深町眞理子
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深町 眞理子(ふかまち まりこ、1931年11月1日 - )は、日本の翻訳家。
人物・来歴
[編集]東京府東京市生まれ。生命保険会社に勤務していた父の転勤のため、日本・朝鮮の各地を転々として過ごす。朝鮮の京城で敗戦を迎える。
京城府立第一高等女学校をへて[1]、1951年[2]、東京都立忍岡高等学校卒。
洋書輸入会社タトル商会(のち日本洋書販売)に11年間、勤務。同社の著作権部の宮田昇の推薦で山本恭子の下訳者を4年間つとめる。1962年に翻訳家を目指して退社し、宇野利泰・福島正実の下訳者をつとめながら、専業翻訳者となる[3]。
英米のSF、ミステリーを中心に、スティーブン・キング、ルース・レンデル、M・H・クラーク、アガサ・クリスティーなど数多くの翻訳を刊行している。一時期、樫村剛というペンネームも使用していた。
1980年に第2回延原謙賞を受賞。『アンネの日記』の新版(完全版)も訳した。コナン・ドイル作品では、シャーロック・ホームズシリーズほかを新訳している。
2009年に、小鷹信光・白石朗・越前敏弥・田口俊樹とともに「翻訳ミステリー大賞」を創設した。
浅倉久志が中心となって、翻訳家の交流会「エイト・ダイナーズ」が、小尾芙佐、深町眞理子、大村美根子、山田順子、佐藤高子、鎌田三平、白石朗というメンバーで行われていた[4]。
2013年、他のベテランSF作家らとともに、日本SF作家クラブの名誉会員となる。2001年時点で日本SF作家クラブ会員だったが[5]、2024年10月時点では会員名簿に名前がない。日本文芸家協会会員。
著書
[編集]翻訳
[編集]- 『兵士の館』(アンドリュウ・ガーヴ、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1964
- 『くじ』(シャーリイ・ジャクスン、早川書房、異色作家短篇集12) 1964
- 『渇きの海』(アーサー・C・クラーク、早川書房) 1965、のちハヤカワ文庫
- 『タイム・パトロール』(ポール・アンダースン、稲葉明雄共訳、早川書房) 1966、のちハヤカワ文庫
- 『慈悲の猶予』(パトリシア・ハイスミス、早川書房、ハヤカワ・ノヴェルズ) 1966、のち改題『殺人者の烙印』(創元推理文庫)
- 『永遠の終り』(アイザック・アシモフ、早川書房) 1967、のちハヤカワ文庫
- 『濃紺のさよなら』(ジョン・D・マクドナルド、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 1967
- 『ベルリンの壁のかなた』(ハリー・バーネット、早川書房 ハヤカワ・ノヴェルズ) 1968
- 『私のプリンセス 死と闘った愛の記録』(グンナー・マットソン、ノーベル書房) 1968
- 『殺人ファンタスティック』(パトリシア・モイーズ、早川書房) 1968、のちハヤカワ文庫
- 『人類皆殺し ジェノサイド』(トーマス・M・ディッシュ、早川書房) 1968、のちハヤカワ文庫
- 『シュロック・ホームズの冒険』(ロバート・L・フィッシュ、早川書房) 1969、のちハヤカワ文庫
- 『グレイベアド』(ブライアン・オールディス、早川書房、世界SF全集26) 1969、のち創元SF文庫
- 『カードの館』(スタンリイ・エリン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1969
- 『慕情』(ハン・スーイン、角川文庫) 1970
- 『成長の儀式』(アレクセイ・パンシン、早川書房) 1970、のちハヤカワ文庫
- 『漂泊の魂』(メアリー・マッカーシー、角川文庫) 1971
- 『銀河大戦』(エドモンド・ハミルトン、ハヤカワSF文庫) 1971
- 『地球の上に生きる』(アリシア・ベイ=ローレル、草思社) 1972
- 『ラヴ・ゲーム』(グウェン・ディヴィス、早川書房、ハヤカワ・ノヴェルズ) 1972
- 『太陽強奪』(エドモンド・ハミルトン、早川書房、ハヤカワSF文庫) 1972
- 『運転席』(ミュリエル・スパーク、早川書房) 1972
- 『大いなる大地』(ユードラ・ウェルティ、角川書店) 1973
- 『こちらへいらっしゃい』(シャーリイ・ジャクスン、早川書房) 1973
