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札幌市交通局5000形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
札幌市営地下鉄5000形電車
南北線の高架部分を走行中の5000形電車
(2006年11月、南平岸駅)
基本情報
運用者 札幌市交通局
製造所 川崎重工業
製造年 1995年(試作車)
1996年 - 1999年
2009年 - 2011年
製造数 20編成120両
運用開始 1995年10月14日
運用終了 2034年度(予定)[1]
投入先 南北線
主要諸元
編成 6両編成
電気方式 直流750V
第三軌条方式
最高運転速度 70 km/h
起動加速度 4.0 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 5.0 km/h/s
編成定員 828人
車両定員 先頭車128(座席42)人
中間車143(座席45)人
自重 制御車 24.3 t
電動車 25.3 t
付随車 23.4 t
編成重量 179.4 t
全長 18,400 mm
全幅 3,080 mm
全高 3,730 mm
車体 アルミニウム合金
台車 電動車 KW-111
制御車・付随車 KW-112
主電動機

かご形三相誘導電動機

  • 日立 HS36930-02RB
  • 東芝 SEA-367
  • 三菱電機 MB-5072-A
主電動機出力 150 kW
駆動方式 平行カルダン駆動
編成出力 1,800 kW
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制動装置 電気指令式電磁直通液圧変換式ブレーキ
回生ブレーキ
保安装置 ATC 2重
ATO
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札幌市交通局5000形電車(さっぽろしこうつうきょく5000がたでんしゃ)は、札幌市交通局が保有する札幌市営地下鉄通勤形電車である。南北線のみで運用される。

概要

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1995年2000形の老朽取り替えと、ラッシュ時における混雑の緩和を目的に登場した。それまでの2000形や3000形は編成中の客用ドアが片側16ヶ所(1両当たり2ヶ所×8両)しかなかったため、特に乗降客の多い大通駅さっぽろ駅で乗降に時間を要しダイヤ遅延の原因となっていたほか、1両当たりの全長が13.5m級の小型車両8両編成のためデッドスペースとなる連結部が多く、収容力の面でも課題があった。また、南北線では各駅のホーム長が110m弱で建設されており、大通・北24条麻生などホーム両端に階段が設置されている駅も存在するため、ホームを延長しての車両増結は不可能な状況にあった。

検討の末編み出されたのが、当時東日本旅客鉄道(JR東日本)の山手線京浜東北線根岸線[注釈 1]、営団地下鉄(現:東京メトロ日比谷線[注釈 2]京阪電気鉄道[注釈 3]などで導入されていた多扉車のように、客用ドアの数を増やす方法であった。5000形では1両当たりの全長を18m級に大型化し、編成中の客用ドアを24ヶ所(1両当たり4ヶ所×6両)とすることで乗降の円滑化と混雑緩和が図られた。導入の報道発表があった直後は、座席数の減少や従来車両との乗車位置の違いで混乱を招くといった意見もあったが、結果的に専用席は同等の数を確保した[注釈 4]

乗車位置に関しては乗車位置表示の色(緑:旧型車両 青:5000形)で分けて案内することとなった。5000形の導入により南北線の各駅ホームにはLED案内装置が設置され、「○色の乗車位置でお待ち下さい」という表示で旧型車両と5000形のどちらが到着するのかを案内するようになった。5000形の編成数が少なかった時期は両方の案内があったが、5000形が大半を占めるようになると旧型車両到着時に限られるようになった(LEDによる案内は双方表示されていた)[注釈 5]

車体

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車体構造は東西線6000形東豊線7000形と同様の18m級片側4扉のボギー車で、従来の2000形や3000形での13.5m・2車体連接構造から大型化された。電動車 (M) と付随車 (T) の構成(MT比)は3M3Tの6両編成で2000形や3000形の8両編成と同一の編成長となっている。

正面デザインは3000形を踏襲して貫通路を左に寄せ、全体的に丸みを帯びている(側面の車体上部も同様[注釈 6])。行先表示器は7000形3次車同様のLED表示(日本語のみ)となっており、運用番号も明示される。カラーリングは東豊線7000形3次車から導入されたスタイルを踏襲し、アイボリーホワイトの車体に、正面貫通路と側面ドアが南北線のラインカラーであるグリーンに塗装されている。

平行カルダン駆動VVVFインバータ制御を採用し、主変換装置は東芝三菱電機日立製作所の各社製を採用し、ゴムタイヤ(専用開発のブリヂストンダブルタイヤ)直径は850mmと鉄車輪並みとされた。台車は1本リンク式ボギー台車を採用。また、主回路制御方式が2000形の抵抗制御、3000形の電機子チョッパ制御からVVVFインバータ制御に代わったことで消費電力の削減、保守にかかる費用や負担・煩雑さが軽減された。集電装置もL型上面摺動式から上面摺動一体アーム式に変更されている。

