「プシケ (小惑星)」の版間の差分
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{{Expand English|date=2023年10月}} |
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{{天体 基本 |
{{天体 基本 |
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| 幅 = |
| 幅 = 380px |
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| 色 = 小惑星 |
| 色 = 小惑星 |
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| 和名 = プシケ |
| 和名 = プシケ |
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| 画像ファイル = Psyche_VLT.png |
| 画像ファイル = Psyche_VLT.png |
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| 画像サイズ = 250px |
| 画像サイズ = 250px |
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| 画像説明 = [[超大型望遠鏡 |
| 画像説明 = [[超大型望遠鏡VLT]]の[[補償光学]]システムを用いて2019年8月に撮影されたプシケ |
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| 分類 = [[小惑星]] |
| 分類 = [[小惑星]] |
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| 軌道の種類 = [[小惑星帯]] |
| 軌道の種類 = [[小惑星帯]]{{R|jpl}} |
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}} |
}} |
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{{天体 発見 |
{{天体 発見 |
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| 色 = 小惑星 |
| 色 = 小惑星 |
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| 発見日 = [[1852年]][[3月17日]] |
| 発見日 = [[1852年]][[3月17日]]{{R|jpl}} |
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| 発見者 = [[アンニーバレ・デ・ガスパリス|A. デ・ガスパリス]] |
| 発見者 = [[アンニーバレ・デ・ガスパリス|A. デ・ガスパリス]]{{R|jpl}} |
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| 発見場所 = {{仮リンク|カポディモンテ天文台|en|Astronomical Observatory of Capodimonte}}<br>({{flag|ITA}}・[[ナポリ]]) |
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{{天体 軌道 |
{{天体 軌道 |
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| 色 = 小惑星 |
| 色 = 小惑星 |
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| 元期 = [[時刻系#太陽系力学時(TDB)|TDB]] 2,460,200.5([[2023年]][[9月13日|9月13.0日]]){{R|jpl}} |
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| 元期 = 2009年6月18日 ([[ユリウス通日|JD]] 2,455,000.5) |
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<!-- 以下、原則として小数第4位を四捨五入して小数第3位まで表記 --> |
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| 軌道長半径 = 2.924 [[天文単位|AU]] |
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| 軌道長半径 = 2.924 [[天文単位|au]]{{R|jpl}} |
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| 近日点距離 = 2.517 AU |
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| |
| 近日点距離 = 2.531 au{{R|jpl}} |
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| 離 |
| 遠日点距離 = 3.316 au{{R|jpl}} |
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| 離心率 = 0.134{{R|jpl}} |
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| 公転周期 = 5.00 年 |
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| 公転周期 = 1,825.951 [[日]]{{R|jpl}}<br>(4.999 [[ユリウス年|年]]) |
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| 軌道傾斜角 = 3.10 [[度 (角度)|度]] |
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| 軌道傾斜角 = 3.097[[度 (角度)|°]]{{R|jpl}} |
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| 近日点引数 = 227.14 度 |
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| |
| 近日点引数 = 229.410°{{R|jpl}} |
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| 昇交点黄経 = 150.027°{{R|jpl}} |
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| 平均近点角 = 243.155°{{R|jpl}} |
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}} |
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{{天体 物理 |
{{天体 物理 |
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| 色 = 小惑星 |
| 色 = 小惑星 |
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| 三軸径 = c/a比:0.59 ± 0.02{{R|Vernazza2021}}<br><small>(278 ± 5 × 232 ± 6 × 164 ± 4)</small> [[キロメートル|km]]{{R|Ferrais2020}}<br>277 km × 238 km × 168 km{{R|Ferrais2020}}<br><small>(最適楕円体フィット)</small><br>279 × 232 × 189 km (± 10%){{R|Shepard2017}}<br>(278{{+-|4|8}} × 238{{+-|4|6}} × 171{{+-|1|5}}) km{{R|Shepard2021}} |
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| 直径 = 253.16 [[キロメートル|km]] |
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| 平均直径 = 223 ± 3 km{{R|Vernazza2021}}<br>222 ± 4 km{{R|Ferrais2020}}<br>222{{+-|1|4}} km{{R|Shepard2021}} |
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| 質量 = ~1.7 {{e|19}} [[キログラム|kg]] |
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| |
| 表面積 = (1.62 ± 0.05){{e|5}} [[平方キロメートル|km<sup>2</sup>]]{{R|Shepard2021}} |
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| |
| 体積 = (5.75 ± 0.19){{e|6}} [[立方キロメートル|km<sup>3</sup>]]{{R|Shepard2021}} |
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| 質量 = (2.29 ± 0.14){{e|19}} [[キログラム|kg]]{{R|Elkins-Tanton2020}} |
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| 脱出速度 = 0.1339 [[メートル毎秒|km/s]] |
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| 平均密度 = 3.89 ± 0.53 [[グラム毎立方メートル|g/cm<sup>3</sup>]]{{R|Vernazza2021}}<br>3.977 ± 0.253 g/cm<sup>3</sup>{{Efn2|Shepard et al. (2021){{R|Shepard2021}} と Elkins-Tanton et al. (2020){{R|Elkins-Tanton2020}} による研究結果から、プシケの体積を (5.75 ± 0.19){{e|6}} km<sup>3</sup>、質量を(2.29 ± 0.14){{e|19}} kg としたときに計算される値となる。}}<br>4.10 ± 0.61 g/cm<sup>3</sup>{{R|Ferrais2020}} |
