「やんばる国立公園」の版間の差分
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{{国立公園・国定公園 |
{{国立公園・国定公園 |
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|名称 = やんばる国立公園 |
|名称 = やんばる国立公園 |
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|英語名称 = Yambaru National Park |
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|画像キャプション = 辺戸岬から見た辺戸御嶽と海岸地形 |
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|面積 = 17,292 [[ヘクタール|ha]]<br/>(陸域:13,622 ha、海域:3,670 ha) |
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|指定日 = [[2016年]][[9月15日]] |
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|現況 = |
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|施設 = 自然再生施設 |
|施設 = 自然再生施設、園地、宿舎、野営場、博物展示施設 |
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|告示 = 平成28年環境省告示第87号 |
|告示 = 平成28年環境省告示第87号 |
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|事務所 = |
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|事務所所在地 = |
|事務所所在地 = |
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|アクセス = |
|アクセス = |
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|備考 ='''やんばる国立公園のテーマ'''<br/>「亜熱帯の森やんばる - 多様な生命(いのち)を育む山と人々の営み」 |
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|備考 = |
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|公式サイト = [http://www.env.go.jp/park/yambaru/index.html やんばる国立公園] |
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|公式サイト = |
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}} |
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[[ファイル:Map of Yambaru National Park.svg|thumb|やんばる国立公園の区域図。{{legend|#00FF00|陸域}}{{legend|#0000FF|海域}}{{legend|#B3B3B3|[[北部訓練場]](公園設立時)}}]] |
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'''やんばる国立公園'''(やんばるこくりつこうえん)は、[[沖縄県]][[国頭郡]][[国頭村]]、[[大宜味村]]および[[東村]]ならびにこれら3村の周辺海域を区域とする[[国立公園]]である。 |
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'''やんばる国立公園'''(やんばる こくりつこうえん、[[英語|英称]]:''Yambaru National Park'' <ref>{{Cite web |url=http://www.env.go.jp/en/nature/nps/park/yambaru/index.html |title= やんばる国立公園(英語版)|publisher=[[環境省]] |accessdate=2017-01-01}}</ref>)は、[[沖縄県]][[国頭郡]][[国頭村]]、[[大宜味村]]および[[東村]]ならびにこれら3村の周辺海域を区域とする[[国立公園]]である。 |
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当公園の国立公園の指定は、日本全国で33番目である<ref name="okinawatimes2016-09-16-01">{{Cite news |title=やんばる国立公園が誕生 |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-16 |page=1}}</ref>。新規の指定としては、[[2014年]]の[[慶良間諸島国立公園]]以来2年ぶりで、沖縄県内においては3番目の指定となる<ref name="okinawatimes2016-09-15-01">{{Cite news |title=「やんばる国立公園」 きょう指定|newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-15 |page=1}}</ref>。 |
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== 概要 == |
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新規指定の国立公園としては、[[2014年]]の[[慶良間諸島国立公園]]以来2年ぶりで、沖縄県内においては3番目の指定となる<ref name="okinawatimes2016-09-15-01">{{Cite news |title=「やんばる国立公園」 きょう指定|newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-15 |page=1}}</ref>。[[沖縄海岸国定公園]]の一部が編入され<ref name="okinawatimes2016-09-10-02">{{Cite news |title=本島北部「やんばる国立公園」 環境省、15日に指定 |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-10 |page=2}}</ref>、面積は陸域13,622[[ヘクタール|ha]]、海域3,670haで<ref name="okinawatimes2016-09-15-01"/>、国頭村が陸域の75%を占める<ref name="okinawatimes2016-09-13-31">{{Cite news |title=命の森 時代へ やんばる国立公園(上) |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-13 | author =城間陽介 |page=31}}</ref>。やんばるの森林地帯のほかに、[[辺戸岬]]や[[宮城島 (沖縄県大宜味村)|宮城島]]を含む塩屋湾、[[安田ヶ島]]の周囲を取り巻く海域などが指定されたが、米軍基地の[[北部訓練場]]は除外されている<ref name="okinawatimes2016-09-15-15">{{Cite news |title=多様性育む命の森 「やんばる国立公園」誕生へ |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-15 | author =知花徳知 |author2 =下地広也 |page=15}}</ref>。[[環境省]]は、当公園の指定域のうち、[[自然公園法#自然公園の保護と利用|特別保護地区と第1種特別地区]]を[[世界自然遺産]]「[[奄美・琉球]]」の推薦区域として、早くても[[2018年]]に登録を目指している<ref name="okinawatimes2016-09-15-15"/>。 |
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== 指定範囲 == |
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:''国頭村、大宜味村、東村を合わせた3村は、以降「やんばる3村」と表記する。'' |
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* [[2016年]][[9月9日]] - [[山本公一]][[環境大臣]]は、[[沖縄本島]]の北部地域(通称「やんばる([[山原]])」)を「やんばる国立公園」として指定すると、[[閣議]]後の会見で発表した<ref name="okinawatimes2016-09-10-02"/>。 |
