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「キジノオシダ属」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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|名称 = キジノオシダ属
|名称 = キジノオシダ属
|色 = lightgreen
|色 = lightgreen
|画像= [[画像:8460-Plagiogyria tuberculata-Kemiri.JPG|250px]]
|画像= [[File:8460-Plagiogyria tuberculata-Kemiri.JPG|250px]]
|画像キャプション = ''Plagiogyria tuberculata''(スマトラ島)
|画像キャプション = {{snamei||Plagiogyria egenolfioides}}
|分類体系 = [[PPG I]] 2016
|界 = [[植物界]] {{Sname||Plantae}}
| = [[シダ植物門]] {{Sname||Pteridophyta}}
|省略 = 大葉シダ植物
|綱 = [[シダ綱]] {{Sname||Pteridopsida}}
|綱 = [[薄嚢シダ綱]] {{Sname||Polypodiidae}}
|目 = [[ヘゴ目]] {{Sname||Cyatheales}}
|目 = [[ヘゴ目]] {{Sname||Cyatheales}}
|科 = '''キジノオシダ科''' {{Sname||Plagiogyriaceae}}
|科 = '''キジノオシダ科'''<br />{{Sname||Plagiogyriaceae}} {{small|{{AUY|Bower|1926|bio=bot}}}}
|属 = '''キジノオシダ属''' {{Snamei||Plagiogyria}}
|属 = '''キジノオシダ属''' {{Snamei||Plagiogyria}}
|学名 = {{snamei|Plagiogyria}} {{small|({{AU|Kunze}}) {{AUY|Mett.|1858|bio=bot}}}}
|下位分類名 = 下位分類
|タイプ種 = {{snamei||Plagiogyria euphlebia}} {{small|({{AU|Kunze}}) {{AU|Mett.}}}}
|下位分類 = * 本文参照
|下位分類名 = 種
|下位分類 = {{Center|本文参照}}
|シノニム =
* {{snamei|Lomaria}} {{la|sect.}} {{snamei|Plagiogyria}} {{small|{{AUY|Kunze|1850|bio=bot}}}}
* {{snamei|Polygramma}} {{small|{{AUY|C.Presl|1851|bio=bot}}}}
}}
}}
'''キジノオシダ属''' {{snamei|Plagiogyria}} は、[[ヘゴ目]]に属する[[薄嚢シダ類]]の1[[属 (分類学)|属]]である。単独で'''キジノオシダ科''' {{Sname||Plagiogyriaceae}} を構成する{{Sfn|PPG I|2016|p=575}}{{Sfn|Christenhusz ''et al.''|2011|p=12}}。単羽状複葉の葉には二形性が明瞭で、毛や鱗片を一切生じない{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。
[[Image:Die Farrnkräuter in kolorirten Abbildungen naturgetreu Erläutert und Beschrieben (1848) (14780854121).jpg|right|220px|thumb|図版(種名は同定されているが読み取れない)]]
'''キジノオシダ属''' ''Plagiogyria'' (Kunze) Mett. は、[[シダ植物]]の1群。単独で'''キジノオシダ科'''を構成する。単羽状複葉の葉には二形性が明瞭で、毛や鱗片を一切生じない。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
この類は形態的には共通点が多く、よくまとまっている。以下のような特徴を共有する<ref>以下、主として岩槻編(1992),p.75</ref>
この類は形態的には共通点が多く、よくまとまっている。以下のような特徴を共有する{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}


=== 胞子体 ===
中型以下の地上性、[[多年生]][[草本]]で[[常緑性]]または[[夏緑性]]。[[根茎]]は短く直立、または斜上するが、[[匍匐茎]]を伸ばすものもある。茎の表面には古い葉の基部が残り、根を多数付けて大きな株になる。茎や葉柄など、植物体表面に[[毛 (植物)|毛]]や[[鱗片]]などを全く生じない。若芽が[[粘液]]を出す性質がある。
中型の地上生[[シダ]]{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。[[多年生]][[草本]]で[[常緑性]]または[[夏緑性]]{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。


[[根茎]]は短く直立、または斜上するが、稀に短く[[匍匐茎]]を伸ばすものもある{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。[[茎]]の表面には古い葉の基部が残り、[[根]]を多数付けて大きな株になる{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。[[羽葉|葉]]を[[螺旋葉序|螺旋状]]に配列する{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。茎や葉柄など、植物体表面に[[毛 (シダ類)|毛]]や[[鱗片 (シダ類)|鱗片]]などを全く生じない{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。ただし、[[ワラビ巻き|若い葉]]には[[粘液]]を出す多細胞の[[腺毛]]を持つ{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。[[網状中心柱]]を持ち、[[体軸#植物の軸性|背腹性]]はない{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。
葉には栄養葉と胞子葉の二形があり、単羽状複葉。葉柄の基部は左右に広がって断面は三角形になり、腹面(葉の裏面側)の基部に通気孔がある。これは見かけ上は突起の形になる。


