高速バス
高速バス(こうそくバス)とは、高速道路を主に通行する路線バスのことを指す。なお、国土交通省では高速バスを「都市間を結び停車する停留所を限定して運行する急行系統で、おおむね50キロメートル以上の系統を運行する乗合バス」[1]と定義している。以下、特記ない限り、日本国内の高速バス(道路運送法に規定される「一般乗合旅客自動車運送事業」の形態として運行されるバス)について記述する。
概要
一般的には、距離が数十から数百キロの都市間輸送、ないしは都市と観光地を結ぶものの中で、高速道路を利用するものを指す。ただし、高速道路上(道路標識など)では単純に「路線バス」と記載されている。観光バスなどとの識別のため(高速道路の料金区分が大型バスの場合、路線バスは大型車、それ以外は特大車料金になるため)、バスのフロントガラスの運転席寄りに「路線バス」の標識を付けている。
- ※ただ、ETCの普及で、料金所での人手を介した通行券の受け取りや支払いがなくなったことから、「路線バス」の表示はない場合も出ている。
リムジンバスとも特急バスとも称されることもある、都市と空港への連絡バスや、都市内輸送をする路線バスの中にも、経路上高速道路等を常に通過するものも存在するが、それらについては一般に「高速バス」とは呼ばない。ただし、営業案内の中では一般道路を経由するものと区別するために、それらのことを「高速バス」と明示される場合がある。「はとバス」等定期観光バスで、経路上高速道路を常に通行するものも除かれる。また、高速道路は通過しないが高速バスと同じタイプの車両を使用している路線(例:盛岡~宮古間の「106急行バス」や、熊本~大分のやまびこ号)も「高速バス」とは呼ばれないことが多いが、事業者によっては案内上は高速バスと同等に扱う場合もある。
なお、特急バスは上記のように、多くは一般道経由の長距離バスだが、事業者によっては高速バスを特急バスと称する場合もあり、路線名としてそのように称する場合もある。
高速道路を通過する際には、法規によりバスの着席定員以上の乗客を乗せて運行することが禁じられているので、所要時間1~2時間程度までの短距離路線など一部を除き、事前に席を予約する座席指定制を採用することが多い。一部では、一般路線バスと同様に予約不要だが、定員以上は乗車できない定員制を採用している。また、ほぼすべての路線で全席禁煙となっている。
他の交通機関と比較して安価であることが多く、人気はあるが、鉄道と異なり道路を利用する関係上、天気などの気象状態のほか、大型連休・旧盆・年末年始などの行楽シーズンや、集中工事期間、突発的な交通事故などの発生による渋滞・通行止めなどにより、定時運行ができないリスクがあることを覚悟する必要がある。さらに、スキー道具やサーフボードのような大型手荷物を有する場合、利用できないことが多い[2][3]。また、一般の路線バスと異なり、いわゆるバリアフリー対象から除外されているため、車椅子などでの利用は困難を伴う(床下の荷物収納室に折りたたんで収納し、座席までは数段のステップを上り下りするため、かなりの労力が伴う[4])。特に電動式は利用できない[5][6]。ただし、ダブルデッカーが使用される場合、1階席はもともとノンステップであるため、1階に車椅子スペースが設置されていることも多い[7](この場合、スロープなども用意されており、電動式ももちろん利用可能)。
客層は、短距離路線ではビジネス客も多いが、中・長距離では学生(いわゆるバックパッカー)など、金銭的な余裕はないが時間的な余裕は取れる層が多い。また近年では、時間的な余裕のある定年退職後の高齢者等が、鉄道に比べて乗り換えが少なくてすむことや、新幹線と比較して速度が遅いために車窓をより楽しめることを理由に(金銭面は理由とせず)、利用する例が増えつつある(ただ、一般的な高速バス用車両では、前述のように出入口から座席まで数段のステップを上下する必要があり、人によっては利用しにくいこともある)。
近年、観光業者が高速道路を利用したツアーバス(バス会社ではなく旅行代理店が観光バス(道路運送法に規定される「一般貸切旅客自動車運送事業」の形態として運行されるバス)を借りて、企画旅行(旅行商品)として行うバス輸送サービス)を「高速バス」と称して乗客の募集を行うことがあり、利用者側の誤解を招くとして問題視されている。
以下の記載は、基本的に路線バスとしての高速バスに限定して記述する。
車輌
観光バスタイプの車両に、行き先表示装置・自動放送装置・運賃表示機・運賃箱等の路線バス車両と同様の機器を取り付けている。ただし、完全予約制の路線については自動放送装置・運賃表示機・運賃箱のない車両が利用される場合もある。室内のシートは昼行路線が3列(2+1)または4列、夜行路線が3列独立シートが標準となっている。なお2+1タイプの3列シートでは、出入り口側に通路がある車両と運転席側に通路がある車両が混在する。
また、観光バスとして用いていた車輌に、運賃箱や放送装置などを取り付けて、高速バスに転用した車輌も多い。観光バスからの転用の場合、有る程度の距離を走る路線でもトイレ無しの場合がある。西日本鉄道などでは、夜行車を昼行転用したケースも見受けられる。逆に、JRバス関東では昼行用の車輌を独立3列シートに改造の上、夜行用に転用したことがある。