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* 2016年[[9月15日]] - 指定<ref>平成28年9月15日環境省告示第87号「やんばる国立公園を指定する件」</ref>。分割や拡張でない新規指定<ref>[http://ryukyushimpo.jp/movie/entry-357185.html 国頭、大宜味、東 やんばる国立公園きょう決定] - [[琉球新報]]、2016年9月15日</ref>で、指定日は、絶滅が危ぶまれる固有種[[ヤンバルテナガコガネ]]が発見された1983年9月15日にちなんだ<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASJ9H4T6WJ9HULBJ00H.html 「やんばる国立公園」誕生 沖縄北部、希少生物の宝庫] - [[朝日新聞]]、2016年9月15日</ref>。 |
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「やんばる([[山原]])」とは、一般的に[[沖縄本島]]の北部地域を指し、「山々が連なり森の広がる地域」を意味する<ref name="nationalpark201606-28">木村麻里子「もうすぐやんばるに国立公園が誕生します!」『國立公園 2016年6月号 No.744』(2016年6月1日)p.28</ref>。[[沖縄海岸国定公園]]の一部がやんばる国立公園に編入され<ref name="ryukyushimpo2016-09-15-27">{{Cite news |title=世界遺産登録できる? 豊かな森で軍事演習 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-15 |page=27}}</ref>、面積は17,292[[ヘクタール|ha]](陸域13,622ha、海域3,670ha)で、やんばるの亜熱帯照葉樹林を中心とした区域となっている<ref name="nationalpark201610-2">河野通治「やんばる国立公園の誕生について」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.2</ref>。国頭村が陸域の75%を占める<ref name="okinawatimes2016-09-13-31">{{Cite news |title=命の森 時代へ やんばる国立公園(上) |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-13 | author =城間陽介 |page=31}}</ref>。米軍基地の[[北部訓練場]]は指定域から除外されているが、米軍施設と隣接する国立公園の誕生は初めてとなる<ref name="ryukyushimpo2016-09-16-33">{{Cite news |title=やんばる国立公園指定 「県民の大きな財産」|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-16 |page=33}}</ref>。以下に指定区域内の地名を示す<ref name="yambaru">{{Cite web |url=http://www.ufugi-yambaru.com/news/documents/160915yambaruNP.pdf |title=やんばる国立公園 |accessdate=2017-01-01 |author=環境省那覇自然環境事務所 |year=2016 |month=09 |format=PDF}}</ref>。 |
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== 関連市町村 == |
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*[[沖縄県]][[国頭郡]][[国頭村]]・[[大宜味村]]・[[東村]] |
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:上記3村の各村庁舎では、国立公園の指定を祝して、懸垂幕が掲げられた。また国頭村のやんばる野生生物保護センターで、3村長らは[[記者会見]]を行った<ref>{{Cite news |title=やんばる国立公園が誕生 |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-16 |page=1}}</ref>。 |
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* 山岳 - [[与那覇岳]]、辺戸岳、尾西岳、伊部岳、伊湯岳、ネクマチヂ岳、塩屋富士、玉辻山など |
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== 脚注 == |
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* 河川 - [[辺野喜川]]、与那川、[[慶佐次湾|慶佐次川]]、安波川、新川川、平南川など |
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* 島・岬 - [[安田ヶ島]]、[[宮城島 (沖縄県大宜味村)|宮城島]]、[[辺戸岬]]など |
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* その他 - [[福上湖]](福地ダム)北側<ref name="okinawatimes2016-09-15-27moriikasu">{{Cite news |title=森生かす 山守る やんばる3村に国立公園 |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-15 |page=27}}</ref>、田港御嶽、塩屋湾、[[茅打バンタ]]、金剛石林山など |
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ファイル:茅打バンタ - panoramio.jpg|茅打バンタ |
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ファイル:Yonaha-dake.JPG|与那覇岳 |
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ファイル:Mangrove of Gesashi Bay.jpg|慶佐次湾のヒルギ林 |
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ファイル:辺戸岬 - panoramio (1).jpg|辺戸岬 |
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</gallery> |
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=== 保護規制区域 === |
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以下に特別地域と普通地域の指定面積を示した<ref name="nationalpark201610-2"/>。また[[環境省]]は、当公園の指定域の[[自然公園法#自然公園の保護と利用|特別保護地区と第1種特別地区]](総面積5,217ha)を[[世界自然遺産]]「[[奄美・琉球]]」の推薦区域として、早くても[[2018年]]に登録を目指している<ref name="okinawatimes2016-09-15-15">{{Cite news |title=多様性育む命の森 「やんばる国立公園」誕生へ |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-15 | author =知花徳知 |author2 =下地広也 |page=15}}</ref>。2016年[[7月1日]]に開かれた、[[特定非営利活動法人|NPO法人]]による討論会で、やんばる国立公園の規制区域の計画案について、特別保護地区の範囲拡大、さらに国と沖縄県、そしてやんばる3村が、やんばるの森を全面的に保護するべきだと述べ、徹底的な調査を求めた<ref name="ryukyushimpo2016-07-03-24">{{Cite news |title=特別保護区拡大を やんばる国立公園 シンポで議論 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-07-03 |page=24}}</ref>。 |
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* 特別保護地区 - 789 ha |
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* 第1種特別地域 - 4.428 ha |
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* 第2種特別地域 - 4,054 ha |