[[羽葉|葉]]には栄養葉と胞子葉の[[羽葉#栄養葉と胞子葉|二形]]があり、羽状中裂から単[[羽状複葉]]{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。大きいものは 2 m{{small|([[メートル]])}}に達する{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。[[葉柄]]の基部は左右に広がって断面は[[三角形]](または[[四角形]])になる。葉柄断面の維管束は3本がU字またはV字型に並び、先端に近づくと癒合して1本になる{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。葉柄腹面(葉の裏面側)の基部に通気孔がある{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。
単羽状の栄養葉の羽片はなめらかか鋸歯がある程度で、深く切れ込むことはない。葉脈は遊離し、つまり先端でくっついて網状になることはない。

単羽状の栄養葉の[[羽葉|羽片]]は[[全縁]]か[[鋸歯]]縁で、深く切れ込むことはない{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。葉脈は遊離脈である{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}{{Efn|つまり先端でくっついて網状になることはない。}}。栄養葉では単条または1回分岐である{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。[[胞子葉]]では羽片は[[葉身|線形]]{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。胞子葉の葉脈は末端で結合することがある{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。
胞子葉では羽片は線形、つまりごく狭い幅の葉身しか持たず、胞子嚢は少し隆起した脈に沿って胞子嚢群をなし、包膜も側糸も無い。[[胞子嚢]]には環帯があるが、高等なシダでは胞子嚢を垂直に断ち切った方向に一周しているのに対して、この類では斜めの位置を一周している<ref>田村(1999),p.73</ref>。胞子はすべて同型で、胞子に葉緑体はなく、三稜性の四面体型。[[前葉体]]は普通のハート形。

[[胞子嚢]]は少し隆起した脈に沿って[[胞子嚢群]]をなし、[[包膜]]を欠く{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}{{Efn|{{Harvtxt|岩槻|1992}} では側糸は持たないとされるが、{{Harvtxt|海老原|2016}} では側糸を持つとされる{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。}}。胞子嚢柄は長く、4–6列の細胞からなる{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。[[胞子嚢]]には環帯があるが、高等なシダでは胞子嚢を垂直に断ち切った方向に一周しているのに対して、この類では斜めの位置を一周している{{Sfn|田村|1999|p=73}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。

胞子はすべて[[同型胞子性|同型]]で、胞子に[[葉緑体]]はなく、三稜性の[[四面体]]型{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。1胞子嚢当りの胞子数は64個{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。
{{multiple image
|align=center
|total_width=650
|image1=Plagiogyria adnata takasagokzno01.jpg
|caption1=[[タカサゴキジノオ]] {{snamei||Plagiogyria adnata}} の栄養葉の先端
|image2=Plagiogyria adnat3.jpg
|caption2=[[タカサゴキジノオ]] {{snamei||Plagiogyria adnata}} の胞子葉の羽片
|image3=Die Farrnkräuter in kolorirten Abbildungen naturgetreu Erläutert und Beschrieben (1848) (14784011765).jpg
|caption3={{snamei||Plagiogyria glauca}} の博物画。右上に柄を持つ胞子嚢が描かれる。
}}
=== 配偶体 ===
[[配偶体]]は地上生で葉緑体をもつ、普通の心臓形[[前葉体]]をなす{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。少し伸びるものも知られる{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。クッション部の細胞層は[[ウラボシ目]]と比較してやや厚い{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。無毛{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。

=== 染色体と倍数性 ===
[[染色体]]基本数は {{math|x {{=}} 65, 66}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。リュウキュウキジノオやヤマソテツは2倍体で、有性生殖を行う{{Sfn|海老原|2016|p=341}}。一方キジノオシダやオオキジノオは4倍体で、有性生殖を行う{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。


== 分布と種 ==
== 分布と種 ==
[[File:Die Farrnkräuter in kolorirten Abbildungen naturgetreu Erläutert und Beschrieben (1848) (14780854121).jpg|right|220px|thumb|本属のタイプ種である[[オオキジノオ]] {{snamei||Plagiogyria euphlebia}} の図版(当時は[[シシガシラ科]]の {{snamei||Lomaria euphlebia}} とされていた。)]]
分布域は日本から東アジア、東南アジア、インド、ニューギニアと、中央アメリカから南アメリカ北部にかけてである。種数は定説がないがおおよそ50種ほど。このうち、南北アメリカにはヤマソテツに似た1群(種数は1から9で諸説)のみを産する<ref name="#1">岩槻編(1992),p.75</ref>。
分布域は[[日本]]を含む[[東アジア]]、[[東南アジア]](ニューギニアを含む)、[[オセアニア]]と、[[中央アメリカ]]から[[南アメリカ]]北部にかけてである{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。種数は {{Harvtxt|岩槻|1992}} ではおおよそ50種ほどとされたが、{{harvtxt|海老原|2016}} や {{Harvtxt|PPG I|2016}} では約15種が認められる。このうち、南北アメリカにはヤマソテツに似た1群のみを産する{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。種数は1から9で諸説あるが、{{harvtxt|Hassler|2024}} では、1種 {{snamei|Plagiogyria pectinata}} {{small|({{AU|Liebm.}}) {{AUY|Lellinger|1971|bio=bot}}}} とされる。日本には6種2変種1雑種が知られる{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。


