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「レーザープリンター」の版間の差分

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[[File:Hp laserjet 4200dtns.jpg|thumb|{{Ill2|HP LaserJet|en|HP LaserJet}} 4200シリーズのプリンターは、500枚の用紙を収納する追加トレイの上に設置されている。]]
'''レーザープリンター'''(laser printer)は、[[レーザー]]による[[感光]]を[[印刷]]に利用する[[プリンター|印刷機]]。[[コンピュータ]]の[[周辺機器]]の一種。
{{History of printing}}
'''レーザープリンター'''({{Lang-en-short|laser printer}})は[[静電気学|静電]][[デジタル印刷]]プロセスを使用した[[印刷機]]である。レーザー印刷(英: laser printing)とも呼ばれる。


「ドラム」と呼ばれる負に[[電荷|帯電]]した円筒上に[[レーザー|レーザー光線]]を繰り返し通過させ、正に帯電した画像領域を形成することで、高品質のテキストや[[グラフィック]](および中程度の品質の写真)の[[潜像]]を作る事ができる<ref>{{cite web |url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/laser%20printer |title=Laser Printer - Definition of laser printer by Merriam-Webster |publisher=merriam-webster.com |access-date=2016-03-21}}</ref>。その後、[[電荷]]を帯びた粉体インク([[トナー]])を選択的にドラムに塗布し、トナー画像を用紙に転写する。最後に、用紙を[[加熱]]・加圧して文字や画像を[[恒久的]]に用紙に定着させる。[[複写機|デジタル複写機]]と同様、レーザー[[プリンター]]も[[電子写真]]印刷プロセスを採用している。しかし[[アナログ]]複写機で実装されている従来の[[ゼログラフィ|ゼログラフィー]]とは異なり、既存の[[原稿]]からの光を[[感光ドラム]]に反射させて画像を形成する。
カラー印刷も可能で、オフィス・家庭用として高速な部類に属する。[[アメリカ合衆国]][[シリコンバレー]]に位置する[[パロアルト研究所]]で開発された。'''LBP'''(laser beam printer、'''レーザービームプリンター''')と表される場合もある。
[[File:FujiXeroxDocuColourLaserPrint C1110B.PNG|thumb|350px|Fuji Xerox colour laser printer C1110B]]


レーザープリンターは1970年代にゼロックス[[パロアルト研究所]](Xerox PARC)で発明された。
== 動作原理 ==
コンピュータから送られた印刷イメージデータを内部の演算プロセッサでメモリ上に展開し、イメージを帯電された[[感光体]](大抵は[[円柱 (数学)|ドラム]]型)にレーザー等の光源を照射し、その部位の[[電圧]]を変化させる(印刷イメージに沿って行われる)。感光体の照射された部分に[[トナー]]([[顔料]]+[[ワックス]]+外添剤で出来ている粉)が[[静電気]]の力で付着する(外添剤の働きにより、静電気に反応しやすい)。感光体上に出来たトナーの電気的な潜在画像は、感光体とは逆の電圧(電位)がかかっている転写ロールにより用紙に転写される(転写ロールの上を用紙が通過)。その後、定着ローラーの熱と圧力によって用紙上にトナーを定着させ、紙の上に印刷結果が得られる。


その後、[[IBM]]、[[キヤノン]]、[[ゼロックス]]、[[アップルコンピュータ|アップル]]、[[ヒューレット・パッカード]]、その他多くの企業によりオフィス用に導入された。また消費者市場にも導入された。
一度に一枚を印刷するので[[ページプリンター]]と呼ばれることもある。印刷速度が紙のサイズにほぼ影響しない(プリンター内部の印刷イメージ展開の演算速度は別で、各種設計図面などのようにイメージが複雑になると速度が遅くなる傾向がある)。


行単位ではなくページ単位で印刷する方式から[[ページプリンター]]と呼ばれることもある。
カラー印刷は、以前は各色([[色料の三原色]]である[[シアン (色)|シアン]]=C・[[マゼンタ]]=M・[[黄色|イエロー]]=Yと黒=Kの4色)を重ね刷り(4パス)で実現したが、最近は各色のトナーを転写ベルトの上に乗せ、画像全体を一度に転写する(1パス)方式が多くなっている。


== 歴史 ==
ドラムを使うなど、[[コピー機]]とその基本的な原理は同一であるが、帯電方式や感光体の種類、光源等の部品が異なる場合がある。その一方でオフィス機を中心にコピー機の作像部をそのまま流用している機種もある(メーカーとしては、部品、組立、メンテナンスの共用共通化などメリットがある)。
[[File:Gary Starkweather.jpg|thumb|left|レーザープリンターを発明した[[ゲイリー・スタークウェザー]](2009年撮影)]]
1960年代、[[ゼロックス・コーポレーション]]は[[複写機|写真複写機]]市場で圧倒的な地位を占めていた<ref>{{cite news |newspaper=The New York Times |title=Jacob E. Goldman, Founder of Xerox Lab, Dies at 90
|url=https://www.nytimes.com/2011/12/22/business/jacob-e-goldman-founder-of-xerox-lab-dies-at-90.html
|date=December 21, 2011
|quote=In the late 1960s, Xerox, then the dominant manufacturer of office copiers ...}}</ref>。1969年、ゼロックスの商品開発部門に勤務していた[[ゲイリー・スタークウェザー]]は、レーザー光線を使って複写機のドラム上に複写物の画像を直接「描く」ことを考えついた。1971年に設立されたばかりの[[パロアルト研究所]](Xerox PARC)に異動したスタークウェザーは、ゼロックス7000複写機を改造してSLOT(Scanned Laser Output Terminal)を開発した。[[1972年]]、スタークウェザーは[[バトラー・ランプソン]]およびロナルド・ライダー(Ronald Rider)と協力し、制御システムとキャラクタージェネレータを追加し、後に{{Ill2|Xerox 9700|en|Xerox 9700|label=ゼロックス9700}}レーザープリンターとなるEARS(Ethernet, Alto Research character generator, Scanned laser output terminal)と呼ばれるプリンターを完成させた<ref>{{cite magazine| last=Gladwell| first=Malcolm
|title=Creation Myth - Xerox PARC, Apple, and the truth about innovation
|magazine=The New Yorker| date=May 16, 2011
|url=http://www.newyorker.com/reporting/2011/05/16/110516fa_fact_gladwell?currentPage=all
|access-date=28 October 2013}}</ref><ref>{{ cite book
|title=Milestones in Computer Science and Information Technology
|author=Edwin D. Reilly |publisher=Greenwood Press |year=2003
|isbn=1-57356-521-0
|url = https://archive.org/details/milestonesincomp0000reil|url-access=registration
|page=[https://archive.org/details/milestonesincomp0000reil/page/152 152]
|quote=starkweather laser-printer.
}}</ref><ref name="Allan2001">{{cite book
|author=Roy A. Allan
|title=A History of the Personal Computer: The People and the Technology
|url=https://archive.org/details/A_History_of_the_Personal_Computer
|date=1 October 2001 |publisher=Allan Publishing|isbn=978-0-9689108-3-2|pages=13–23}}</ref>。


[[1976年]]、最初の商用レーザープリンターである[[IBM 3800]]が発売された。これは[[データセンター]]向けに設計されたもので、[[メインフレーム|メインフレームコンピュータ]]に接続される[[ラインプリンター]]に代わるもので、IBM 3800は[[連続帳票|連続印字用紙]]への大量印刷に使用され、解像度240[[Dpi|ドット/インチ]](dpi)で215ページ/分(ppm)の速度を達成した。このプリンターは8,000台以上販売された<ref name="Kasdorf2003">{{cite book|url=https://books.google.com/books?id=XNIRkAqOzLUC&pg=PA383|title=The Columbia Guide to Digital Publishing|author=William E. Kasdorf|date=January 2003|publisher=Columbia University Press|isbn=978-0-231-12499-7|pages=364, 383}}</ref>。
== 機構 ==
=== 作像部 ===
; 現像剤(デベロッパー)
: [[#感光体|感光体]]上の潜像を可視化するための材料。一般にはトナーとキャリアで構成される。トナーのみのものは1成分現像剤、キャリアと混成されたものを2成分現像剤と呼ぶ。用途に応じて湿式(液体)と乾式(粉体)とがあり、また1成分現像剤には磁性と非磁性とがある。
; トナー
: [[トナー]]は帯電性を持ったプラスチック粒子に炭素等の色粒子を付着させたマイナスかプラスの電気性質を持つ微粒子。トナーのみで使用する場合と、キャリア(搬送体)と混合して使用する場合とがある。製造法により、粉砕法(材料を混練・粉砕して製造)と重合法(液体中の化学作用により生成)とに分類される。
; キャリア
: 磁性体を[[エポキシ樹脂]]等でコーティングした微粒子で、トナーと混合され使用される。トナーと撹拌する事でトナーに電荷を持たせ、静電効果を利用して感光体に付着させるための触媒及び搬送体。一般には感光体と同じ程度の寿命なのでセットで交換される事が多い。トナーの消費と同期して補充、回収され、現像剤の定期交換が必要ない方式が一般化している。
; {{Anchor|感光体}}(感光ドラム・感光フィルム)
: 半導体を用いており、暗中では絶縁体の性質を持ち、明るい場所では導体の性質を持つため、暗中でプラスまたはマイナスに帯電させることで、トナーを付着させる電荷を持たせる事ができる。光が当たった部位は導体となり電荷を失う。


[[1977年]]、 {{Ill2|Xerox 9700|en|Xerox 9700|label=ゼロックス9700}}が市場に投入された。これはIBM 3800とは異なり、ゼロックス9700は特定の既存プリンターの置き換えを目的としていなかったが、必要な[[コンピュータフォント|フォント]]の読み込みに限定的に対応していた。ゼロックス9700は、さまざまな内容の単票紙を含め、(保険証券など)高付加価値の文書を印刷するのに優れていた<ref name="Kasdorf2003" />。ゼロックス9700の商業的成功に触発され、[[1979年]]、日本のカメラ・光学機器メーカーの[[キヤノン]]が低価格のデスクトップ・レーザープリンター、キヤノンLBP-10を開発した。その後、キヤノンは大幅に改良されたプリントエンジン、キヤノンCXの開発に着手し、LBP-CXプリンターを誕生させた。コンピューター・ユーザーへの販売経験がなかったキヤノンは、[[シリコンバレー]]の3社、{{Ill2|ディアブロ・データ・システムズ|en|Diablo Data Systems}}(この申し出は拒否された)、[[ヒューレット・パッカード]](HP)、[[アップルコンピュータ]]に提携を求めた<ref name="Ujiie2006">{{cite book |author=H Ujiie |title=Digital Printing of Textiles |url=https://books.google.com/books?id=UOZRAwAAQBAJ&pg=PA5 |date=28 April 2006 |publisher=Elsevier Science |isbn=978-1-84569-158-5 |page=5}}</ref><ref name="Malone2007">{{cite book |author=Michael Shawn Malone |title=Bill & Dave: How Hewlett and Packard Built the World's Greatest Company |url=https://books.google.com/books?id=KMSH_wzyDaEC&pg=PA327 |year=2007 |publisher=Penguin |isbn=978-1-59184-152-4 |page=327}}</ref>。
: 感光体上で行なわれるプロセスを以下に示す。
:; 一次帯電
:: 前露光による残留電荷が除去がされて電荷を持たない感光体に対して、プラスまたはマイナスの電荷を持たせる。 帯電器の方式としてまず、非接触型放電方式のコロトロン型およびスコロトロン型がある。また、最近は接触方式の帯電ローラや帯電ブラシを用いる製品も多い。
:; 露光
:: レーザー光を照射する事で静電潜像を作像する。別の露光方式として、LEDとグラスファイバアレイの集合体などがある。
:; 現像
:: 露光によって電荷が失われなかった部分へ、感光体とは逆の電荷を持ったトナーを乗せる方式と、電荷が失われた部分へトナーを押し込む方式がある。ここで、感光体上にはトナーによる原稿の鏡像が作られる。
:; 転写
:: 感光体上のトナーによる鏡像を転写紙へ移す。転写紙の裏側からトナーと逆の電荷(転写バイアス)をかけ、感光体へ転写紙を吸着させる。
:; 分離
:: 吸着した転写紙を引きはがすため、転写と逆の電荷を含ませた交流放電をかける「電位分離」と、転写紙を曲げて分離する「曲率分離」がある。このとき、転写対象物の電荷を逃がす分離除電針や分離帯電器も用いて、感光ドラムからの分離を補助する機構がある。
:; 除電
:: 感光体上に残った電荷をできる限り0にするため、感光体表面へ均一に光を当てたり(前露光)、交流放電をかける。
:; クリーニング
:: 感光体上のトナーは100%転写紙へ移るわけではないので、感光体上のトナーを荷電ブラシやゴムブレード等で回収する。