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| 自転周期 = 4.196 時間 |
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| 表面重力 = ~0.144 [[メートル毎秒毎秒|m/s<sup>2</sup>]]{{R|Shepard2017}} |
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| スペクトル分類 = M / X |
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| 脱出速度 = ~180 [[メートル毎秒|m/s]]{{R|Shepard2017}} |
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| 絶対等級 = 5.90 |
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| 自転周期 = 4.195948 ± 0.000001 [[時間 (単位)|時間]]{{R|Shepard2017|Shepard2021}} |
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| アルベド = 0.1203 |
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| スペクトル分類 = [[M型小惑星|M]]<small>([[小惑星のスペクトル分類#トーレンの分類|トーレンの分類]])</small>{{R|jpl}}<br>[[X型小惑星|X]]<small>([[小惑星のスペクトル分類#SMASS分類|SMASS分類]])</small>{{R|jpl}}<br>[[X型小惑星|Xk]]<small>([[小惑星のスペクトル分類#Bus–DeMeo分類|Bus–DeMeo分類]])</small>{{R|PDS-Taxonomy}} |
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| 絶対等級 = 6.21{{R|jpl}} |
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| アルベド = 0.15 ± 0.03{{R|Ferrais2020}}<br>0.34 ± 0.08<small>(レーダー観測より)</small>{{R|Shepard2021}} |
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| 赤道傾斜角 = |
| 赤道傾斜角 = |
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| 平均表面温度 = ~162 [[ |
| 平均表面温度 = {{要出典範囲|~162 [[ケルビン|K]]|date=2023-10}} |
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| 最大表面温度 = ~280 K |
| 最大表面温度 = {{要出典範囲|~280 K|date=2023-10}} |
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| 色指数_BV = 0.729 |
| 色指数_BV = 0.729{{R|jpl}} |
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| 色指数_UB = 0.299 |
| 色指数_UB = 0.299{{R|jpl}} |
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}} |
}} |
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{{天体 終了 |
{{天体 終了 |
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| 色 = 小惑星 |
| 色 = 小惑星 |
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}} |
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'''(16) プシケ'''<ref>{{cite web|publisher=[[日本惑星協会]]|url=http://planetary.jp/show/show_file/asteroid_1-50.html |accessdate=2019-03-09|title=小惑星日本語表記索引 : 1 - 50}}</ref> ({{Lang-en|16 Psyche}}、ラテン語読み)、もしくは '''サイキ'''<ref>[http://mmx-news.isas.jaxa.jp/?p=212&lang=ja 小天体探査の全体像を共有する -JpGUでのパネル討論会から- – MMX Mission News] [[宇宙航空研究開発機構|JAXA]] (2017年7月3日)</ref> (英語発音 /ˈsaɪkiː/ から)は、[[太陽系]]の[[小惑星帯]](メインベルト)内を[[公転]]している[[小惑星]]のひとつである。[[1852年]][[3月17日]]に[[イタリア]]の[[天文学者]]であった[[アンニーバレ・デ・ガスパリス]]によって発見された大型の[[M型小惑星]]であり、[[ギリシア神話]]に登場する女神[[プシューケー]]に因んで命名された<ref>{{cite book|last=Schmadel|first=Lutz D. |url=https://books.google.com/books?id=aeAg1X7afOoC&pg=PA14|title=Dictionary of Minor Planet Names|year=2012|publisher=Springer Science & Business Media|edition=6th|pages=14–15|isbn=978-3642297182}}</ref>。接頭辞の (16) は[[小惑星番号]]であり、16番目に発見された小惑星であることを意味する。プシケは既知のM型小惑星の中で最大かつ最も質量が大きく、[[特徴のある小惑星#質量の大きな小惑星|最も質量が大きい小惑星の上位10個]]の1つである。平均直径は約 220 [[キロメートル|km]] で、小惑星帯の全質量の約 1% を占めている。プシケは[[太陽系]]形成時の[[原始惑星]]の[[核 (天体)|核]]が露出した天体であるという仮説が歴史的に立てられていたが{{R|Bell2015}}、最近の多くの研究ではその可能性はほぼ否定されている{{R|Vernazza2021|Shepard2021|Elkins-Tanton2020}}。プシケは、[[2023年]][[10月13日]]に打ち上げられ、[[2029年]]に到着予定{{R|JPL20221028}}である同一表記の[[宇宙探査機]][[サイキ (宇宙機)|サイキ]]によって探査が行われる予定で、[[金属]]を多く含んだM型小惑星としては初めて接近探査が行われる小惑星となる{{R|NASA20230928}}。 |
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[[File:AnimatedOrbitOf16Psyche.gif|thumb|プシケの軌道。青がプシケ、<br />赤が惑星(一番外側の赤は木星)、<br />黒が太陽。]] |
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'''プシケ'''<ref>{{Cite web|和書|publisher=[[日本惑星協会]]|url=http://planetary.jp/show/show_file/asteroid_1-50.html |accessdate=2019-03-09|title=小惑星日本語表記索引 : 1 - 50}}</ref> (16 Psyche、ラテン語読み)、もしくは '''サイキ'''<ref>[http://mmx-news.isas.jaxa.jp/?p=212&lang=ja 小天体探査の全体像を共有する -JpGUでのパネル討論会から- – MMX Mission News] [[宇宙航空研究開発機構|JAXA]] (2017年7月3日)</ref> (英語発音 /ˈsaɪkiː/ から)は、[[太陽系]]の[[小惑星帯]](メインベルト)にある[[小惑星]]のひとつ。[[火星]]と[[木星]]の間の軌道を公転しており、小惑星帯の中では13番目に大きな天体である。 |
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== 特徴 == |
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組成は純度の高い[[鉄]]と[[ニッケル]]からなる金属であると推定されている。この種の金属を主成分とする小惑星は[[M型小惑星]]と呼ばれ、プシケはM型小惑星の中では最も大きい天体である{{R|Don99}}。プシケはかつては[[核 (天体)|コア]]と[[マントル]]が分化した直径500km程度の通常の組成を持つ小惑星だった(このサイズと構造は現在の[[ベスタ (小惑星)|ベスタ]]に近い{{R|Don99}})が、太陽系の歴史の初期に大規模な天体衝突を起こしてマントルが吹き飛ばされて核のみが残った結果現在のような金属質の小惑星になったと広く考えらている{{R|Don99}}。しかし小惑星帯において大規模な天体衝突が起きた場合には[[小惑星族]]が形成されると考えられているにも関わらず{{R|Don99}}、プシケが属する小惑星族は確認されていないことから、それについての更なる説明が必要とされる。この説明としては、プシケにおける巨大衝突は太陽系の歴史のごく初期に起きたので、この時に生じた小惑星族は、その後の小惑星相互の衝突破砕により消滅したという説が唱えられている{<ref name="Don99">{{cite journal | author=Donald |year=1999|title=The Missing Psyche Family: Collisionally Eroded or Never Formed? | bibcode=1999Icar..137..140D | journal= Icarus |volume=137 |issue=1 |pages=140-151}}</ref>。 |