乗務員室の運転席には、シングルレバー式主幹制御器が採用された。また札幌市営地下鉄では初めて車上検査機能・機器モニター機能・運転支援機能を有している。

戸閉装置は従来の電磁空気式から、ベルト連動両開式電磁弁一体式に変更された。これにより客室ドア開閉の際の動作はほぼ無音となった。

内装

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車内もまた、これまでの札幌市営地下鉄の車両から大きく変化した。

など、これまでにない仕様が多数盛り込まれた。また暖房装置や送風装置(冷房機能は無い)も従来車とは異なるものを採用している。

車椅子スペースは、52XX・55XX (XXには編成番号が入る) に設置されている。各ドアの室内側上部には路線図案内表示器と路線図+LED併合タイプの案内表示器(横浜市営地下鉄3000A形と類似の2段表示式)が交互に設置されている。開戸予告として「このドアが開きます」という表示が各ドアに2つずつ点滅することで、次駅の降り口を分かり易く表示している[注釈 10][注釈 11]。 乗降促進ブザー音(車外向けドアブザー)は3000形第2編成以降の編成の音色に準じたものになっている。ただし、視覚障害者に対応することが求められるバリアフリー法基準を満たした車内向けドアチャイムは全編成(後述の新5000形含む)未設置である。

2018年2月より、第4編成のLED表示器が札幌市営地下鉄では初めてとなるフルカラーのタイプに改良されて営業運転を開始した。(後述)

登場時から現在に至るまで、以下の6両編成で運転されている。

 
麻生
号車 1 2 3 4 5 6
車両番号 51xx
(Tc)
52xx
(M)
53xx
(M')
54xx
(T)
55xx
(M)
56xx
(T'c)
xxには編成番号が入る。

登場時点から2024年10月現在まで、北海道における鉄道車両では唯一の4ドア車両である。

第18編成以降での変更点

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車内案内表示器(LCD)

南北線に残る3000形第2 - 5編成の老朽化に伴い、また2012年度の可動式ホーム柵設置および将来のワンマン運転化を控え、2扉車であるこれらを置き換えるため10年ぶりに5000形が増備されることとなった。外観こそ変化はないが、8000形(2006年度以降増備車)に設置された車両間の強化ガラス製仕切り扉やスタンションポールの設置、蛍光灯カバーの廃止、高低差のある吊革、車内案内表示機の液晶ディスプレイ(LCD)化など、これまでの5000形とは細部が異なる仕様となっている。2009年11月20日より運行開始(第18編成)された。なおこの編成は、北海道初のLCD式車内案内表示器の搭載車両となった。

また、車端部の窓も開閉可能となった。これは2段窓で、上段が下降する仕組みになっている。

LCD式車内案内表示器は各ドア上部右側に1台のみ設置されているが、その左側にはJR東日本のトレインチャンネルなどのような広告用画面の設置スペースが準備されている。通常は蓋が被せられており右側の案内用画面のみ使用されているが、かつて2010年12月15日から2011年1月9日まで、外部業者がディスプレイ48台を無償貸与し第18編成の左側の画面を稼働させ広告実験を行っていたこともある。

2009年の第18編成に続いて2010年に第19編成(11月15日より運行開始)、2011年に第20編成(11月28日より運行開始)が登場し、3000形は2012年3月25日限りで第5編成の営業運転を終了し、南北線車両は全て5000形に統一された。

製造

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全車川崎重工業製である。

改造

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つり革に高低差がついた第2編成車内
  • 1997年7月に第1編成の連結面に転落防止用幌の取り付けを行った。
  • 2006年夏に第1・第2編成の一部のつり革の高さを低くする改造が施された。これは8000形第4編成以降に施されたものとほぼ同じである。
  • 交通局は2009年度から随時ワンマン運転化改造を行う旨を発表、この時市議会に提出された予算計画には「南北線車両ワンマン運転化工事(5編成)」と記されていた。ワンマン運転化改造は、東西線8000形の2005年以前導入車両に施されたものとほぼ同じ内容であり、自動列車運転装置(ATO)を搭載し、2012年6月4日からATOによる自動運転が開始されている。
  • 2011年夏には第3編成の先頭車前面のLED式行先表示器が新型のものに取り替えられている。これによって、見た目は第18編成 - 第20編成のものと同様となり、最終的には第1編成 - 第6編成、第10編成が新型のものに取り替えられた。
  • 2014年には専用席付近の吊革がオレンジ色のものに交換された。

フルカラーLED改良

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504編成 行先表示
5000形 504編成インジケーター