- 『悪を呼ぶ少年』(トマス・トライオン、角川書店) 1973、のち角川文庫
- 『男と女』(バート・ハーシュフェルド、ハヤカワ文庫NV) 1973
- 『アトランの女王』1 - 3 (ジェーン・ギャスケル、創元推理文庫) 1973 - 1974
- 『ビートルズの不思議な旅』(ピーター・マッケイブ,ロバート・D・ショーンフェルド、永井淳共訳、草思社) 1973
- 『野蛮人との生活 スラップスティック式育児法』(シャーリイ・ジャクスン、ハヤカワ文庫) 1974
- 『サンシャイン 20歳の愛と死』(ノーマ・クライン、二見書房) 1975
- 「ルーンの杖秘録」(マイケル・ムアコック、創元推理文庫) 1975 - 1980
- 『ルーンの杖秘録1 額の宝石』 1975、のち新版
- 『ルーンの杖秘録2 赤い護符』 1977、のち新版
- 『ルーンの杖秘録3 夜明けの剣』 1978、のち新版
- 『ルーンの杖秘録4 杖の秘密』 1980、のち新版
- 『太陽とともに生きる』(ラモン・センダー,アリシア・ベイ=ローレル、草思社) 1975
- 『九マイルは遠すぎる』(ハリイ・ケメルマン、永井淳共訳、ハヤカワ・ミステリ文庫) 1976
- 『バリー・リンドン』(サッカレー、角川文庫) 1976
- 『続サンシャイン』(ノーマ・クライン、二見書房) 1977
- 『少年と海』(コリン・シール、二見書房) 1977
- 『隅の老人の事件簿』(バロネス・オルツィ、創元推理文庫) 1977
- 『R.U.R.』(カレル・チャペック、講談社文庫) 1977、のちグーテンベルク21(電子書籍)
- 『光の王』(ロジャー・ゼラズニイ、早川書房) 1978、のちハヤカワ文庫
- 『果しなき旅路』(ゼナ・ヘンダースン、ハヤカワ文庫) 1978
- 『エイリアン』(アラン・ディーン・フォスター、角川文庫) 1979
- 『シュロック・ホームズの回想』(ロバート・L・フィッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫) 1979
- 『猫と話しませんか?』(パトリシア・モイーズ、晶文社) 1979
- 『闇の聖母』(フリッツ・ライバー、ハヤカワ文庫) 1979
- 『ロザリンド・フランクリンとDNA ぬすまれた栄光』(アン・セイヤー、草思社) 1979
- 『ヘパイストスの劫火』(トマス・ペイジ、早川書房) 1980
- 『なんといったって猫』(ドリス・レッシング、晶文社) 1980
- 『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』(マンリー・W・ウェルマン/ウェイド・ウェルマン、創元推理文庫) 1980
- 『宇宙士官候補生』(ゴードン・R・ディクスン、東京創元社) 1981、のち創元推理文庫
- 『アンナの小さな神さま』(フィン作、パパス画、立風書房) 1981
- 『邪魔をしないで』(ミュリエル・スパーク、早川書房、Hayakawa novels) 1981
- 『燃えつきた橋』(ロジャー・ゼラズニイ、ハヤカワ文庫) 1982
- 『ティーターン』(ジョン・ヴァーリイ、創元推理文庫) 1982
- 『血は異ならず』(ゼナ・ヘンダースン、宇佐川晶子共訳、ハヤカワ文庫) 1982
- 『狼森ののろい』(メアリー・スチュアート、佑学社) 1983
- 『コナン・ドイル』(ジュリアン・シモンズ、東京創元社) 1984、のち創元推理文庫
- 『ダウンビロウ・ステーション』(C・J・チェリイ、宇佐川晶子共訳、ハヤカワ文庫) 1985
- 『聖堂の殺人』(S・T・ヘイモン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1985
- 『悪魔なんかこわくない』(マンリー・ウェイド・ウェルマン、国書刊行会) 1986
- 『くらーいくらいおはなし』(ルース・ブラウン、佑学社) 1987
- 『アガサ・クリスティーの生涯』(ジャネット・モーガン、宇佐川晶子共訳、早川書房) 1987
- 『城館の殺人』(S・T・ヘイモン、早川書房、ハヤカワ・ミステリ) 1988
- 『探偵小説十戒 幻の探偵小説コレクション』(ロナルド・ノックス編、宇野利泰共訳、晶文社) 1989
- 『人生のルール』(フェイ・ウェルダン、福武書店) 1990