[[1981年]]、 オフィス用途に設計された初の小型パーソナルコンピュータ、[[Xerox Star|ゼロックス・スター]]8010(Xerox Star 8010)が市場に登場した。このシステムは[[デスクトップ・メタファー]]を採用し、[[Apple Macintosh|アップル・マッキントッシュ]](Apple Macintosh)が発売されるまで、商業販売において他に類を見ない存在であった。Starワークステーションは革新的であったものの、非常に高価なシステムで(17,000米ドル)、対象となった[[企業]]や[[組織]]のごく一部にしか手が届かなかった<ref name="Strassmann2008">{{cite book|author=Paul A. Strassmann
=== 用紙搬送部 ===
|title=The Computers Nobody Wanted: My Years with Xerox
; 給紙部
|url=https://books.google.com/books?id=b5for5RdBCoC&pg=PA126|year=2008
: 用紙トレイから一枚ずつ転写紙を複写機内部へ送り込む。多重送りを防ぐ機構に、分離爪方式、分離ローラー方式、分離パッド方式がある。
|publisher=Strassmann, Inc. |isbn=978-1-4276-3270-8 |page=126}}</ref>。
; レジスト部
: 用紙の先端と画像の先端をあわせるため、一度転写紙を止めてタイミングを合わせる。また、ループを形成し、給紙時に生じる斜め送りを是正する作用もある。また、レジストの制御により、用紙先端余白幅の調整も行われる。
; 転写、分離部
: 作像部の転写、分離と同じ。
; 搬送部
: 転写後の用紙を定着部へと搬送する。熱に弱い感光体と、高温部の定着部との距離を保つ役割も兼ねている。
; 定着部
: 転写紙上のトナーは不安定なため、熱または熱と圧力(ニップ圧)を同時に加え、トナーの樹脂成分を溶着させる事で定着させる。方式として、ローラー定着・フィルム定着・フラッシュ定着などがある。
:; ローラー定着
:: 筒状の金属を芯材としてシリコン等で薄くコーティングした「{{Anchor|定着ローラー}}」と、棒状の金属を芯材としてシリコン等を厚くコーティングした「加圧ローラー」の組み合わせにより、トナーの定着を行う。ローラー自体が保温材を兼ねており、定着温度の安定性が比較的高いのと、ニップ圧を比較的管理しやすいため、高速機やカラー機に多く使われている。しかし、保温材であるローラーが規定温度に達するまでに時間がかかるため、立ち上がり時間が長いというデメリットもある。発熱材としては、長い間[[ハロゲンランプ]]が使われていたが、近年ではIH方式([[誘導加熱]]による方式)が主流になりつつある。
:; フィルム定着
:: 定着ローラーのかわりに、セラミックヒータと筒状フィルムを組み合わせた方式。多くの場合、加圧はローラー定着方式と同じく加圧ローラーを使う。保温材が加圧ローラーしか無いため、セラミックヒータが発する熱を直接定着に使う。そのため、立ち上がり時間は非常に短い。温度保持特性や耐久性においてローラー定着方式に劣るため、多くの場合は、普通紙による文書がメインのビジネス向けレーザー機に使われる。ローラー定着同様、近年省エネ化のため、セラミックヒータの代わりにIH方式を採用する機種も出てきている。
:; フラッシュ定着
:: キセノン管を使用したフラッシュ光を凹面鏡等で集光し、その熱でトナーを溶解させて定着させる方式。装置が非常に大掛かりであり、それによって機器も非常に高価となるため、一般的なオフィス向け機器には使われない。用紙に対して触れる物が無いため、用紙へのダメージ(シワ・再転写等)が無く、スピードも非常に高速である。また、光量や照射時間を細かくコントロールすることによって、定着性のコントロールがきめ細かくできる。
; 排紙部
: 定着後の用紙が、溶解したトナーの粘性で、[[#定着ローラー|定着ローラー]]に巻き付く事を分離爪で防止させ、排紙トレイに導く。


[[1984年]]、 大量販売を目的とした初のレーザープリンター{{Ill2|HP LaserJet|en|HP LaserJet}}が発売された。これにはHPのソフトウェアで制御されたキヤノンCXエンジンが搭載されていた<ref>{{Cite web |url=https://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00062&age=stable-growth |title=レーザープリンター - 戦後日本のイノベーション100選 |access-date=2023/11/18 |publisher=公益社団法人発明協会 |quote=1984年に発売されたLBP-8/CXは、優れた印刷能力に加えて最も消耗の激しい感光ドラム等の部分をカートリッジ化するなどメンテナンス面でも画期的な進化を遂げていた。価格も40万円台にまで引き下げることに成功し、レーザープリンターの需要層を劇的に拡大、さらにヒューレット・パッカード(HP)社やアップルコンピュータ社など国際的なパソコンメーカーへのOEM販売を行い、レーザープリンターの大衆化を決定づけた。}}</ref>。LaserJetに続き、[[ブラザー工業]]、[[IBM]]などもプリンターを発売した。第一世代のマシンには、セットされた用紙の長さよりも大きな外周をもつドラムが搭載されていた。回復速度が速いコーティングが開発されると、ドラムは印刷面ごとに何度も回転して用紙に接触することができ、ドラムの直径は小さくなった。
== 分類 ==
=== モノクロ機 ===
黒[[トナー]]のみで印刷するプリンター。価格は7千円台から数十万円まで存在する。[[ローエンド]]商品は個人でも十分手が届く価格であり、筐体も[[インクジェットプリンター]]並に小型な機種もある。


[[1985年]] 、アップルは[[LaserWriter]]を発表し<ref>{{cite web|url=http://www.printerworks.com/Catalogs/CX-Catalog/CX-AppLW-LWPlus.html|title=TPW - CX Printers- Apple|work=printerworks.com|access-date=2014-07-19|archive-date=2013-08-01|archive-url=https://web.archive.org/web/20130801183228/http://www.printerworks.com/Catalogs/CX-Catalog/CX-AppLW-LWPlus.html|url-status=dead}}</ref>、同じくキヤノンCXエンジンと、新しくリリースされた[[ページ記述言語]]、[[PostScript]](ポストスクリプト)を採用した。それまで各メーカーは独自のページ記述言語を使用していたため、対応ソフトウェアは複雑で高価なものであった。PostScriptという記述言語は、プリンターのブランドや解像度にほとんど依存することなく、テキスト、フォント、グラフィック、画像、カラーを使用することを可能にした。同年、[[アルダス]](Aldus)がMacintoshとLaserWriter向けに[[Adobe PageMaker|PageMaker]]を発売し、この組み合わせは[[デスクトップパブリッシング]]で大人気となった<ref name="Allan2001" /><ref name="Kasdorf2003" />。
=== カラー機 ===
殆どの機種ではCMYK(色料の三原色+黒)の4色のトナーを使う。[[フルカラー]]による印刷も可能である。A4機で低性能な機種であれば1万円程度から存在する。一方、高価な業務用では100万円を超えるものも存在する。モノクロ機に比べて大型で動作音が大きい。カラー印刷時はランニングコストが大きいが、モノクロ印刷モードを使えばコストを抑えることができる。


レーザープリンターは、ビジネス市場と消費者市場に、1ページにさまざまなフォントを使用した非常に高速で高品質のテキスト印刷をもたらした。この時代、一般に販売されていた他のプリンターで、このような機能を兼ね備えていたものはなかった{{Citation needed|date=August 2021}}。
尚、カラー印刷の方式により、タンデム方式とロータリー方式に二分される。タンデム方式はカラー印刷とモノクロ印刷の速度差が生じないが大型になる。ロータリー方式はタンデム方式に比べて小型で低価格だがカラー印刷が遅い。
各方式の概要は以下の通り。


== 印刷プロセス ==
; ロータリー現像方式(少量印刷向け)
{{出典の明記| date = 2023年11月| section = 1}}
: 基本構造は使用するトナー色の数だけ現像部を使用して、感光体は一つで済ませてしまう方式。現像部から感光体に載せられたトナーは中間転写体上へ転写されそのまま保持される。この後現像部の位置を入れ替えて、トナー色の数だけ感光体→中間転写体へ転写し、最後に用紙上へトナーを再転写させる。現像部の入れ替え方式や納められている構造が[[回転式拳銃|リボルバー式拳銃]]の弾倉に似ているために、ロータリー(回転体)現像方式と呼ばれるようになった。一部のメーカーではそのまま「リボルバー現像方式」と呼んでいる場合もある。1枚の複写に各色の行程が必要なため、カラー印刷の動作はモノクロ印刷と比較して単純に色数倍分時間がかかる。また、機構が複雑であるため、耐久性にも難がある。ただし、感光体が1本で済むため、少量印刷であれば、ランニングコストを抑える事ができる。又、4色のトナーを使う機種では4サイクル方式と呼ばれる事も多い。


{{Main|[[電子写真]]}}
; タンデム現像方式(大量印刷向け)
[[File:Laser toner cartridge.svg|500px|thumb|レーザープリンターの図解]]
: ロータリー現像方式が感光体を1つしか使わないことに対して、タンデム現像方式はトナーの数だけ感光体を利用する。モノクロ機の作像部全体が色数分あることになる。現像部が入れ替わらないため、ロータリー現像方式に比べて中間転写体上でのトナー像作成時間が短くなる。これによってモノクロ印刷時とカラー印刷時の速度差を機構上無くす事ができる反面、機械本体や作像部が大きくなってしまう上、各色毎に消耗品である感光体が必要になるなどのデメリットも存在する。
[[File: Laser printer, 2015-01-23.ogg|thumb|レーザープリンターの動作音]]
[[レーザー]]光源には一般に、赤色光または赤外光を発することができる[[ヒ化アルミニウムガリウム]](AlGaAs)[[半導体レーザー]]が用いられる。レーザー光は、帯電した感光体でコーティングされた回転ドラムに、印刷されるページの画像を投影する。コーティングは、初期には[[セレン]]が<ref name="Nagabhushana2010">{{cite book|author=S. Nagabhushana|title=Lasers and Optical Instrumentation|url=https://books.google.com/books?id=FUzjTAr0U4MC&pg=PA269|year=2010|publisher=I. K. International Pvt Ltd|isbn=978-93-80578-23-1|page=269}}</ref>、後の製品では[[有機化合物|有機]][[モノマー]]ある{{Ill2|N-ビニルカルバゾール|en|N-Vinylcarbazole}}などの[[有機光伝導体]]が使われている。[[光伝導|光伝導性]]によって、レーザー光に曝露されたドラムの領域から帯電した電子が離脱し、ドラム上に潜像が形成される。そして、粉体インク([[トナー]])粒子は、レーザー光が照射されていないドラムの帯電領域に静電的に引き寄せられる。その後、機内を通過する紙にドラムが直接接触して、トナーで形成された画像を転写する。最後に、用紙はフィニッシャーに送られ、熱と圧力を利用して画像を表したトナーを瞬時に用紙に定着させる。


このプロセスは通常7つの段階からなる。次の節で詳しく説明する。
== 特徴 ==
=== コスト ===
[[インクジェットプリンター]]と比較して、高速で普通紙に対しても高品質な印刷が可能な反面、消費電力が大きく発熱量も多い。またインクジェットプリンター等に比べて大重量であり消耗品のコストも高い。例えば、インクジェットプリンターのインクが1色あたり千円前後で販売されているのに対し、レーザープリンターのトナーは1色4千円以上にもなる (容量が大きいため、一枚あたりのコストは安価) 。


=== ラスターイメージ処理 ===
ほとんどの機種は600[[dpi]]であるが、高価な機種では1200dpiや2400dpiでの印刷が可能なものがある。メーカーによって独自の高画質化・高速化の技術を持っており、メーカーにより特徴が異なる。
{{Seealso|ラスターイメージプロセッサ}}
印刷する文書は、PostScript、[[Printer Command Language]](PCL)、[[Open XML Paper Specification]](OpenXPS)などの[[ページ記述言語]]で[[エンコード]]される。[[ラスターイメージプロセッサ]](RIP)はページ記述を[[ビットマップ (情報技術)|ビットマップ]]に変換し、プリンターのラスターメモリに格納する。ページ全体を横切るドットの各水平帯は、[[ラスタースキャン|ラスターライン]]またはスキャンラインと呼ばれる。