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* 第3種特別地域 - 3,345 ha |
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* 普通地域 - 4,676 ha |
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=== 事業計画 === |
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(出典<ref name="nationalpark201610-2"/><ref name="kampo2016-gogai204-moe88-6">平成28年環境省告示第88号「やんばる国立公園の公園計画を決定する件」『官報 平成28年号外第204号』(2016年9月15日)p.6</ref>) |
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* 保護施設計画 - 照葉樹林の再生と成熟を促すため、自然再生施設3か所を設置。 |
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* 利用施設計画 - 単独施設(園地、宿舎、野営場、博物展示施設)を23か所、また車道4路線、歩道7路線を指定。 |
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== 設立への経緯 == |
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[[ファイル:Gallirallus okinawae by OpenCage.jpg|thumb|やんばるに生息するヤンバルクイナ。]] |
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[[1996年]]、自然保護[[議員連盟]]の幹事長を務めた[[岩垂寿喜男]]が、当時の環境庁長官の就任挨拶で、やんばるの国立公園化構想を発表した<ref name="nationalpark201610-3">市田則孝「やんばるの自然」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.3</ref>。同年[[4月15日]]、日米特別行動委員会 (SACO) の中間報告に、[[北部訓練場]]の半分以上の敷地面積が返還されることが付け加えられた<ref name="asahi199604-681">「沖縄基地「20%縮小」 日米政府中間報告([[朝日新聞]]1996年4月15日夕刊 p.1)」『朝日新聞縮刷版 1996年4月 No.898』(1996年)p.681</ref>。これを受けて同日、岩垂は中間報告で返還後の北部訓練場の土地利用について、「国立公園を選択肢の一つとして検討したい」と述べ、やんばるの自然環境について詳しく調査する考えを示した<ref name="asahi199604-703">「北部訓練場 跡地を国立公園に 環境庁長官、検討方針([[朝日新聞]]1996年4月16日朝刊 p.3)」『朝日新聞縮刷版 1996年4月 No.898』(1996年)p.703</ref>。 |
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[[2007年]][[3月9日]]、環境省は36年ぶりに国立・国定公園の選定要領の改正に伴い、やんばると[[奄美群島]]に群生する照葉樹林地帯を国立公園として指定する方針を決定した<ref name="yomiuri200703-562"/>。1971年の選定要領は[[自然公園法]]に基づき、「優れた自然の風景地」を評価するため改められたが、景観の他に生物多様性などの観点を取り入れ、「照葉樹林」、「里地里山」、「海域」といった評価の対象が要領に盛り込まれた<ref name="yomiuri200703-562">「国立・国定公園選定見直し 「奄美」「やんばる」指定へ([[読売新聞]]2007年3月10日朝刊 p.2)」『読売新聞縮刷版 No.583 2007年3月』(2007年)p.562</ref>。[[2010年]][[10月]]に公表された国立・国定公園総点検事業において、やんばるは陸域から海域にかけて、多様で連続性をもつ生態系を有し<ref name="nationalpark201610-2"/>、「日本国内で傑出した地域」と評価された<ref name="ryukyushimpo2016-06-21-01">{{Cite news |title=「やんばる国立公園」決定 北部訓練場除外 世界遺産へ弾み|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-06-21 |page=1}}</ref>。 |
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[[2010年]]に公表された生物多様性国家戦略において、生態系のつながりを考慮した自然公園の指定・拡大を図り<ref name="mainichi201010-162">「国立・国定公園 新規指定 沖縄本島北部など候補に([[毎日新聞]]2010年10月5日朝刊 p.22)」『毎日新聞縮刷版 No.730 2010年10月』(2010年)p.162</ref>、また[[エコツアー]]の増加による対策として自然環境を保護する目的で、環境省は国立・国定公園の指定状況の見直しを行い、新たな公園の創設と区域拡張すべき既存公園を選定した<ref name="yomiuri201010-237">「国立公園 新たに5候補([[読売新聞]]2010年10月5日朝刊 p.33)」『読売新聞縮刷版 No.626 2010年10月』(2010年)p.237</ref>。2010年[[10月4日]]、同省により国立公園の新規指定候補地5か所のうち、やんばる地域が選出された<ref name="yomiuri201010-237"/><ref name="asahi201010-247">「国立・国定公園 6候補地を発表([[朝日新聞]]2010年10月5日朝刊 p.33)」『朝日新聞縮刷版 2010年10月 No.1072』(2010年)p.247</ref>。その理由として、[[ヤンバルクイナ]]や[[ノグチゲラ]]などの固有種と、その他の絶滅の恐れがある動植物が集中的に分布していることが挙げられる<ref name="mainichi201010-162"/>。 |
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[[2016年]][[2月1日]]発行の琉球新報の記事にて、国頭村村長の宮城久和は、やんばるの国立公園の指定を目指し、地権者と協議を進めていると述べた<ref name="ryukyushimpo2016-02-01-14">{{Cite news |title=(全面広告)本島北部の魅力を発信! 「やんばる観光新時代」|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-02-01 |page=14}}</ref>。沖縄県は[[2015年]]6月に環境省から照会を受けて、同年9月にはやんばるの国立公園化に向けた協議で意見調整が行われ、[[2016年]][[2月26日]]に国立公園化に同意した<ref name="ryukyushimpo2016-02-27-30">{{Cite news |title=やんばるを国立公園に 県が同意 世界遺産登録へ前進|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-02-27 |page=30}}</ref>。その翌日の[[2月27日]]に、環境省はやんばるに「やんばる国立公園(当時は仮称)」を設立する方針を決定した<ref name="mainichi201602-1071">「「やんばる 国立公園」に 環境省指定へ 沖縄県北部地域([[毎日新聞]]2016年2月27日夕刊 p.7)」『毎日新聞縮刷版 No.794 2016年2月』(2016年)p.1071</ref>。国立公園の指定、さらに世界自然遺産「奄美・琉球」の登録に向けて、土地開発や農業・林業に対する規制について、合意が進んだ<ref name="yomiuri201602-1367">「沖縄やんばる 国立公園へ([[読売新聞]]2016年2月27日夕刊 p.1)」『読売新聞縮刷版 No.690 2016年2月』(2016年)p.1367</ref>。2016年[[6月20日]]、[[中央環境審議会]]からの答申を受けて、環境省は「やんばる国立公園」の指定を決定した<ref name="ryukyushimpo2016-06-21-01"/>。 |
