嶺重慎
嶺重 慎 (みねしげ しん) | |
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生誕 |
1957年12月10日(66歳) 日本 北海道札幌市(出身地は兵庫県宍粟郡山崎町) |
研究分野 | ブラックホールの研究 |
研究機関 |
茨城大学 京都大学 |
出身校 | 東京大学 |
博士課程 指導教員 | 尾崎洋二[1] |
主な受賞歴 | 井上学術賞(2006)[2]、日本天文学会林忠四郎賞(2007)[3]、京都新聞社会教育賞(2012)[4] |
プロジェクト:人物伝 |
嶺重 慎(みねしげ しん、1957年12月10日 - )は、日本の天文学者。京都大学理学研究科物理学・宇宙物理学専攻宇宙物理学講座教授を経て、同大学名誉教授。専門はブラックホールの研究。ユニバーサルデザイン天文教育・インクルーシブ天文の促進にも尽力する。
経歴
[編集]1957年12月10日北海道札幌市に生まれる[5]。1958年4月:兵庫県宍粟郡山崎町(現・宍粟市)に転居[5]。1964年4月山崎町立山崎小学校(現・宍粟市立山崎小学校)に入学[5]。1969年4月神戸市灘区に転居したのに伴い神戸市立福住小学校に転校[5]。1970年4月灘区の神戸市立上野中学校に入学[5]。1973年4月兵庫県立神戸高等学校に入学[5]。1976年4月神戸市の大道予備校にて浪人[5]。1977年4月東京大学理科一類入学[5]。1981年東大理学部天文学科卒業[5]、東大大学院理学系研究科修士課程天文学専攻に入学[5]。1983年東京大学大学院理学系研究科博士課程天文学専攻に進学[5]。1986年3月東京大学に博士論文を提出して審査を通り理学博士号を授与される[5]。論文の題は「Disk-Instability Model for Outbursts of Dwarf Novae(わい新星アウトバーストの円盤不安定性モデル)」[5][6]。
1990年9月茨城大学理学部助手[5]。1992年京都大学理学部助手[5]。助教授を経て、2001年4月京都大学基礎物理学研究所教授[7]。2008年4月より京都大学理学部教授[8][9]。 2019年より京都大学学際融合教育研究推進センター宇宙総合学研究ユニット長[10][11]、2022年より物理学先端教育研究センターCREPE(京都大学理学研究科物理学・宇宙物理学専攻)副センター長[12]を務める。 2023年3月をもって京都大学を退職[13]。
人物
[編集]- ブラックホール天文学・降着円盤研究の第一人者[2][3][14][15]であるとともに天文の教育と普及にも積極的に取り組んでおり、2014年まで天文教育普及研究会の会長を務めた[16]。会長退任後も年会担当幹事を務め[17]、同会の法人化後は日本天文教育普及研究会のコンプライアンス担当理事[18]や若手奨励賞選考委員長[19]を務める。とりわけユニバーサルデザイン天文教育[20]・インクルーシブ天文[21]の推進に情熱を傾けている。
- 2006年、「あらゆる人々と『宇宙や星について、共に感じ共に学ぶ喜びを共有する方策を考える』」ことを目的に、天文教育普及研究会にユニバーサルデザインワーキンググループを設立した[22][23][24][25]。2010年には国立天文台三鷹キャンパスにてユニバーサルデザイン天文教育研究会を開催[26]、2013年[27]と2016年[28]にも実施している。
- 視覚障がい者と連携し、有志とともに点図を活用した天文教材や書籍[29][30]、天文手話[31]を世に送り出してきた[11][16][20][32][33]。2009年には世界初のマルチモーダル天文教科書『天文学入門 宇宙と私たち』を製作し、全国の盲学校と点字図書館に無料配付した[34][35][36]。
- 2013年に行われた京都大学バリアフリーシンポジウム[37]をもとに、広瀬浩二郎とともに『知のバリアフリー』(京都大学学術出版会、2014)を出版[38]。京都大学バリアフリーシンポジウム2017[39][40]をもとに、広瀬浩二郎・村田淳とともに『知のスイッチ - 「障害」からはじまるリベラルアーツ』(岩波書店、2019)を出版した[21][41]。2022年11月12日に行われた京都大学バリアフリーフォーラム2022では実行委員長を務めた[42]。
著書
[編集]単著
[編集]- 『ブラックホール天文学入門』(2005年5月、裳華房ポピュラーサイエンス)
- 『ブラックホール天文学』(2016年1月、日本評論社新天文学ライブラリー)
- 『ファーストステップ 宇宙の物理』(2019年1月、朝倉書店)
- 『ブラックホールってなんだろう? たくさんのふしぎ傑作集』(2022年6月、福音館書店)
共編著
