューメキシコ 賛成 ジョン・ヒッケンルーパ D コロラド 賛成 メイジー・ヒロノ D ハワイ 賛成 ジョン・ホーベン R ノースダコタ 反対 シンディー・ハイド・スミス R ミシシッピ 反対 ジム・インホフ R オクラホマ 反対 ロン・ジョンソン R ウィスコンシン 反対 ティム・ケイン D バージニア 賛成 マーク・ケリー D アリゾナ 賛成 ジョン・ニーリー・ケネディ R ルイジアナ 反対 アンガス・キング I メイン 賛成 エイミー・クロブシャー D ミネソタ 賛成 ジェームズ・ランクフォード R オクラホマ 反対 パトリック・リーヒ D バーモント 賛成 マイク・リー R ユタ 反対 シンシア・ルミス R ワイオミング 反対 ベン・レイ・ルーハン D ニューメキシコ 賛成 ジョー・マンチン D ウエストバージニア 賛成 エド・マーキー D マサチューセッツ 賛成 ロジャー・マーシャル R カンザス 反対 ミッチ・マコーネル R ケンタッキー 反対 ボブ・メネンデス D ニュージャージー 賛成 ジェフ・マークリー D オレゴン 賛成 ジェリー・モラン R カンザス 反対 リーサ・マーカウスキー R アラスカ 賛成 クリス・マーフィー D コネチカット 賛成 パティー・マレー D ワシントン 賛成 ジョン・オソフ D ジョージア 賛成 アレックス・パディヤ D カリフォルニア 賛成 ランド・ポール R ケンタッキー 反対 ゲイリー・ピーターズ D ミシガン 賛成 ロブ・ポートマン R オハイオ 反対 ジャック・リード D ロードアイランド 賛成 ジム・リッシュ R アイダホ 反対 ミット・ロムニー R ユタ 賛成 ジャッキー・ローゼン D ネバダ 賛成 マイク・ラウンズ R サウスダコタ 反対 マルコ・ルビオ R フロリダ 反対 バーニー・サンダース I バーモント 賛成 ベン・サス R ネブラスカ 反対 ブライアン・シャーツ D ハワイ 賛成 チャック・シューマー D ニューヨーク 賛成 リック・スコット R フロリダ 反対 ティム・スコット R サウスカロライナ 反対 ジーン・シャヒーン D ニューハンプシャー 賛成 リチャード・シェルビー R アラバマ 反対 キルステン・シネマ D アリゾナ 賛成 ティナ・スミス D ミネソタ 賛成 デビー・スタバナウ D ミシガン 賛成 ダン・サリバン R アラスカ 反対 ジョン・テスター D モンタナ 賛成 ジョン・スーン R サウスダコタ 反対 トム・ティリス R ノースカロライナ 反対 パット・テゥーミー R ペンシルベニア 反対 トミー・タバービル R アラバマ 反対 クリス・バン・ホーレン D メリーランド 賛成 マーク・ウォーナー D バージニア 賛成 ラファエル・ウォーノック D ジョージア 賛成 エリザベス・ウォーレン D マサチューセッツ 賛成 シェルダン・ホワイトハウス D ロードアイランド 賛成 ロジャー・ウィッカー R ミシシッピ 反対 ロン・ワイデン D オレゴン 賛成 トッド・ヤング R インディアナ 反対

外部リンク

• “JUDGE KETANJI BROWN JACKSON: Nominee to become the 116th Associate Justice of the United States Supreme Court”. judiciary.senate.gov. 2022年4月20日閲覧。