レーザー印刷が他の印刷技術と異なるのは、常に単一の連続プロセスでレンダリングされて、途中で停止することがない点であり、[[インクジェットプリンター|インクジェット]]などの他の技術が数行ごとに一時停止できるのと対照的である<ref name="Ganeev">{{cite book |last1=Ganeev |first1=Rashid A. |title=Laser - Surface Interactions |date=2014 |publisher=Springer Science+Business Media |location=Dordrecht |isbn=9789400773417 |page=56 |url=https://books.google.com/books?id=H8DEBAAAQBAJ&pg=PA56 |access-date=15 June 2020}}</ref>。[[バッファアンダーラン]](レーザーがページ上のある点に到達したときに描画するドットの情報が存在しないこと)を回避するため、レーザープリンターは通常、ページ全体のビットマップ画像を保持するのに十分なラスターメモリを必要とする。たとえば、[[A4サイズ]]で600 dpiの場合、[[モノクローム|モノクロ]]で少なくとも4[[メガバイト]]、4色[[CMYK|カラー]]で16メガバイトを要す。
=== 構造 ===
内部でイメージを展開している構造のため、一種のコンピュータ([[組み込みシステム]])を内蔵しており、内部のメモリ容量を増設することで、より高解像度での印刷や速度の向上が可能になる場合が多い。業務用の高級機である[[Postscript]]に対応したものでは[[ハードディスクドライブ]]を内蔵したものもある。


ページ記述言語を使用したフルグラフィック出力の場合、[[レターサイズ]]またはA4サイズのモノクロのページ全体にわたるドットを300 dpiで保持するのに、少なくとも1メガバイトのラスターメモリが必要となる。ページに含まれる1平方インチあたりのドット数は[[Dpi|1インチあたりのドット数]]の2乗、300 dpiの場合は90,000ドットとなる。一般的なレター用紙(8.5×11インチ、216×279 mm)の四辺に0.25インチ(6.4 mm)の余白をとると、印刷可能領域は8.0×10.5インチ(200×270 mm)、その面積84平方インチに含まれるドット数は90,000ドット/平方インチ×84平方インチ=7,560,000ドットとなる。モノクロの場合、1ドットを1ビットで表せるので、必要なメモリは7,560,000ビットである。1メガバイトのメモリサイズは1,048,576[[バイト (情報)|バイト]]または8,388,608[[ビット]]であることから、このページ全体を保持するのに十分であり、残りの約100キロバイトはラスターイメージプロセッサが使うことができる。
=== 価格 ===
家庭用としては高価な部類だが、年々低価格化が進んでいる。モノクロでは1万円程度から、カラーでは数万~数百万円まで存在する。2012年現在では、カラーレーザープリンターでも、新品で1万円を切る製品も出ている。小型化も進んでいて、低性能の物には、インクジェットプリンターより小さな筐体サイズの機種も出てきている。一部ではオンデマンド定着方式を採用するなどの省エネや環境問題に対応したタイプが販売されている。


カラープリンターでは、4つの[[CMYK]]トナー層がそれぞれ別のビットマップとして保存され、通常、印刷を開始する前に4つの層すべてが前処理されるため、300 dpiのフルカラーのレターサイズまたはA4サイズのページには少なくとも4メガバイトが必要となる。
高価な機種は、高解像度1200dpi、[[プリントサーバ|ネットワーク機能]]・両面印刷機能・大容量給紙/排紙・高速高耐久・[[ページ記述言語|PDL]]・[[PostScript]]等の特徴を持つ。また、消耗品の一枚辺りのコストも安くなる。


[[1980年代]]、[[半導体メモリ|メモリーチップ]]はまだ非常に高価であったため、当時のレーザープリンターは最下位モデルでも希望小売価格は米ドル建てで4桁台であった。その後、メモリの価格は大幅に下がり、その一方で、パーソナルコンピュータ(PC)と周辺機器ケーブル(特に[[Small Computer System Interface|SCSI]])の性能が急速に向上により、画像生成処理([[ラスタライズ]])を送信側のPC側で行う低価格なレーザープリンターの開発が可能になった。このようなプリンターでは、[[オペレーティングシステム]]の[[スプーリング|印刷スプーラ]]が、各ページの生のビットマップをターゲット解像度でPCのシステムメモリ上に[[レンダリング (コンピュータ)|レンダリング]]し、このビットマップをレーザーに直接送信する(送信側PCの他のすべてのプログラムの速度を低下させるという代償を払って)<ref name="Brownstein">{{cite journal |last1=Brownstein |first1=Mark |title=SCSI may solve printer data bottlenecks |journal=InfoWorld |date=November 18, 1991 |volume=13 |issue=46 |pages=25–28 |url=https://books.google.com/books?id=Bj4EAAAAMBAJ&pg=PA25 |access-date=July 8, 2023}}</ref>。[[日本電気|NEC]]が投入した、いわゆる「ダム」または「ホストベース」レーザープリンターの登場により、低価格の300 dpiレーザープリンターの小売価格は、1994年初頭には700米ドル<ref name="Troast">{{cite news |last1=Troast |first1=Randy |title=Low-cost laser printers |url=https://books.google.com/books?id=DTsEAAAAMBAJ&pg=PA85 |work=InfoWorld |date=March 21, 1994 |pages=68–69, 84–85}}</ref>、1995年初頭には600米ドルにまで低下した<ref name="Grotta">{{cite news |last1=Grotta |first1=Daniel |last2=Grotta |first2=Sally Wiener |title=SuperScript 660: NEC's Dumb Printer Is a Smart Buy |url=https://books.google.com/books?id=eMKimy4DFaEC&pg=PA50 |work=PC Magazine |date=March 28, 1995 |page=50}}</ref>。1997年9月、HPはホスト・ベースのLaserJet 6Lを発表した。600 dpiのテキストを最大6ページ/分で印刷でき、価格はわずか400米ドルであった<ref name="Mendelson">{{cite news |last1=Mendelson |first1=Edward |title=A New LaserJet Jewel: HP LaserJet 6L makes 6-ppm printing an affordable venture |url=https://books.google.com/books?id=eJVnzcZC5I0C&pg=PA68 |access-date=July 8, 2023 |work=PC Magazine |date=September 9, 1997 |page=68}}</ref>。
=== その他 ===
* コピー機能や[[FAX]]と統合された[[複合機]]もある。
* 印刷時の動作音が比較的大きい。


1200 dpiのプリンターは、2008年以降、消費者市場で広く販売されている。2400 dpiの電子写真製版機(基本的にはプラスチックシートに印刷するレーザープリンター)も販売されている。
== 用紙について ==
レーザープリンターはインクジェット式のようなインク滲みがないため、多少品質の落ちる紙も使える(レーザプリンター対応を保証する[[再生紙]]があり、官公庁や企業を中心に使われている)。しかし、熱によりトナーを定着させるため、インクジェット年賀ハガキ、写真用紙、光沢紙、コート紙などのインクジェットプリンター専用紙、表面が光っている新聞広告の紙(光沢紙、上質紙)など、表面にコーティングが施してある紙や、[[ラベル用紙]]・[[封筒]]などの糊の付いているものはコーティングなどが熱により融けて、紙が定着部に張り付くため使用してはならない。


=== 帯電 ===
最近は、表面にコーティングしてある用紙にも対応するレーザープリンターが一部のメーカーから出てきている。コーティングしてある紙を使用したいときは、プリンターの説明書を確認したりメーカーのWebページを見るなどして使用の可否を調べてからでないと、このような紙が使用できないプリンターの場合は致命的な故障を起こす可能性がある。用紙側でもレーザプリンター対応を保証するラベル用紙や封筒があるため、併せて用紙メーカーの情報も確認されたい。
[[File:Corona charging.svg|thumb|高電圧によって感光ドラムをマイナスに帯電させる]]
旧式のプリンターではドラムと平行に配置された[[コロナ放電|コロナワイヤー]]が、最近のプリンターでは一次帯電ロールが、暗環境下で回転する感光体ドラムまたは感光体ベルト(感光体ユニットと呼ばれる)を[[静電気学|静電的]]に帯電させることで、その表面に負の電荷が保持される。


以前の画像によって残った残留電荷を除去するために、一次帯電ロールには[[交流|AC]]バイアス電圧が印加される。また、このローラーは均一な負電位を確保するために、ドラム表面に[[直流|DC]]バイアスを印加する。
エンボス紙などの表面に凸凹の多いものや極端に厚いものは定着不良をおこすことがある。


多くの特許では、感光体ドラムのコーティングは、光帯電層、電荷漏洩バリア層、および表面層からなる[[ケイ素]]「サンドイッチ」と記述している{{要出典|date=2023年11月|title=特許番号}}。ある製品では、受光層として[[水素]]を含む[[アモルファスシリコン]]を使用し、電荷漏洩バリア層として[[窒化ホウ素]]、表面層として[[ドープ|ドープケイ素]]、特に研削[[窒化ケイ素]]に似せるのに十分な濃度で[[酸素]]や[[窒素]]を含有したシリコンを使用している{{要出典|date=2023年11月|title=ブランドや製品名}}。
薄紙などの「こし」のない用紙は、作像部や定着部での曲率分離方式での前提条件を満たさない。


== 消耗品 ==
=== 露光 ===
[[File:Laser printer-Writing.svg|thumb|レーザー光が感光ドラム上の負電荷を選択的に中和し、静電画像を形成する。]]
主な、消耗品としてトナーと感光体があげられる。
[[File: Laser unit dell p1500 print.jpg|thumb|Dell P1500レーザープリンターの走査光学系ユニット。右側のレーザーユニットから放射されたレーザー光は、左下の回転六面鏡で反射され、上方にあるレンズと鏡を介して感光体ドラムに導かれる。]]
モノクロ機の場合は、トナーと感光体は、1セットずつ必要となるが、一部のレーザープリンターは、一般的なオフィス用複写機と異なり、トナーと感光体ドラムが一体化された構造のものも存在する。ドラムが劣化すると印刷結果に影響するので理にかなった形態とされる反面、ドラムも使い捨てにするため運用コストは割高になりがちである。これは、[[インクジェットプリンター]]におけるヘッド一体型インクカートリッジに相当するものと言える。
レーザープリンターでレーザー光源が採用されている理由は、特にプリンター内部の短い距離で、レーザーが高度に集束した正確で強力な光線を形成できるためである。発生したレーザーは回転[[多角形|多面鏡]]に向けられ、レンズと鏡のシステムを介して光ビームを感光体ドラムに導き、1秒間に最大6,500万回の速度で[[ピクセル]](画素)が書き込まれる<ref>{{cite web |title=how Laser Process Technology animation (''sic'') |url=https://www.youtube.com/watch?v=MDLM5fMFyA4 |archive-url=https://web.archive.org/web/20131221054838/http://www.youtube.com/watch?v=MDLM5fMFyA4&gl=US&hl=en |archive-date=2013-12-21 |url-status=dead |publisher=Lexmark |date=14 July 2012 |access-date=2016-03-21}}</ref>。感光体ドラムは掃引中も回転し続けるため、この動きを補正するために掃引角度はごくわずか傾斜している。プリンターのメモリに保持されている[[ラスタライズ]]されたデータ流により、掃引しながらレーザーを急速に点灯または消灯する。
カラー機の場合は、色数分のトナーが必要となる。感光体は、ロータリー式の場合は1本、タンデム式は色数分必要となる。


レーザービームは、ドラム表面の電荷を中和または反転し、ドラム表面に[[静電気|静電気的]]なネガ画像を形成し、負に帯電したトナー粒子を反発させる。ドラム上でレーザーが照射された領域は直ちに電荷を失うため、次の現像段階でトナーを塗布した現像ロールによってドラムに押し付けられたトナーは、現像ロールのゴム面からドラム表面の帯電部に移動する<ref>{{cite web |title=CompTIA A+ Rapid Review: Printers |website=MicrosoftPressStore.com |url=https://www.microsoftpressstore.com/articles/article.aspx?p=2201308 |quote=Laser printers .. complex imaging process ... charge neutralizes ... the drum |access-date=2018-11-06}}</ref><ref>{{cite book
これらの消耗品は、メーカー純正品の場合、価格が比較的高めに設定されているため、特に低価格機種の場合、トナーを数回交換する事で、消耗品の総額が本体価格を上回ってしまう事も珍しくはない。このため、トナーカートリッジを再生する業者([[サードパーティー]])が存在し、主に企業ユーザーに対して再生トナーカートリッジを新品より安く販売している(インクジェットプリンタにおける純正インクカートレッジの価格問題に相当する)。
|title=A+, Network+, Security+ Exams in a Nutshell
|url=https://books.google.com/books?id=01CdyfaTef0C |isbn=978-0596551513
|author=Pawan K. Bhardwaj |date=2007
|quote=in most laser printers. ... the surface of the drum.}}</ref>。