- 『海辺の家族』(アリス・ホフマン、早川書房、Hayakawa novels) 1990
- 『招かれざる客たちのビュッフェ』(クリスチアナ・ブランド他、共訳、創元推理文庫) 1990
- 『タロットは死の匂い』(マーシャ・マラー、徳間文庫) 1991
- 『ケンブリッジの哲学する猫』(フィリップ・J・デーヴィス、社会思想社) 1992、のちハヤカワ文庫
- 『トナカイ月 原始の女ヤーナンの物語』(エリザベス・M・トーマス、草思社) 1992
- 『辺境の人々』(オースン・スコット・カード、友枝康子共訳、早川書房、ハヤカワ文庫) 1993
- 『犬たちの隠された生活』(エリザベス・M・トーマス、草思社) 1995
- 『神さまはハーレーに乗って ある魂の寓話』(ジョーン・ブレイディ、角川書店) 1996、のち角川文庫
- 『花の記憶こころの庭』(ジャスティン・マトット、河出書房新社) 1998
- 『名探偵ポワロの華麗なる生涯』(アン・ハート、晶文社) 1998
- 『タートル・ムーン』(アリス・ホフマン、早川書房) 2000
- 『シュロック・ホームズの迷推理』 (ロバート・L・フィッシュ、共訳、光文社文庫、英米短編ミステリー名人選集7) 2000
- 『家蠅とカナリア』(ヘレン・マクロイ、創元推理文庫) 2002
- 『大尉のいのしし狩り』(デイヴィッド・イーリイ、白須清美他共訳、晶文社) 2005
- 『野性の呼び声』 (ジャック・ロンドン、光文社古典新訳文庫) 2007
- 『ぶち猫 コックリル警部の事件簿』(クリスチアナ・ブランド、吉野美恵子,白須清美共訳、論創社、論創海外ミステリ) 2007
- 『白い牙』(ジャック・ロンドン、光文社古典新訳文庫) 2009
コナン・ドイル作品
[編集]- 『シャーロック・ホームズの事件簿』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 1991
- 『シャーロック・ホームズの冒険』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2010
- 『回想のシャーロック・ホームズ』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2010
- 『緋色の研究』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2010
- 『四人の署名』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2011
- 『シャーロック・ホームズの復活』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2012
- 『バスカヴィル家の犬』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2013
- 『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2014
- 『恐怖の谷』(コナン・ドイル、創元推理文庫) 2015
アガサ・クリスティ作品
[編集]- 『親指のうずき』(アガサ・クリスティー、早川書房) 1970、のちハヤカワ文庫 改版2004
- 『クリスティー傑作集』(アガサ・クリスティー、番町書房) 1977
- 『NかMか』(アガサ・クリスティー、ハヤカワ・ミステリ文庫) 1978
- 『クリスティーの6個の脳髄』(アガサ・クリスティー、講談社文庫) 1979
- 『招かれざる客』(アガサ・クリスティー、ハヤカワ・ミステリ文庫) 1980
- 『七つの時計』(アガサ・クリスティー、ハヤカワ・ミステリ文庫) 1981
- 『海浜の午後』(アガサ・クリスティー、麻田実共訳、ハヤカワ・ミステリ文庫) 1985
- 『アガサ=クリスティ推理・探偵小説集』1 - 2 (アガサ・クリスティー、各務三郎編、偕成社文庫) 1986
- 『殺人をもう一度』 (アガサ・クリスティー、光文社文庫) 1988
- 『ABC殺人事件』 (アガサ・クリスティー、偕成社文庫) 1990、のち創元推理文庫
- 『さあ、あなたの暮らしぶりを話して クリスティーのオリエント発掘旅行記』(アガサ・クリスティー、早川書房) 1992、のちハヤカワ文庫
