コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

合唱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
合唱団から転送)
ウィーン少年合唱団

合唱(がっしょう)は、複数の人が複数の声部に分かれて各々の声部を複数で歌う声楽の演奏形態のこと[1]器楽における「合奏」の対語でもある。クワイア(choir)、コーラス(chorus)とも呼ばれる。

概要

[編集]

音楽用語としての「合唱」は、厳密には複数の声部をそれぞれ複数の人数で歌うことを指し、複数人の歌唱であっても声部が一つで全員が同一の旋律を歌う斉唱、声部が複数であっても各々の声部が一人ずつとなる重唱とは区別される。ただし、一般には大勢が声を合わせて歌うことを大雑把に全て「合唱」と呼ぶ場合もある[2]

歴史

[編集]

斉唱は古くより多くの民族の間で行われてきたと考えられるが、西洋音楽において合唱が現れたのは中世オルガヌムが最初である。当初は二つの声部が完全五度または完全四度で平行するだけの単純なものであったが、やがて高度なポリフォニーを生み出し、12世紀に頂点を迎えた。13世紀のアルス・アンティカ、14世紀のアルス・ノーヴァトレチェント音楽アルス・スブティリオルを経て、15世紀以降のルネサンス音楽へと発展した。

西洋音楽の合唱が日本人によって初めておこなわれたのは、1557年の聖週間に豊後府内(現在の大分県大分市)でおこなわれた歌ミサであるとされている[要出典]。日本最初の合唱曲は瀧廉太郎1900年に作曲した「組曲『四季』」に含まれている[3][4]

合唱の種類

[編集]

クラシック音楽における、合唱の主な分類法は次のとおり。

パート数による分類

[編集]

パート数により、二部合唱、三部合唱、四部合唱等と呼ぶ。部分的にパート数が異なる場合も、多くの部分がそのパート数であるならばそのパート数で呼ばれる。理論上は何部合唱でも作曲は可能であるが、大人数の合唱団や上級の演奏技術を有する合唱団に実演の可能性が限られることから、五部合唱以上のパート数を有する合唱曲は四部合唱以下と比べて数が格段に少なくなる。

ただし、曲のなかで一時的にパートがさらに複数に分かれることもあり、これはディヴィジョン(ディヴィジ)と呼ばれる(記号 div.)。ディヴィジョンによって複雑な和音が作り出されることが多い。

独唱の有無による分類

[編集]

合唱とは別に独唱者または重唱者が立てられることがある。わずか数小節を担当する程度のものもあれば、独唱曲に近い(合唱がほんのわずかしか登場しない)ものもある。管弦楽を伴う作品の中には、合唱とソロがそれぞれ別々の箇所を歌い、お互いが絡み合うことがまったくないものも多々見られる。この点は、独奏楽器と管弦楽が一緒に演奏する場面が必ずといっていいほど存在する協奏曲と異なるところである。

独唱ではなく、または、独唱に加えて語り手(ナレーター)の入る合唱曲もある。シェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」や、ツィンマーマンの「若き詩人のためのレクイエム」など、20世紀以降の作品に広く見られる。

伴奏の有無による分類

[編集]

無伴奏の合唱をア・カペラ(厳密な意味は教会風)と呼ぶが、日本の曲(民謡や童謡・唱歌)に対しては単に無伴奏と呼ぶ。伴奏が付く場合にはピアノオルガンによるものとオーケストラによるものが多いが、ハープ打楽器などによる伴奏もある。

声の性質による分類

[編集]

女声による合唱を女声合唱、男声によるものを男声合唱といい、変声前の声によるものを児童合唱(または童声合唱、少年合唱、少年少女合唱など。主に童声合唱)と呼ぶ。男女の声によるものを混声合唱という。また、混声合唱の対義語として同声合唱(男声合唱と女声合唱の総称)があるが、前述の童声合唱と読みが同じために混同されがちである。

また、二次性徴以前の男子の場合、ボーイソプラノとして、女声パートを歌う場合や、童声合唱で歌われることがある。

多く行われる合唱の形態

[編集]

上記の組み合わせにより、様々な形態が考えられるが、多く行われるものは次の通りである。

女声3部合唱(ソプラノメゾソプラノアルト
低音を補うためピアノなどを伴うことが多い。
男声4部合唱(第1テノール、第2テノール、バリトンバス
第1テノールが主旋律を歌うことが多いが、バーバーショップスタイルカルテットでは主に第2テノールが主旋律を担当する。無伴奏が多いが、他の楽器と共演することも珍しくない。
混声4部合唱(ソプラノ・アルト・テノール・バス)
和音和声的に確立されるため、きわめて基準性の高い編成といえる。コラールはこの編成で書かれる。また、和声学では、この編成を標準とする。無伴奏曲や他の楽器との共演曲ともに多い。また、オーケストラとの共演が、女声合唱や男声合唱に比べて多いのも特徴的である。

楽曲

[編集]

楽曲の分類

[編集]

宗教合唱曲と世俗合唱曲

[編集]