[[タイプ種]]は[[オオキジノオ]] {{snamei||Plagiogyria euphlebia}} が[[レクトタイプ]]指定されている{{Sfn|PPG I|2016|p=575}}。この種は初め、[[シシガシラ科]]の {{snamei||Lomaria euphlebia}} {{Small|{{AU|Kunze}}}} として記載されたものである{{Sfn|PPG I|2016|p=575}}。
以下、日本産の種をあげる<ref>岩槻編(1992),p.75-77</ref>。


以下、{{Harvtxt|Hassler|2024}} によるリストに、{{harvtxt|海老原|2016}} による日本産の変種を加えた全種を示す。
*''P. adnata'' [[タカサゴキジノオ]]
**var. ''yakushimensis'' ヤクシマキジノオ
*''P. japonica'' キジノオシダ
**var. ''pseudo-japonica'' ヒメキジノオ
*''P. euphlebia'' オオキジノオ
*''P. koidzumii'' リュウキュウキジノオ
*''P. matsumureana'' ヤマソテツ
*''P. stenoptera'' シマヤマソテツ


* {{snamei||Plagiogyria adnata}} {{small|({{AU|Blume}}) {{AUY|Bedd.|1865|bio=bot}}}} [[タカサゴキジノオ]]
なお、沖縄には[[オキナワキジノオ]]というシダがあるが、これは本科ではなくオシダ科のものである。
** {{snamei|P. adnata}} {{la|var.}} {{snamei|adnata}} タカサゴキジノオ(基準変種)
** {{snamei|P. adnata}} {{la|var.}} {{snamei|yakushimensis}} {{small|({{AU|K.Satô}}) {{AUY|Tagawa|1954|bio=bot}}}} [[ヤクシマキジノオ]]{{Efn|{{Harvtxt|Hassler|2024}} ではこの変種を区別せずシノニムとしている。基準変種であるタカサゴキジノオとの雑種が報告されたこともあるが、両者の関係は要検討である{{Sfn|海老原|2016|p=341}}。下部数対の羽片が下向きになるものを[[コスギダニキジノオ]] {{snamei||Plagiogyria yakumonticola}} {{small|{{AU|Nakaike}}}} として区別する説もある{{Sfn|海老原|2016|p=341}}。}}
* {{snamei||Plagiogyria assurgens}} {{small|{{AUY|Christ|1901|bio=bot}}}}
* {{snamei||Plagiogyria egenolfioides}} {{small|({{AU|[[ジョン・ギルバート・ベイカー|Baker]]}}) {{AUY|Copel.|1912|bio=bot}}}}
** {{snamei|P. egenolfioides}} {{La|var.}} {{snamei|egenolfioides}}
** {{snamei|P. egenolfioides}} {{La|var.}} {{snamei|decrescens}} {{small|({{AU|C.Chr.}}) {{AU|X.C.Zhang}} & {{AUY|Noot.|1997|bio=bot}}}}
** {{snamei|P. egenolfioides}} {{La|var.}} {{snamei|latipinna}} {{small|({{AU|Copel.}}) {{AU|X.C.Zhang}} & {{AUY|Noot.|1997|bio=bot}}}}
** {{snamei|P. egenolfioides}} {{La|var.}} {{snamei|sumatrana}} {{small|({{AU|Rosenst.}}) {{AU|X.C.Zhang}} & {{AUY|Noot.|1997|bio=bot}}}}
* {{snamei||Plagiogyria euphlebia}} {{small|({{AU|Kunze}}) {{AU|Mett.}}}} [[オオキジノオ]]
* {{snamei||Plagiogyria falcata}} {{small|{{AUY|Copel.|1907|bio=bot}}}}
* {{snamei||Plagiogyria glauca}} {{small|({{AU|Blume}}) {{AUY|Mett.|1858|bio=bot}}}}
* {{snamei||Plagiogyria japonica}} {{small|{{AUY|Nakai|1928|bio=bot}}}} [[キジノオシダ]]
** {{snamei|P. japonica}} {{La|var.}} {{snamei|japonica}} キジノオシダ(基準変種)
** {{snamei|P. japonica}} {{La|var.}} {{snamei|pseudo-japonica}} {{small|({{AU|Nakaike}}) {{AUY|K.Iwats|1987|bio=bot}}}} [[ヒメキジノオ]]{{Efn|{{Harvtxt|Hassler|2024}} ではこの変種を区別せずシノニムとしている。}}
* {{snamei||Plagiogyria koidzumii}} {{small|{{AUY|Tagawa|1933|bio=bot}}}} [[リュウキュウキジノオ]]
* {{snamei||Plagiogyria matsumureana}} {{small|({{AU|Makino}}) {{AUY|Makino|1894|bio=bot}}}} [[ヤマソテツ]]
* {{snamei||Plagiogyria pectinata}} {{small|({{AU|Liebm.}}) {{AUY|Lellinger|1971|bio=bot}}}}
* {{snamei||Plagiogyria pycnophylla}} {{small|({{AU|Kunze}}) {{AUY|Mett.|1858|bio=bot}}}}
* {{snamei||Plagiogyria stenoptera}} {{small|({{AU|Hance}}) {{AUY|Diels|1899|bio=bot}}}} [[シマヤマソテツ]]