[編集]- 柴田一成・福江純・松元亮治・嶺重慎(共編)『活動する宇宙』(1999年、裳華房)
- 嶺重慎・小久保英一郎(編著)『宇宙と生命の起源』(2004年7月、岩波書店、岩波ジュニア新書)
- 嶺重慎・有本淳一(編著)『カラー版天文学入門─星・銀河とわたしたち─』(2005年7月、岩波書店、岩波ジュニア新書)
- 嶺重慎・高橋義朗・田中耕一郎(編)『光と物理学』(2007年10月、京都大学学術出版会)
- 加藤正二・福江純・嶺重慎『Black-Hole Accretion Disks:Towards a New Paradigms』(2008年、京都大学学術出版会、記述言語は英語)
- 高橋淳・嶺重慎『天文学入門 宇宙と私たち』[43]2009年、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター障害者支援研究部、非売品)
- 嶺重慎・高橋淳『宇宙と私たち 天文学入門ジュニア版』(2011年、読書工房) ISBN 9784902666267
- 高橋淳・坂井治・嶺重慎『ホシオくん天文台へゆく』(2012年3月、読書工房)
- 広瀬浩二郎・嶺重慎『さわっておどろく! - 点字・点図がひらく世界』(2012年5月、岩波書店、岩波ジュニア新書)
- 小久保英一郎・嶺重慎(編著)『宙と生命の起源〈2〉素粒子から細胞へ』(2014年6月、岩波書店、岩波ジュニア新書)
- 嶺重慎・広瀬浩二郎(編)『知のバリアフリー』(2014年12月、京都大学学術出版会)
- 嶺重慎・広瀬浩二郎・村田淳『知のスイッチ - 「障害」からはじまるリベラルアーツ』(2019年2月、岩波書店)
- 嶺重慎・佐々木貴教・浅井歩・藤原洋・篠原真毅・木村大治・松本紘『シリーズ〈宇宙総合学〉4 宇宙にひろがる文明』(2019年12月、朝倉書店)
掲載情報
[編集]- 『ブラックホール天文学入門』著者インタビュー[44](Anima Solaris、2005)
- 【天文学編】「そうだ、宇宙へ行こう!~ブラックホールとバリアフリーとの意外な接点~」[32](京大オリジナル株式会社、2020)
- 「宇宙物理学の教室 そうだ!宇宙に行こう!―手話と学問の意外な関係性」『もっと!京大変人講座』[45](三笠書房、2020)
- コロコロ「ブラックホールでうんこをしたらどうなるの?」 京大教授「うんこの前に自分が吸い込まれる心配をしましょう」[46](小学館コロコロオンライン、2020)
関連事項
[編集]脚注
[編集]- ^ 日本の天文学者の系図 - 福江純公式サイト内のページ。
- ^ a b “顕彰・研究助成事業”. 井上科学振興財団. 2022年10月1日閲覧。
- ^ a b “日本天文学会林忠四郎賞 受賞者”. 日本天文学会. 2022年10月1日閲覧。
- ^ 嶺重慎、広瀬浩二郎『知のバリアフリー』京都大学学術出版会、2014年。ISBN 9784876985425 。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 自己紹介 - 公式プロフィール
- ^ 博士論文書誌データベース
- ^ “過去に在籍した所員”. 京都大学基礎物理学研究所. 2022年11月17日閲覧。
- ^ “嶺重 慎(理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻宇宙物理学講座)”. 京都大学 教育研究活動データベース. 2022年11月17日閲覧。
- ^ “構成員紹介”. 京都大学 理学研究科 宇宙物理学教室. 2022年7月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月17日閲覧。
- ^ “メンバー”. 京都大学宇宙総合学研究ユニット. 2023年4月17日閲覧。
- ^ a b 「新ユニット長よりご挨拶」『宇宙総合学研究ユニットNEWS』2019年4月、1-4頁。
- ^ “物理学先端教育研究センター CREPE 組織と構成員”. 京都大学理学研究科物理学・宇宙物理学専攻. 2023年4月17日閲覧。
- ^ “嶺重慎教授最終講義「ブラックホール・インクルーシブ天文・そして宇宙」”. 京都大学理学研究科・理学部 (2023年1月20日). 2023年4月17日閲覧。
- ^ 福江純 (2002年3月19日). “ナラヤン歓迎ミニワークショップ@京都”. 2022年10月3日閲覧。
- ^ “市民講演会 ブラックホール --アインシュタイン理論と宇宙の姿 --”. 京都大学基礎物理学研究所 (2007年12月1日). 2022年10月3日閲覧。
- ^ a b 嶺重慎「天文教育・普及活動の現状と展望」『第28回天文教育研究会集録』、天文教育普及研究会、2014年、23-27頁。