レーザー光源を使わないプリンターの中には、[[LEDプリンター]]のようにページ幅にまたがる[[発光ダイオード]]の配列を使用して画像を生成するものもある。文書の中には「露光」を「書き込み」と記述するものもある。
== 定期交換部品 ==

上記消耗品以外に定期交換部品として、機種/出力枚数に応じて、ヒーターユニット、定着ユニット、転写ユニットなどの主要ユニットの交換が発生する。コピー機の場合、保守契約により無料で交換されるケースが多いが、レーザープリンタの場合、保守契約が結ばれる事は少ないため、部品代、交換作業費が有償となり多額の費用が発生するケースがある。このため、使用枚数によっては、保守契約のあるコピー機(複合機)をプリンターとして利用する方が、コスト的に安くなるケースがある。
=== 現像 ===
ドラムの回転と同様に、現像ロールにトナーが15 [[マイクロメートル|μm]]の厚さの均一な層として連続的に塗布される。[[潜像]]を形成した感光体ドラムの表面と、トナーで覆われた現像ロールが接触する。

トナーは、[[カーボンブラック]]または着色剤と混合され乾燥したプラスチック粉末の微粒子で構成されている。トナー粒子は{{Ill2|トナーカートリッジ|en|Toner cartridge|preserve=1}}内では負に帯電しており、現像ロール上に現れると、感光体の潜像の部分に静電的に引き寄せられる。負電荷は互いに反発するため、負に帯電したトナー粒子は、負電荷を帯びた(帯電ロールによって印加された)ドラムの領域には付着しない。

=== 転写 ===
次いで、レーザーが照射された位置にトナー粒子が付着した感光体ドラムの下に用紙が搬送される。トナー粒子はドラムと紙の両方に対して非常に弱い引力を持つが、ドラムとの結合は弱いため、粒子は再び、今度はドラムの表面から紙の表面へと移動する。一部の機械では、用紙の裏側に正に帯電した「[[転写]]ロール」を配置して、負に帯電したトナーを感光ドラムから用紙に吸着するのを助けるものもある。こうしたことから、表面が加工された用紙(例:インクジェット用紙)はレーザー印刷に適さないものがある<ref>{{Cite web |last= |date=2023-07-03 |title=[Explained] Inkjet Transfer Paper is NOT suitable for Laser Printer |url=https://www.subli-star.com/can-i-use-inkjet-transfer-paper-in-a-laser-printer/ |access-date=2023-08-18 |language=en-US}}</ref>。

=== 定着 ===
[[File:Laser printer fusing.svg|thumb|熱と圧力でトナーを紙に定着させる]]
用紙は定着器アセンブリのローラー間を通過し、最高427 °C(801 °F)の温度と圧力でトナーを用紙に恒久的に接着させる。一般的に、一方のローラーは中空管(ヒートロール)で、もう一方は表面がゴム加工されたローラー(プレッシャーロール)である。中空管の中心には輻射熱ランプなどの発熱体が配置され、その赤外線エネルギーがローラーを内側から均一に加熱する。トナーを適切に定着するためには、定着ロールが均一に加熱されている必要がある。

プリンターによっては、非常に薄く柔軟な金属箔ローラーを使用しているため、加熱に要する{{Ill2|熱質量|en|Thermal mass}}が少なく、定着器がより早く{{Ill2|動作温度|en|Operating temperature|label=動作温度}}に達することができる。用紙が定着器内を通過する速度が遅ければ、トナーが溶けるまでのローラー接触時間が長くなり、定着器はより低い温度で動作することができる。一般的に、小型で安価なレーザープリンターでは、この省エネ設計により印刷が低速であるのに対し、大型の高速プリンターでは、用紙を高速に移動させるために高温の定着器を使用し、接触時間は非常に短いものとなる。

=== クリーニングと再帯電 ===
[[File:Color Laser Printer Magnified.jpg|thumb|1200 dpiのカラーレーザープリンターの出力物を1000倍に拡大した。それぞれの画素は2x2の4ドットで構成されており、個々のトナー粒子も見える。シアン(青)のトナー粒子が画像部分の青味がかった背景の下地を作っている。]]
感光体ドラムが一回転すると、ドラムは電気的に中性の柔らかいプラスチック製のワイパーブレードに接触して、ドラムに残ったトナーは除去されて廃トナー容器に送られる。その後、帯電ロールが、きれいになったドラムの表面に均一な負電荷を回復して、レーザー光が再び照射される準備を整える。

=== 連続プリント ===
ラスターイメージが生成すると、印刷プロセスのすべての段階を連続して行うことができる。これにより、感光体が帯電し、少し回転してレーザー光がスキャンし、さらに少し回転して現像されるといった、非常に小型化されたコンパクトなユニットにすることができる。この場合、ドラムが1回転する前にプロセス全体が完了する。

プリンターによって、これらの段階の実装方法は違ってくる。[[LEDプリンター]]では、[[発光ダイオード]]の棒状配列を使ってドラムに光を「書き込む」。トナーは[[蝋|ワックス]]または[[プラスチック]]を基材としており、用紙が定着器アセンブリを通過するときにトナー粒子が溶融する。用紙が逆に帯電している機種もあれば、帯電していない機種もある。定着器には、[[赤外線]]加熱器、加熱加圧ロール、または(一部の非常に高速で高価なプリンターでは){{Ill2|閃光放電管|en|Flashtube|label=キセノンフラッシュランプ}}が使われる。レーザープリンターの電源投入時のウォームアッププロセスは、主に定着器の余熱である。

=== 誤動作 ===
レーザープリンターの内部機構はかなり精密で、一度損傷を受けると修理が不可能な場合が多い。特にドラムは重要な部品であり、光によって帯電性を損ない、最終的には劣化してしまうため、長時間(数時間以上)光にさらしてはならない。破れた紙片のようなレーザー光を妨げるものは、レーザーがドラムの局所を放電するのを妨げ、その部分が白い縦筋として現れる原因となる。中性ワイパーブレードがドラム表面から残留トナーを除去できなかった場合、そのトナーがドラム上を再度循環し、回転するたびに印刷ページに汚れが発生することがある。帯電ロールが損傷したり、十分な出力を得られなかった場合、ドラム表面を十分に負に帯電させることができず、次の回転でドラムが現像ロールから過剰なトナーを吸着し、前の回転で形成された画像が重畳して印刷される原因となる。

トナー量を調整するドクターブレードによって現像ロールに滑らかで均一なトナー層を確実に塗布できなかった場合、印刷ページ上では、ブレードがトナーを削り取りすぎたところに白筋が入ることがある。あるいは、ブレードによって現像ロール上にトナーが残りすぎると、ロールが回転するときにトナー粒子が脱落して下の用紙に落ち、定着プロセスで用紙に付着することがある。これにより、印刷されたページが全体的に暗くなり、縁が非常に滑らかな幅広の縦縞になる。

定着ロールが十分な高温に達しなかったり、周囲の湿度が高すぎる場合、トナーが用紙にうまく定着せず、印刷後に剥がれ落ちることがある。定着器の温度が高すぎると、トナーのプラスチック成分がしみ出し、印刷された文字が濡れたり滲んだように見えたり、溶けたトナーが用紙の裏面に侵出することがある。

さまざまなプリンターメーカーが、自社トナーは自社プリンター用に特別に設計されたものであり、他社の互換トナーは、負電荷に対する特性、現像ロールから感光体ドラムへの移動性、用紙に対する定着性、ドラムからの剥離特性などにおいて、オリジナルの仕様を満たさない可能性があると主張している{{citation needed|date=February 2016}}。

== 性能 ==
ほとんどの電子機器と同様、レーザープリンターのコストは年々大幅に下がっている。1984年当時、HP LaserJetは3,500ドルで販売され<ref>{{cite web | url = http://www.hp.com/hpinfo/abouthp/histnfacts/museum/imagingprinting/0018/index.html | title = HP Virtual Museum: Hewlett-Packard LaserJet printer, 1984 | publisher = Hp.com | access-date = 2010-11-17 }}</ref>、低解像度で小さなサイズのグラフィックでさえ難しく、重さは32 kgもあった。1990年代後半までに、モノクロレーザープリンターは家庭用やオフィス用に応えるほど安価になり、他の印刷技術に取って代わったが、写真画質の再現性においてはカラーインクジェットプリンター(下記参照)が依然として優位に立っていた。2016年現在、低価格のモノクロレーザープリンターは75ドル未満で販売されており、これらのプリンターはオンボード処理がなく、[[ラスターイメージ]]の生成はホストコンピュータに依存する傾向があるが、それでもほぼすべての状況で1984年のLaserJetより優れた性能を持っている。

レーザープリンターの速度は、処理されるジョブのグラフィック使用の度合いなど、多くの要因によって大きく変化する。最速の機種では、[[モノクローム|モノクロ]]で200ページ/分(12,000ページ/時間)以上で印刷できる。最速のカラーレーザープリンターは、100ページ/分(6,000ページ/時)以上で印刷できる。超高速レーザープリンターは、クレジットカードや公共料金の請求書など、個人宛ての文書を大量郵送するのに使用されており、一部の商業用途では[[リトグラフ|リソグラフィー]](lithography)とも競合している。

この技術にかかるコストは、用紙代、トナー代、ドラムや定着器アセンブリや転写アセンブリなどの部品交換代など、さまざまな要因が組み合わせによって決まる。軟質プラスチックのドラムを使ったプリンターは、所有コストが非常に高くなることがよくあるが、ドラムの交換が必要になってそれが明らかになることがある。{{Ill2|両面印刷|en|Duplex printing}}(用紙の両面に印刷)は、用紙の搬送経路が長くなるためページ印刷速度は遅くなるものの、用紙コストを半減し、収納量を削減することができる。かつてはハイエンドのプリンターにしか搭載されていなかった両面印刷機能は、現在ではミッドレンジのオフィスプリンターにも一般的になっているが、すべての機種が備えているわけではない。

オフィスのような商業環境では、職場のレーザープリンターの性能と効率を向上させるために、専用の[[ソフトウェア]]や[[サービス (システムアーキテクチャ)|サービス]]を併用することが一般的になってきている。このソフトウェアは、1日に印刷できるページ数や、カラーインクの使用量を制限したり、無駄と思われるジョブを選別するなど、従業員がプリンターとどう関わるかを指示するルールを設定することができる<ref>{{Cite news|url=http://asl-group.co.uk/print-efficiency-workplace/|title=Print efficiency in the workplace: how to make your office more efficient|date=2017-05-11|work=ASL|access-date=2017-07-26|language=en-GB}}</ref>。

== カラーレーザープリンター ==
[[File:FujiXeroxDocuColourLaserPrint C1110B.PNG|thumb|YMCKの4色のマーキングユニットが並んだカラーレーザープリンターの内部構造(当時[[富士ゼロックス]]C1110B)]]
カラーレーザープリンターでは通常、[[シアン (色)|シアン]]、[[マゼンタ]]、[[イエロー]]、[[黒|ブラック]]([[CMYK]])の4色からなるカラートナー(粉体インク)を使用する。{{Ill2|モノクロ版画|en|Monochrome printmaking|label=モノクロプリンター}}がレーザースキャナーアセンブリを1つしか持たないのに対し、カラープリンターでは各色毎にユニットを持つことが多い。

カラー印刷では、各色を出力する間にレジストレーション誤差と呼ばれるごくわずかな位置ずれが発生し、意図しない色滲み(にじみ)、像ぶれ、色領域の縁に沿った明暗の縞模様が発生することがあるため、印刷プロセスは複雑なものとなる。位置ぎめ精度を高めるために、一部のカラーレーザープリンターでは「転写ベルト」と呼ばれる大きな回転ベルトを使用している。転写ベルトはすべてのトナーカートリッジの手前を通過し、各トナー層がこのベルトに正確に塗布される。次に、組み合わされた層は、一段階で均一に用紙に転写される。