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2016年[[9月9日]]、[[山本公一]][[環境大臣]]は同年[[9月15日]]に、沖縄本島北部地域を「やんばる国立公園」として指定すると、[[閣議]]後の会見で発表した<ref name="okinawatimes2016-09-10-02">{{Cite news |title=本島北部「やんばる国立公園」 環境省、15日に指定 |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-10 |page=2}}</ref>。指定日は地元自治体の要望により、[[ヤンバルテナガコガネ]]が発見された[[1983年]]9月15日にちなんで決定された<ref name="okinawatimes2016-09-10-02"/>。また環境省は、指定日の9月15日に[[官報]]において告示すると発表した<ref name="ryukyushimpo2016-09-10-05">{{Cite news |title=やんばる国立公園 15日に正式指定|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-10 |page=5}}</ref>。そして9月15日に、「やんばる国立公園」は官報に告示され、正式に指定された<ref name="ryukyushimpo2016-09-16-01">{{Cite news |title=やんばる国立公園が誕生 国頭、大宜味、東 環境保全に決意|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-16 |page=1}}</ref>。 |
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;年表 |
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* [[1996年]][[4月15日]] - 当時の環境庁長官は、返還される北部訓練場の跡地利用の候補として国立公園化に言及。 |
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* [[2007年]][[3月9日]] - 国立・国定公園の選定要領を改正し、やんばるを国立公園として指定する方針を決定。 |
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* [[2010年]][[10月4日]] - 国立公園の新規指定候補の一つとして、やんばる地域を選定。 |
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* [[2016年]][[2月27日]] - やんばるに「やんばる国立公園(当時は仮称)」を設立する方針を決定。 |
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* 2016年[[6月20日]] - 中央環境審議会の答申を受け、「やんばる国立公園」の指定を決定。 |
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* 2016年[[9月15日]] - 「やんばる国立公園」の指定。 |
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== 国立公園の指定に関する取り組み == |
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2016年[[4月19日]]、[[麒麟麦酒|キリンビール]]が、環境省とやんばる3村と連携した「[[キリン一番搾り生ビール]] やんばる国立公園指定応援デザイン缶」を発売すると、[[沖縄県庁舎]]で行われた記者会見で発表し、売り上げの一部でやんばるで行われている密猟パトロール用の制服を製作し、それを寄贈するとしている<ref name="ryukyushimpo2016-04-20-05">{{Cite news |title=経済フラッシュ「国立公園指定へ やんばる応援缶」|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-04-20 |page=5}}</ref>。また同年[[10月20日]]、[[オリオンビール]]は国立公園の指定を記念した「オリオンドラフト記念デザイン缶」を販売すると発表し、1本の売り上げごとに1円をやんばる3村の環境保全活動の資金として寄付するとしている<ref name="ryukyushimpo2016-10-21-04">{{Cite news |title=オリオンが限定記念缶 来月発売 1本1円環境保全に|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-10-21 |page=4}}</ref>。 |
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指定日の2016年9月15日に、国立公園の指定を祝して、やんばる3村の各村庁舎で懸垂幕が掲げられた<ref name="okinawatimes2016-09-16-01"/>。また、やんばる3村の村長らは、国頭村のやんばる野生生物保護センターで、[[記者会見]]を行った<ref name="ryukyushimpo2016-09-16-01"/>。国頭村は同日、[[与那覇岳]]の第2種特別地域で自然観察会を行い<ref name="ryukyushimpo2016-09-19-17">{{Cite news |title=やんばる国立公園誕生 豊かな自然「守る」|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-19 |page=17}}</ref>、同村に通う小学生らが与那覇岳の登山道を歩いた<ref name="okinawatimes2016-09-16-31">{{Cite news |title=北部活性 期待と歓迎 やんばる国立公園 環境負荷の懸念も |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-16 |page=31}}</ref>。 |
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2016年[[10月7日]]、環境省は同省の[[ウェブサイト]]上に、やんばる国立公園を紹介する[[ウェブページ]]([http://www.env.go.jp/nature/np/yambaru.html 当該リンク])を公開し、やんばるの動植物や文化のほかに、[[那覇空港]]からのアクセス方法も掲載している<ref name="ryukyushimpo2016-10-13-29">{{Cite news |title=環境省サイト 国立公園、多角的に紹介|newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-10-13 |page=29}}</ref>。 |
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== 今後の課題 == |
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=== 環境保護と地域開発の両立 === |
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やんばるの国立公園化により、当地域の自然保護が強化される<ref name="yamakei201611-23">山と渓谷社編集部「沖縄「やんばる国立公園」が指定、世界遺産登録めざす」『山と渓谷 No.979 2016年11月号』(2016年)p.23</ref>。しかし、やんばるに生息する動植物が[[密猟]]・過剰採取の被害に遭う実態が報告され<ref name="nationalpark201610-10">山川安雄「『やんばる国立公園』・・・地域から見たやんばるの自然と将来への期待」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.10</ref>、地元住民は定期的に[[林道]]を巡回している<ref name="okinawatimes2016-09-14-30">{{Cite news |title=命の森 時代へ やんばる国立公園(中) |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-14 |author =城間陽介 |author2 =知花徳和 |page=30}}</ref>。理学博士の屋富祖昌子は「国立公園化で、観光客がやんばるの動植物を研究や教育目的以外でむやみに[[乱獲]]されるのではないか」とし、環境省のやんばる野生生物保護センターは国立公園化に伴い、外部から人が増えることを予想し、「[[警察]]や周辺住民らと連携して密猟の抑止に努める」と述べた<ref name="okinawatimes2016-09-14-30"/>。また、2001年には、[[ペット]]として飼われた[[ネコ]]が遺棄されて、その後野生化した[[ノネコ]]によるヤンバルクイナの捕食が発覚すると<ref name="nationalpark201610-7">長嶺隆「やんばる国立公園 奇跡の森の野生動物たち」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.7</ref>、その被害を抑えるために、2003年に環境省と周辺自治体でネコの適正な飼育を推進した<ref name="nationalpark201610-8">長嶺隆「やんばる国立公園 奇跡の森の野生動物たち」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.8</ref>。しかし、その後の2013年頃に[[ノイヌ]]が増加し、既にやんばるの生態系に影響を及ぼしていると思われ、新たな対策が求められている<ref name="nationalpark201610-8"/>。 |