- 『茶色の服の男』(アガサ・クリスティー、早川書房 クリスティー・ジュニア・ミステリ) 2008、のち文庫
- 『ミス・マープルと13の謎』(アガサ・クリスティー、創元推理文庫) 2019
ルース・レンデル作品
[編集]- 『ひとたび人を殺さば』(ルース・レンデル、角川文庫) 1980
- 『薔薇の殺意』(ルース・レンデル、角川文庫) 1981
- 『わが目の悪魔』(ルース・レンデル、角川文庫) 1982
- 『乙女の悲劇』(ルース・レンデル、角川文庫) 1983
- 『指に傷のある女』(ルース・レンデル、角川文庫) 1986
- 『もはや死は存在しない』(ルース・レンデル、角川文庫) 1987
- 『偽りと死のバラッド』(ルース・レンデル、角川文庫) 1987
- 『仕組まれた死の罠』(ルース・レンデル、角川文庫) 1988
- 『惨劇のヴェール』(ルース・レンデル、角川文庫) 1989
メアリ・H・クラーク作品
[編集]- 『子供たちはどこにいる』(メアリ・H・クラーク、河出書房新社) 1977、のち新潮文庫
- 『揺りかごが落ちる』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1981
- 『暗夜に過去がよみがえる』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1989
- 『愛しいひとの眠る間に』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1990
- 『いまは涙を忘れて』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1993
- 『アナスタシア・シンドローム』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1993
- 『追跡のクリスマスイヴ』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1996
- 『ダンスシューズが死を招く』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1996
- 『恋人と呼ばせて』(メアリ・H・クラーク、新潮文庫) 1999
- 『殺したのは私』(メアリ・H・クラーク、安原和見共訳、新潮文庫) 2002
- 『見ないふりして』(メアリ・H・クラーク、安原和見共訳、新潮文庫) 2002
スティーブン・キング作品
[編集]- 『シャイニング』上・下(スティーブン・キング、パシフィカ) 1978、のち文春文庫
- 『ファイアスターター』上・下(スティーヴン・キング、新潮文庫) 1982
- 『クリスティーン』上・下(スティーヴン・キング、新潮文庫) 1987)
- 『ペット・セマタリー』上・下(スティーヴン・キング、文春文庫) 1989
- 『ザ・スタンド』上・下(スティーヴン・キング、文藝春秋) 2000、のち文春文庫
アンネ・フランク関連
[編集]- 『アンネの日記』(アンネ・フランク、文藝春秋) 1986、のち文春文庫、あすなろ書房
- 『思い出のアンネ・フランク』(ミープ・ヒース、文藝春秋) 1987、のち文春文庫
- 『アンネとヨーピー わが友アンネと思春期をともに生きて』(ジャクリーヌ・“ヨーピー"・ファン・マールセン、文藝春秋) 1994
- 『アンネ・フランクの生涯』(キャロル・アン・リー、DHC) 2002
出典
[編集]- 読売人物データベース
脚注
[編集]- ^ 大橋由香子 (2015年11月1日). “連載「"不実な美女"たち──女性翻訳家の人生をたずねて」vol.3 深町眞理子さんに聞く(2)”. 光文社古典新訳文庫. 光文社. 2018年12月27日閲覧。
- ^ 文庫版『成長の儀式』訳者紹介欄より
- ^ 大橋由香子 (2015年12月1日). “連載「"不実な美女"たち──女性翻訳家の人生をたずねて」vol.3 深町眞理子さんに聞く(3)”. 光文社古典新訳文庫. 光文社. 2018年12月27日閲覧。
- ^ 大橋由香子 (2014年3月20日). “連載「"不実な美女"たち──女性翻訳家の人生をたずねて」(vol.1 小尾芙佐さんに聞く 5回表)”. 光文社古典新訳文庫. 光文社. 2018年12月27日閲覧。
- ^ 『SF入門』(早川書房)巻末名簿