カラープリンターは通常、モノクロのみのページを印刷する場合でも、モノクロプリンターよりページ単価が高い傾向がある。

液体電子写真法(Liquid electrophotography、LEP)は、{{Ill2|HP Indigoデジタル印刷機|en|HP Indigo Division|label=HP Indigo印刷機}}で使用されている印刷プロセスで、粉体トナーの代わりに静電荷を帯びたインクを使用し、定着器の代わりに加熱された転写ロールを使用して、帯電したインク粒子を溶かしてから用紙に塗布する。

=== カラーレーザー転写プリンター ===
カラーレーザー転写プリンターは、{{Ill2|熱プレス|en|Heat press}}によって転写されるように設計された転写シート(転写媒体)を制作するように設計されている。これらの転写シートは通常、企業やチームのロゴが入ったカスタムメイドのTシャツやロゴ商品を製造するために使用される。

二段階カラーレーザー転写は、カラーレーザープリンターでカラートナー(通常、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の粉体インク)を使用する二段階プロセスの一部をなすもので、濃色のTシャツに印刷するために設計された新しいプリンターは、特殊な白色トナーを使用して、濃色の衣類やビジネス商材に対して転写することができる。

[[CMYKカラーモデル|CMYKカラー]]印刷プロセスは、独自の画像処理プロセスによって数百万もの色を忠実に再現することができる。

=== インクジェットプリンターとのビジネスモデル比較 ===
メーカーは、低価格のカラーレーザープリンターでも、[[インクジェットプリンター]]でも、同様の[[ビジネスモデル]]を展開している。プリンター本体は安く販売されるが、交換用のトナーやインクは比較的高価である。カラーレーザープリンターでは、プリンター本体とトナーカートリッジの両方が初期価格が高いにもかかわらず、カートリッジあたりの印刷枚数はインクジェットよりも多くの枚数を印刷できるため、ページあたりの平均ランニングコストは通常、レーザーがわずかに低くなる<ref>{{Cite web |url=https://www.apartmenttherapy.com/inkjet-vs-laser-printers-which-is-better-for-home-use-176198 |title=Pros & Cons for Home Use: Inkjet vs. Laser Printers |website=Apartment Therapy |access-date=2019-11-12}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.officeinteriors.ca/blog/inkjet-vs-laser-printers/ |title=Inkjet vs Laser Printers: Pros, Cons & Recommendation for 2019 |date=August 26, 2019 |website=Office Interiors |access-date=2019-11-12}}</ref>。

カラーレーザーの印刷品質に関わる要因として、解像度(通常600-1200 dpi)および4色トナーの使用があげられる。カラーレーザーでは、大面積を同じ色で印刷したり、微妙な色のグラデーションを印刷するのが苦手なことが多い。写真の印刷用として設計されたインクジェットプリンターでは、より高品質のカラー画像を作成することができる<ref name="SteinmuellerGulbins2010">{{cite book|author1=Uwe Steinmueller|author2=Juergen Gulbins|title=Fine Art Printing for Photographers: Exhibition Quality Prints with Inkjet Printers|url=https://books.google.com/books?id=xKj-3QdjCyMC&pg=PT37|date=21 December 2010|publisher=O'Reilly Media, Inc.|isbn=978-1-4571-0071-0|page=37}}</ref>。インクジェットプリンターとレーザープリンターを詳しく比較すると、高品質の大量印刷にはレーザープリンターが適し、大判印刷や家庭用にはインクジェットプリンターが適する傾向がある。レーザープリンターは、より正確な縁取りと深みのある単色カラーに優れる。また、カラーレーザープリンターはインクジェットプリンターよりはるかに高速だが、大きくてかさばる傾向がある<ref>{{cite web |last1=Alexander |first1=Jordan |title=Inkjet vs Laser Printer |url=https://albertatoner.com/laser-vs-inkjet-printers/ |website=Alberta Toner |publisher=Jordan Ale |access-date=2017-05-04}}</ref>。

=== 偽造防止マーク ===
[[File:Printer Steganography Illustration.png|thumb|upright|カラーレーザープリンターで白い紙に出力された小さな黄色の点は、ほとんど目に見えない。(クリックすると高解像度で画像が表示される)]]
{{Main|{{ill2|機械識別符号|en|Machine Identification Code}}}}
最近のカラーレーザープリンターの多くは、[[トレーサビリティ]]を目的として、目にはほとんど見えないドット[[ビットマップ画像|格子]]で印刷物に印を付けている。ドットの色は黄色で、大きさは約0.1 mm(0.0039インチ)、格子の間隔は約1 mm(0.039インチ)である。これは、[[贋造|贋造物]](がんぞうぶつ)の追跡を助けるために、[[米国政府]]とプリンターメーカーが合意した結果とされている<ref>{{cite web | url = https://www.eff.org/issues/printers | title = Electronic Frontier Foundation - Printer Tracking | publisher = Eff.org | access-date = 2017-08-06 }}</ref>。このドットは、印刷された1枚1枚の用紙に、印刷日時、プリンターのシリアル番号などの情報を[[二進化十進表現|二進化十進]]数で符号化したもので、紙片をメーカーが追跡して、機械の購入場所や、場合によっては購入者を特定することができる。

[[電子フロンティア財団]]などの[[デジタル権]]擁護団体は、印刷する人のプライバシーと匿名性が損なわれることを懸念している<ref>{{cite web | url = https://www.eff.org/deeplinks/2008/02/eu-printer-tracking-dots-may-violate-human-rights | title = Electronic Frontier Foundation Threat to privacy | publisher = Eff.org | date = 2008-02-13 | access-date = 2010-11-17 }}</ref>。

== トナーカートリッジ内のスマートチップ ==
{{Main|{{ill2|計画的陳腐化|en|Planned obsolescence|preserve=1}}}}
[[インクジェットプリンター]]と同様に、[[トナーカートリッジ]]の売上を伸ばすために、トナーカートリッジには、印刷可能なページ数を減らすスマート・[[集積回路|チップ]]が組み込まれれていることがある<ref>{{cite web |url=http://smallbusiness.chron.com/laser-toner-chip-72985.html |title=What Is a Laser Toner Chip? |work=Small Business - Chron.com |access-date=2016-03-21}}</ref>(カートリッジ内の使用可能なインクやトナーの量を50%程度まで減らすこともある<ref>RTBF documentary "L'obsolescence programmée" by Xavier Vanbuggenhout</ref>)。この技術は、プリンターユーザーにとって割高であるばかりでなく、廃棄物を増やし、環境への負荷も増大させる。これらのトナーカートリッジでは、(インクジェット・カートリッジと同様に)リセット装置を使用して、スマートチップによって設定された制限を無効化することができる。さらに、一部のプリンターでは、カートリッジ内のインクを使い切る方法を示すオンライン・チュートリアルが投稿されている<ref>{{cite web |url=http://rumburg.org/printerhack/ |title=Hacking the Samsung CLP-315 Laser Printer |work=Hello World! |date=3 March 2012 |access-date=2016-03-21}}</ref>。エンドユーザーにとって、これらのチップには何も利点ももたらさない。しかし、一部のレーザープリンターでは、チップを使って電気的に印刷ページ数をカウントするのではなく、カートリッジ内のトナー残量を検知する光学センサーを設け、カートリッジの耐用年数を管理するためにチップを搭載している。

== 安全上の危険、健康上のリスク、および予防措置 ==

===トナーの清掃 ===
トナー粒子は静電特性を持つように調合されているため、他の粒子や物体、あるいは搬送系や吸引ホースの内部と擦れると静電気が発生することがある。帯電したトナー粒子からの静電気放電により、掃除機のダストバッグ内の可燃性粒子に引火したり、十分な量のトナーが空気中に飛散している場合は、小規模な[[粉塵爆発]]を引き起こす可能性がある。トナー粒子は非常に小さいため、従来の家庭用掃除機の集塵バッグでは十分に捕集されず、モーターを通過して室内に逆戻りしたりする。

トナーがレーザープリンター内にこぼれたとき、効果的な清掃するためには、導電性ホースと高効率微粒子フィルター([[HEPA]])を備えた特別な掃除機が必要になる場合がある。これらの特殊なツールは、ESDセーフ(静電気放電保護)またはトナー掃除機と呼ばれる。

=== オゾンによる危険性 ===
印刷プロセスの通常の部分として、プリンター内部の高電圧によって[[コロナ放電]]が発生し、イオン化した酸素と窒素が反応して[[オゾン]]と[[窒素酸化物]]を生成する。大型の業務用プリンターや複写機では、排出ガス経路中の[[活性炭]]フィルターがこれらの有毒ガスを除去し{{citation needed|date=September 2011}}、オフィス環境の汚染を防いでいる。

しかし、業務用プリンターでは一部のオゾンがフィルターをすり抜けてしまい、消費者向け小型プリンターの多くはオゾンフィルターを備えていない。レーザープリンターや複写機を、狭くて換気の悪い部屋で長時間使用すると、これらのガスがオゾン臭や刺激臭に気づくレベルに達する可能性がある。極端な場合、理論的には潜在的な健康被害を引き起こす可能性がある<ref>{{cite web |title=Photocopiers and Laser Printers Health Hazards |url=http://www.docs.csg.ed.ac.uk/Safety/general/photocopiers.pdf |date=2010-04-19 |website=www.docs.csg.ed.ac.uk |access-date=2013-10-22 |archive-date=2013-07-11 |archive-url=https://web.archive.org/web/20130711191442/http://www.docs.csg.ed.ac.uk/Safety/general/photocopiers.pdf |url-status=dead }}</ref>。

=== 呼吸器系の健康リスク ===
{{see also|{{ill2|トナー#健康リスク|en|Toner#Health risks|preserve=1}}}}
[[File:NIOSH Scientists Investigating Pollution From Office Equipment.webm|thumb|プリンターの排出に関して行われた研究のビデオ。{{ill2|アメリカ合衆国国立労働安全衛生研究所|en|National Institute for Occupational Safety and Health|label=米国国立労働安全衛生研究所}}]]
2012年にオーストラリアのクイーンズランド州で実施された研究によると、一部のプリンターは[[マイクロメートル]]未満の粒子を排出しており、[[呼吸器疾患]]との関連が疑われている<ref>{{cite journal |title= Particle emission characteristics of office printers|authors=He C, Morawska L, Taplin L |year=2012 |pmid=17937279 |volume=41 |journal=Environ Sci Technol |issue=17 |pages=6039–45|doi=10.1021/es063049z |url=https://eprints.qut.edu.au/8824/3/8824.pdf }}</ref>。[[クイーンズランド工科大学]]の研究で評価された63台のプリンターのうち、もっとも排出量が多かった17台はHP製、1台は[[東芝]]製であった。ただし、調査対象となった機械は、すでに建物に設置されているものだけであり、特定のメーカーに偏っていた。著者らは、同モデルの機種間でも粒子排出量にかなりのばらつきがあることを指摘した。クイーンズランド工科大学のモラフスカ教授によれば、1台のプリンターが排出する粒子は、燃えているタバコと同程度であったという<ref>{{cite news | title = Particle Emission Characteristics of Office Printers | url = http://www.smh.com.au/news/technology/printer-particles-as-bad-as-cigarettes/2007/07/31/1185647903291.html | work = The Sydney Morning Herald | date = 2007-08-01 }}</ref><ref>{{cite web | title = Study reveals the dangers of printer pollution | url = https://www.qut.edu.au/news/news?news-id=13495 | access-date = 2017-08-06 }}</ref>。{{quote
|{{ill2|超微小粒子|en|Ultrafine particles|label=超微粒子}}の吸入による健康への影響は、粒子の組成にもよるが、呼吸器への刺激から[[循環器]]疾患や[[癌]](がん)などのより深刻な病気に至るまで多岐にわたる。|}}2011年12月、オーストラリアの政府機関、オーストラリア労働安全機構([[:en:Safe_Work_Australia|Safe Work Australia]])は既存の研究を検討し、「レーザープリンターの排出ガスと健康への悪影響を直接関連付ける疫学研究は見当たらない」と述べ、いくつかの評価では「レーザープリンターの排出ガスにさらされることによる直接的な毒性や健康影響のリスクは無視できる」と結論づけている。また、この検討では、排出物が[[揮発性有機化合物|揮発性]]または半揮発性の[[有機化合物]]であることが示されているため、「このような排出物が呼吸器組織と接触した後に『{{ill2|超微小粒子|en|Ultrafine particles|label=微粒子}}』になる可能性は低く、また『微粒子』として残留する可能性も低いため、健康への影響は『微粒子』の物理的性質よりもむしろ[[エアロゾル]]の化学的性質に関連すると予想するのが論理的であろう」とも述べている<ref name="SFA_2011-12">{{citation | first = Robert | last = Drew | title = Brief Review on Health Effects of Laser Printer Emissions Measured as Particles | publisher = [[:en:Safe Work Australia|Safe Work Australia]] | date = December 2011| url = http://www.safeworkaustralia.gov.au/sites/swa/about/publications/Documents/636/Brief%20Review%20Laser%20Printer%20Emissions.pdf | archive-url = https://web.archive.org/web/20170304205112/http://www.safeworkaustralia.gov.au/sites/SWA/about/Publications/Documents/636/Brief%20Review%20Laser%20Printer%20Emissions.pdf | archive-date = 2017-03-04 | access-date = 2013-10-23}}</ref>。