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当公園のテーマ「亜熱帯の森やんばる - 多様な生命(いのち)を育む山と人々の営み」とあるように、やんばるの森は地元住民の生活と関わりがある<ref name="nationalpark201610-2"/>。やんばるは、沖縄県内で[[林業]]が盛んな地域で<ref name="nationalpark201610-13">沖縄県農林水産部森林管理課「森林ツーリズムによるやんばる地域の振興を目指して」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.13</ref>、かつて[[首里]]・[[那覇]]や本島中南部に薪材や材木・[[竹]]、[[砂糖]]樽の板などを供給していた<ref name="rekishi-yambaru-420chu">「山原」『日本歴史地名大系第四八巻 沖縄県の地名』(2002年)p.420中段</ref>。特に国頭村は沖縄県最大の木材産出地で、2016年現在でも県内唯一の木材拠点産地に指定されるなど、雇用面でも林業は重要な産業となっている<ref name="nationalpark201610-13"/>。当公園の指定区域内のうち、特別保護地区と特別地域での木材の伐採などが制限され<ref name="ryukyushimpo2016-09-15-01">{{Cite news |title=やんばる国立公園 きょう決定 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-15 |page=1}}</ref>、沖縄県は林業への悪影響を及ぼすことは明らかであると述べた<ref name="nationalpark201610-14">沖縄県農林水産部森林管理課「森林ツーリズムによるやんばる地域の振興を目指して」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.14</ref>。また、世界遺産に登録されれば、豊かな生物多様性のみを取り上げられ、人々にやんばるの森が手付かずの原生林だと誤認され、規制条件を満たした合法的な収穫伐採でも批判される可能性があると懸念している<ref name="nationalpark201610-14"/>。やんばるで農林業を営む人々の中には、当公園の区域内で従事し<ref name="okinawatimes2016-09-15-27moriikasu"/>、国頭村で林業を営む住民の一人は、この公園化で林業への恩恵は感じられず、伐採規制の強化のみで行う環境保全に疑問を呈している<ref name="okinawatimes2016-09-13-31"/>。沖縄県農林水産部森林管理課は、2015年からやんばる3村で「やんばる型森林ツーリズム推進体制構築事業」を展開している<ref name="nationalpark201610-12">沖縄県農林水産部森林管理課「森林ツーリズムによるやんばる地域の振興を目指して」『國立公園 2016年10月号 No.747』(2016年10月1日)p.12</ref>。やんばるの主産業である林業と自然体験活動の組み合わせによる、森林の活用と環境保全を目指している<ref name="nationalpark201610-13"/>。それを実現するためには、やんばる3村主導で事業を取り組み、自らが意見の合意形成を図り、さらに林業と関連する団体と連携する必要があるとしている<ref name="nationalpark201610-14"/>。 |
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やんばる3村の各村長らは、やんばる国立公園の指定を受け、観光産業の発展に期待しているが、宿泊施設の増設、交通の整備、[[ごみ]]の処理などの観光客を受け入れる体制が万全に整っていない<ref name="ryukyushimpo2016-09-14-27">{{Cite news |title=特集「「やんばる国立公園」あす指定 国頭、大宜味、東村座談会」 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-09-14 |page=27}}</ref>。また地元住民の中には、観光客の増加による環境負荷を懸念し、それを防ぐために人数制限を設ける必要があるとし、観光客やそれらを受け入れる自治体にも、生物多様性の豊かさを評価されて国立公園化された意味を理解するべきだと述べた<ref name="okinawatimes2016-09-16-31"/>。やんばる自然保護官事務所は、自然保護に対する意識向上や、観光と地域振興の活性化に期待し、地元と共にやんばるの将来について考えたいと述べた<ref name="yamakei201611-23"/>。 |
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=== 世界遺産登録に向けて === |
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{{See also|奄美・琉球}} |
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環境省は、早くても2018年夏にやんばる国立公園の指定域のうち、[[自然公園法#自然公園の保護と利用|特別保護地区と第1種特別地区]]を、[[世界自然遺産]]「[[奄美・琉球]]」として登録を目指している<ref name="okinawatimes2016-09-15-15"/><ref name="okinawatimes2016-09-15-27inochinomori">{{Cite news |title=命の森 時代へ やんばる国立公園(下) |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-15 | author =知花徳知 |page=27}}</ref>。世界遺産の登録には、国立公園化により、指定区域内における厳正な自然環境の保全が要求され、土地開発の規制や希少な動植物の保護が強化される<ref name="okinawatimes2016-09-15-01"/>。2016年9月9日の閣議後会見で山本公一環境大臣は、「なるべく早く世界遺産登録を目指す」と述べた<ref name="ryukyushimpo2016-09-10-05"/>。また沖縄県は、世界遺産の登録でやんばるの自然環境に触れる機会を作り出し、自然環境の保全の重要性を伝えていく必要があると述べた<ref name="nationalpark201610-13"/>。やんばる自然保護官事務所の[[自然保護官]]の一人は、やんばるの国立公園化や世界遺産登録を目的で終わらすのではなく、将来にわたってどのような[[持続可能性|持続可能]]な利活用を行っていくか考えるべきだと述べた<ref name="nationalpark201606-28"/>。 |
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やんばる国立公園に隣接する北部訓練場の存在が、世界遺産登録の妨げになるのではないかとの指摘がある<ref name="yamakei201611-23"/>。[[国際自然保護連合|IUCN]]日本委員会を務めた[[吉田正人]]は、沖縄タイムスの取材で、過去に登録された日本の世界自然遺産の中で、やんばるに生息する固有種の完全保護性と自然環境の保全が十分なのか判断するのが最も難しいとし、北部訓練場内の動植物の生息状況や米軍による訓練の影響の有無を、[[日本政府]]が管轄外という理由で説明できなければ、世界遺産登録は難しいと述べた<ref name="okinawatimes2016-09-16-30">{{Cite news |title=米軍、遺産登録に影響も |newspaper=[[沖縄タイムス]] |date=2016-09-16 |page=30}}</ref>。 |
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=== 北部訓練場について === |
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[[ファイル:Defense.gov News Photo 120408-M-XXXXU-001 - U.S. Marines and sailors run through a stream at the endurance course at the Jungle Warfare Training Center at Camp Gonsalves Okinawa Japan on.jpg|thumb|北部訓練場内の小川で訓練する[[アメリカ軍]]の[[兵士]]ら。]] |