また、何れも日本から、下記の雑種が知られる{{Sfn|Hassler|2024|loc=021.0001 "Genus ''Plagiogyria'' (Kunze) Mett."}}{{Sfn|海老原|2016|p=341}}。
== 分類 ==
* {{snamei|Plagiogyria}} ×{{snamei|neointermedia}} {{small|{{AUY|Nakaike|1971|bio=bot}}}} [[ハガクレキジノオ]]({{snamei|P. euphlebia}} × {{snamei|P. adnata}})
この属単独で'''キジノオシダ科''' Plagiogyriaceae を構成する。
* {{snamei|Plagiogyria}} ×{{snamei|sessilifolia}} {{small|{{AUY|Nakaike|1971|bio=bot}}}} [[フタツキジノオ]]({{snamei|P. euphlebia}} × {{snamei|P. japonica}})
* {{snamei|Plagiogyria}} ×{{snamei|wakabae}} {{small|{{AU|Sa.Kurata}} ex {{AUY|Nakaike|1971|bio=bot}}}} [[アイキジノオ]]({{snamei|P. japonica}} × {{snamei|P. adnata}})


== 系統関係 ==
原始的な特徴を多く持つ群である<ref>田川(1959),p.68</ref>が、系統上の位置については明らかではない。外形的な特徴から[[シシガシラ科]]や[[ホウライシダ科]]の[[イワガネゼンマイ]]などと結びつける説もあったが、これは特定の形質の類似だけに基づくものである。植物体に毛も鱗片も持たないこと、葉柄の基部の構造、若芽が粘液を出すことなどは[[ゼンマイ科]]と共通する特徴で、その類縁性を認める説も一定の支持を受けてきた<ref name="#1"/>。[[分子系統]]の情報からは[[ヘゴ科]]や[[タカワラビ科]]との近縁性が示唆されている<ref>中池(1997),p.77</ref>。
{{PPG I相関図}}
この属単独で'''キジノオシダ科''' {{Sname|Plagiogyriaceae}} を構成し、[[ヘゴ目]]に置かれる{{Sfn|PPG I|2016|p=575}}{{Sfn|Christenhusz ''et al.''|2011|p=12}}。

原始的な特徴を多く持つ群であるとされ{{Sfn|田川|1959|p=68}}、形態形質に基づく系統上の位置については議論があった{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。外形的な特徴から[[シシガシラ科]]や[[ホウライシダ科]]の[[イワガネゼンマイ]]などと結びつける説もあったが、これは特定の形質の類似だけに基づくものである。植物体に[[毛 (シダ類)|毛]]も[[鱗片 (シダ類)|鱗片]]も持たないこと、葉柄の基部の構造、若芽が粘液を出すことなどは[[ゼンマイ科]]と共通する特徴で、その類縁性を認める説も一定の支持を受けてきた{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。