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=== 大きさ === |
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最初の推定されたプシケの大きさは 253 km で、[[IRAS]]の熱[[赤外線]]放射観測から得られた値であった{{R|jpl}}。これは現在知られている大きさの平均値より 15% 大きいが、この測定時はプシケが[[自転軸]]をほぼ地球に向けている状態で観測されていたため、このときの地球に向けていた面の大きさの推定値がIRASによる観測から求められていたことが後に判明した{{R|Shepard2017}}<ref>{{cite journal|last=Lupishko|first=Dmitrij F.|title=On the bulk density and porosity of M-type asteroid 16 Psyche|year=2006|journal=Solar System Research|volume=40|issue=3|pages=214–218|doi=10.1134/S0038094606030051|bibcode=2006SoSyR..40..214L|s2cid=119643558}}</ref>。 |
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[[2004年]]{{R|Shepard2017}}と[[2010年]]{{R|DataSets}}<ref>{{cite web|url=https://www.asteroidoccultation.com/observations/Results/Reviewed/index2010.html|title=Psyche 2010 Occultation|website=IOTA Asteroid Occultation Reports 2010|accessdate=2023-12-17}}</ref>、[[2014年]]{{R|DataSets}}、[[2019年]]<ref>{{cite web|url=https://www.asteroidoccultation.com/observations/Results/Reviewed/index2019.html|title=Psyche 2019 Occultation|website=IOTA Asteroid Occultation Reports 2019|accessdate=2023-12-17}}</ref>に発生したプシケによる[[恒星]]の[[小惑星による掩蔽|掩蔽]]観測では、異なる地点における観測結果から示される複数の{{仮リンク|弦 (天文学)|label=弦|en|Chord (astronomy)}}のデータセットを生成させることに成功しており、[[補償光学]]イメージングと3次元モデリングとともにプシケの平均直径の推定に使用されてきた。最近のモデルでは全て、等価体積における平均直径は 222 ± 3 km 程度に収束している{{R|Ferrais2020|Shepard2021|Hanuš2017|Viikinkoski2018}}<ref>{{cite web|url=http://astro.troja.mff.cuni.cz/projects/asteroids3D/data/archive/1-1000/A109.M1806.shape.png|title=Asteroid 3D data archive {{!}} DAMIT 1806|website=astro.troja.cuni.cz|accessdate=2023-12-17|url-status=dead|archiveurl=https://web.archive.org/web/20180526190207/http://astro.troja.mff.cuni.cz/projects/asteroids3D/data/archive/1-1000/A109.M1806.shape.png|archivedate=2018-05-26}}</ref>。 |
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== 命名 == |
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プシケは[[1852年]]にイタリアのアンニーバレ・デ・ガスパリスによって発見された。この名前は[[ギリシア神話]]に登場する女神(元人間)[[プシューケー]]に由来する。 |
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[[File:Psyche asteroid eso.jpg|thumb|left|[[超大型望遠鏡VLT]]によって撮影されたプシケの多方面画像]] |
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=== バルク密度と質量 === |
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プシケは、明確に観測できるほどその[[重力]]によって他の小惑星の[[摂動 (天文学)|軌道を変化]]させることができる[[質量]]を持っており、これを質量の推定値の計算に用いることができる。プシケの質量として歴史的に用いられてきた値は、1.6{{e|19}} [[キログラム|kg]] から 6.7{{e|19}} kg までの範囲であった{{R|Elkins-Tanton2020}}。しかし、最も最近の推定値では (2.287 ± 0.070){{e|19}} kg という値の周辺に収束してきている{{R|Elkins-Tanton2020|Siltala2021}}。平均体積を (5.75 ± 0.19){{e|6}} [[立方キロメートル|km<sup>3</sup>]] であると仮定すると計算される[[密度|バルク密度]] (Bulk density) は 3.977 ± 0.253 [[グラム毎立方センチメートル|g/cm<sup>3</sup>]] となり、ほとんどの[[太陽系小天体]]が持つ密度よりもかなり大きな値が算出される{{R|Vernazza2021|Elkins-Tanton2020|Siltala2021}}。2020年には、4 g/cm<sup>3</sup> を超えるとする研究結果も公表されている{{R|Ferrais2020}}。 |
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=== 形状と自転軸 === |
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最初に公開されたプシケ3次元形状モデルは、多数の[[光度曲線]]分析から導き出されたものであった{{R|Kaasalainen2002}}。それ以来、光度曲線の反転や補償光学観測、[[レーダー]]観測、サーマルイメージング (Thermal imaging)、掩蔽観測に基づいて、プシケの形状に対する更なる観測結果の改良が行われてきた{{R|Vernazza2021|Ferrais2020|Shepard2017|Shepard2021|Hanuš2017|Viikinkoski2018|Drummond2018}}。最新のモデルでは、プシケの形状は{{仮リンク|ヤコビ楕円体|en|Jacobi ellipsoid}}と一致しており、三方向の寸法が 278 km x 238 km x 171 km の前後数 km 以内であることが示されている{{R|Vernazza2021|Ferrais2020|Shepard2017|Viikinkoski2018}}。 |
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各形状モデルにおいては、[[北極]]が向いている方向([[地軸|自転軸]])の推定値も示されている。最近のモデルではすべて、プシケは[[黄道座標]]における黄経35度、黄緯-8度周辺を指している自転軸を中心に[[自転]]することが示唆されており、その[[不確実性]]は3度となっている{{R|Ferrais2020|Shepard2017|Shepard2021|Hanuš2017|Viikinkoski2018|Drummond2018}}。これは、プシケが基本的に[[黄道]]面に向けた状態で傾いており、その[[赤道傾斜角]]が98度となっていることを意味している。 |
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{{multiple image |
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| align = left |
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| direction = vertical |
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| total_width = 200 |
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|image1 = Psyche_ellipsoid_shape.png | caption1 = [[南極]]方向から見たプシケと形状に最も合う最適楕円体を重ね合わせた画像。最適楕円体から大きな逸脱が見られる部分は、アルファ (Alpha)、ブラボー (Bravo)、チャーリー (Charlie) と呼ばれている。 |
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| image2 = 16PsycheNorthView.gif | caption2 = 北緯20度地点から見たプシケの形状モデルのアニメーション。赤い印が付いている地点が経度0度となっている。 |
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| image3 = 16PsycheSouthView.gif | caption3 = 南緯20度地点から見たプシケの形状モデルのアニメーション。赤い印が付いている地点が経度0度となっている。 |
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}} |
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=== 地形 === |
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[[File:Psyche illustration.jpg|thumb|NASAによって描かれたプシケの想像図]] |