黎明期の高速バスでは、エンジン出力が大きい専用のものを搭載したバスをメーカーに特別注文したものもあった(その代表例が国鉄専用形式)が、通常の観光バスと比べ価格が高く、また市販の観光バスの車両も出力が大きくなったために、必要性が薄れ、現在では製造されていない。
ただし、前述のように各メーカとも通常の観光バスをベースとして、行き先表示装置など路線バスとしての装備と、車内を最小限の簡素な仕様とした高速バス向けの車輌を用意している。さらに、夜行高速車の場合、3列シート、床下仮眠室など夜行バス向けの装備と、高出力エンジンと制動力に優れたフルエアーブレーキを装備したインターシティ仕様を各メーカが設定している。
近年コストダウンのため、近距離高速バスについては高出力エンジン仕様のトップドア路線バスをベースとした車輌もあり、一部事業者で集中的に導入されている。
中長距離用の場合は最後部もしくは床下に便所を設けてあるものが多い。設置場所の制約から、コンパクトにまとめられている。ハイデッカー・スーパーハイデッカーでは中央部か最後部、ダブルデッカーでは1階の最後部に設置されている例が多く見られる。
沿革
1960年代・草創期
日本では、以下のバス路線が緒とされている。
- 1964年 - 名神高速道路の開通により、国鉄バス・日本急行バス(現・名古屋観光日急)・日本高速自動車(現・名阪近鉄バス)各社による名神ハイウェイバス(名古屋~京都・大阪・神戸間)が開業。ただし名神高速道路の部分開通時に近江鉄道が京都三条~八日市・日野間の運行を行っており、これが初の高速道路経由の定期バスとなる。
- 1968年 - 中央自動車道の一部区間の完成により、新宿~富士五湖間の長距離バスを中央自動車道(調布~八王子)に乗り入れ、中央高速バスとして運行開始。
- 1969年 - 東名高速道路の開通により、国鉄バス・東名急行バス(1975年廃業)2社による東名高速バス(東京~名古屋間)及び東京~関西地区を結ぶ夜行バスが開業。
これ以降、旧盆や年末に、貸切バスを利用した会員制「帰省バス」と銘打った大都市から地方都市への長距離バスが運行されるようになる。
1970年代後半・冬の時代
1970年代後半は、新幹線などの鉄道輸送網が所要時間などの面で優位に立ち、その上2度にわたるオイルショックの影響も重なり、高速バス路線の運営が硬直化していったこともあって、本州の高速バスにとっては厳しい時代を迎える。
- 東名急行バスの事業撤退(1975年3月限り)
- 日本急行バス、日本高速自動車が沿線合弁事業会社から単一企業系列会社(前者は名古屋鉄道系、後者は近畿日本鉄道系)へ転換した。さらに再編を経て、前者は名古屋観光日急に、後者は名阪近鉄バスに改称された。
- 名神ハイウェイバス名神茨木~神戸間運行休止
- ドリーム号東京~神戸間運行休止
- 国鉄自動車局のハイウェイバス拡大中止(中国ハイウェイバスの開業で国鉄姫新線乗客が減少したことが非難の的になった)
- 1978年に関越自動車道(当時。現北陸自動車道)新潟黒埼IC~長岡IC間が開通により、新潟~長岡間に地方都市間高速バスが運転を開始するなど、高速バス銀座となる路線がこのころ開設された。特にこの路線は、併走する上越新幹線等の乗客を奪うくらいの路線に成長し、JR側がどちらかというと苦戦を強いられているところでもある(このためJRは多数のトクトクきっぷを発売して対抗している)。
1980年代前半・現在の原型ができ、盛り返しの兆し
1980年代に入ると、旧国鉄の運賃・料金値上げや夜行列車の削減・廃止が相次ぎ、鉄道輸送網が次第に競争力を下げてゆき、高速バスの運賃面での優位性が際立ってきた。また路線の運営面でもより合理的なシステムが生まれた。そのため次第に高速バス路線が増加の傾向を見せる様になった。
- クローズドドアシステム(出発地周辺で乗車のみ、目的地周辺で降車のみ取り扱い、途中の経路地では乗降を行わない)導入により、大阪~新見間(阪急バス)に久々の高速バス路線新設が行われた。
- 中国自動車道では、他に日本交通・全但バス・国鉄中国地方自動車局(現・中国ジェイアールバス)で高速道への乗せ替えが積極的に行われた。
- 1983年の大阪~福岡間夜行高速バス「ムーンライト号」では発着地の事業者(阪急バス・西日本鉄道)による共同運行方式及び運賃収入のプール精算制(均等配分)といった現在の高速バスの原型となる施策が始められた。
- さらに東北新幹線接続の「ヨーデル号」、大阪~三次間といった都市間昼行路線の新設も進んだ。
- 特に1985年に開業した「東京 - 新潟線」は、併走する上越新幹線等の乗客を奪うくらいの路線に成長し、高速バス開業ブームの火付け役の一つとなった。またこの時期は国鉄で夜行列車が削減されていた時代でもあったが、東京池袋~新潟線に対抗して、企画ものの列車として全車指定の臨時快速『ムーンライト』を運転し、安売り切符を発売していった。これが現在の『ムーンライトえちご』である。
- この頃から、国鉄は並行する鉄道路線への影響を理由として、危機感を抱くようになる。新宿~駒ヶ根・飯田間の高速バス路線開設に関する「中央高速バス問題」は、国鉄が公式に路線開設反対を唱えたということで、それが最初に表面化した路線であった。