2018年2月、第4編成の車両正面の行先表示器、並びに車内案内表示器のLED部分が従来までの3色LEDからフルカラーLEDに変更されて試運転を開始、同月17日より営業運転を開始した[注釈 12]。この表示器は視覚の個人差を解消するカラーユニバーサルデザインを採用しており、東西線用8000形を含め、2023年度末までの全車更新が計画されている[6]

仕様は以下の通り。

  • 車両正面の行先表示器は日本語と英語が交互に表示される仕様となっており、行先の駅のナンバリングも併せて表示されている。
  • 車内案内表示器は1ドットあたりの大きさが従来よりも大きくなり、視認性が高まった。
  • 従来の日本語・英語表示に加えてナンバリング表示・中国語・ハングルでの案内が可能となった。
  • 各車内案内表示器の上部分と千鳥方式でドア上に設置されたマップ表示も一新、未到達駅名とナンバリングが白点灯表示、通過した駅名や終着駅より先に行かない駅名(自衛隊前行きにおける真駒内駅など)は消灯表示、次の停車駅名は橙色の点滅から白と黄色の交互点滅に変更、駅名同士を結ぶ矢印の点滅・点灯方法は従来通りながらも赤色から黄色へ変更された。
  • 「このドアが開きます」ランプも従来通り設置されており、色も橙色点滅から黄色点滅に変更された[注釈 13]
  • 車両正面行先表示器・車内案内表示器それぞれの背景には星のマークが描かれている。
  • 2023年4月現在、第1~17編成に設置されている。

今後の予定

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「札幌市交通事業経営計画」の2024年3月改定版によると、本系列は2030年度から2034年度にかけて新型車両に置き換えられる予定となっている[1]

脚注

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注釈

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  1. ^ 現在はホームドア設置やE233系の導入に伴い多扉車は廃止された。
  2. ^ 03系電車。日比谷線はホーム両端に階段・出口がある駅が多い為、8両編成のうち両端の4両を5ドアとした編成があった。日比谷線に乗り入れる東武鉄道の車両のうち20050系も同様の構造だったが、現在は両者ともに廃車または3扉に改造されている。
  3. ^ 5000系電車。ラッシュ時は1両5ドアを活用し、閑散時間帯は中間の2ドアを締め切る。現在は運用を終了している。
  4. ^ 第三軌条かつ18m車での4ドア車としては、大阪市営地下鉄30系20系電車などの例がある
  5. ^ 2012年3月に南北線の全編成が5000形に統一されたためLEDおよび放送での案内は廃止されたほか、乗車位置表示も同年12月に南北線のラインカラーである緑色に統一され、当初5000形用であった青色のものは撤去された(但し天井部にある乗車位置は、5000形用のドア位置に緑色のステッカーが貼り付けられ、旧型車両用のものが撤去された)。
  6. ^ 以降に導入された8000形、9000形にも踏襲されている
  7. ^ 1998年に導入された東西線8000形車両にはこの形式は採用されなかったが、2015年に導入された東豊線9000形車両には採用されている。
  8. ^ 南北線5000形に設置された転落防止外幌は従来の鉄道車両に比べて大型のもので、車両の窓の上辺部分までの高さがある(後に設置された南北線3000形・東西線8000形はこの半分ほどの大きさである。第18編成も同様)。また、一部の編成の転落防止外幌には「アルミニウム・リサイクル」を示すALマークがついている。ホームドア設置後は取り外された。
  9. ^ この窓はワンマン化改造工事の際に撤去され、東西線8000形のような形状に変更されている。2009年度導入の第18編成は当初からこの窓が存在しない。
  10. ^ 点滅は開戸の前に限られるため、現在のバリアフリー法で制定された開閉予告ランプのような基準のものではない。
  11. ^ その代わり、LED表示器内では「このドアが開きます」「反対側のドアが開きます」といった表示はない。
  12. ^ この編成は一度元の3色LEDに戻されたが、再度フルカラーLEDに変更されている。
  13. ^ ナンバリング間を結ぶ緑色のラインは実際の駅間を表しており、3つ分のメモリが電車の大まかな現在地を表す。次停駅に近づく毎にメモリが1つ消灯し、最後の1つはドアが開くと消灯する。

出典

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  1. ^ a b 札幌市交通事業経営計画[令和元~10年度(2019~2028年度)]令和6年(2024年)3月改定版』(レポート) 本書版、札幌市交通局、2024年3月、26頁https://www.city.sapporo.jp/st/zaimu/documents/2024honsho.pdf2024年7月3日閲覧 
  2. ^ 『新車年鑑1996年版』p183
  3. ^ 『新車年鑑1998年版』p198
  4. ^ 『新車年鑑1999年版』p176
  5. ^ 『新車年鑑2000年版』p187
  6. ^ 札幌市. “札幌市交通事業経営計画【令和元~10年度(2019~2028年度)】について”. 札幌市. 2019年11月4日閲覧。