ドイツ法定災害保険(German Social Accident Insurance)は、トナー粉塵やコピー・印刷サイクルへの暴露による健康への影響を調査するための人体研究を委託した。ボランティア(対照郡23人、暴露対象郡15人、喘息患者14人)が、曝露室内で規定の条件下でレーザープリンターの排出に暴露された。広範なプロセスおよび被験者に基づく研究結果は、レーザープリンターの高濃度の排出ガスへの暴露が、報告された疾患につながる実証可能な病態形成過程を開始することを確認できなかった<ref>{{Cite web |last=Institute for Occupational Safety and Health of the German Social Accident Insurance |title=Investigation on health effects of emissions from laserprinters and -copiers, Subproject LMU: Exposition of volunteers in a climatic chamber |url=https://www.dguv.de/ifa/forschung/projektverzeichnis/ff-fpa_0294-2.jsp |access-date=2020-06-26}}</ref>。

レーザープリンターからの排出を低減するための提案としてよく話題に上るのは、レーザープリンターにフィルターを後付けすることである。プリンターのファン排出口に粘着テープでフィルターを固定し、粒子放出を減少させる。しかし、すべてのプリンターには排紙トレイがあり、ここから粒子が放出されている。排紙トレイにはフィルターを取り付けることができないため、フィルターの後付けで排出ガス全体を減らすことは不可能である<ref>{{Cite web |last=Institute for Occupational Safety and Health of the German Social Accident Insurance |title=Safe laser printers and copiers |url=https://www.dguv.de/ifa/praxishilfen/hazardous-substances/laserdrucker-kopierer/index.jsp |access-date=2020-06-26}}</ref>。

=== 航空輸送の禁止 ===
{{Ill2|2010年貨物機爆破計画|en|2010 transatlantic aircraft bomb plot|label=2010年の貨物機爆破計画}}で、爆発物が充填されたトナーカートリッジを搭載したレーザープリンターの積荷が複数の貨物航空機で発見されたことを受け、[[運輸保安庁|米国運輸保安庁]]は、乗客が機内持ち込み手荷物や預け荷物として、0.45 kg(1ポンド)を超えるトナーカートリッジやインクカートリッジを帰航便に持ち込むことを禁止した<ref>{{cite web | url = http://www.myfoxny.com/dpp/news/international/uk-plane-bombs-explosions-were-possible-over-u-s-ncx-20101110 | title = UK: Plane Bombs Explosions Were Possible Over U.S | publisher = Fox News | access-date = 2010-11-17 | archive-url = https://web.archive.org/web/20120329061859/http://www.myfoxny.com/dpp/news/international/uk-plane-bombs-explosions-were-possible-over-u-s-ncx-20101110 | archive-date = March 29, 2012 }}</ref><ref name="pcmag1">{{cite news | last = Hoffman | first = Tony | url = https://web.archive.org/web/20101112071300/https://www.pcmag.com/article2/0,2817,2372313,00.asp | title = U.S. Bans Large Printer Ink, Toner Cartridges on Inbound Flights | publisher = PC Mag | date = 2010-11-08| access-date = 2017-08-06 }}</ref>。雑誌''[[:en:PC_Magazine|PC Magazine]]''は、大半のカートリッジは規定重量を超えないため、この禁止措置はほとんどの旅行者には影響しないだろうと指摘している<ref name="pcmag1" />。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* {{Ill2|ペーパーモデル|en|Paper model}} - 紙を使った模型製作
* [[プリンター]]
* [[デイジーホイールプリンター]] - 円盤状の活字を使用するインパクト方式の印刷機
* [[LEDプリンター]]
* [[文書自動作成]] - 電子文書作成を支援するシステムとワークフローの設計
* [[ラスターイメージプロセッサ]]
* [[ドットマトリックス印刷]] - ピンやワイヤを使ってインクを塗布するインパクト方式の印刷技術
* [[TEC値]]
* [[染料昇華印刷]] - 熱を利用して染料を基材に転写する印刷技術
* [[PostScript]]
* {{Ill2|プリンター会社のリスト|en|List of printer companies}}
* [[パロアルト研究所]]
* [[ソリッドインク]] - 印刷に使用されるインキの一種で、使用前に熱で溶かす必要がある
* [[サーマルプリンター]] - 感熱紙やインクリボンを加熱して印刷画像を形成する印刷機
* [[Graphics Device Interface#GDI プリンター]] - プリンターが行う処理の一部を代行するMicrosoft Windowsの機能
* [[エネルギースター]] - 米国環境保護庁(EPA)と米国エネルギー省が運営するエネルギー効率促進プログラム

== 脚注 ==
{{reflist}}


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{{Commonscat|Laser printers}}
{{レーザー}}
{{Normdaten}}


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[[tr:Yazıcı (bilgisayar)#Lazer yazıcılar]]

2024年9月1日 (日) 13:25時点における最新版

HP LaserJet英語版 4200シリーズのプリンターは、500枚の用紙を収納する追加トレイの上に設置されている。

レーザープリンター: laser printer)は静電デジタル印刷プロセスを使用した印刷機である。レーザー印刷(英: laser printing)とも呼ばれる。

「ドラム」と呼ばれる負に帯電した円筒上にレーザー光線を繰り返し通過させ、正に帯電した画像領域を形成することで、高品質のテキストやグラフィック(および中程度の品質の写真)の潜像を作る事ができる[1]。その後、電荷を帯びた粉体インク(トナー)を選択的にドラムに塗布し、トナー画像を用紙に転写する。最後に、用紙を加熱・加圧して文字や画像を恒久的に用紙に定着させる。デジタル複写機と同様、レーザープリンター電子写真印刷プロセスを採用している。しかしアナログ複写機で実装されている従来のゼログラフィーとは異なり、既存の原稿からの光を感光ドラムに反射させて画像を形成する。

レーザープリンターは1970年代にゼロックスパロアルト研究所(Xerox PARC)で発明された。

その後、IBMキヤノンゼロックスアップルヒューレット・パッカード、その他多くの企業によりオフィス用に導入された。また消費者市場にも導入された。

行単位ではなくページ単位で印刷する方式からページプリンターと呼ばれることもある。

歴史

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レーザープリンターを発明したゲイリー・スタークウェザー(2009年撮影)

1960年代、ゼロックス・コーポレーション写真複写機市場で圧倒的な地位を占めていた[2]。1969年、ゼロックスの商品開発部門に勤務していたゲイリー・スタークウェザーは、レーザー光線を使って複写機のドラム上に複写物の画像を直接「描く」ことを考えついた。1971年に設立されたばかりのパロアルト研究所(Xerox PARC)に異動したスタークウェザーは、ゼロックス7000複写機を改造してSLOT(Scanned Laser Output Terminal)を開発した。1972年、スタークウェザーはバトラー・ランプソンおよびロナルド・ライダー(Ronald Rider)と協力し、制御システムとキャラクタージェネレータを追加し、後にゼロックス9700英語版レーザープリンターとなるEARS(Ethernet, Alto Research character generator, Scanned laser output terminal)と呼ばれるプリンターを完成させた[3][4][5]

1976年、最初の商用レーザープリンターであるIBM 3800が発売された。これはデータセンター向けに設計されたもので、メインフレームコンピュータに接続されるラインプリンターに代わるもので、IBM 3800は連続印字用紙への大量印刷に使用され、解像度240ドット/インチ(dpi)で215ページ/分(ppm)の速度を達成した。このプリンターは8,000台以上販売された[6]

1977年ゼロックス9700英語版が市場に投入された。これはIBM 3800とは異なり、ゼロックス9700は特定の既存プリンターの置き換えを目的としていなかったが、必要なフォントの読み込みに限定的に対応していた。ゼロックス9700は、さまざまな内容の単票紙を含め、(保険証券など)高付加価値の文書を印刷するのに優れていた[6]。ゼロックス9700の商業的成功に触発され、1979年、日本のカメラ・光学機器メーカーのキヤノンが低価格のデスクトップ・レーザープリンター、キヤノンLBP-10を開発した。その後、キヤノンは大幅に改良されたプリントエンジン、キヤノンCXの開発に着手し、LBP-CXプリンターを誕生させた。コンピューター・ユーザーへの販売経験がなかったキヤノンは、シリコンバレーの3社、ディアブロ・データ・システムズ英語版(この申し出は拒否された)、ヒューレット・パッカード(HP)、アップルコンピュータに提携を求めた[7][8]

1981年、 オフィス用途に設計された初の小型パーソナルコンピュータ、ゼロックス・スター8010(Xerox Star 8010)が市場に登場した。このシステムはデスクトップ・メタファーを採用し、アップル・マッキントッシュ(Apple Macintosh)が発売されるまで、商業販売において他に類を見ない存在であった。Starワークステーションは革新的であったものの、非常に高価なシステムで(17,000米ドル)、対象となった企業組織のごく一部にしか手が届かなかった[9]

1984年、 大量販売を目的とした初のレーザープリンターHP LaserJet英語版が発売された。これにはHPのソフトウェアで制御されたキヤノンCXエンジンが搭載されていた[10]。LaserJetに続き、ブラザー工業IBMなどもプリンターを発売した。第一世代のマシンには、セットされた用紙の長さよりも大きな外周をもつドラムが搭載されていた。回復速度が速いコーティングが開発されると、ドラムは印刷面ごとに何度も回転して用紙に接触することができ、ドラムの直径は小さくなった。

1985年 、アップルはLaserWriterを発表し[11]、同じくキヤノンCXエンジンと、新しくリリースされたページ記述言語PostScript(ポストスクリプト)を採用した。それまで各メーカーは独自のページ記述言語を使用していたため、対応ソフトウェアは複雑で高価なものであった。PostScriptという記述言語は、プリンターのブランドや解像度にほとんど依存することなく、テキスト、フォント、グラフィック、画像、カラーを使用することを可能にした。同年、アルダス(Aldus)がMacintoshとLaserWriter向けにPageMakerを発売し、この組み合わせはデスクトップパブリッシングで大人気となった[5][6]

レーザープリンターは、ビジネス市場と消費者市場に、1ページにさまざまなフォントを使用した非常に高速で高品質のテキスト印刷をもたらした。この時代、一般に販売されていた他のプリンターで、このような機能を兼ね備えていたものはなかった[要出典]

印刷プロセス

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レーザープリンターの図解
レーザープリンターの動作音

レーザー光源には一般に、赤色光または赤外光を発することができるヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)半導体レーザーが用いられる。レーザー光は、帯電した感光体でコーティングされた回転ドラムに、印刷されるページの画像を投影する。コーティングは、初期にはセレン[12]、後の製品では有機モノマーあるN-ビニルカルバゾール英語版などの有機光伝導体が使われている。光伝導性によって、レーザー光に曝露されたドラムの領域から帯電した電子が離脱し、ドラム上に潜像が形成される。そして、粉体インク(トナー)粒子は、レーザー光が照射されていないドラムの帯電領域に静電的に引き寄せられる。その後、機内を通過する紙にドラムが直接接触して、トナーで形成された画像を転写する。最後に、用紙はフィニッシャーに送られ、熱と圧力を利用して画像を表したトナーを瞬時に用紙に定着させる。

このプロセスは通常7つの段階からなる。次の節で詳しく説明する。

ラスターイメージ処理

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印刷する文書は、PostScript、Printer Command Language(PCL)、Open XML Paper Specification(OpenXPS)などのページ記述言語エンコードされる。ラスターイメージプロセッサ(RIP)はページ記述をビットマップに変換し、プリンターのラスターメモリに格納する。ページ全体を横切るドットの各水平帯は、ラスターラインまたはスキャンラインと呼ばれる。