[[分子系統解析]]が進み、[[ヘゴ科]]や[[タカワラビ科]]との近縁性が示唆されるようになった{{Sfn|中池|1997|p=77}}。これは現在でも正しいとされ、[[PPG I分類体系]]ではヘゴ目に位置付けられており{{Sfn|PPG I|2016|p=575}}、中でも[[クルキタ科]]、[[ロクソマ科]]、[[ティルソプテリス科]]と[[単系統群]]をなす{{Sfn|PPG I|2016|p=567}}。特にクルキタ科とは姉妹群を形成する{{Sfn|海老原|2016|p=340}}{{Sfn|PPG I|2016|p=567}}。なお、{{Harvtxt|Christenhusz|Chase|2014}} では[[ヘゴ科]]にまとめられ{{Sfn|海老原|2016|p=26}}{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|p=588}}、そのうちの1[[亜科]] {{sname|Plagiogyrioideae}} {{Small|{{AUY|Christenh.|2014|bio=bot}}}} とされた{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|p=588}}{{Sfn|海老原|2016|p=340}}。しかし、{{Harvtxt|海老原|2016}} や {{Harvtxt|PPG I|2016}} などではこれは支持されず、ヘゴ目の1科としての分類が踏襲されている。
{| class="wikitable"
|-
! colspan=1 |{{Harvtxt|Korall ''et al.''|2006}}, {{Harvtxt|Korall ''et al.''|2007}}, {{Harvtxt|Lehtonen|2011}}, {{Harvtxt|PPG I|2016}}
! colspan=1 |{{Harvtxt|Nitta ''et al.''|2022}}
|-
| style="vertical-align:top|
{{clade|style=font-size:90%;line-height:80%
|label1=[[ヘゴ目]]
|sublabel1= {{sname||Cyatheales}}
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|1={{clade
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|2={{clade
|1=[[ロクソマ科]] {{sname||Loxsomataceae}}
|2={{clade
|1=[[クルキタ科]] {{sname||Culcitaceae}}
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}}
}}
}}
|2={{clade
|1=[[ヘゴ科]] {{sname||Cyatheaceae}}
|2={{clade
|1=[[タカワラビ科]] {{sname||Cibotiaceae}}
|2={{clade
|1=[[ディクソニア科]] {{sname||Dicksoniaceae}}
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}}
}}
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}}
|
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}}
}}
}}
|}


== その他 ==
== その他 ==
シダにおいて毛や鱗片がないというのはかなり珍しい特徴である。本科の外見的な特徴である『単羽状複葉で側羽片が細長く、葉に栄養葉と胞子葉の二形があり、胞子葉が非常に細くなっている』に当てはまるものとしては、他に[[シシガシラ]]などの[[シシガシラ科]][[シシガシラ属]]のもの、[[オシダ科]]の[[イヌガンソク]]や[[コウヤワラビ]]など幾つかの群に跨って存在し、それらは本属のものに多少とも似ている。シシガシラなど、かなり似ているが、これらは茎や葉柄の基部に鱗片や毛を持っているので、その点を見ればすぐに判別できる。ただし[[ゼンマイ科]]にも[[ヤマドリゼンマイ]]などこの型のものがあり、これには当てはまらない。もっとも、ゼンマイ科のものは、葉には毛を持つ例がある。
シダにおいて毛や鱗片がないというのはかなり珍しい特徴である。本科の外見的な特徴である『単羽状複葉で側羽片が細長く、葉に栄養葉と胞子葉の二形があり、胞子葉が非常に細くなっている』に当てはまるものとしては、他に[[シシガシラ]]などの[[シシガシラ科]][[シシガシラ属]]のもの、[[オシダ科]]の[[イヌガンソク]]や[[コウヤワラビ]]など幾つかの群に跨って存在し、それらは本属のものに多少とも似ている。シシガシラなど、かなり似ているが、これらは茎や葉柄の基部に鱗片や毛を持っているので、その点を見ればすぐに判別できる。ただし[[ゼンマイ科]]にも[[ヤマドリゼンマイ]]などこの型のものがあり、これには当てはまらない。もっとも、ゼンマイ科のものは、葉には毛を持つ例がある。


この類は生きた株を掘ってきて栽培するのがとても難しい<ref name="#1"/>。光田は「意外に難物」で何年も育て続けることを「いまのところ不可能」としている<ref>光田(1986),p.76</ref>
この類は生きた株を掘ってきて栽培するのがとても難しい{{Sfn|岩槻|1992|p=75}}。光田は「意外に難物」で何年も育て続けることを「いまのところ不可能」としている{{Sfn|光田|1986|p=76}}


なお、沖縄には[[オキナワキジノオ]] {{snamei|Bolbitis appendiculata}} というシダがあるが、これは本科ではなく[[オシダ科]][[ヘツカシダ属]]のものである。
== 出典 ==