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プシケはその地表において多くの地形が報告されている。その中で最も大きいのは、形状に最も適合する名目上の楕円体 (nominal ellipsoid shape) に比べて質量が不足している領域であり、[[ベスタ (小惑星)|(4) ベスタ]]の地表に存在している[[レアシルヴィア|レアシルヴィア盆地]]と類似している{{R|Ferrais2020|Shepard2017|Shepard2021|Viikinkoski2018}}。 |
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この大規模な質量減少地域に加えて、プシケの表面にはいくつかの明確な[[衝突クレーター]]の存在が報告されている。[[超大型望遠鏡VLT]]に搭載されている補償光学観測機器SPHEREを用いて観測を行った研究者らは、プシケの表面に直径が90 km 程度の2つの大型クレーターが存在していると報告した。これらの地形は暫定的に、[[アプレイウス]]の[[ラテン語]]小説『{{仮リンク|黄金の驢馬|en|The Golden Ass}}』に登場する双子の魔女に因んで ''Meroe'' と ''Pantia'' と命名された{{R|Viikinkoski2018}}<ref>{{cite book|last=Zimmerman|first=John|year=1966|title=Dictionary of Classical Mythology|publisher=Bantam Books|isbn=0553144839}}</ref>。[[アレシボ天文台|アレシボ望遠鏡]]を用いて観測を行った研究者らは、南極付近、南中緯度地域、および北極付近にクレーター状の地形が存在していることを報告しており、それぞれのクレーターは ''Delta''、''Eros''、''Foxtrot'' と呼称されている{{R|Shepard2017|Shepard2021}}。いくつかの独立した形状モデルから示されるプシケの地形を分析した結果では、''Pantia'' と ''Eros'' はほぼ確実にクレーターとして存在しており、''Foxtrot'' も実在する可能性が高いことが示唆されている。しかし、''Delta'' と ''Meroe'' についてはクレーターであると完全に認めるには不確実性が残されている{{R|Shepard2021}}。 |
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初期の光度曲線研究では、プシケの表面の明るさには大きなばらつきがあることが示唆されていた<ref>{{cite journal|last=Dotto|first=E.|last2=Barucci|first2=M. A.|last3=Fulchignoni|first3=M.|last4=di Martino|first4=M.|display-authors=3|title=M-type asteroids: rotational properties of 16 objects.|year=1992|journal=Astronomy and Astrophysics Supplement Series|volume=95|issue=2|pages=195–211|bibcode=1992A&AS...95..195D}}</ref>。この明るさの変動は、光度曲線を反転させて形状モデルを生成させる試みが行われたことでさらに明白になった{{R|Shepard2017|Kaasalainen2002}}。光度曲線反転に基づいた最新の形状モデルでは、表面の[[アルベド]]の変動を同時に示すことにも成功しており、結果として得られるプシケ表面の地図には、局所的にアルベドが全体平均とは 20% 以上も異なる領域が示されている。特に、''Meroe'' は平均よりも 8% も暗い地域となっており、''Pantia'' は平均よりも 7% 明るい地域となっている{{R|Viikinkoski2018}}。 |
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[[アレシボ天文台|アレシボ望遠鏡]]によるレーダー観測により、プシケの[[:en:Albedo#Radar_albedo|レーダーアルベド]]のバックグラウンド値は <math>\hat{\sigma}_{OC}</math> = 0.27 ± 0.03 となっており、[[ルテティア (小惑星)|(21) ルテティア]]などの他の[[M型小惑星]]と同等の値が示されている{{R|Shepard2021}}。この値は、金属相が豊富な[[ケイ酸塩鉱物|ケイ酸塩]](岩石質)から成る[[レゴリス]]と一致している{{R|Shepard2015}}。しかし、プシケの表面にはレーダーアルベドがこの値のほぼ2倍を示す地域が少なくとも3ヵ所あり、これらの地域には金属相が高濃度で存在していることを示唆している{{R|Shepard2021}}。これらの地域のうち1つは光学的に明るいことが知られている ''Pantia'' に対応する領域に存在しており、他の2つも光学的に明るいと報告されている領域に存在している{{R|Ferrais2020|Shepard2021|Viikinkoski2018}}。プシケの光学的アルベドとレーダーアルベドの間に見られるこの明らかな相関関係は、金属含有量の高い領域とより明るい地形を作り出すプロセスとの間に関連があるという仮説に繋がっている{{R|Shepard2021}}。 |
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{{multiple image |
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| align = right |
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| direction = vertical |
|||
| total_width = 220 |
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| image1 = Psyche features Shepard2021.jpg | caption1 = プシケの形状モデル。地上からの観測で識別されている表面の地形が一部示されている。 |
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| image2 = Psyche albedo Shepard2021.jpg |thumb | caption2 = プシケの表面の光学的アルベドの分布にレーダーアルベドの測定値(白丸が測定地点)を組み合わせた地図 |
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}} |
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=== 組成 === |
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これまでに知られているプシケのかさ密度(3.9 ± 0.3 g/cm<sup>3</sup> 前後)の値はプシケ全体を構成する組成の種類や割合に制約を課すことができる。ほとんどの[[鉄隕石]]に含まれる[[鉄]]や[[ニッケル]]のかさ密度は 7.9 g/cm<sup>3</sup> となっている。プシケが初期の[[微惑星]]の[[核 (天体)|核]]部分が残された天体とする場合、全体のおよそ 50% が空洞になっている必要があるが、プシケの大きさを考えると、これはとてもあり得そうにないと考えられている{{R|Elkins-Tanton2020}}。しかし、[[エンスタタイト・コンドライト]]や[[炭素質コンドライト|Bencubbinite]]、[[メソシデライト]]を含む、金属を多く含んだ他の種類の[[隕石]]はプシケに組成が似ている可能性が示唆されており、それぞれがプシケと同様のかさ密度を持っている{{R|Elkins-Tanton2020|Viikinkoski2018}}<ref>{{cite book|author=Gaffey|author2=Bell|author3=Cruikshank|editor=Richard P. Binzel|editor2=Tom Gehrels|editor3=Mildred Shapley Matthews|title=Asteroid Surface Mineralogy in Asteroids II|year=1989|publisher=University of Arizona Press|isbn=0-8165-1123-3|pages=98–127}}</ref>。 |
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何人かの研究者らは、プシケの表面に[[ケイ酸塩鉱物]]が存在していると報告している<ref>{{cite journal|last=Hardersen|first=Paul S.|last2=Gaffey|first2=Michael J.|last3=Abell|first3=Paul A.|title=Near-IR spectral evidence for the presence of iron-poor orthopyroxenes on the surfaces of six M-type asteroid|year=2005|journal=Icarus|volume=175|issue=1|page=141|doi=10.1016/j.icarus.2004.10.017|bibcode=2005Icar..175..141H}}</ref><ref>{{cite journal|last=Ockert-Bell|first=M.|last2=Clark|first2=B. E.|last3=Shepard|first3=M. K.|last4=Isaacs|first4=R. A.|display-authors=3|title=The composition of M-type asteroids: Synthesis of spectroscopic and radar observations|year=2010|journal=Icarus|volume=210|issue=2|pages=674–692|doi=10.1016/j.icarus.2010.08.002|bibcode=2010Icar..210..674O}}</ref><ref>{{cite journal|last=Sanchez|first=J. A. |title=Detection of rotational spectral variation on the M-type asteroid (16) Psyche.|year=2017|journal=The Astronomical Journal|volume=153|issue=1|page=29|doi=10.3847/1538-3881/153/1/29|arxiv=1701.02742|bibcode=2017AJ....153...29S|s2cid=59425536}}</ref>。[[マウナケア天文台]]にある{{仮リンク|NASA赤外線望遠鏡施設|en|NASA Infrared Telescope Facility}}で2016年10月に撮影されたプシケの[[スペクトル]]からは、水和ケイ酸塩の存在を示唆する可能性のある小惑星にみられる[[ヒドロキシ基]]イオンの証拠(波長が約 3 μm の領域を吸収)が示された{{R|Takir2016}}。プシケは[[水]]が存在しない乾燥した条件下で形成されたと考えられているため、ヒドロキシ基はより小さな[[C型小惑星|炭素質小惑星]]が過去にプシケへ衝突したことを介してプシケにもたらされた可能性がある{{R|Shepard2015|Takir2016}}。 |