レーザー印刷が他の印刷技術と異なるのは、常に単一の連続プロセスでレンダリングされて、途中で停止することがない点であり、インクジェットなどの他の技術が数行ごとに一時停止できるのと対照的である[13]バッファアンダーラン(レーザーがページ上のある点に到達したときに描画するドットの情報が存在しないこと)を回避するため、レーザープリンターは通常、ページ全体のビットマップ画像を保持するのに十分なラスターメモリを必要とする。たとえば、A4サイズで600 dpiの場合、モノクロで少なくとも4メガバイト、4色カラーで16メガバイトを要す。

ページ記述言語を使用したフルグラフィック出力の場合、レターサイズまたはA4サイズのモノクロのページ全体にわたるドットを300 dpiで保持するのに、少なくとも1メガバイトのラスターメモリが必要となる。ページに含まれる1平方インチあたりのドット数は1インチあたりのドット数の2乗、300 dpiの場合は90,000ドットとなる。一般的なレター用紙(8.5×11インチ、216×279 mm)の四辺に0.25インチ(6.4 mm)の余白をとると、印刷可能領域は8.0×10.5インチ(200×270 mm)、その面積84平方インチに含まれるドット数は90,000ドット/平方インチ×84平方インチ=7,560,000ドットとなる。モノクロの場合、1ドットを1ビットで表せるので、必要なメモリは7,560,000ビットである。1メガバイトのメモリサイズは1,048,576バイトまたは8,388,608ビットであることから、このページ全体を保持するのに十分であり、残りの約100キロバイトはラスターイメージプロセッサが使うことができる。

カラープリンターでは、4つのCMYKトナー層がそれぞれ別のビットマップとして保存され、通常、印刷を開始する前に4つの層すべてが前処理されるため、300 dpiのフルカラーのレターサイズまたはA4サイズのページには少なくとも4メガバイトが必要となる。

1980年代メモリーチップはまだ非常に高価であったため、当時のレーザープリンターは最下位モデルでも希望小売価格は米ドル建てで4桁台であった。その後、メモリの価格は大幅に下がり、その一方で、パーソナルコンピュータ(PC)と周辺機器ケーブル(特にSCSI)の性能が急速に向上により、画像生成処理(ラスタライズ)を送信側のPC側で行う低価格なレーザープリンターの開発が可能になった。このようなプリンターでは、オペレーティングシステム印刷スプーラが、各ページの生のビットマップをターゲット解像度でPCのシステムメモリ上にレンダリングし、このビットマップをレーザーに直接送信する(送信側PCの他のすべてのプログラムの速度を低下させるという代償を払って)[14]NECが投入した、いわゆる「ダム」または「ホストベース」レーザープリンターの登場により、低価格の300 dpiレーザープリンターの小売価格は、1994年初頭には700米ドル[15]、1995年初頭には600米ドルにまで低下した[16]。1997年9月、HPはホスト・ベースのLaserJet 6Lを発表した。600 dpiのテキストを最大6ページ/分で印刷でき、価格はわずか400米ドルであった[17]

1200 dpiのプリンターは、2008年以降、消費者市場で広く販売されている。2400 dpiの電子写真製版機(基本的にはプラスチックシートに印刷するレーザープリンター)も販売されている。

帯電

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高電圧によって感光ドラムをマイナスに帯電させる

旧式のプリンターではドラムと平行に配置されたコロナワイヤーが、最近のプリンターでは一次帯電ロールが、暗環境下で回転する感光体ドラムまたは感光体ベルト(感光体ユニットと呼ばれる)を静電的に帯電させることで、その表面に負の電荷が保持される。

以前の画像によって残った残留電荷を除去するために、一次帯電ロールにはACバイアス電圧が印加される。また、このローラーは均一な負電位を確保するために、ドラム表面にDCバイアスを印加する。

多くの特許では、感光体ドラムのコーティングは、光帯電層、電荷漏洩バリア層、および表面層からなるケイ素「サンドイッチ」と記述している[要出典]。ある製品では、受光層として水素を含むアモルファスシリコンを使用し、電荷漏洩バリア層として窒化ホウ素、表面層としてドープケイ素、特に研削窒化ケイ素に似せるのに十分な濃度で酸素窒素を含有したシリコンを使用している[要出典]

露光

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レーザー光が感光ドラム上の負電荷を選択的に中和し、静電画像を形成する。
Dell P1500レーザープリンターの走査光学系ユニット。右側のレーザーユニットから放射されたレーザー光は、左下の回転六面鏡で反射され、上方にあるレンズと鏡を介して感光体ドラムに導かれる。

レーザープリンターでレーザー光源が採用されている理由は、特にプリンター内部の短い距離で、レーザーが高度に集束した正確で強力な光線を形成できるためである。発生したレーザーは回転多面鏡に向けられ、レンズと鏡のシステムを介して光ビームを感光体ドラムに導き、1秒間に最大6,500万回の速度でピクセル(画素)が書き込まれる[18]。感光体ドラムは掃引中も回転し続けるため、この動きを補正するために掃引角度はごくわずか傾斜している。プリンターのメモリに保持されているラスタライズされたデータ流により、掃引しながらレーザーを急速に点灯または消灯する。

レーザービームは、ドラム表面の電荷を中和または反転し、ドラム表面に静電気的なネガ画像を形成し、負に帯電したトナー粒子を反発させる。ドラム上でレーザーが照射された領域は直ちに電荷を失うため、次の現像段階でトナーを塗布した現像ロールによってドラムに押し付けられたトナーは、現像ロールのゴム面からドラム表面の帯電部に移動する[19][20]

レーザー光源を使わないプリンターの中には、LEDプリンターのようにページ幅にまたがる発光ダイオードの配列を使用して画像を生成するものもある。文書の中には「露光」を「書き込み」と記述するものもある。

現像

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ドラムの回転と同様に、現像ロールにトナーが15 μmの厚さの均一な層として連続的に塗布される。潜像を形成した感光体ドラムの表面と、トナーで覆われた現像ロールが接触する。

トナーは、カーボンブラックまたは着色剤と混合され乾燥したプラスチック粉末の微粒子で構成されている。トナー粒子はトナーカートリッジ英語版内では負に帯電しており、現像ロール上に現れると、感光体の潜像の部分に静電的に引き寄せられる。負電荷は互いに反発するため、負に帯電したトナー粒子は、負電荷を帯びた(帯電ロールによって印加された)ドラムの領域には付着しない。

転写

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次いで、レーザーが照射された位置にトナー粒子が付着した感光体ドラムの下に用紙が搬送される。トナー粒子はドラムと紙の両方に対して非常に弱い引力を持つが、ドラムとの結合は弱いため、粒子は再び、今度はドラムの表面から紙の表面へと移動する。一部の機械では、用紙の裏側に正に帯電した「転写ロール」を配置して、負に帯電したトナーを感光ドラムから用紙に吸着するのを助けるものもある。こうしたことから、表面が加工された用紙(例:インクジェット用紙)はレーザー印刷に適さないものがある[21]

定着

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熱と圧力でトナーを紙に定着させる

用紙は定着器アセンブリのローラー間を通過し、最高427 °C(801 °F)の温度と圧力でトナーを用紙に恒久的に接着させる。一般的に、一方のローラーは中空管(ヒートロール)で、もう一方は表面がゴム加工されたローラー(プレッシャーロール)である。中空管の中心には輻射熱ランプなどの発熱体が配置され、その赤外線エネルギーがローラーを内側から均一に加熱する。トナーを適切に定着するためには、定着ロールが均一に加熱されている必要がある。

プリンターによっては、非常に薄く柔軟な金属箔ローラーを使用しているため、加熱に要する熱質量英語版が少なく、定着器がより早く動作温度英語版に達することができる。用紙が定着器内を通過する速度が遅ければ、トナーが溶けるまでのローラー接触時間が長くなり、定着器はより低い温度で動作することができる。一般的に、小型で安価なレーザープリンターでは、この省エネ設計により印刷が低速であるのに対し、大型の高速プリンターでは、用紙を高速に移動させるために高温の定着器を使用し、接触時間は非常に短いものとなる。

クリーニングと再帯電

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1200 dpiのカラーレーザープリンターの出力物を1000倍に拡大した。それぞれの画素は2x2の4ドットで構成されており、個々のトナー粒子も見える。シアン(青)のトナー粒子が画像部分の青味がかった背景の下地を作っている。

感光体ドラムが一回転すると、ドラムは電気的に中性の柔らかいプラスチック製のワイパーブレードに接触して、ドラムに残ったトナーは除去されて廃トナー容器に送られる。その後、帯電ロールが、きれいになったドラムの表面に均一な負電荷を回復して、レーザー光が再び照射される準備を整える。

連続プリント

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ラスターイメージが生成すると、印刷プロセスのすべての段階を連続して行うことができる。これにより、感光体が帯電し、少し回転してレーザー光がスキャンし、さらに少し回転して現像されるといった、非常に小型化されたコンパクトなユニットにすることができる。この場合、ドラムが1回転する前にプロセス全体が完了する。

プリンターによって、これらの段階の実装方法は違ってくる。LEDプリンターでは、発光ダイオードの棒状配列を使ってドラムに光を「書き込む」。トナーはワックスまたはプラスチックを基材としており、用紙が定着器アセンブリを通過するときにトナー粒子が溶融する。用紙が逆に帯電している機種もあれば、帯電していない機種もある。定着器には、赤外線加熱器、加熱加圧ロール、または(一部の非常に高速で高価なプリンターでは)キセノンフラッシュランプ英語版が使われる。レーザープリンターの電源投入時のウォームアッププロセスは、主に定着器の余熱である。

誤動作

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レーザープリンターの内部機構はかなり精密で、一度損傷を受けると修理が不可能な場合が多い。特にドラムは重要な部品であり、光によって帯電性を損ない、最終的には劣化してしまうため、長時間(数時間以上)光にさらしてはならない。破れた紙片のようなレーザー光を妨げるものは、レーザーがドラムの局所を放電するのを妨げ、その部分が白い縦筋として現れる原因となる。中性ワイパーブレードがドラム表面から残留トナーを除去できなかった場合、そのトナーがドラム上を再度循環し、回転するたびに印刷ページに汚れが発生することがある。帯電ロールが損傷したり、十分な出力を得られなかった場合、ドラム表面を十分に負に帯電させることができず、次の回転でドラムが現像ロールから過剰なトナーを吸着し、前の回転で形成された画像が重畳して印刷される原因となる。

トナー量を調整するドクターブレードによって現像ロールに滑らかで均一なトナー層を確実に塗布できなかった場合、印刷ページ上では、ブレードがトナーを削り取りすぎたところに白筋が入ることがある。あるいは、ブレードによって現像ロール上にトナーが残りすぎると、ロールが回転するときにトナー粒子が脱落して下の用紙に落ち、定着プロセスで用紙に付着することがある。これにより、印刷されたページが全体的に暗くなり、縁が非常に滑らかな幅広の縦縞になる。

定着ロールが十分な高温に達しなかったり、周囲の湿度が高すぎる場合、トナーが用紙にうまく定着せず、印刷後に剥がれ落ちることがある。定着器の温度が高すぎると、トナーのプラスチック成分がしみ出し、印刷された文字が濡れたり滲んだように見えたり、溶けたトナーが用紙の裏面に侵出することがある。

さまざまなプリンターメーカーが、自社トナーは自社プリンター用に特別に設計されたものであり、他社の互換トナーは、負電荷に対する特性、現像ロールから感光体ドラムへの移動性、用紙に対する定着性、ドラムからの剥離特性などにおいて、オリジナルの仕様を満たさない可能性があると主張している[要出典]

性能

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ほとんどの電子機器と同様、レーザープリンターのコストは年々大幅に下がっている。1984年当時、HP LaserJetは3,500ドルで販売され[22]、低解像度で小さなサイズのグラフィックでさえ難しく、重さは32 kgもあった。1990年代後半までに、モノクロレーザープリンターは家庭用やオフィス用に応えるほど安価になり、他の印刷技術に取って代わったが、写真画質の再現性においてはカラーインクジェットプリンター(下記参照)が依然として優位に立っていた。2016年現在、低価格のモノクロレーザープリンターは75ドル未満で販売されており、これらのプリンターはオンボード処理がなく、ラスターイメージの生成はホストコンピュータに依存する傾向があるが、それでもほぼすべての状況で1984年のLaserJetより優れた性能を持っている。