- その一方、新宿~駒ヶ根・飯田間の高速バスは、赤字続きだったバス会社が運行開始の翌年度に単年度黒字を計上することになり、高速バスがバス会社にとって重要な位置付けになることが明らかになってくる。
- 九州地方では九州自動車道の延伸と共に西日本鉄道、九州産業交通を先導に次々と高速バスを開設し、国鉄の特急列車を圧倒する。また長崎自動車道の延伸が進んだころに長崎方面への便を出していた九州急行バス『九州号』も一般道経由から今の高速道路経由へと移行していった。
- この時期までの座席は、昼行・夜行とも4列座席ばかりだった。
1980年代後半~1990年代前半・新規路線の増加
この時代は、好景気や高速道路網の拡大と相まって、大都市のバス事業者と地方の事業者が相互乗り入れ(共同運行)する形で路線拡大が急速に進み、全国ネットを確立していった時代である。
- 「ムーンライト号」で座席を一脚ずつの独立タイプとしてスペースにゆとりを持たせた初の独立3列シートを採用。これが東京発着の新規事業者に採用された。
- 1986年の品川~弘前「ノクターン号」では、それまでの夜行高速バスが大都市間を結んだ路線だったのに対し、初めて大都市と地方都市を結ぶ夜行高速バスとなった。「ノクターン号」の成功はバス業界全体にショックを与え、高速バス路線開設ブームへつながってゆく。
- 首都圏地域~京阪神地域では大手私鉄系のバス会社が次々と参入していき、この時期から競合が激しくなったと言えよう。これに触発されて既設のJRバスのドリーム号が4列シートから、3列独立シートへ移行していった。利用客も爆発的に伸び、各社もダブルデッカーも使われるようになっていった。
- この時期は「ノクターン号」・新宿~博多「はかた号」など東京と北海道・南九州地方を除く全国各地とを結ぶ長距離夜行路線が新規開設路線の中心であった。その当時の珍しいルートとしては品川~徳島間の「エディ」(当時は京浜急行電鉄バスと徳島バス)で途中の神戸市内~淡路島間ではフェリーを使っていた。
- その後、新宿~高山間・難波~東京ディズニーランド間など鉄道や飛行機が直行しない路線にも広がりを見せた。
- 筑波地区では1980年代以降の筑波研究学園都市の発展に伴い、1987年より東京~つくばセンター間の高速バス(つくば号)が開設された。運行後は、乗り切れない乗客が発生するケースも多く、絶頂期には輸送力増強を目的に一回りサイズの大きいバス(メガライナー)の導入も行われた。しかし2005年のつくばエクスプレス(TX)の開業で、バス利用客の多くがTXに移行し、激しい競争にさらされている。
- 大鳴門橋開通で徳島~津名港(現在の淡路市)に淡路交通・徳島バス共同運行として淡路・徳島線が新設され、乗客は津名港発着の神戸中突堤・天保山・関西国際空港行き高速船に乗り換える形であった。
- 中国地方(特に山陽地区)においては山陽自動車道の開通で広島市内発着(広島バスセンター、広島駅前)から中国地方の各都市への路線が開設ラッシュとなり、特に福山~広島間の「ローズライナー」はJR西日本の新幹線と在来線からシェアを奪っていった。
- 九州地方では1980年代前半に引き続き路線の拡大が行われ、昼行路線にも3列シート(夜行用とは違い1-2列シート)が導入される路線が相次ぎ、3列シート化にグレードアップすることにより利用客を増やした路線もある(させぼ号など)。対するJR九州も新型車両の導入や割引切符の拡充などで高速バスに応戦した。只最近では利用客増で4列シートに戻した路線もある。
1990年代後半・淘汰の時代
全国の高速バス路線網が一通り完成して「開設ブーム」が終わり、新規路線拡大が落ち着きを見せる。不況とも相まって、利用者のニーズに合わない路線が淘汰されていった時代といえる。
- 利用客が伸び悩み、採算の取れない路線の多くが廃止されていった。
- 運行時間が5時間以上に及ぶ長距離昼行便は全体的に利用が伸びず、廃止されたケースが多かった。
- 大都市と地方都市を結ぶ夜行高速バスにおいて、大都市側の事業者が運行から撤退するケースが相次いだ。東急バスの様に夜行高速バス自体から完全撤退した例もある。これは大都市側では乗務員の人件費が高いことに加え、一般に大都市と地方都市を結ぶ高速バスは、地方都市の事業者の方が利用者も多く運行に熱心であることも影響しているといわれる。
- 加えて、首都圏・近畿圏ではディーゼル自動車の排気ガスによる大気汚染を規制する自動車NOx法が施行されたことから、主力事業である路線バスで年式の古い車両(おおむね車齢が10年以上)の大量代替を迫られたことも、大都市圏事業者において高速バスの縮小・撤退や子会社移管が進んだ一因と考えられる。
- 一方では明石海峡大橋が1998年に開通したことで京阪神と淡路島・四国地方を結ぶ路線が次々と開設され、瀬戸大橋とは異なり、平行する鉄道路線が無いため現在に至るまで増便が繰り返されている程の盛況である。なお、徳島~津名港間の淡路・徳島線は津名港発着の高速船がすべて廃止されたことから利用客が激減し便数が特急10便・急行6便から特急1便・急行5便に減らされ、淡路交通単独運行に切り替えた。同時に淡路島・四国方面のフェリー航路は次々と廃止に追い込まれ、フェリー会社の離職者対策として高速バス会社が設立された(本四海峡バスなど)。また本四海峡バスとJR系のバスでは淡路島、四国(徳島・高松)方面では「BLUEネットワーク」を形成し、さらにはJR神戸線の舞子駅に快速電車、山陽電気鉄道本線の舞子公園駅に直特・特急(ただし、舞子公園駅は明石海峡大橋開通から8.5年後の2006年10月より毎日停車)を停車させて、高速バスとの接続を改善するなど、連携の構築を計った。