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プシケのレーダーアルベドの値は表面上で大きく異なっていて、その範囲は 0.22 ~ 0.52 に及んでおり{{R|Shepard2021}}、これは小惑星帯に存在している小惑星の2倍から4倍となっている<ref>{{cite journal|last=Magri|first=C.|last2=Nolan|first2=Michael C.|last3=Ostro|first3=Steven J.|last4=Giorgini|first4=Jon D.|title=A radar survey of main-belt asteroids: Arecibo observations of 55 objects during 1999–2004|year=2007|journal=Icarus|volume=186|issue=1|pages=126–151|doi=10.1016/j.icarus.2006.08.018|bibcode=2007Icar..186..126M}}</ref>。レーダー反射のモデルでは、この範囲の値だとレゴリスのかさ密度である 2.6 ~ 4.7 g/cm<sup>3</sup> に相当する{{R|Shepard2015}}。この範囲は、上記の金属が豊富なほとんどの種類の隕石およびケイ酸塩鉱物の分光観測から検出される値と一致しており、内部がとても多孔的でない限り、純粋な鉄やニッケルで出来たレゴリスとは矛盾している。 |
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=== 起源 === |
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プシケの起源にはいくつかの仮説が提唱されている。その中で最も初期のものは、プシケは元々の直径が約 500 km と現在よりも大型で内部が{{仮リンク|惑星の分化|label=分化|en|Planetary differentiation}}した母天体に[[地殻]]と[[マントル]]を剥ぎ取らせるような天体衝突が発生し、それによって中心部の[[核 (天体)|金属核]]が露出して残されたものであるという説だった{{R|Bell2015}}。この仮説の別の解釈には、1回の大規模な天体衝突の結果でこうなったのではなく、同等またはそれ以上の大きさの天体と比較的遅い速度で横滑りするような形での衝突が複数回(3回以上)起きた結果であるという見解も含まれている<ref>{{cite journal|last=Asphaug|first=E. |last2=Reufer|first2=A.|title=Mercury and other iron-rich planetary bodies as relics of inefficient accretion|year=2014|journal=Nature Geoscience|volume=7|issue=8|pages=564–568|doi=10.1038/NGEO2189|bibcode=2014NatGe...7..564A}}</ref>。しかし、質量と密度の推定値が、衝突の結果として残される核の予想値と一致しないため、この理論は最近では受け入れられなくなってきている{{R|Elkins-Tanton2020}}。 |
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2つ目の仮説は、プシケが天体衝突で破壊された際に、重力によって金属とケイ酸塩の混合物が再度[[降着 (天文学)|降着]]して現在のプシケとなったというものである{{R|Davis1999}}。この場合、プシケは[[石鉄隕石]]の一種である[[メソシデライト]]の母体である天体の候補となる可能性がある{{R|Davis1999}}。 |
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3つ目の仮説は、プシケは[[ケレス (準惑星)|(1) ケレス]]や[[ベスタ (小惑星)|(4) ベスタ]]のように内部が分化された天体である可能性があるが、高温だった形成時からまだ冷却している間に「鉄の火山活動 (ferrovolcanism)」としても知られる、鉄などが[[マグマ]]として噴出されるという一種の[[火山活動]]を経験したというものである<ref>{{cite journal|last=Johnson|first=B. C.|last2=Sori|first2=M. M. |last3=Evans|first3=A. J.|title=Ferrovolcanism of metal worlds and the origin of pallasites|year=2020|journal=Nature Astronomy|volume=4|pages=41–44|doi=10.1038/s41550-019-0885-x|bibcode=2020NatAs...4...41J |s2cid=202583406|arxiv=1909.07451}}</ref> 。これが事実であれば、このモデルではかつての火山の中心部を含む地域でのみ金属が高度に濃縮されていると予測している。この見解は、最近のレーダー観測の結果によっても裏付けられている{{R|Shepard2021}}。 |
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== 探査 == |
== 探査 == |
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{{Main|サイキ (宇宙機)}} |
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プシケは、鉄のコアがむき出しになった珍しい小惑星{{R|Don99}}だと考えられているため、太陽系初期の惑星形成プロセスを理解するうえで重要な知見が得られると考えられる。このため、[[2023年]]10月13日に打ち上げられた[[ディスカバリー計画|NASAの小惑星ミッション]] [[サイキ (宇宙機)|サイキ]]において探査が計画されている<ref>{{cite news |
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[[File:PIA21499 - Artist's Concept of Psyche Spacecraft with Five-Panel Array.jpg|thumb|right|プシケを周回する探査機サイキのコンセプトアート]] |
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| title = Strange Metal Asteroid Targeted in Far-Out NASA Mission Concept |
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プシケを訪れた宇宙探査機は現時点で存在しないが、[[2014年]]にプシケへの探査ミッションがNASAへ提案された{{R|NYT20170106|Wall-2014-01-15}}。[[アリゾナ州立大学]]の地球宇宙探査学校 (the School for Earth and Space Exploration) の校長を務める [[:en:Lindy Elkins-Tanton|Lindy Elkins-Tanton]] が率いるチームは<ref>{{cite conference|last=Elkins-Tanton|first=L. T.|last2=Asphaug|first2=E.|last3=Bell|first3=J.|last4=Bercovici|first4=D.|display-authors=3|url=http://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2014/pdf/1253.pdf|format=PDF|title=Journey to a metal world: Concept for a Discovery Mission to Psyche|year=2014|conference=45th Lunar and Planetary Science Conference|book-title=LPI Contribution No. 1777|page=1253|bibcode=2014LPI....45.1253E}}</ref>、'''[[サイキ (宇宙機)|サイキ]]'''計画のコンセプトを発表した。この研究チームは、プシケがこれまでに発見されている唯一の金属核のような特性を持つ天体であるため、研究対象として貴重であると主張した{{R|Wall-2014-01-15}}。 |
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| url = http://www.space.com/24288-strange-metal-asteroid-psyche-nasa-mission.html |
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| publisher = Space.com | date = 2014-01-15 | accessdate = 2014-1-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://moonstation.jp/blog/asteroidexp/nasa-selects-two-asteroid-explorations-as-future-missions-in-discovery-program|title=【一部記述修正】NASA、新しい2つの小惑星探査計画を将来探査として選定|publisher=月探査情報ステーション|date=2017-01-05|accessdate=2017-01-07}}</ref>。 |