キリスト教の典礼文に曲をつけたもの、あるいは宗教的な色合いが濃い作品を宗教合唱曲(宗教的合唱曲)、それ以外の作品を世俗合唱曲(世俗的合唱曲)として区別する。それぞれ「宗教曲」「世俗曲」と略されるが、これらは独唱曲なども含む広い概念になる。このような区分法は、作曲家の作品リストやCDなどでしばしば見られる。

宗教的なものにはレクイエムミサ曲教会カンタータなど、そうでないものとしては世俗カンタータなどがある。

オペラとオラトリオ

[編集]

音楽劇であるオペラ、あるいはオラトリオには頻繁に合唱曲が多く含まれている。そのために書かれた楽曲が単独で合唱曲として歌われることも多い。

合唱組曲

[編集]

あるテーマに沿った複数の合唱曲を作曲家が一つにまとめた合唱組曲は、日本にその作品が多い。清水脩の男声合唱組曲「月光とピエロ」(1949年)によってこの形態が普及した。無伴奏、もしくはピアノ伴奏によるものが大多数である。他の形態の組曲と同じく、個々の曲を単独で演奏することも多い。

主な合唱曲

[編集]

男声合唱曲、女声合唱曲、児童合唱曲については男声合唱女声合唱児童合唱の項目も、無伴奏混声合唱曲については、無伴奏の合唱の項も参照。

日本人以外の作曲家による合唱曲

[編集]

日本人作曲家による合唱曲

[編集]

合唱を伴う主な交響曲

[編集]

合唱を伴う主な管弦楽曲

[編集]

合唱を伴う主な協奏曲

[編集]

合唱を伴うアンサンブル曲(管弦楽曲を除く)

[編集]

演奏団体

[編集]

クラシック音楽の合唱団はオペラハウス放送局専属の団体(○○歌劇場合唱団、○○放送合唱団など)はプロだが、それ以外は殆ど全てがアマチュアである。〇〇交響楽団合唱団のような名でプロのコンサートオーケストラが付属のアマチュア合唱団を擁したり、ヘルベルト・フォン・カラヤンのオペラを除く合唱付随曲録音の大部分でのウィーン楽友協会合唱団など、商業音楽活動においてもアマチュア合唱団が活躍する比率は高い。また、ベルリン・フィルの「第9」録音(クリュイタンス、カラヤン、フリッチャイら)などにしばしば参加しているベルリン聖ヘドヴィッヒ教会合唱団など教会聖歌隊も欧州では重要な存在である。都度報酬を受けるケースがあるとはいえ、それを成員の主要生計手段としていないアマチュア団体が商業活動の中でおいて大きな比率を占めるという点で合唱団は管弦楽団などと一線を画している。他でプロを名乗る団は世界的に少数であるが、オランダ室内合唱団、ウィーンのアルノルト・シェーンベルク合唱団、日本の東京混声合唱団などがある。ヨーロッパではほとんどの主要な都市にはオペラハウスがあり、そこには専属のプロの合唱団が存在している。特にドイツでは人口10万程度の中都市の歌劇場でも合唱団(とオーケストラ)を擁しているところが少なくない。オペラの合唱団は大きな動きや演技をともなったり、様々な衣装を身につけなければならないなど、コンサートや宗教用の合唱団とは異なった俳優としての能力を要求されるが、上記の二団体などオペラ出演に積極的(音楽祭などでは歌劇場合唱団が出演できないケースもあるため)な合唱団も存在する。

個別の合唱団については、

学校教育と合唱

[編集]

合唱は楽器を必要とせず、手軽に実施できることから、学校における音楽教育の場では重視される。

日本では小学校と中学校で音楽が必修であり、授業の中で取り上げられる機会はままある。音楽科の授業以外にも、特別活動として音楽会やクラス対抗の合唱大会などで行事に取り入れられている例が多い。入学式卒業式などの際に全体合唱をする例も数多く見受けられる。

また部活動の一環として、合唱部が組織されている学校も多い。学校によって、音楽部、コーラス部、グリークラブなどと呼称に揺れが見られる。合唱部の主たる活動としては、校内行事などで校歌等を学校を代表して演奏することや、都道府県の合唱連盟に所属し、所属地域の合唱団が集まる合唱祭と呼ばれるイベントに参加したり、おおよそごろに行われる合唱コンクールに参加したりすることである。主なコンクールとして、NHK全国学校音楽コンクール全日本合唱コンクールが挙げられる。さらには地域の老人ホームなどの施設への慰問演奏や定期演奏会などをする合唱部もある。しかし合唱連盟に所属せず、さらに合唱祭やコンクールなどに出場しない合唱部も少なくなく、ここに記した限りでない幅広い活動が見受けられる。

脚注

[編集]
  1. ^ 合唱 - コトバンク
  2. ^ 合唱 - コトバンクのうち、デジタル大辞泉大辞林 第三版の解説を参照のこと。
  3. ^ 青島 2004, p. 157.
  4. ^ 花(武島 羽衣 作詞/滝 廉太郎 作曲)”. NHK. 2024年1月4日閲覧。

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]