<references />
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite journal|last1=Christenhusz|first1=M. J. M.|author1-link=マールテン・クリステンフス|last2=Zhang |first2=X.-C.|last3=Schneider |first3=H. |date=2011|title=A linear sequence of extant families and genera of lycophytes and ferns|journal=Phytotaxa|volume=19|pages=7–54|issn=1179-3155|doi=10.11646/phytotaxa.19.1.2|ref={{SfnRef|Christenhusz ''et al.''|2011}} }}
*岩槻邦男編著、『日本の野生植物 シダ』、(1992)、平凡社
* {{cite journal|last1=Christenhusz|first1=M. J. M.|author1-link=マールテン・クリステンフス|last2=Chase|first2=M. W.|author2-link=:en:Mark Wayne Chase|date=2014|title=Trends and concepts in fern classification|journal=Annals of Botany|volume=113|pages=571–594|doi=10.1093/aob/mct299|ref=harv }}
*田川基二、『原色日本羊歯植物図鑑』、(1959)、保育社
* {{Cite journal|last=Cunningham|first=A.|title=Floræ Insularium Novæ Zelandiæ Precursor; Or A Specimen of the Botany Of the Islands of New Zealands||pages=358|url=https://www.biodiversitylibrary.org/item/107303#page/368/mode/1up}}
*中池敏之、「キジノオシダ科」:『朝日百科 植物の世界 12』、(1997)、朝日新聞社:p.77
* {{cite web|last=Hassler|first=Michael |date=2004–2024|title=World Ferns. Synonymic Checklist and Distribution of Ferns and Lycophytes of the World. Version 24.12; last update December 6th, 2024.|url=https://www.worldplants.de/world-ferns/ferns-and-lycophytes-list|website=Worldplants|accessdate=2024-12-08|ref={{SfnRef|Hassler|2024}} }}
*田村道夫、『植物の系統』、(1999)、文一総合出版
* {{Cite journal|last1=Korall |first1=P. |author1-link=:species:Petra Korall|last2= Pryer |first2=K. M.|author2-link=:species:Kathleen M. Pryer |last3=Metzgar |first3=J. S. |author3-link=:species:Jordan Metzgar |last4=Schneider |first4=H. |author4-link=:species:Harald Schneider |last5=Conant |first5=D.S. |author5-link=:en:David Stoughton Conant |date=2006|title=Tree ferns: Monophyletic groups and their relationships as revealed by four protein-coding plastid loci|journal=Molecular Phylogenetics and Evolution|volume= 39|issue=3|pages=830–845|doi=10.1016/j.ympev.2006.01.001|ref={{SfnRef|Korall ''et al.''|2006}} }}
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* {{Cite journal|last1=Korall |first1=P. |author1-link=:species:Petra Korall |last2=Conant |first2=D.S. |author2-link=:en:David Stoughton Conant |last3=Metzgar |first3=J. S. |author3-link=:species:Jordan Metzgar |last4=Schneider |first4=H. |author4-link=:species:Harald Schneider |last5=Pryer |first5=K. M.|author5-link=:species:Kathleen M. Pryer |date=2007|title=A Molecular phylogeny of scaly tree ferns (Cyatheaceae)|journal=American Journal of Botany |volume=94 |issue=5 |pages=873–886 |doi=10.3732/ajb.94.5.873 |pmid= 21636456 |ref={{SfnRef|Korall ''et al.''|2007}} }}
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* {{cite journal |last1=Nitta |first1=J. H. |author1-link=:species:Joel Hamilton Nitta |last2=Schuettpelz |first2=E. |author2-link=:species:Eric Schuettpelz |last3=Ramírez-Barahona |first3=Santiago |last4=Iwasaki |first4=W. |author4-link=岩崎渉|year=2022 |title=An Open and Continuously Updated Fern Tree of Life |journal=Frontiers in Plant Science |volume=13 |issue= |page= 909768| doi=10.3389/fpls.2022.909768 |pmid= 36092417|pmc= 9449725|ref={{SfnRef|Nitta ''et al.''|2022}} }}
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* {{Cite book |和書|author=岩槻邦男|author-link=岩槻邦男|title=日本の野生植物 シダ|date=1992-02-04|publisher=[[平凡社]]|page=311|isbn=9784582535068|ref={{SfnRef|岩槻|1992}} }}
* {{Cite book|和書|author=海老原淳|author-link=海老原淳|title=日本産シダ植物標準図鑑1 |publisher=[[学研プラス]]|others=日本シダの会 企画・協力|date=2016-07-15|isbn=978-4-05-405356-4|page=344|ref={{SfnRef|海老原|2016}} }}
* {{Cite book |和書|author=田川基二|author-link=田川基二|title=原色日本羊歯植物図鑑|date=1959-10-01|publisher = [[保育社]]|series = 保育社の原色図鑑|isbn = 4586300248|ref={{SfnRef|田川|1959}} }}
* {{Cite book |和書|author=中池敏之|author-link=中池敏之|chapter=キジノオシダ科|page=77|others=岩槻邦男、大場秀章、清水建美、堀田満、ギリアン・プランス、ピーター・レーヴン 監修|title=朝日百科 植物の世界[12] シダ植物・コケ植物・地衣類・藻類・植物の形態|publisher=[[朝日新聞社]]|date=1997-10-01|ref={{SfnRef|中池|1997}} }}
* {{Cite book |和書|author=田村道夫|author-link=田村道夫|title=植物の系統|date=1999-02-01|publisher=[[文一総合出版]]|isbn=978-4829921265|ref={{SfnRef|田村|1999}} }}
* {{Cite book |和書|author=光田重幸|author-link=光田重幸|title=しだの図鑑|date=1986-03-31|publisher=[[保育社]]|isbn=978-4586310111|ref={{SfnRef|光田|1986}} }}