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この探査機はプシケの周囲を約20ヶ月間に渡って周回し{{R|NYT20170106}}、プシケの地形や表面の特徴、重力、[[磁気]]、その他の特性を研究し、現在の技術に基づいて計画にかかる高いコストと全く新しい技術開発の必要性を避ける取り組みを行う予定である。[[2015年]][[9月30日]]、サイキ計画は次期[[ディスカバリー計画]]で実施される探査プログラムの最終候補5件のうちの1件に選定された<ref>{{cite web|last=Brown|first=Dwayne C.|last2=Cantillo|first2=Laurie|url=http://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-investigations-for-future-key-planetary-mission|title=NASA selects investigations for future key planetary mission|work=NASA TV|publisher=NASA|date=2015-09-30|accessdate=2023-12-17}}</ref>。 |
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サイキ計画は[[2017年]][[1月4日]]にNASAによって正式に承認され、当初は[[2023年]][[10月]]に打ち上げられ、[[2024年]]に地球を[[スイングバイ]]、[[2025年]]に[[火星]]を[[フライバイ]]した後に、[[2030年]]にサイキに到着する予定であった<ref>{{cite web|last=Northon|first=Karen|url=https://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-two-missions-to-explore-the-early-solar-system|title=NASA selects two missions to explore the early solar system|publisher=NASA|date=2017-01-04|accessdate=2023-12-17}}</ref>。しかし[[2017年]][[5月]]、より効率的な軌道でプシケへ向かうことを目標とするために打ち上げ日が繰り上げられ、[[2022年]]に打ち上げ、2023年に火星をスイングバイした上で[[2026年]]にプシケに到着する予定になった<ref>{{cite web|url=https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2017-149|title=NASA moves up launch of Psyche mission to a metal asteroid|publisher=NASA|date=2017-05-24|accessdate=2023-12-17}}</ref>。しかし、サイキの飛行ソフトウェアに問題があったため、2023年1月にNASAはサイキの打ち上げと運用のスケジュールを当初の予定に戻すと発表した<ref>{{cite web|author=Elizabeth Howell|url=https://www.space.com/psyche-asteroid-probe-october-2023-launch|title=NASA to launch Psyche asteroid probe in October 2023 after delays|website=Space.com|date=2023-01-27|accessdate=2023-12-17}}</ref>。 |
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[[2020年]][[2月28日]]、NASAは[[スペースX]]社に対して、[[ファルコンヘビー]]ロケットでサイキと、二次ミッションの為の2つの小型衛星を打ち上げるための1億1700万[[アメリカドル]]の契約を締結したと発表した<ref>{{cite web|last=Foust|first=Jeff|url=https://spacenews.com/falcon-heavy-to-launch-nasa-psyche-asteroid-mission/|title=Falcon Heavy to launch NASA Psyche asteroid mission|website=Space News|date=2020-02-28|accessdate=2023-12-17|archiveurl=https://archive.today/20200301115859/https://spacenews.com/falcon-heavy-to-launch-nasa-psyche-asteroid-mission/|archivedate=2020-03-01}}</ref>。サイキは2023年[[10月13日]]14時20分([[協定世界時]])に打ち上げに成功し{{R|NASA20230928}}、[[2029年]]にプシケに到着する予定となっている{{R|JPL20221028}}。 |
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{{multiple image |
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| align = center |
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| direction = horizontal |
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| width = 280px |
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| header = サイキの軌跡アニメーション |
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| image1 = Animation of Psyche around Sun.gif |
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| caption1 = <center>太陽に対して</center> |
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| image2 = Animation of Psyche around 16 Psyche.gif |
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| caption2 = <center>プシケに対して</center> |
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| footer = {{legend2|Magenta|探査機サイキ}}{{·}}{{legend2|Lime|(16) プシケ}}{{·}}{{legend2| RoyalBlue|地球}}{{·}}{{legend2|Cyan|[[火星]]}}{{·}}{{legend2|Yellow|[[太陽]]}} |
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}} |
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== 記号 == |
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天文学者らは[[七曜]]に属する天体の古い表記と一致する一種の[[速記|速記記号]]として、最初に発見された15個の小惑星に対して、それぞれ自身のことを示す記号を作成した。プシケには、その後に発見された他のいくつかの小惑星と同様に特徴的な記号が与えられた。ギリシャ語で[[蝶]]は[[魂]]の象徴であったため、プシケの記号は蝶の羽の上に星([[File:Psyche symbol (fixed width).svg|16px|16 Psyche]] または [[File:Psyche symbol (elaborate, fixed width).svg|16px|16 Psyche]])を付けたものだった(''Psyche'' にはギリシャ語で「蝶」と「魂」の両方の意味がある)<ref>{{cite journal|last=Sonntag |first=A.|url=https://books.google.com/books?id=fWM_AAAAcAAJ&pg=PA283|title=Elemente und Ephemeride der Psyche|year=1852|journal=Astronomische Nachrichten|volume=34 |issue=20 |page=283|bibcode=1852AN.....34..283.|doi=10.1002/asna.18520342010|quote=[''in a footnote''] Herr Professor de Gasparis schreibt mir, in Bezug auf den von ihm März 17 entdeckten neuen Planeten: ''J'ai proposé, avec l'approbation de Mr. Hind, le nom de Psyché pour la nouvelle planète, ayant pour symbole une aile de papillon surmontée d'une étoile''.}}</ref>。 |
