コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

植木雅俊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
植木 雅俊
人物情報
生誕 (1951-08-11) 1951年8月11日(73歳)
日本の旗 日本 長崎県
出身校 九州大学東洋大学
学問
研究分野 仏教学
テンプレートを表示

植木 雅俊(うえき まさとし、1951年8月11日[1][2] - )は、日本の仏教学者。理科系出身で多面的な仏教思想研究を行っている。

経歴

[編集]

1951年、長崎県生まれ。島原高校を経て、九州大学理学部物理学科で学んだ[2]。同大学院理学研究科修士課程修了し[2]、理学修士号を取得。東洋大学大学院文学研究科へ進み、博士後期課程を中退[2]。1991年から東方学院中村元に学んだ[2]

2002年、お茶の水女子大学に学位論文『仏教におけるジェンダー平等の研究:『法華経』に至るインド仏教からの考察』を提出して博士号人文科学)を取得[2][3](男性初[2])。2008年から2013年まで、東京工業大学世界文明センターで非常勤講師を務めた。NHK文化センター[2]、朝日カルチャーセンターでも講座を持つ。日本ペンクラブ会員。日本印度学仏教学会会員。比較思想学会会員。

受賞

[編集]
  • 1992年:小説『サーカスの少女』でコスモス文学新人賞を受賞。
  • 2008年:第62回毎日出版文化賞を受賞[2]。岩波文庫および中央公論社版の『法華経』の各サンスクリット原典訳の問題点(前者に関しては500箇所余り)を検討・批判した注釈で、1.サンスクリット原文、2.鳩摩羅什訳の書き下し文と、3.サンスクリット語からの現代語訳を対照した『梵漢和対照・現代語訳 法華経』(上・下)の功績に対して。
  • 2013年:第11回パピルス賞を受賞[2]。1999年にチベットのポタラ宮殿で発見された『維摩経』のサンスクリット原典を現代語訳した『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』の功績による。

その他の活動

[編集]
講義・講演
  • 2006年:同年10月20日東京大学仏教青年会で「仏教の女性観:その男女平等思想を考える」と題して講演。
  • 2007年:同年3月24日法政大学国際日本学研究所で「仏教受容の仕方についての日中の比較」と題して研究報告。後に増補し、『仏教、本当の教え:インド、中国、日本の理解と誤解』(中公新書)として出版されている。
  • 2010年:2010年度後期に東京工業大学世界文明センターで「思想としての法華経」と題し集中講義。後に『思想としての法華経』(岩波書店)として出版されている。
  • 2013年:同年1月20日、NPO法人東京自由大学で「仏教との出会いと、その後」と題して講演。
  • 2013年:同年7月14日、真宗大谷派名古屋別院「信道講座」で「鳩摩羅什訳の絶妙さ」と題し講演(『信道 2013年度』2014年10月発行に収録)。
  • 2013年:同年7月26日、創価大学の創価教育研究所の招きで、「絶妙だった鳩摩羅什訳:サンスクリット語から『法華経』『維摩経』を翻訳して」と題して講演(『創価教育』7に収録)。
  • 2014年:同年1月11日、NPO法人東京自由大学の主催する「人類の知の遺産・第VIII期6:中村元:わが尊敬する恩師」と題して講演。

2014年:同年2月23日、福岡県文化団体連合会の主催する「パピルス賞受賞記念・植木雅俊文化講演会」で「私の学問人生」と題して講演。

  • 2014年:同年6月15日、日本現代詩人会H氏賞の授賞式で記念講演。タイトルは「お釈迦さまも詩人であった」。
  • 2015年:同年7月11日、インド大使館で行なわれたインドと日本の詩人、文学者、学者ら13人によるシンポジウム「インド文学祭」で、「日本文学に見る大乗仏教の影響:短歌俳句を中心に」と題して発表。
  • 2017年:同年3月15日、京都深草の元政上人第350遠忌報恩法要が東京・池上本門寺で行なわれ、「元政上人の詩歌と仏教」と題して記念講演を行った[4]
  • 2017年:同年7月2日、日本科学協会主催セミナー「木魂する科学とこころ:科学と文化の交差点(宗教文化篇)」で、「原始仏教の知と信」と題して講演。科学史家・伊東俊太郎らとシンポジウムを行う。
  • 2018年:同年12月22日、二松学舎大学人文学会第118回大会で「インド仏教の日本文学への影響:短歌・俳句を中心に」と題して記念講演。
  • 2020年:同年2月1日、島原城築城400年記念事業協賛事業・市民文化講座で「我が二足草鞋の人生」と題して講演。
  • 2020年:同年2月14日、本門佛立宗の関東・甲信越地区の教務大会で法華経の思想について講演。
  • 2021年:同年7月11日に「原始仏教・法華経・日蓮との出会い」、11月28日に「原始仏教・法華経・日蓮に一貫するもの」と題し講演。これは京都佛立ミュージアムの企画展「思想としての法華経展」に合わせた連続講演。
  • 2022年:同年4月17日、神奈川・横浜市の妙深寺で「『100分de名著 日蓮の手紙』の裏話」と題して講演。
  • 2022年:経済同友会・同友クラブで4月22日に「物理学から仏理学へ」、5月17日に「21世紀に注目される仏教」と題し連続講演。
対談
  • 2013年:同年5月11日、日本近代文学館の主催する第73回「声のライブラリー」(自作の朗読と座談会)で『梵漢和対照・現代語訳 法華経』から「長者窮子の譬え」の箇所を朗読(20分)。続いて詩人の伊藤比呂美の司会で、古典エッセイストの大塚ひかりと座談会が開かれた[5]
  • 2015年:3月、4月、5月の3回、計15時間以上にわたって東工大名誉教授・橋爪大三郎と法華経について対談。[注釈 1]後に、この記録は『ほんとうの法華経』として刊行された。
協力ほか