- 房総半島方面では東京湾アクアラインが開通し、東京都心部・羽田空港・川崎・横浜への所要時間が大幅に短縮された。このために品川駅、羽田空港、川崎駅から木更津方面のバスがフェリーの代替で新設された。明石海峡大橋と同じく通行料が高いため高速バスへの乗り継ぎ需要が大きく、東京湾アクアライン周辺では袖ケ浦バスターミナル、木更津金田バスターミナル、君津バスターミナルなど高速バス利用を前提としたパークアンドライドが推進されている。これにより、房総地区から羽田空港アクセス、東京駅・品川駅への新幹線接続の利便が向上した。またこのルートでは通勤客の利用が多いことが特徴であり、2000年代に入って、高速バスの定期券が発売されるようになったり、深夜バス(運賃は2倍になる)の新設を行うなど通勤・通学客に特化したサービスを展開している。通行台数が少なく赤字が続くアクアラインであるが、高速バスによって東京湾東西方向の利便性は格段に向上した。
2000年代・新たな生き残りの模索
2001年2月の改正道路運送法施行により、バスの新規路線開設、さらにバス事業自体の免許制から許可制への移行など、規制緩和されたことから、新規参入が活発に行われるようになり、高速バスは厳しい競争の時代を迎える。また過剰な設備を排し、高速バスの最大のメリットである低運賃を今までよりさらに追求していく傾向が出て来た。
- JRバスグループは生き残りのため、従来は考え得なかった夜行便より運賃を下げ(8,610円→6,000円)、550km以上を日中に長距離走行する東京・新宿~大阪・京都間の昼特急を新設した。JRバスグループは乗り換えを億劫がる高齢層をターゲットに考えていたが、実際は学生など予算は抑えたいが時間は取れる客層の方に受け、学生の長期休暇などの時期では予約が困難なほどの人気を博している。
- この昼特急の人気は、長引く不況などによる乗客のニーズの変化で、不人気で廃止路線が多かった長距離昼行便の需要が高まって来たことの証左とも言え、東京~弘前間の「スカイターン号」のようにこれまで夜行便しかなかった路線に昼行便が運行開始された例もあったが、(「スカイターン号」は、「昼特急」のように夜行便より運賃を下げている訳ではなく、夜行便と同一運賃で設定されたが、後に後発格安便の「青森上野号」に統合されている。)1990年代後半~2000年代前半に昼行便を廃止した路線で見直されたところは意外にも殆どなかった。
- 東京(周辺)~大阪(京阪神)間をはじめとする主要都市間では、主催旅行(ツアー)の形態を取った格安(東京~大阪間で片道3,000円台から)夜行ツアーバス(貸切バス)の設定が増加している。バスターミナルが利用できないため、周辺の駐車場等からの発着が多い。きっぷは当日購入できなかったり、取り消しや変更の制約が大きい場合が多い、集客状況によって経由地でバス乗換など、通常の路線バスと異なる面もあるが、価格の優位性から利用を伸ばしている。
- これに対抗して、東京~大阪間では1980年代前半以前に主流だった4列座席に戻し、さらに所要乗務員を減らすため運行時間を長く(途中で2時間以上の仮眠時間を設定すればワンマン運行可能)して運賃を下げた(東京~大阪間で5,000円)「青春ドリーム号」「カジュアルツィンクル号」「フライングスニーカー大阪号」の夜行便が設定され、逆に座席や車内設備をデラックス化して運賃を少し上乗せした便の運行を始めたりするなど、多様なニーズに対応している。
- 行き先のニーズによって立ち寄る停留所を増やす傾向もある。東名ハイウェイバスでは、東京・名古屋間をノンストップで走っていた「ノンストップライナー」を利用者の多い東名江田に停車させたり、新宿と四国(松山・高松)を結ぶ「オレンジライナーえひめ号」と「ハローブリッジ号」では、中央道上の中央道日野に停車させ、乗客の利便性を図っている。
一方で老舗の名神ハイウェイバスは、開業時から運行していた急行便を廃止し、途中の停留所を削減・集約している。 - 九州地区ではJR九州の特急ネットワークの充実ぶりを意識し、西鉄系高速バス路線を先導に運賃を片道1000円や1500円といったでわかりやすい運賃設定に値下げしたり、もしくは運賃を下げず往復乗車券・回数乗車券を値下げしたりする事例が相次いだ。また、都市高速と九州道が直結し定時性が確保されてきたことで、各路線で利用者が増え、増便となった路線が多い。最近では高速バス路線の集中する高速基山での乗り継ぎによる割引制度を導入し、対福岡間以外でも利便性の向上を図っている。