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1996年12月2日、日米特別行動委員会 (SACO) は最終報告で、やんばる国立公園の指定域に隣接する[[北部訓練場]]の敷地面積の約53%の3,987[[ヘクタール]]を返還することに合意した<ref name="asahi199612-81">「米軍基地縮小案 日米行動委が最終報告([[朝日新聞]]1996年12月2日夕刊 p.1)」『朝日新聞縮刷版 1996年12月 No.906』(1997年)p.81</ref><ref name="ryukyushimpo2016-06-21-03">{{Cite news |title=「やんばる国立公園」決定 北部訓練場問題が鍵 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-06-21 |author =池田哲平 |page=3}}</ref><ref name="ryukyushimpo2016-12-22-01">{{Cite news |title=北部訓練場過半が返還 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-12-22 |page=1}}</ref>。やんばる国立公園が指定された2016年9月15日に開かれた会見で、国頭村村長の宮城久和は北部訓練場が国立公園と隣接している状況に好ましくないと述べた一方で、東村村長の伊集盛久は、北部訓練場の一部返還後は国立公園に編入されることに期待している<ref name="ryukyushimpo2016-09-16-33"/>。同年11月15日付に[[沖縄防衛局]]へ提出した、[[沖縄県知事一覧|沖縄県知事]]の[[翁長雄志]]による「北部訓練場の過半の返還に関する実施計画の案に対する意見書」には、返還される北部訓練場の区域が、隣接するやんばる国立公園へ編入される見通しで、かつてアメリカ軍らが北部訓練場内で実施した野生動植物に関する調査結果があれば、その資料の提供を求めた<ref name="ryukyushimpo2016-11-17-06">{{Cite news |title=特集「北部訓練場の過半の返還に関する実施計画の案に対する知事意見書(全文)」 |newspaper=[[琉球新報]] |date=2016-11-17 |page=6}}</ref>。また、やんばるの自然環境に及ぼす影響を明らかにする必要があるとし、北部訓練場で建設中の[[ヘリパッド]]の運用が開始されるまでに、[[V-22 (航空機)|オスプレイ]]が及ぼす[[環境影響評価]]を直ちに実施することを提案した<ref name="ryukyushimpo2016-11-17-06"/>。ヘリパッド建設反対派の団体の一人は、やんばる国立公園が指定されれば、北部訓練場の基地固定化を招きかねないと考えている<ref name="tokyoshimbun2016-05-05-22">{{Cite news |title=こちら特報部「沖縄「やんばる」国立公園計画」 |newspaper=[[東京新聞]] |date=2016-05-05 |author =安藤恭子 |page=22}}</ref>。2016年[[12月22日]]、北部訓練場の一部区域4,010haが返還された<ref name="ryukyushimpo2016-12-22-01"/>。 |
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== 関連告示 == |
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2016年(平成28年)9月15日 『官報』(号外第204号)<ref name="kampo2016-gogai204-moe88-5-6">『官報 平成28年号外第204号』(2016年9月15日)pp.5 - 6</ref> |
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* 環境省告示第87号「やんばる国立公園を指定する件」 |
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* 環境省告示第88号「やんばる国立公園の公園計画を決定する件」 |
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* 環境省告示第89号「やんばる国立公園の特別地域を指定する件」 |
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* 環境省告示第90号「やんばる国立公園の特別保護地区を指定する件」 |
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== 出典 == |
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{{Reflist|2}} |
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== 参考文献 == |
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* 環境省那覇自然環境事務所編集・発行 『{{PDFlink|[http://www.ufugi-yambaru.com/news/documents/160915yambaruNP.pdf やんばる国立公園]}}』、2016年9月。 |
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* 一般財団法人自然公園財団編集・発行 『國立公園 2016年6月号 No.744』、2016年6月1日。{{全国書誌番号|00008612}}、{{ISSN|0466-3934}} |
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* 一般財団法人自然公園財団編集・発行 『國立公園 2016年10月号 No.747』、2016年10月1日。 |
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* 平凡社地方資料センター編 『[[日本歴史地名大系]]第四八巻 沖縄県の地名』 [[平凡社]]、2002年。ISBN 4-582-49048-4 |
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* [[朝日新聞社]] 『朝日新聞[[新聞縮刷版|縮刷版]] 1996年4月 No.898』 朝日新聞社、1996年。 |
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* 朝日新聞社 『朝日新聞縮刷版 1996年12月 No.906』 朝日新聞社、1997年。 |
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* 朝日新聞社 『朝日新聞縮刷版 2010年10月 No.1072』 朝日新聞社、2010年。 |
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* [[読売新聞東京本社]] 『読売新聞縮刷版 No.583 2007年3月』 読売新聞東京本社、2007年。 |
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* 読売新聞東京本社 『読売新聞縮刷版 No.626 2010年10月』 読売新聞東京本社、2010年。 |
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* 読売新聞東京本社 『読売新聞縮刷版 No.690 2016年2月』 読売新聞東京本社、2016年。 |
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* [[毎日新聞社]] 『毎日新聞縮刷版 平成22年10月 No.730』 毎日新聞社、2010年。 |
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* 毎日新聞社 『毎日新聞縮刷版 平成28年2月 No.794』 毎日新聞社、2016年。 |
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* [[山と渓谷社]] 『山と渓谷 No.979 2016年11月号』 山と渓谷社、2016年。 |
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* 『[[官報]] 平成28年号外第204号』 [[独立行政法人]][[国立印刷局]]、2016年9月15日。 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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{{Commonscat|Yanbaru National Park}} |