2013年に作家の安部龍太郎歴史小説『等伯』を執筆する際に、『法華経』の思想や、長谷川等伯の「松林図」(国宝)についての『法華経』からの思想的意義付けについて、安部にアドバイスした[6]


中村元とのエピソード

[編集]

中村が逝去するまでの10年近く毎週3時間、中村から受講した時の講義ノートをもとに、『仏教学者 中村元:求道のことばと思想』(角川選書)を2014年に上梓した。批評家の若松英輔は「書かれるべき人が、書くべき人によって書かれた」と評した[7]

著書

[編集]

単著

[編集]
  • 『「三重秘伝抄」論考:人間主義仏法の探求』鴻鵠書院 1992
  • 仏陀の国・インド探訪:人間主義の源流を求めて』メディア・ルネッサンス 1994
  • 『男性原理と女性原理:仏教は性差別の宗教か?』中外日報社 1996
  • 『仏教に学ぶ対話の精神』中外日報社 1997
  • マザー・テレサ菩薩の精神:仏教の倫理観を求めて』中外日報社 1997
  • Gender Equality in Buddhism, Asian Thought and Culture series vol. 46, Peter Lang Publ. Inc., New York, 2001
  • 『仏教のなかの男女観:原始仏教から法華経に至るジェンダー平等の思想』岩波書店 2004[8]
    • オンデマンド版 2013
    • 改題文庫化『差別の超克:原始仏教と法華経の人間観』講談社学術文庫 2018
  • 釈尊と日蓮の女性観』論創社 2005
  • 『仏教、本当の教え:インド、中国、日本の理解と誤解』中央公論新社(中公新書) 2011[注釈 2]
  • 『思想としての法華経』岩波書店、2012
  • 『仏教学者 中村元:求道のことばと思想』角川学芸出版(角川選書) 2014
  • 『人間主義者、ブッダに学ぶ:インド探訪』学芸みらい社 2016
  • 『江戸の大詩人 元政上人:京都深草で育んだ詩心と仏教』中央公論新社(中公叢書) 2018
  • 『今を生きるための仏教100話』 平凡社新書 2019
  • 『法華経とは何か:その思想と背景』中公新書 2020
  • 日蓮の手紙 ビギナーズ日本の思想』角川ソフィア文庫、2021
  • パーリ文『テーリー・ガーター』翻訳語彙典』法蔵館 2023
  • 『日蓮の思想:『御義口伝』を読む』筑摩書房(筑摩選書) 2024

放送テキスト

[編集]
NHK-Eテレの4月放送テキスト
    • 『アンコール放送版 法華経 あなたもブッダになれる』NHK出版(100分de名著) 2019
NHK-Eテレの11月再放送テキスト
    • 改訂『100分de名著ブックス 法華経』NHK出版 2021
  • 日蓮の手紙 筆に込められた仏心』NHK出版(100分de名著) 2022
NHK-Eテレの2月放送テキスト