== 外部リンク ==
*{{Commonscat-inline|Plagiogyria}}
* [https://www.worldplants.de?deeplink=Plagiogyria-adnata 021.0001 Genus ''Plagiogyria'' (Kunze) Mett.] - World Ferns


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2024年12月14日 (土) 17:09時点における最新版

キジノオシダ属
分類PPG I 2016)
: 植物界 Plantae
: 維管束植物門 Tracheophyta
亜門 : 大葉植物亜門 Euphyllophytina
: 大葉シダ綱 Polypodiopsida
亜綱 : 薄嚢シダ亜綱 Polypodiidae
: ヘゴ目 Cyatheales
: キジノオシダ科
Plagiogyriaceae Bower (1926)
: キジノオシダ属 Plagiogyria
学名
Plagiogyria (Kunze) Mett. (1858)
タイプ種
Plagiogyria euphlebia (Kunze) Mett.
シノニム
本文参照

キジノオシダ属 Plagiogyria は、ヘゴ目に属する薄嚢シダ類の1である。単独でキジノオシダ科 Plagiogyriaceae を構成する[1][2]。単羽状複葉の葉には二形性が明瞭で、毛や鱗片を一切生じない[3]

特徴

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この類は形態的には共通点が多く、よくまとまっている。以下のような特徴を共有する[4]

胞子体

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中型の地上生シダ[4]多年生草本常緑性または夏緑性[4]

根茎は短く直立、または斜上するが、稀に短く匍匐茎を伸ばすものもある[4][3]の表面には古い葉の基部が残り、を多数付けて大きな株になる[4]螺旋状に配列する[3]。茎や葉柄など、植物体表面に鱗片などを全く生じない[4][3]。ただし、若い葉には粘液を出す多細胞の腺毛を持つ[4][3]網状中心柱を持ち、背腹性はない[3]

には栄養葉と胞子葉の二形があり、羽状中裂から単羽状複葉[4][3]。大きいものは 2 mメートルに達する[4]葉柄の基部は左右に広がって断面は三角形(または四角形)になる。葉柄断面の維管束は3本がU字またはV字型に並び、先端に近づくと癒合して1本になる[3]。葉柄腹面(葉の裏面側)の基部に通気孔がある[4][3]

単羽状の栄養葉の羽片全縁鋸歯縁で、深く切れ込むことはない[4]。葉脈は遊離脈である[4][3][注釈 1]。栄養葉では単条または1回分岐である[3]胞子葉では羽片は線形[4]。胞子葉の葉脈は末端で結合することがある[3]

胞子嚢は少し隆起した脈に沿って胞子嚢群をなし、包膜を欠く[4][3][注釈 2]。胞子嚢柄は長く、4–6列の細胞からなる[3]胞子嚢には環帯があるが、高等なシダでは胞子嚢を垂直に断ち切った方向に一周しているのに対して、この類では斜めの位置を一周している[5][3]

胞子はすべて同型で、胞子に葉緑体はなく、三稜性の四面体[4][3]。1胞子嚢当りの胞子数は64個[3]

Plagiogyria glauca の博物画。右上に柄を持つ胞子嚢が描かれる。

配偶体

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配偶体は地上生で葉緑体をもつ、普通の心臓形前葉体をなす[4][3]。少し伸びるものも知られる[4]。クッション部の細胞層はウラボシ目と比較してやや厚い[3]。無毛[3]

染色体と倍数性

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染色体基本数は x = 65, 66[3]。リュウキュウキジノオやヤマソテツは2倍体で、有性生殖を行う[6]。一方キジノオシダやオオキジノオは4倍体で、有性生殖を行う[3]

分布と種

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本属のタイプ種であるオオキジノオ Plagiogyria euphlebia の図版(当時はシシガシラ科Lomaria euphlebia とされていた。)

分布域は日本を含む東アジア東南アジア(ニューギニアを含む)、オセアニアと、中央アメリカから南アメリカ北部にかけてである[4]。種数は 岩槻 (1992) ではおおよそ50種ほどとされたが、海老原 (2016)PPG I (2016) では約15種が認められる。このうち、南北アメリカにはヤマソテツに似た1群のみを産する[4]。種数は1から9で諸説あるが、Hassler (2024) では、1種 Plagiogyria pectinata (Liebm.) Lellinger (1971) とされる。日本には6種2変種1雑種が知られる[3]

タイプ種オオキジノオ Plagiogyria euphlebiaレクトタイプ指定されている[1]。この種は初め、シシガシラ科Lomaria euphlebia Kunze として記載されたものである[1]

以下、Hassler (2024) によるリストに、海老原 (2016) による日本産の変種を加えた全種を示す。

また、何れも日本から、下記の雑種が知られる[7][6]