- 四国地方(特に香川県と徳島県)では、京阪神方面への高速バスの充実ぶりによって新たなる動きが見られる。高速バス利用者を対象に、バスターミナル付近の駐車場の駐車料金を24時間または48時間以内なら無料にするいわゆる「パークアンドライド」のシステムの採用が増えてきている。特に四国東部は公共交通機関が乏しく、マイカーの利用が主流になっている。またマイカーで京阪神方面に行くとなると、高速道路や本州四国連絡橋の料金などで割高(片道でも6000円前後になる)になるので、このように各地から京阪神方面へ安く行こうという利用者を狙っている施策であると考えられる。淡路島内でも、島内の路線バスの便数が少なくマイカー利用が中心であるため、神戸淡路鳴門自動車道上の淡路I.Cと淡路島南I.Cを除くすべてのバスストップや東浦バスターミナル、陸の港西淡に無料の駐車場が設置されている。ただ、問題点として、駐車料金が無料であるため、高速バス利用者以外の駐車や、数日間に渡っての長時間駐車、駐車場によっては未舗装や駐輪場未設置などがある。
- 南東北では、各都市と東京との間で格安のツアーバスが参入する一方、仙台市を中心とする東北地方内の都市間高速バス路線の値引き競争・新規路線開拓が続いており、陸上交通の再編が起きた(詳細は→仙台経済圏の交通環境の変化)。
- 東京都内~東海地方間では鉄道では直行できない区間を走る高速バスが急速に増えつつある。
渋谷・新宿から静岡県各都市を結ぶ高速バス路線や、東京駅~(清水駅経由)折戸車庫間「しみずライナー」、東京駅~富士駅・富士宮駅間「かぐや姫エクスプレス・やきそばエクスプレス」といった東京駅と静岡県各都市の中心部を直行する路線、東京駅~知多半田駅間「知多シーガル号」(夜行便を含む)などが新規に開設された。
各都市から東京への移動需要がありながらも新幹線の駅から離れていたり、東海道新幹線「のぞみ」が新横浜から名古屋まで無停車であり、静岡県内・愛知県東部から利用できる新幹線「ひかり」の本数も1~2時間に1本程度と少ないこと、かたや在来線は近年のダイヤ改正でJR東海道本線で、東海号が廃止され、普通列車も熱海等で短距離区間に分割され、東京へ直通する列車が大幅に減少するなど、各地域から東京へ直行できる鉄道がなくなったことが背景であり、直行需要を狙って高速バス路線を開設したものである。
一方、新幹線から離れた人口30万クラスの都市ながら、東京への直通高速バス路線が未だ昼・夜行とも無い一宮市のような所もある。 - 名古屋駅・栄発着においても東京都内~東海地方間と似たような動きがあり、豊田市、可児、関・郡上八幡、高山(いずれも名鉄系)の系統では増発傾向にある。特に高山系統は長年名鉄犬山線直通列車としての伝統を誇った「北アルプス」が廃止されるほどの勢いとなった。
- 大阪、京都発着においても、鉄道での往来が必ずしも便利でない大阪梅田~伊賀上野の路線が新規に開設され、さらに新名神高速道路開通に伴い、近鉄特急では大回りになる京都と三重県北中部とを直行する路線を新たに開設した。
- 反対に、大都市内の道路渋滞を避け、かつ従来はバスの通過を横目で見ていた大都市郊外の居住者層をターゲットとするため、敢えて都市圏の外縁部にターミナルを設定する高速バスも登場している。大都市圏では鉄道の本数が多く、乗り換えてもさほどタイムロスにならないため、渋滞のリスクと速達性の観点からいえば、高速バスの利点の一つである「直行性」を放棄してでも有効となりえるが、「あだたら号」(新越谷駅~郡山駅間)や守谷~日立線といったそれを意図した路線が頻繁にダイヤ改正を行うなど試行錯誤を繰り返し、苦戦している現状である。
現状
- 夜行バスは3列独立座席が主流になった。また西日本地区になると昼行でも長距離を走るバスになると3列独立座席が主流となる。(例;京阪神~高知、松山(西日本ジェイアールバス、ジェイアール四国バス)、大阪・神戸~鳥取・米子(日本交通)一方で東日本地区では夜行バスでも比較的短い距離であれば4列シートのバスが運用に就くことがある。
- 九州内昼行の各県相互では、JRとの競争からサービスの向上に取り組み、大半が2列-1列の座席配置である。(福岡~長崎県内(長崎;九州急行バス、佐世保;西肥自動車)福岡~鹿児島(西鉄・南国交通・いわさきバスネットワーク・JR九州バス)、福岡~宮崎県内(宮崎;西鉄・九州産交バス・宮崎交通、延岡;西鉄・宮崎交通など) 福岡~大分(西鉄・亀の井バス・大分交通;大分便の一部便は4列シート)
- 特別シートの設置
- 以前より、弘南バスの「ノクターン号」に、『スーパーシート』(プラス3870円)が設置されていた。また、ジェイアールバス関東では『Gシート』(プラス500円)も増えている。ここにきて、西日本ジェイアールバスが一階が『プレミアムシート』(プラス1300円)・二階が『スーパーシート』(プラス700円)の改造車を登場させ。さらに『スーパーシート』のみの車両は西日本ジェイアールバスは改造車、ジェイアールバス関東では新車を投入させている。
- 運賃が鉄道の普通運賃並みで安価なこと、国鉄が分割民営化前に中距離の昼行急行列車を軒並み特急に格上げさせ料金を上げたこと、さらに幹線から支線への直通列車や座席付き夜行列車を国鉄が減便させたのも相まって、特に女性や学生からの人気を獲得している。
- 安価な都市間交通手段として以下の路線で人気がある。
- 東京都内(東京駅・新宿駅)~名古屋・京都・大阪・神戸市内や東京都内~仙台、大阪市内~金沢・広島・博多などの昼行便(JR系会社(ジェイアールバス東北・ジェイアールバス関東・ジェイアール東海バス・西日本ジェイアールバス・中国ジェイアールバス・ジェイアール九州バス、ジェイアール四国バス)・近鉄系(防長交通)の[[[昼特急]]など)