共著書

[編集]
  • Images of Women in Chinese Thought and Culture(Robin Wang・植木真紀子らとの共著), Hackett Publ. Inc., Massachusetts, 2003
  • 『東アジアの日本観』共著、三和書籍(法政大学日本学研究叢書) 2010
  • 宮沢賢治 イーハトヴ学事典』共著、弘文堂 2010
  • 『科学者の本棚』共著、岩波書店、2011
  • 『比較詩学と文化の翻訳』共著、思文閣(大手前大学比較文化研究叢書) 2012
  • 『ほんとうの法華経』橋爪大三郎と対談共著、ちくま新書 2015
  • 『深草元政上人墨蹟』解説、大神山隆盛寺文庫 2016
「元政上人の詩歌と仏教」植木著
  • 『仏教がわかるお経入門』共著、洋泉社(洋泉社MOOK) 2018
「なぜ法華経は『諸経の王』なのか」植木著
  • 『科学と宗教:対立と融和のゆくえ』金子務監修・日本科学協会編、中央公論新社 2018
「原始仏教の知と信」植木著
  • 『仏教がわかる お経入門』共著、洋泉社ムック 2018
  • 『多文化共生社会を生きる』李修京編集、権五定・鷲山恭彦監修、明石書店 2019
「宗教と寛容:『法華経』を中心に」植木著
  • 『二松学舎大学 人文論叢』共著、二松学舎大学人文学会 2019
「インド仏教の日本文学への影響:和歌、俳句を中心に」植木著
  • 『サーカスの少女』村上豊画、コボル 2021[9]
  • 「2年3組の子どもたちとの合作小説:『サーカスの少女』」、教育応援誌『けいいく』№164、モラロジー道徳教育財団 学校教育センター、2021年9月1日
  • 『日蓮生誕800年に思う:21世紀に注目される仏教』公益財団法人 ニッポンドットコム] 2024
「日蓮生誕800年に寄せて:21世紀に注目される仏教」植木著

現代語訳

[編集]

雑誌掲載

[編集]
  • 植木・大野晋対談2000「言葉による意思疎通を可能にするものは何か?」
  1. 『仏眼』第10号(2000年9月15日)
  2. 『仏眼』第11号(2000年11月15日)
  • 植木2014「鳩摩羅什〔訳〕の絶妙さ:仏教との出会いから『法華経』『維摩経』の翻訳まで」『信道(2013年度)』真宗大谷派名古屋別院[13]
  • 植木2015「思想としての法華経」『學士會会報』910号, 学士会
  • 植木2017「私の仏教探求の旅」『フラタニティ』No.8, ロゴス
  • 植木2018「『白蓮華』批判」『日本近代文学館』282号
  • 植木2019「九月三日のシンクロニシティ」『こころ』51, 平凡社

メディア出演

[編集]
テレビ・ラジオ
  • 2008年:同年12月21日放送『菅原文太 日本人の底力』(ニッポン放送)で俳優の菅原文太と、毎日出版文化賞を受賞した『梵漢和対照・現代語訳 法華経』をめぐって対談。
  • 2018年年4月:教育テレビ「100分de名著」で植木訳『サンスクリット原典現代語訳 法華経』「4月の名著」として取り上げられ、〝指南役〟として出演。好評により2019年11月にアンコール再放送。
新聞
  • 『仏教の出会いと人間主義の探求』中日新聞、2016年9月13、20日付(東京新聞は、9月17、24日付け)
  • 「仏教50話」西日本新聞文化欄(連載:2017年9月12日~11月28日)
  • 「科学と仏教」中日新聞2020年12月8、15日付(東京新聞は、12月15、21日付)
  • 「日蓮生誕800年に寄せて:温暖化への警鐘」中日新聞・東京新聞、2021年12月21日付

関連人物

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ この対談は、橋爪の7年来の念願で実現したという[要出典]
  2. ^ 本書の127頁16行目から129頁13行目までが、2015年の北海道医療大学の入学試験で国語・長文読解の問題として出題された[要出典]

出典

[編集]
  1. ^ 植木雅俊-X(旧Twitter)
  2. ^ a b c d e f g h i j 植木雅俊 プロフィール”. NHK. 2022年6月24日閲覧。
  3. ^ CiNii(学位論文)
  4. ^ 「中外日報」3月24日付、「日蓮宗新聞」4月10日付。[要文献特定詳細情報]
  5. ^ 第73回 植木雅俊/大塚ひかり/司会・伊藤比呂美 - 日本近代文学館”. 公益財団法人 日本近代文学館. 2018年9月12日閲覧。
  6. ^ 『等伯』の「あとがき」[要文献特定詳細情報]、植木雅俊著『思想としての法華経』の「あとがき」[要文献特定詳細情報]、安部龍太郎「直木賞を待つ」日本経済新聞2013年1月20日付、同「直木賞に選ばれて」毎日新聞2013年1月24日付夕刊など。[要文献特定詳細情報]
  7. ^ 『読売新聞』、2014年9月7日付[要文献特定詳細情報]
  8. ^ 博士論文を刊行したもの。
  9. ^ 本書は児童文学書。安部龍太郎序文。
  10. ^ 1300夜『法華経』梵漢和対照・現代語訳 - 松岡正剛の千夜千冊(2009年5月27日記)
  11. ^ 第62回毎日出版文化賞受賞
  12. ^ 第11回パピルス賞受賞
  13. ^ 『信道』は信道講座講演録。

外部リンク

[編集]