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しかし、全ての小惑星の記号は、プシケの記号が広く用いられる前に置き換えられることになる。十数個以上の小惑星が発見されるようになると、個々の記号をすべて覚えることが面倒がられるようになり、[[1851年]]に[[ドイツ]]の天文学者であった[[ヨハン・フランツ・エンケ]]は、代わりに[[小惑星番号]]の数字を丸で囲った記号を使用することを提案し、これに則るとプシケの記号は ⑯ となる。この新しい体系に則って指定された最初の小惑星がプシケであり、[[アメリカ]]の天文学者であった[[ジェイムズ・ファーガソン]]が1852年にプシケの観察結果を発表した際に用いられた<ref>{{cite web|last=Hilton|first=James|url=http://aa.usno.navy.mil/faq/docs/minorplanets.php|title=When did the asteroids become minor planets?|publisher=[[アメリカ海軍天文台|U.S. Naval Observatory]]|date=2001-09-17|accessdate=2023-12-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090825024347/http://aa.usno.navy.mil/faq/docs/minorplanets.php|archivedate=2009-08-25}}</ref>。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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{{Reflist}} |
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{{notelist2}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|2|refs= |
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<ref name="jpl">{{cite web|url=http://ssd.jpl.nasa.gov/sbdb.cgi?sstr=16|title=JPL Small-Body Database Browser : 16 Psyche|publisher=[[ジェット推進研究所|Jet Propulsion Laboratory]]|website=[[JPL Small-Body Database]]|date=2021-12-09 last obs.|accessdate=2023-12-17}}</ref> |
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<ref name="Vernazza2021">{{cite journal|last=Vernazza|first=P.|last2=Ferrais|first2=M.|last3=Jorda|first3=L.|last4=Hanuš|first4=J.|display-authors=3|url=https://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/eso2114/eso2114a.pdf|format=PDF|title=VLT/SPHERE imaging survey of the largest main-belt asteroids: Final results and synthesis|year=2021|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=654|pages=A56|doi=10.1051/0004-6361/202141781|bibcode=2021A&A...654A..56V|s2cid=239104699}}</ref> |
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<ref name="Ferrais2020">{{cite journal|last=Ferrais|first=M.|last2=Vernazza|first2=P.|last3=Jorda|first3=L.|last4=Rambaux|first4=N.|display-authors=3|url=https://authors.library.caltech.edu/104135/1/aa38100-20.pdf|format=PDF|title=Asteroid (16) Psyche's primordial shape: A possible Jacobi ellipsoid?|year=2020|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=638 |page=L15|doi=10.1051/0004-6361/202038100|bibcode=2020A&A...638L..15F|s2cid=225802158|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210427201553/https://authors.library.caltech.edu/104135/1/aa38100-20.pdf|archivedate=2021-04-27|url-status=live}}</ref> |
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<ref name="Shepard2017">{{cite journal|last=Shepard|first=Michael K.|last2=Richardson|first2=James|last3=Taylor|first3=Patrick A.|last4 Rodriguez-Ford|first4=Linda A.|display-authors=3|title=Radar observations and shape model of asteroid 16 Psyche|year=2017|journal=Icarus|volume=281|pages=388–403|doi=10.1016/j.icarus.2016.08.011|bibcode=2017Icar..281..388S}}</ref> |
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<ref name="Shepard2021">{{cite journal|last=Shepard|first=Michael K.|last2=De Kleer|first2=Katherine|last3=Cambioni|first3=Saverio|last4=Taylor|first4=Patrick A.|display-authors=3|title=Asteroid 16 Psyche: Shape, Features, and Global Map|year=2021|journal=The Planetary Science Journal|volume=2|issue=4|page=125|doi=10.3847/PSJ/abfdba |bibcode=2021PSJ.....2..125S|s2cid=235918955|arxiv=2110.03635}}</ref> |
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<ref name="Elkins-Tanton2020">{{cite journal|last=Elkins-Tanton|first=L. T.|last2=Asphaug|first2=E.|last3=Bell|first3=J. F.|last4=Bercovici|fiirst4=H.|display-authors=3|title=Observations, meteorites, and models: A preflight assessment of the composition and formation of (16) Psyche|year=2020|journal=Journal of Geophysical Research: Planets|volume=125 |issue=3|pages=23|doi=10.1029/2019JE006296|pmid=32714727 |pmc=7375145|bibcode=2020JGRE..12506296E|s2cid=214018872}}</ref> |
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<ref name="PDS-Taxonomy">{{cite web|url=https://sbn.psi.edu/pds/asteroid/EAR_A_5_DDR_TAXONOMY_V6_0/data/taxonomy10.lbl|title=EAR-A-5-DDR Taxonomy|edition=v 6.0|website=Planetary Data System|accessdate=2023-12-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20151217090549/http://sbn.psi.edu/pds/asteroid/EAR_A_5_DDR_TAXONOMY_V6_0/data/taxonomy10.lbl|archivedate=2015-12-17}}</ref> |
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<ref name="Bell2015">{{cite book|last=Bell |first=J. F.|display-authors=etal|editor=Richard P. Binzel|editor2=Tom Gehrels |editor3=Mildred Shapley Matthews |title=Asteroids: The Big Picture in Asteroids II|year=2015|publisher=University of Arizona Press|isbn=978-0-8165-1123-5|pages=921–948}}</ref> |
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<ref name="JPL20221028">{{cite web|url=https://www.jpl.nasa.gov/news/nasa-continues-psyche-asteroid-mission |title=NASA Continues Psyche Asteroid Mission|work=Jet Propulsion Laboratory|publisher=NASA|date=2022-10-28|accessdate=2023-12-17}}</ref> |
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<ref name="NASA20230928">{{cite web|last=Wall|first=Mike|url=https://blogs.nasa.gov/psyche/2023/09/28/nasas-psyche-mission-targeting-oct-12-for-launch|title=NASA's Psyche Mission Targeting Oct. 12 for Launch|publisher=NASA|date=2023-09-28|accessdate=2023-12-17}}</ref> |