- 観光バスと同様の4列座席にして定員を増やして運賃を下げた夜行便(JR系(ジェイアールバス関東・ジェイアール東海バス・西日本ジェイアールバス)の「青春ドリーム号」、京王・近鉄系(多摩バス・近鉄バス)の「カジュアルツインクル号」、東武・近鉄系(東北急行バス・近鉄バス)の「フライングスニーカー号」)
- 鉄道利用よりバス利用の方が所要時間が短い路線もある。このような路線も人気が高い。
- アクアライン高速バス:東京都内(東京駅・品川駅・羽田空港)・神奈川(横浜駅・川崎駅)~房総半島 (京成バス・京浜急行バス・東京空港交通・川崎鶴見臨港バス・日東交通・鴨川日東バス・小湊鐵道・東京ベイサービス・JRバス関東)
- 中央高速バス:新宿~富士五湖、飯田、身延(京王バス・富士急行・山梨交通・諏訪バス・信南交通・伊那バス)
- 中央道高速バス:名古屋~飯田・伊那・箕輪・駒ヶ根(名鉄バス・信南交通・伊那バス)
- 中国ハイウェイバス:大阪駅~津山、北条、西脇(西日本ジェイアールバス、神姫バス)
- 京都・大阪・神戸市内~淡路島・四国方面(西日本ジェイアールバス、ジェイアール四国バス、本四海峡バス、淡路交通、日本交通【淡路島方面】、徳島バス【徳島・阿南方面】、四国高速バス【高松方面】、関西の大手私鉄系バスなど)
- 名古屋~伊賀上野間の高速バス(三重交通)
- 高速八幡線岐阜~郡上八幡・郡上白鳥(岐阜バス・岐阜バスコミュニティ八幡)
- 広島(広島駅・広島バスセンター)~備北地区(三次・庄原)、山陰方面(出雲・浜田・松江)(備北交通、広島電鉄バス、中国JRバス、一畑バスなど)
- 福岡市内(天神、博多)~宮崎県内(西鉄、宮崎交通、九州産交バス)
罰則規定
2000年代に行われたバス事業規制緩和と引き替えに、交通違反などの各種法令に違反した場合の罰則規定が新たに設定された。
違反した場合、道路運送法40条に基づき、状況に応じて事業者・営業所単位で違反点数(使用停止台数と使用停止日数の積を10で割った数値)が付加され、累計違反点数が一定以上になると、50点以上でバス事業の停止、80点以上で取り消しの処分が行われる。そのため違反した事業者は、国土交通大臣及び各運輸局長・運輸支局長・自動車検査登録事務所長の命令により、一定期間違反した事業者・営業所での事業拡大(路線の開設や参入)が禁止される(このことを服喪期間という。ただし地元自治体などからの要請があれば特例で路線開設を認める場合もある)。
違反点数の累計期間は3年間で、行政処分から3年経過した時点で消滅する。ただし、違反点数が付加されていない営業所において行政処分以前の2年間に違反行為がなく、かつ違反点数が付加された営業所において2年間違反行為がない場合は、行政処分から2年経過した時点で消滅する。なお事業者が分割・譲渡した場合は事業者・営業所単位の累積違反点数が承継される。
なお、2004年8月1日に基準が改正され、事業拡大の禁止期間がそれまでの2年間から、5点以下の処分で3か月、19点以下で6か月、20点以上や悪質違反で1年間に緩和されたが、車両停止の処分については厳格化され、従来は使用停止台数と使用停止日数の積を10で割った数値が整数でない場合は端数を切り上げていたが、改正後は使用停止車両のうち1台の使用停止日数を延長して整数となるように変更された(端数調整により日数が延長されるのでより厳しくなっている)。2006年5月には、飲酒運転を放置した事業者に対しては、違反点数に関係なく事業停止の処分が下せるようにするといった法案が提出され、早ければ同年夏ごろから適用される予定である。
乗車券
座席定員制
座席指定なしで発売。この場合は事前予約はできないので、乗車時に始発ターミナルの窓口で乗車券を購入するか、一般路線バスの様に車内で直接運賃を支払うことになる。先着順に乗車し、空いている席に自由に座ることができる。満席となった場合はそれ以上乗ることができないが、その場合は補助席を利用することになる。法令により高速道路では立っての乗車はできないため、補助席も埋まると次発の便に廻されてしまう。近距離(100km程度まで)の高速バスはこの方式を採用している路線が多い。
予約定員制
基本的には座席定員制と同じだが、事前に乗車する便を指定して予約することが原則である。座席は指定せず、空いている席に自由に座ることができるが、予約していればその便の座席が1席分確保されているので満席で乗れない心配はない。予約せずに乗る場合は予約した乗客が優先されるため満席で乗れないこともあり得る。その場合も座席定員制と同様、補助席を利用する。補助席も埋まると次発便へ廻される。
座席指定制
予約指定制ともいう。事前予約を原則とし、発券時に乗車便・座席も指定するもの。ほぼすべての夜行路線や、私鉄・専業系バスの中・長距離路線の大半で、この方式が採用されている。詳細は後述する。乗車券はバスターミナルなどにあるバス事業者の直営窓口や旅行会社で事前に購入する。購入前に電話で予約ができる路線がほとんどである。なお、バスターミナルや旅行会社以外での購入方法として、次のようなシステムがある。
- JR鉄道駅などの「みどりの窓口」
- 高速バスネット(会員制インターネット予約システム)