- ^ 「2014年度 天文教育普及研究会 役員名簿」『天文教育』第26巻第5号、天文教育普及研究会、2014年9月。
- ^ “理事・監事”. 一般社団法人日本天文教育普及研究会. 2022年10月1日閲覧。
- ^ “2022年度 若手奨励賞”. 一般社団法人日本天文教育普及研究会. 2022年10月31日閲覧。
- ^ a b 「ユニバーサルデザイン天文教育の実践」『天文月報』第109巻第7号、日本天文学会、2016年7月、467-472頁。
- ^ a b 嶺重慎「インクルーシブ天文(学)~インクルーシブ概念で推進する天文教育普及~」『天文教育』第31巻第3号、日本天文教育普及研究会、2019年5月、4-8頁。
- ^ 嶺重慎「ユニバーサルデザイン・ワーキンググループについて」『第20回天文教育研究会』2006年。
- ^ 嶺重慎「ユニバーサルデザインWGの活動報告」『第21回天文教育研究会』2007年。
- ^ 嶺重慎「ユニバーサルデザインWGの活動報告」『第22回天文教育研究会』、天文教育普及研究会、2008年。
- ^ 嶺重慎]「ユニバーサルデザイン天文教育:新たな展開」『第27回天文教育研究会』、天文教育普及研究会、2013年、96-99頁。
- ^ “2010年 ユニバーサルデザイン天文教育研究会集録”. 2022年10月1日閲覧。
- ^ “2013年 第二回ユニバーサルデザイン天文教育研究会集録”. 2022年10月1日閲覧。
- ^ 嶺重慎ほか「特集 ユニバーサルデザイン天文教育研究会」『天文教育』第29巻第1号、天文教育普及研究会、2017年1月、3-86頁。
- ^ 縣秀彦「書評 マルチモーダル図書『ホシオくん天文台へゆく』」『天文月報』第105巻第12号、日本天文学会、2012年2月、787頁。
- ^ “バリアフリー天文科学絵本の開発・刊行”. 京都大学 (2012年4月25日). 2022年10月1日閲覧。
- ^ “日本天文教育普及研究会 天文手話WG”. 2022年10月1日閲覧。
- ^ a b 越前屋俵太、嶺重慎 (2020年10月). “【天文学編】「そうだ、宇宙へ行こう!~ブラックホールとバリアフリーとの意外な接点~」”. 京大オリジナル株式会社. 2022年10月1日閲覧。
- ^ “特別企画 嶺重慎先生のワークショップ”. 日本点字図書館付属 ふれる博物館 (2018年12月). 2022年10月1日閲覧。
- ^ 嶺重慎、高橋淳「天文点図のすすめ ~触って楽しむ天文書籍の普及を目指して~」『天文教育』第21巻第4号、天文教育普及研究会、2009年7月、45-50頁。
- ^ 嶺重慎・髙橋淳・長岡英司・マルチモーダル天文教科書プロジェクトチーム「マルチモーダル天文教科書の作成」『天文月報』第102巻第9号、日本天文学会、2009年9月。
- ^ “ルポ最前線を行く 世界初、天文学のマルチモーダル図書”. 点字毎日 (毎日新聞社): pp. 21. (2009年4月9日) 2022年10月2日閲覧。
- ^ “京都大学バリアフリーシンポジウム-しなやかで、したたかな「障害学習」のすすめ-”. 京都大学障害学生支援室 (2013年). 2022年10月3日閲覧。
- ^ 嶺重慎 (2014年12月12日). “SARIF活動報告: 知のバリアフリー”. 財団法人宇宙科学研究イニシアティブ. 2022年10月3日閲覧。
- ^ “京都大学バリアフリーシンポジウム2017 -創って、操って、奏でる「理のバリアフリー」”. 京都大学学生総合支援センター (2014年12月12日). 2022年10月3日閲覧。
- ^ 木下知威 (2017年9月12日). “許容の不安 — 京都大学バリアフリーシンポジウム2017”. 2022年10月3日閲覧。
- ^ 嶺重慎 (2019年3月15日). “天文教育フォーラム話題提供「Inclusive Astronomy」”. 日本天文教育普及研究会、日本天文学会. 2022年10月3日閲覧。
- ^ “京都大学バリアフリーフォーラム2022”. 京都大学 (2022年). 2022年10月3日閲覧。
- ^ “高橋淳・嶺重慎『天文学入門 宇宙と私たち』”. 国立国会図書館. 2022年10月1日閲覧。
- ^ “『ブラックホール天文学入門』著者インタビュー”. Anima Solaris (2020年12月). 2022年10月1日閲覧。
- ^ 越前屋俵太ほか「もっと!京大変人講座」第2巻、三笠書房、2020年4月。
- ^ コロコロコミック編集部 (2020年12月5日). “コロコロ「ブラックホールでうんこをしたらどうなるの?」 京大教授「うんこの前に自分が吸い込まれる心配をしましょう」”. 小学館. 2022年10月1日閲覧。