レーザープリンターの速度は、処理されるジョブのグラフィック使用の度合いなど、多くの要因によって大きく変化する。最速の機種では、モノクロで200ページ/分(12,000ページ/時間)以上で印刷できる。最速のカラーレーザープリンターは、100ページ/分(6,000ページ/時)以上で印刷できる。超高速レーザープリンターは、クレジットカードや公共料金の請求書など、個人宛ての文書を大量郵送するのに使用されており、一部の商業用途ではリソグラフィー(lithography)とも競合している。

この技術にかかるコストは、用紙代、トナー代、ドラムや定着器アセンブリや転写アセンブリなどの部品交換代など、さまざまな要因が組み合わせによって決まる。軟質プラスチックのドラムを使ったプリンターは、所有コストが非常に高くなることがよくあるが、ドラムの交換が必要になってそれが明らかになることがある。両面印刷英語版(用紙の両面に印刷)は、用紙の搬送経路が長くなるためページ印刷速度は遅くなるものの、用紙コストを半減し、収納量を削減することができる。かつてはハイエンドのプリンターにしか搭載されていなかった両面印刷機能は、現在ではミッドレンジのオフィスプリンターにも一般的になっているが、すべての機種が備えているわけではない。

オフィスのような商業環境では、職場のレーザープリンターの性能と効率を向上させるために、専用のソフトウェアサービスを併用することが一般的になってきている。このソフトウェアは、1日に印刷できるページ数や、カラーインクの使用量を制限したり、無駄と思われるジョブを選別するなど、従業員がプリンターとどう関わるかを指示するルールを設定することができる[23]

カラーレーザープリンター

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YMCKの4色のマーキングユニットが並んだカラーレーザープリンターの内部構造(当時富士ゼロックスC1110B)

カラーレーザープリンターでは通常、シアンマゼンタイエローブラックCMYK)の4色からなるカラートナー(粉体インク)を使用する。モノクロプリンター英語版がレーザースキャナーアセンブリを1つしか持たないのに対し、カラープリンターでは各色毎にユニットを持つことが多い。

カラー印刷では、各色を出力する間にレジストレーション誤差と呼ばれるごくわずかな位置ずれが発生し、意図しない色滲み(にじみ)、像ぶれ、色領域の縁に沿った明暗の縞模様が発生することがあるため、印刷プロセスは複雑なものとなる。位置ぎめ精度を高めるために、一部のカラーレーザープリンターでは「転写ベルト」と呼ばれる大きな回転ベルトを使用している。転写ベルトはすべてのトナーカートリッジの手前を通過し、各トナー層がこのベルトに正確に塗布される。次に、組み合わされた層は、一段階で均一に用紙に転写される。

カラープリンターは通常、モノクロのみのページを印刷する場合でも、モノクロプリンターよりページ単価が高い傾向がある。

液体電子写真法(Liquid electrophotography、LEP)は、HP Indigo印刷機英語版で使用されている印刷プロセスで、粉体トナーの代わりに静電荷を帯びたインクを使用し、定着器の代わりに加熱された転写ロールを使用して、帯電したインク粒子を溶かしてから用紙に塗布する。

カラーレーザー転写プリンター

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カラーレーザー転写プリンターは、熱プレス英語版によって転写されるように設計された転写シート(転写媒体)を制作するように設計されている。これらの転写シートは通常、企業やチームのロゴが入ったカスタムメイドのTシャツやロゴ商品を製造するために使用される。

二段階カラーレーザー転写は、カラーレーザープリンターでカラートナー(通常、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の粉体インク)を使用する二段階プロセスの一部をなすもので、濃色のTシャツに印刷するために設計された新しいプリンターは、特殊な白色トナーを使用して、濃色の衣類やビジネス商材に対して転写することができる。

CMYKカラー印刷プロセスは、独自の画像処理プロセスによって数百万もの色を忠実に再現することができる。

インクジェットプリンターとのビジネスモデル比較

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メーカーは、低価格のカラーレーザープリンターでも、インクジェットプリンターでも、同様のビジネスモデルを展開している。プリンター本体は安く販売されるが、交換用のトナーやインクは比較的高価である。カラーレーザープリンターでは、プリンター本体とトナーカートリッジの両方が初期価格が高いにもかかわらず、カートリッジあたりの印刷枚数はインクジェットよりも多くの枚数を印刷できるため、ページあたりの平均ランニングコストは通常、レーザーがわずかに低くなる[24][25]

カラーレーザーの印刷品質に関わる要因として、解像度(通常600-1200 dpi)および4色トナーの使用があげられる。カラーレーザーでは、大面積を同じ色で印刷したり、微妙な色のグラデーションを印刷するのが苦手なことが多い。写真の印刷用として設計されたインクジェットプリンターでは、より高品質のカラー画像を作成することができる[26]。インクジェットプリンターとレーザープリンターを詳しく比較すると、高品質の大量印刷にはレーザープリンターが適し、大判印刷や家庭用にはインクジェットプリンターが適する傾向がある。レーザープリンターは、より正確な縁取りと深みのある単色カラーに優れる。また、カラーレーザープリンターはインクジェットプリンターよりはるかに高速だが、大きくてかさばる傾向がある[27]

偽造防止マーク

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カラーレーザープリンターで白い紙に出力された小さな黄色の点は、ほとんど目に見えない。(クリックすると高解像度で画像が表示される)

最近のカラーレーザープリンターの多くは、トレーサビリティを目的として、目にはほとんど見えないドット格子で印刷物に印を付けている。ドットの色は黄色で、大きさは約0.1 mm(0.0039インチ)、格子の間隔は約1 mm(0.039インチ)である。これは、贋造物(がんぞうぶつ)の追跡を助けるために、米国政府とプリンターメーカーが合意した結果とされている[28]。このドットは、印刷された1枚1枚の用紙に、印刷日時、プリンターのシリアル番号などの情報を二進化十進数で符号化したもので、紙片をメーカーが追跡して、機械の購入場所や、場合によっては購入者を特定することができる。

電子フロンティア財団などのデジタル権擁護団体は、印刷する人のプライバシーと匿名性が損なわれることを懸念している[29]

トナーカートリッジ内のスマートチップ

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インクジェットプリンターと同様に、トナーカートリッジの売上を伸ばすために、トナーカートリッジには、印刷可能なページ数を減らすスマート・チップが組み込まれれていることがある[30](カートリッジ内の使用可能なインクやトナーの量を50%程度まで減らすこともある[31])。この技術は、プリンターユーザーにとって割高であるばかりでなく、廃棄物を増やし、環境への負荷も増大させる。これらのトナーカートリッジでは、(インクジェット・カートリッジと同様に)リセット装置を使用して、スマートチップによって設定された制限を無効化することができる。さらに、一部のプリンターでは、カートリッジ内のインクを使い切る方法を示すオンライン・チュートリアルが投稿されている[32]。エンドユーザーにとって、これらのチップには何も利点ももたらさない。しかし、一部のレーザープリンターでは、チップを使って電気的に印刷ページ数をカウントするのではなく、カートリッジ内のトナー残量を検知する光学センサーを設け、カートリッジの耐用年数を管理するためにチップを搭載している。

安全上の危険、健康上のリスク、および予防措置

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トナーの清掃

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トナー粒子は静電特性を持つように調合されているため、他の粒子や物体、あるいは搬送系や吸引ホースの内部と擦れると静電気が発生することがある。帯電したトナー粒子からの静電気放電により、掃除機のダストバッグ内の可燃性粒子に引火したり、十分な量のトナーが空気中に飛散している場合は、小規模な粉塵爆発を引き起こす可能性がある。トナー粒子は非常に小さいため、従来の家庭用掃除機の集塵バッグでは十分に捕集されず、モーターを通過して室内に逆戻りしたりする。

トナーがレーザープリンター内にこぼれたとき、効果的な清掃するためには、導電性ホースと高効率微粒子フィルター(HEPA)を備えた特別な掃除機が必要になる場合がある。これらの特殊なツールは、ESDセーフ(静電気放電保護)またはトナー掃除機と呼ばれる。

オゾンによる危険性

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印刷プロセスの通常の部分として、プリンター内部の高電圧によってコロナ放電が発生し、イオン化した酸素と窒素が反応してオゾン窒素酸化物を生成する。大型の業務用プリンターや複写機では、排出ガス経路中の活性炭フィルターがこれらの有毒ガスを除去し[要出典]、オフィス環境の汚染を防いでいる。

しかし、業務用プリンターでは一部のオゾンがフィルターをすり抜けてしまい、消費者向け小型プリンターの多くはオゾンフィルターを備えていない。レーザープリンターや複写機を、狭くて換気の悪い部屋で長時間使用すると、これらのガスがオゾン臭や刺激臭に気づくレベルに達する可能性がある。極端な場合、理論的には潜在的な健康被害を引き起こす可能性がある[33]

呼吸器系の健康リスク

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プリンターの排出に関して行われた研究のビデオ。米国国立労働安全衛生研究所英語版

2012年にオーストラリアのクイーンズランド州で実施された研究によると、一部のプリンターはマイクロメートル未満の粒子を排出しており、呼吸器疾患との関連が疑われている[34]クイーンズランド工科大学の研究で評価された63台のプリンターのうち、もっとも排出量が多かった17台はHP製、1台は東芝製であった。ただし、調査対象となった機械は、すでに建物に設置されているものだけであり、特定のメーカーに偏っていた。著者らは、同モデルの機種間でも粒子排出量にかなりのばらつきがあることを指摘した。クイーンズランド工科大学のモラフスカ教授によれば、1台のプリンターが排出する粒子は、燃えているタバコと同程度であったという[35][36]

超微粒子英語版の吸入による健康への影響は、粒子の組成にもよるが、呼吸器への刺激から循環器疾患や(がん)などのより深刻な病気に至るまで多岐にわたる。

2011年12月、オーストラリアの政府機関、オーストラリア労働安全機構(Safe Work Australia)は既存の研究を検討し、「レーザープリンターの排出ガスと健康への悪影響を直接関連付ける疫学研究は見当たらない」と述べ、いくつかの評価では「レーザープリンターの排出ガスにさらされることによる直接的な毒性や健康影響のリスクは無視できる」と結論づけている。また、この検討では、排出物が揮発性または半揮発性の有機化合物であることが示されているため、「このような排出物が呼吸器組織と接触した後に『微粒子英語版』になる可能性は低く、また『微粒子』として残留する可能性も低いため、健康への影響は『微粒子』の物理的性質よりもむしろエアロゾルの化学的性質に関連すると予想するのが論理的であろう」とも述べている[37]

ドイツ法定災害保険(German Social Accident Insurance)は、トナー粉塵やコピー・印刷サイクルへの暴露による健康への影響を調査するための人体研究を委託した。ボランティア(対照郡23人、暴露対象郡15人、喘息患者14人)が、曝露室内で規定の条件下でレーザープリンターの排出に暴露された。広範なプロセスおよび被験者に基づく研究結果は、レーザープリンターの高濃度の排出ガスへの暴露が、報告された疾患につながる実証可能な病態形成過程を開始することを確認できなかった[38]

レーザープリンターからの排出を低減するための提案としてよく話題に上るのは、レーザープリンターにフィルターを後付けすることである。プリンターのファン排出口に粘着テープでフィルターを固定し、粒子放出を減少させる。しかし、すべてのプリンターには排紙トレイがあり、ここから粒子が放出されている。排紙トレイにはフィルターを取り付けることができないため、フィルターの後付けで排出ガス全体を減らすことは不可能である[39]

航空輸送の禁止

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2010年の貨物機爆破計画英語版で、爆発物が充填されたトナーカートリッジを搭載したレーザープリンターの積荷が複数の貨物航空機で発見されたことを受け、米国運輸保安庁は、乗客が機内持ち込み手荷物や預け荷物として、0.45 kg(1ポンド)を超えるトナーカートリッジやインクカートリッジを帰航便に持ち込むことを禁止した[40][41]。雑誌PC Magazineは、大半のカートリッジは規定重量を超えないため、この禁止措置はほとんどの旅行者には影響しないだろうと指摘している[41]

関連項目

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脚注

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  3. ^ Gladwell, Malcolm (May 16, 2011). “Creation Myth - Xerox PARC, Apple, and the truth about innovation”. The New Yorker. http://www.newyorker.com/reporting/2011/05/16/110516fa_fact_gladwell?currentPage=all 28 October 2013閲覧。. 
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