- JRバスの高速バスの大半(ジェイ・アール北海道バスの路線を除く)。ドリーム号・ニュードリーム号の大半、中央ライナー、[[[昼特急]]など。
- インターネット予約システム(JRバス以外の民営バスが中心)
- 一部コンビニエンスストアの多機能端末機(マルチメディアステーション)
- 大都市周辺発着の一部路線
座席指定制路線におけるチケットの購入方法
本数の多い都市間路線の場合には、当日に乗り場へ赴いても乗車券(チケット)が買えることが多い(よほどのケースを除いて満席になることがない)が、日中運行する最初の便や最終便、並びに夜行路線の場合には早くから予約を入れないと満席になっていることが多い。本数が少ない夜行路線の場合は、運行会社の指定する期日までに購入する必要がある。期日は、会社によってまちまちで、乗車日の5日前まで、予約してから4日以内…、など様々なので、予約時に確認しておく。確認しておかないと、購入期限切れとなって予約を取り消される場合もあるので注意が必要である。
従って、事前に何らかの手段で予約を入れ、乗車券を購入する必要があるが、現在のところ、後述記載の外部リンクの高速バス予約ウェブサイト参加路線以外ではインターネット予約ができない路線が多い。また、共同運行の相手側の会社が参加していない場合もある。この場合はバス会社の予約窓口に電話予約し、座席を確保した上で、バス会社の直営窓口(バスターミナルや営業所など)や大手の旅行会社から乗車券を購入することになる。旅行会社から購入する場合には、JRや飛行機(航空券)と異なり、規定の運賃以外に「(手配旅行)取扱手数料」を徴収される場合もある(これはJR以外の私鉄有料特急やフェリーも同じ)。なお、運行バス会社系列の旅行会社(例えば小田急バス(小田急シティバス・小田急箱根高速バス)の高速バスなら小田急トラベルサービス)で購入する場合は、手数料は徴収されないことが多い。また、JR券の発行ができる(マルス端末=みどりの窓口を持つ)旅行会社等で、JRバス系列のマルス収容の乗車券・指定券のみを発券する場合は、JR券発券とみなされ、手数料不要となる場合が多い(宿泊などを含めた複合手配の場合は、手配旅行となり、手配旅行取扱手数料の対象となることもある)。
一部路線では、予約サイトで予約後に、次のような方法で乗車券を購入することもできる。
- セブン-イレブンを除くコンビニエンスストアの多機能端末機(マルチメディアステーション)(ファミリーマートのFamiポート、ローソンのLoppiなど)でのチケット購入。端末機で空席照会・予約もできる路線もある。
- セブン-イレブンの収納代行サービスによるチケット購入(控えレシートが乗車券の代わり)
- 自宅や会社などのパソコンとプリンターを使った「インターネット乗車票」サービス(インターネットでバス会社や旅行会社のウェブサイトにアクセスし、乗車票ページを印刷して乗車券の代わりとするもの。支払手段はクレジットカード)
- iモードやYahoo!ケータイ、EZwebに対応した携帯電話を利用したチケットレスサービス(バス会社や旅行会社のウェブサイトにアクセスし、二次元バーコードをダウンロードして、電話機にバーコードを表示して乗車する。支払手段はクレジットカード)。
「ドリーム号」などJRバスの夜行便や「昼特急」の場合は、JR鉄道駅や大手旅行会社などのみどりの窓口で規定の運賃で乗車券の予約・購入が可能。ただし、マルスのシステム上、鉄道乗車券・指定券の発行より多少テクニックや操作知識・情報が必要であるため、特に、日ごろ高速バスの発券がない地方の駅や、遠方発着の乗車券を購入する場合などには、多少時間がかかるなどの覚悟は必要である。
また、座席指定制路線でも、当日乗るときに空席があれば、乗車できることもある。
マルスシステムでの高速バス乗車券・指定券発券
- M型マルス端末時代 その地域で発券の多い路線はプリセット機能により列車名(バス愛称)略号や、乗降駅略号の入力が省略でき、スピーディに発券できるが、プリセットされていないバスや乗降駅の場合、列車名略号、乗降駅略号を手入力しなければならなかった。略号はタリフと呼ばれる、バスごとに略号や発券方法、取扱条件などをまとめた分厚いマニュアルに記載されており、それを調べるため発行に時間がかかることもあった。また、鉄道駅と異なる乗降駅略号が設定されている場合が多く、鉄道駅と同じ略号を入力して再考(エラー)となることも多かった。
- MR型マルス端末と呼ばれる、タッチパネル式端末では、略号を調べて入力しなくても、画面上で一般的な愛称で列車名(バス愛称)が検索できる支援機能が搭載されると同時に、操作画面上も一般的なバス愛称名で取り扱いができるようになった。そのため、M型との混在期には、みどりの窓口扱いの高速バスのヘビーユーザーが、MR端末の列を選んで乗車券・指定券の購入を依頼したり、MR端末のある駅をわざわざ選ぶケースも散見された。ただ、MR型でも、愛称名が似ている路線名が複数ある場合の選択ミス、駅名ミスなどで再考となるケースはあった。
- マルス端末の支援機能は進歩し、現在では間違っている可能性がある箇所が表示されるなどの機能強化で、地方駅でもバス乗車券の購入は容易になってきている(ただし、指定席券売機では、バス券の購入はできない。JR東日本の地方の一部駅にある通信機能付き指定席券売機「もしもし券売機Kaeruくん」については不明)。