系統関係

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この属単独でキジノオシダ科 Plagiogyriaceae を構成し、ヘゴ目に置かれる[1][2]

原始的な特徴を多く持つ群であるとされ[8]、形態形質に基づく系統上の位置については議論があった[3]。外形的な特徴からシシガシラ科ホウライシダ科イワガネゼンマイなどと結びつける説もあったが、これは特定の形質の類似だけに基づくものである。植物体に鱗片も持たないこと、葉柄の基部の構造、若芽が粘液を出すことなどはゼンマイ科と共通する特徴で、その類縁性を認める説も一定の支持を受けてきた[4]

分子系統解析が進み、ヘゴ科タカワラビ科との近縁性が示唆されるようになった[9]。これは現在でも正しいとされ、PPG I分類体系ではヘゴ目に位置付けられており[1]、中でもクルキタ科ロクソマ科ティルソプテリス科単系統群をなす[10]。特にクルキタ科とは姉妹群を形成する[3][10]。なお、Christenhusz & Chase (2014) ではヘゴ科にまとめられ[11][12]、そのうちの1亜科 Plagiogyrioideae Christenh. (2014) とされた[12][3]。しかし、海老原 (2016)PPG I (2016) などではこれは支持されず、ヘゴ目の1科としての分類が踏襲されている。

Korall et al. (2006), Korall et al. (2007), Lehtonen (2011), PPG I (2016) Nitta et al. (2022)
ヘゴ目

ティルソプテリス科 Thyrsopteridaceae

ロクソマ科 Loxsomataceae

クルキタ科 Culcitaceae

キジノオシダ科 Plagiogyriaceae

ヘゴ科 Cyatheaceae

タカワラビ科 Cibotiaceae

ディクソニア科 Dicksoniaceae

メタキシア科 Metaxyaceae

Cyatheales
ヘゴ目

ティルソプテリス科 Thyrsopteridaceae

ロクソマ科 Loxsomataceae

クルキタ科 Culcitaceae

キジノオシダ科 Plagiogyriaceae

メタキシア科 Metaxyaceae

タカワラビ科 Cibotiaceae

ディクソニア科 Dicksoniaceae

ヘゴ科 Cyatheaceae

Cyatheales

その他

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シダにおいて毛や鱗片がないというのはかなり珍しい特徴である。本科の外見的な特徴である『単羽状複葉で側羽片が細長く、葉に栄養葉と胞子葉の二形があり、胞子葉が非常に細くなっている』に当てはまるものとしては、他にシシガシラなどのシシガシラ科シシガシラ属のもの、オシダ科イヌガンソクコウヤワラビなど幾つかの群に跨って存在し、それらは本属のものに多少とも似ている。シシガシラなど、かなり似ているが、これらは茎や葉柄の基部に鱗片や毛を持っているので、その点を見ればすぐに判別できる。ただしゼンマイ科にもヤマドリゼンマイなどこの型のものがあり、これには当てはまらない。もっとも、ゼンマイ科のものは、葉には毛を持つ例がある。

この類は生きた株を掘ってきて栽培するのがとても難しい[4]。光田は「意外に難物」で何年も育て続けることを「いまのところ不可能」としている[13]

なお、沖縄にはオキナワキジノオ Bolbitis appendiculata というシダがあるが、これは本科ではなくオシダ科ヘツカシダ属のものである。

脚注

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注釈

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  1. ^ つまり先端でくっついて網状になることはない。
  2. ^ 岩槻 (1992) では側糸は持たないとされるが、海老原 (2016) では側糸を持つとされる[3]
  3. ^ Hassler (2024) ではこの変種を区別せずシノニムとしている。基準変種であるタカサゴキジノオとの雑種が報告されたこともあるが、両者の関係は要検討である[6]。下部数対の羽片が下向きになるものをコスギダニキジノオ Plagiogyria yakumonticola Nakaike として区別する説もある[6]
  4. ^ Hassler (2024) ではこの変種を区別せずシノニムとしている。

出典

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  1. ^ a b c d e PPG I 2016, p. 575.
  2. ^ a b Christenhusz et al. 2011, p. 12.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 海老原 2016, p. 340.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 岩槻 1992, p. 75.
  5. ^ 田村 1999, p. 73.
  6. ^ a b c d 海老原 2016, p. 341.
  7. ^ Hassler 2024, 021.0001 "Genus Plagiogyria (Kunze) Mett.".
  8. ^ 田川 1959, p. 68.
  9. ^ 中池 1997, p. 77.
  10. ^ a b PPG I 2016, p. 567.
  11. ^ 海老原 2016, p. 26.
  12. ^ a b Christenhusz & Chase 2014, p. 588.
  13. ^ 光田 1986, p. 76.

参考文献

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外部リンク

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