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* [[日本の国立公園]] |
* [[日本の国立公園]] |
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* [[国定公園]] |
* [[国定公園]] |
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* [[沖縄県の観光地]] |
* [[沖縄県の観光地]] |
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== 外部リンク == |
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* [http://www.env.go.jp/park/yambaru/index.html やんばる国立公園] - 日本の国立公園 |
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* [http://www.env.go.jp/nature/np/yambaru.html 「やんばる国立公園」が誕生しました!] - 環境省(2016年10月7日公開) |
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** {{PDFlink|[http://www.env.go.jp/nature/np/yambaru/pdf/shitei_keikaku.pdf やんばる国立公園 指定書及び公園計画書]}} |
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** {{PDFlink|[http://www.env.go.jp/nature/np/yambaru/pdf/map0_per35000_A0.pdf やんばる国立公園区域図]}} |
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* [http://kyushu.env.go.jp/naha/park.html 管内の国立公園] - 環境省那覇自然環境事務所 |
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* [http://www.ufugi-yambaru.com/torikumi/kouen.html 国立公園] - やんばる野生生物保護センター ウフギー自然館 |
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** [http://www.ufugi-yambaru.com/news/whatsnew28.html#news160915 2016年9月15日 やんばる国立公園が誕生しました!] |
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[[Category:大宜味村]] |
[[Category:大宜味村]] |
2017年2月16日 (木) 09:49時点における版
やんばる国立公園 Yambaru National Park | |
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辺戸岬から見た辺戸御嶽と海岸地形 | |
指定区域 | 北緯26度43分 東経128度13分 / 北緯26.717度 東経128.217度座標: 北緯26度43分 東経128度13分 / 北緯26.717度 東経128.217度 |
分類 | 国立公園 |
面積 |
17,292 ha (陸域:13,622 ha、海域:3,670 ha) |
指定日 | 2016年9月15日 |
運営者 | 環境省 |
施設 | 自然再生施設、園地、宿舎、野営場、博物展示施設 |
告示 | 平成28年環境省告示第87号 |
備考 |
やんばる国立公園のテーマ 「亜熱帯の森やんばる - 多様な生命(いのち)を育む山と人々の営み」 |
公式サイト | やんばる国立公園 |
やんばる国立公園(やんばる こくりつこうえん、英称:Yambaru National Park [1])は、沖縄県国頭郡国頭村、大宜味村および東村ならびにこれら3村の周辺海域を区域とする国立公園である。
当公園の国立公園の指定は、日本全国で33番目である[2]。新規の指定としては、2014年の慶良間諸島国立公園以来2年ぶりで、沖縄県内においては3番目の指定となる[3]。
指定範囲
- 国頭村、大宜味村、東村を合わせた3村は、以降「やんばる3村」と表記する。
「やんばる(山原)」とは、一般的に沖縄本島の北部地域を指し、「山々が連なり森の広がる地域」を意味する[4]。沖縄海岸国定公園の一部がやんばる国立公園に編入され[5]、面積は17,292ha(陸域13,622ha、海域3,670ha)で、やんばるの亜熱帯照葉樹林を中心とした区域となっている[6]。国頭村が陸域の75%を占める[7]。米軍基地の北部訓練場は指定域から除外されているが、米軍施設と隣接する国立公園の誕生は初めてとなる[8]。以下に指定区域内の地名を示す[9]。
- 山岳 - 与那覇岳、辺戸岳、尾西岳、伊部岳、伊湯岳、ネクマチヂ岳、塩屋富士、玉辻山など
- 河川 - 辺野喜川、与那川、慶佐次川、安波川、新川川、平南川など
- 島・岬 - 安田ヶ島、宮城島、辺戸岬など
- その他 - 福上湖(福地ダム)北側[10]、田港御嶽、塩屋湾、茅打バンタ、金剛石林山など
-
茅打バンタ
-
与那覇岳
-
慶佐次湾のヒルギ林
-
辺戸岬
保護規制区域
以下に特別地域と普通地域の指定面積を示した[6]。また環境省は、当公園の指定域の特別保護地区と第1種特別地区(総面積5,217ha)を世界自然遺産「奄美・琉球」の推薦区域として、早くても2018年に登録を目指している[11]。2016年7月1日に開かれた、NPO法人による討論会で、やんばる国立公園の規制区域の計画案について、特別保護地区の範囲拡大、さらに国と沖縄県、そしてやんばる3村が、やんばるの森を全面的に保護するべきだと述べ、徹底的な調査を求めた[12]。
- 特別保護地区 - 789 ha
- 第1種特別地域 - 4.428 ha
- 第2種特別地域 - 4,054 ha
- 第3種特別地域 - 3,345 ha
- 普通地域 - 4,676 ha
事業計画
- 保護施設計画 - 照葉樹林の再生と成熟を促すため、自然再生施設3か所を設置。
- 利用施設計画 - 単独施設(園地、宿舎、野営場、博物展示施設)を23か所、また車道4路線、歩道7路線を指定。
設立への経緯
1996年、自然保護議員連盟の幹事長を務めた岩垂寿喜男が、当時の環境庁長官の就任挨拶で、やんばるの国立公園化構想を発表した[14]。同年4月15日、日米特別行動委員会 (SACO) の中間報告に、北部訓練場の半分以上の敷地面積が返還されることが付け加えられた[15]。これを受けて同日、岩垂は中間報告で返還後の北部訓練場の土地利用について、「国立公園を選択肢の一つとして検討したい」と述べ、やんばるの自然環境について詳しく調査する考えを示した[16]。
2007年3月9日、環境省は36年ぶりに国立・国定公園の選定要領の改正に伴い、やんばると奄美群島に群生する照葉樹林地帯を国立公園として指定する方針を決定した[17]。1971年の選定要領は自然公園法に基づき、「優れた自然の風景地」を評価するため改められたが、景観の他に生物多様性などの観点を取り入れ、「照葉樹林」、「里地里山」、「海域」といった評価の対象が要領に盛り込まれた[17]。2010年10月に公表された国立・国定公園総点検事業において、やんばるは陸域から海域にかけて、多様で連続性をもつ生態系を有し[6]、「日本国内で傑出した地域」と評価された[18]。
2010年に公表された生物多様性国家戦略において、生態系のつながりを考慮した自然公園の指定・拡大を図り[19]、またエコツアーの増加による対策として自然環境を保護する目的で、環境省は国立・国定公園の指定状況の見直しを行い、新たな公園の創設と区域拡張すべき既存公園を選定した[20]。2010年10月4日、同省により国立公園の新規指定候補地5か所のうち、やんばる地域が選出された[20][21]。その理由として、ヤンバルクイナやノグチゲラなどの固有種と、その他の絶滅の恐れがある動植物が集中的に分布していることが挙げられる[19]。
2016年2月1日発行の琉球新報の記事にて、国頭村村長の宮城久和は、やんばるの国立公園の指定を目指し、地権者と協議を進めていると述べた[22]。沖縄県は2015年6月に環境省から照会を受けて、同年9月にはやんばるの国立公園化に向けた協議で意見調整が行われ、2016年2月26日に国立公園化に同意した[23]。その翌日の2月27日に、環境省はやんばるに「やんばる国立公園(当時は仮称)」を設立する方針を決定した[24]。国立公園の指定、さらに世界自然遺産「奄美・琉球」の登録に向けて、土地開発や農業・林業に対する規制について、合意が進んだ[25]。2016年6月20日、中央環境審議会からの答申を受けて、環境省は「やんばる国立公園」の指定を決定した[18]。