- JRバス各社が、発車オ~ライネットを積極的に活用するようになると、マルス端末でも発車オーライネットの端末でもJRバスの乗車券・指定券の発行ができる路線が出現してきた。しかし、相互に接続されていないシステム同士の座席数振分が問題になった。マルス管理席が満席でも、発車オーライネット管理席に空席がある場合が発生し、両方のシステムに座席が収容されている路線が発着する場所に隣接しているJRバスのチケット発売所では、マルス端末と発車オーライネット端末の両方を用意し、席のある端末から発券する手間が発生するようになった。また、一方に予約が固まると、バス会社の座席管理部署でも、座席調整が必要となる場合もあった。なお、マルスと発車オーライネットに割振る座席の数の比率は、路線の事情により様々である。
- このような事情から、JRバスに限らず、ある予約システム上で満席の場合でも、別の予約システム枠、あるいは運行会社の直接管理枠に空席がある場合もあるので、あきらめずに当たってみると良い。
- 西日本JRバスでは、マルスと間接的に接続された、JR西日本の指定券電話予約サービス5489サービスで、マルス収容のバス乗車券・指定券の電話予約を受け付ける時期があった。関東方面を結ぶ夜行バスは人気があったが、東日本エリアの事情から、マルス収容席の比率も多く、発車オーライネット枠が先に売り切れるケースが多かった。そのため、全席を発車オーライネットで管理し、最後の1席まで電話予約・インターネット予約ができる私鉄系バスを好む利用者も多く、利用者確保の策であったともいえる。また、5489サービスで予約したバス乗車券・指定券は、みどりの窓口での発券時に、予約時に申告したクレジットカード番号をキーに予約を検索できるため、迅速な発券が可能である。
- 2006年から、マルスの管理・運営をしている鉄道情報システムが開発した高速バスネットの運用が始まった。JRバスグループの高速バスの座席が、電話・インターネット・窓口で予約できるほか、コンビニ支払いやインターネット乗車票の発行(路線によっては2~5%割引がある)など、マルスではできなかった取扱が可能になった。さらにマルスや発車オーライネットと相互接続されており、一方に予約が固まった場合に座席配分を自動調整できるなど、従来の問題点が徐々にクリアされてきている。鉄道情報システムが管理しているため、マルスとの連携も含めた、今後のマルスにおける高速バス券取扱いの行方が注目される。
日本国外の高速バス
鉄道や航路の未発達な途上国を中心に利用されているが、先進国・準先進国でも、高速道路が発達した地域では、多くの路線が設定されていることが多い。フィリピンやペルー、ドイツや台湾、韓国はそれぞれの例である(韓国のバスも参照)。特に鉄道・航空機との競争が激しい台湾では、路線によっては2列シート、按摩、おしぼり、個人TV、バスガール付きの豪華な都市間高速バスが24時間体制で運行されている。
一方アメリカ合衆国では、アラスカを除く本土全土に路線網を有する「グレイハウンド」高速バスがあるが、鉄道のアムトラック同様以下の理由により都市間交通は高速な航空機(格安航空会社)の独擅場と化し、都市間バスは淘汰されつつある。
- 国土が広いため、全土の移動手段としては時間が掛かり過ぎる(日本の高速バスの距離程度のサンフランシスコ~ロサンゼルス間で8~10時間程度、大陸横断では乗り継ぎで4日程度要する)。
- 1980年代以降の航空自由化により国内線航空運賃の値下げが行われた結果、航空機での移動が一般的になり、高速バスの客層が低所得者層主体になり雰囲気が悪化した。
- バスターミナル(デポーまたはディーポ)周辺環境の悪化。特にニューヨークやロサンゼルスなどの都市部では夜間は危険な場所にあることが多い。
注記
- ^ 国土交通省中部運輸局HP内
- ^ 京急高速バス・ご利用にあたって内に記載あり。
- ^ 西武バス・高速バス車内へのお持込お荷物に関するお願い内に記載あり。
- ^ 日本バス協会・高速バス等を利用する高齢者・身体障害者等への対応について
- ^ 西武の高速バス内に記載あり。
- ^ 京急公式サイト内に記載あり。
- ^ JRバス関東・車イスでのご利用について。 ドリーム大阪号などダブルデッカー使用路線をバリアフリー対応としている。
関連項目
- 直行便
- 青春18きっぷ
- 急行バス
- 水曜どうでしょう - サイコロの旅で夜間の移動手段に好んで夜行バスを利用していた。また、番組内では「深夜バス」と呼んでいるが、深夜バスは通常は通勤バスの深夜便のことである。ただし、夜行高速バスというのは正式な名称ではないため(法的には「路線バス」という以外の呼び方は決められていない)、「深夜に走行するバス」という意味で使用しているものとも思われる。
- 111番・高速バス - 路線の系統名そのものが「高速バス」である。沖縄自動車道全区間(那覇~許田間)を経由する。予約制、及び切符制ではなく、乗車のとき整理券を取り、降車の時に運賃を払う、一般路線バスとほとんど同じ方式を取る。
外部リンク
- 乗合バス事業者に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について(2003年5月14日 公正取引委員会)