2016年9月9日、山本公一環境大臣は同年9月15日に、沖縄本島北部地域を「やんばる国立公園」として指定すると、閣議後の会見で発表した[26]。指定日は地元自治体の要望により、ヤンバルテナガコガネが発見された1983年9月15日にちなんで決定された[26]。また環境省は、指定日の9月15日に官報において告示すると発表した[27]。そして9月15日に、「やんばる国立公園」は官報に告示され、正式に指定された[28]。
- 年表
- 1996年4月15日 - 当時の環境庁長官は、返還される北部訓練場の跡地利用の候補として国立公園化に言及。
- 2007年3月9日 - 国立・国定公園の選定要領を改正し、やんばるを国立公園として指定する方針を決定。
- 2010年10月4日 - 国立公園の新規指定候補の一つとして、やんばる地域を選定。
- 2016年2月27日 - やんばるに「やんばる国立公園(当時は仮称)」を設立する方針を決定。
- 2016年6月20日 - 中央環境審議会の答申を受け、「やんばる国立公園」の指定を決定。
- 2016年9月15日 - 「やんばる国立公園」の指定。
国立公園の指定に関する取り組み
2016年4月19日、キリンビールが、環境省とやんばる3村と連携した「キリン一番搾り生ビール やんばる国立公園指定応援デザイン缶」を発売すると、沖縄県庁舎で行われた記者会見で発表し、売り上げの一部でやんばるで行われている密猟パトロール用の制服を製作し、それを寄贈するとしている[29]。また同年10月20日、オリオンビールは国立公園の指定を記念した「オリオンドラフト記念デザイン缶」を販売すると発表し、1本の売り上げごとに1円をやんばる3村の環境保全活動の資金として寄付するとしている[30]。
指定日の2016年9月15日に、国立公園の指定を祝して、やんばる3村の各村庁舎で懸垂幕が掲げられた[2]。また、やんばる3村の村長らは、国頭村のやんばる野生生物保護センターで、記者会見を行った[28]。国頭村は同日、与那覇岳の第2種特別地域で自然観察会を行い[31]、同村に通う小学生らが与那覇岳の登山道を歩いた[32]。
2016年10月7日、環境省は同省のウェブサイト上に、やんばる国立公園を紹介するウェブページ(当該リンク)を公開し、やんばるの動植物や文化のほかに、那覇空港からのアクセス方法も掲載している[33]。
今後の課題
環境保護と地域開発の両立
やんばるの国立公園化により、当地域の自然保護が強化される[34]。しかし、やんばるに生息する動植物が密猟・過剰採取の被害に遭う実態が報告され[35]、地元住民は定期的に林道を巡回している[36]。理学博士の屋富祖昌子は「国立公園化で、観光客がやんばるの動植物を研究や教育目的以外でむやみに乱獲されるのではないか」とし、環境省のやんばる野生生物保護センターは国立公園化に伴い、外部から人が増えることを予想し、「警察や周辺住民らと連携して密猟の抑止に努める」と述べた[36]。また、2001年には、ペットとして飼われたネコが遺棄されて、その後野生化したノネコによるヤンバルクイナの捕食が発覚すると[37]、その被害を抑えるために、2003年に環境省と周辺自治体でネコの適正な飼育を推進した[38]。しかし、その後の2013年頃にノイヌが増加し、既にやんばるの生態系に影響を及ぼしていると思われ、新たな対策が求められている[38]。
当公園のテーマ「亜熱帯の森やんばる - 多様な生命(いのち)を育む山と人々の営み」とあるように、やんばるの森は地元住民の生活と関わりがある[6]。やんばるは、沖縄県内で林業が盛んな地域で[39]、かつて首里・那覇や本島中南部に薪材や材木・竹、砂糖樽の板などを供給していた[40]。特に国頭村は沖縄県最大の木材産出地で、2016年現在でも県内唯一の木材拠点産地に指定されるなど、雇用面でも林業は重要な産業となっている[39]。当公園の指定区域内のうち、特別保護地区と特別地域での木材の伐採などが制限され[41]、沖縄県は林業への悪影響を及ぼすことは明らかであると述べた[42]。また、世界遺産に登録されれば、豊かな生物多様性のみを取り上げられ、人々にやんばるの森が手付かずの原生林だと誤認され、規制条件を満たした合法的な収穫伐採でも批判される可能性があると懸念している[42]。やんばるで農林業を営む人々の中には、当公園の区域内で従事し[10]、国頭村で林業を営む住民の一人は、この公園化で林業への恩恵は感じられず、伐採規制の強化のみで行う環境保全に疑問を呈している[7]。沖縄県農林水産部森林管理課は、2015年からやんばる3村で「やんばる型森林ツーリズム推進体制構築事業」を展開している[43]。やんばるの主産業である林業と自然体験活動の組み合わせによる、森林の活用と環境保全を目指している[39]。それを実現するためには、やんばる3村主導で事業を取り組み、自らが意見の合意形成を図り、さらに林業と関連する団体と連携する必要があるとしている[42]。
やんばる3村の各村長らは、やんばる国立公園の指定を受け、観光産業の発展に期待しているが、宿泊施設の増設、交通の整備、ごみの処理などの観光客を受け入れる体制が万全に整っていない[44]。また地元住民の中には、観光客の増加による環境負荷を懸念し、それを防ぐために人数制限を設ける必要があるとし、観光客やそれらを受け入れる自治体にも、生物多様性の豊かさを評価されて国立公園化された意味を理解するべきだと述べた[32]。やんばる自然保護官事務所は、自然保護に対する意識向上や、観光と地域振興の活性化に期待し、地元と共にやんばるの将来について考えたいと述べた[34]。
世界遺産登録に向けて
環境省は、早くても2018年夏にやんばる国立公園の指定域のうち、特別保護地区と第1種特別地区を、世界自然遺産「奄美・琉球」として登録を目指している[11][45]。世界遺産の登録には、国立公園化により、指定区域内における厳正な自然環境の保全が要求され、土地開発の規制や希少な動植物の保護が強化される[3]。2016年9月9日の閣議後会見で山本公一環境大臣は、「なるべく早く世界遺産登録を目指す」と述べた[27]。また沖縄県は、世界遺産の登録でやんばるの自然環境に触れる機会を作り出し、自然環境の保全の重要性を伝えていく必要があると述べた[39]。やんばる自然保護官事務所の自然保護官の一人は、やんばるの国立公園化や世界遺産登録を目的で終わらすのではなく、将来にわたってどのような持続可能な利活用を行っていくか考えるべきだと述べた[4]。
やんばる国立公園に隣接する北部訓練場の存在が、世界遺産登録の妨げになるのではないかとの指摘がある[34]。IUCN日本委員会を務めた吉田正人は、沖縄タイムスの取材で、過去に登録された日本の世界自然遺産の中で、やんばるに生息する固有種の完全保護性と自然環境の保全が十分なのか判断するのが最も難しいとし、北部訓練場内の動植物の生息状況や米軍による訓練の影響の有無を、日本政府が管轄外という理由で説明できなければ、世界遺産登録は難しいと述べた[46]。
北部訓練場について
1996年12月2日、日米特別行動委員会 (SACO) は最終報告で、やんばる国立公園の指定域に隣接する北部訓練場の敷地面積の約53%の3,987ヘクタールを返還することに合意した[47][48][49]。やんばる国立公園が指定された2016年9月15日に開かれた会見で、国頭村村長の宮城久和は北部訓練場が国立公園と隣接している状況に好ましくないと述べた一方で、東村村長の伊集盛久は、北部訓練場の一部返還後は国立公園に編入されることに期待している[8]。同年11月15日付に沖縄防衛局へ提出した、沖縄県知事の翁長雄志による「北部訓練場の過半の返還に関する実施計画の案に対する意見書」には、返還される北部訓練場の区域が、隣接するやんばる国立公園へ編入される見通しで、かつてアメリカ軍らが北部訓練場内で実施した野生動植物に関する調査結果があれば、その資料の提供を求めた[50]。また、やんばるの自然環境に及ぼす影響を明らかにする必要があるとし、北部訓練場で建設中のヘリパッドの運用が開始されるまでに、オスプレイが及ぼす環境影響評価を直ちに実施することを提案した[50]。ヘリパッド建設反対派の団体の一人は、やんばる国立公園が指定されれば、北部訓練場の基地固定化を招きかねないと考えている[51]。2016年12月22日、北部訓練場の一部区域4,010haが返還された[49]。
関連告示
2016年(平成28年)9月15日 『官報』(号外第204号)[52]
- 環境省告示第87号「やんばる国立公園を指定する件」
- 環境省告示第88号「やんばる国立公園の公園計画を決定する件」
- 環境省告示第89号「やんばる国立公園の特別地域を指定する件」
- 環境省告示第90号「やんばる国立公園の特別保護地区を指定する件」
出典
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参考文献
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- 『官報 平成28年号外第204号』 独立行政法人国立印刷局、2016年9月15日。
関連項目
外部リンク
- やんばる国立公園 - 日本の国立公園
- 「やんばる国立公園」が誕生しました! - 環境省(2016年10月7日公開)
- 管内の国立公園 - 環境省那覇自然環境事務所
- 国立公園 - やんばる野生生物保護センター ウフギー自然館