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<ref name="DataSets">{{cite web|url=https://sbn.psi.edu/pds/resource/occ.html|title=Asteroid Data Sets|website=sbn.psi.edu|publisher=NASA / Planetary Science Institute|accessdate=2023-12-17}}</ref> |
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<ref name="Hanuš2017">{{cite journal|last=Hanuš|first=J.|last2=Viikinkoski|first2=M.|last3=Marchis|first3=F.|last4=Ďurech|first4=J.|display-authors=3|url=https://www.aanda.org/articles/aa/pdf/2017/05/aa29956-16.pdf|format=PDF|title=Volumes and bulk densities of forty asteroids from ADAM shape modeling|year=2017|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=601|issue=A114|pages=1–41|doi=10.1051/0004-6361/201629956|bibcode=2017A&A...601A.114H|s2cid=119432730|arxiv=1702.01996}}</ref> |
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<ref name="Viikinkoski2018">{{cite journal|last=Viikinkoski|first=M.|last2=Vernazza|first2=P.|last3=Hanuš|first3=J.|last4=le Coroller|first4=H.|display-authors=3|url=https://www.aanda.org/articles/aa/pdf/2018/11/aa34091-18.pdf|format=PDF|title=(16) Psyche: A mesosiderite-like asteroid?|year=2018|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=619|number=L3|pages=L3|doi=10.1051/0004-6361/201834091|bibcode=2018DPS....5040408M|s2cid=54075141|arxiv=1810.02771}}</ref> |
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<ref name="Siltala2021">{{cite journal|last=Siltala|first=L. |last2=Granvik|first2=M.|title=Mass and density of Asteroid (16) Psyche|year=2021|journal=Astrophysical Journal Letters|volume=909|issue=1|pages=5|doi=10.3847/2041-8213/abe948|arxiv=2103.01707|bibcode=2021ApJ...909L..14S|s2cid=232092983}}</ref> |
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<ref name="Kaasalainen2002">{{cite journal|last=Kaasalainen|first=M.|last2=Torppa|first2=J.|last3=Piironen|first3=J.|url=http://www.rni.helsinki.fi/~mjk/IcarPIII.pdf|format=PDF|title=Models of twenty asteroids from photometric data|year=2002|journal=Icarus|volume=159|issue=2|page=369|doi=10.1006/icar.2002.6907|bibcode=2002Icar..159..369K|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080216072340/http://www.rni.helsinki.fi/~mjk/IcarPIII.pdf|archivedate=2008-02-16}}</ref> |
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<ref name="Drummond2018">{{cite journal|last=Drummond|first=J. D.|last2=Merline|first2=William J.|last3=Carry|first3=Benoit|last4=Conrad|first4=Al|display-authors=3|title=The triaxial ellipsoid size, density, and rotational pole of asteroid (16) Psyche from Keck and Gemini AO observations 2004-2015.|year=2018|journal=Icarus|volume=305|pages=174–185|doi=10.1016/j.icarus.2018.01.010|bibcode=2018Icar..305..174D}}</ref> |
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<ref name="NYT20170106">{{cite news|last=Chang|first=Kenneth|url=https://www.nytimes.com/2017/01/06/science/nasa-psyche-asteroid.html |
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== 関連項目 == |
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2023年12月26日 (火) 00:46時点における版
プシケ 16 Psyche | |||||||
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分類 | 小惑星 | ||||||
軌道の種類 | 小惑星帯[1] | ||||||
発見 | |||||||
発見日 | 1852年3月17日[1] | ||||||
発見者 | A. デ・ガスパリス[1] | ||||||
発見場所 | カポディモンテ天文台 ( イタリア・ナポリ) | ||||||
軌道要素と性質 元期:TDB 2,460,200.5(2023年9月13.0日)[1] | |||||||
軌道長半径 (a) | 2.924 au[1] | ||||||
近日点距離 (q) | 2.531 au[1] | ||||||
遠日点距離 (Q) | 3.316 au[1] | ||||||
離心率 (e) | 0.134[1] | ||||||
公転周期 (P) | 1,825.951 日[1] (4.999 年) | ||||||
軌道傾斜角 (i) | 3.097°[1] | ||||||
近日点引数 (ω) | 229.410°[1] | ||||||
昇交点黄経 (Ω) | 150.027°[1] | ||||||
平均近点角 (M) | 243.155°[1] | ||||||
物理的性質 | |||||||
三軸径 | c/a比:0.59 ± 0.02[2] (278 ± 5 × 232 ± 6 × 164 ± 4) km[3] 277 km × 238 km × 168 km[3] (最適楕円体フィット) 279 × 232 × 189 km (± 10%)[4] (278+4 −8 × 238+4 −6 × 171+1 −5) km[5] | ||||||
平均直径 | 223 ± 3 km[2] 222 ± 4 km[3] 222+1 −4 km[5] | ||||||
表面積 | (1.62 ± 0.05)×105 km2[5] | ||||||
体積 | (5.75 ± 0.19)×106 km3[5] | ||||||
質量 | (2.29 ± 0.14)×1019 kg[6] | ||||||
平均密度 | 3.89 ± 0.53 g/cm3[2] 3.977 ± 0.253 g/cm3[注 1] 4.10 ± 0.61 g/cm3[3] | ||||||
表面重力 | ~0.144 m/s2[4] | ||||||
脱出速度 | ~180 m/s[4] | ||||||
自転周期 | 4.195948 ± 0.000001 時間[4][5] | ||||||
スペクトル分類 | M(トーレンの分類)[1] X(SMASS分類)[1] Xk(Bus–DeMeo分類)[7] | ||||||
絶対等級 (H) | 6.21[1] | ||||||
アルベド(反射能) | 0.15 ± 0.03[3] 0.34 ± 0.08(レーダー観測より)[5] | ||||||
表面温度 |
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色指数 (B-V) | 0.729[1] | ||||||
色指数 (U-B) | 0.299[1] | ||||||
■Template (■ノート ■解説) ■Project |
(16) プシケ[8] (英語: 16 Psyche、ラテン語読み)、もしくは サイキ[9] (英語発音 /ˈsaɪkiː/ から)は、太陽系の小惑星帯(メインベルト)内を公転している小惑星のひとつである。1852年3月17日にイタリアの天文学者であったアンニーバレ・デ・ガスパリスによって発見された大型のM型小惑星であり、ギリシア神話に登場する女神プシューケーに因んで命名された[10]。接頭辞の (16) は小惑星番号であり、16番目に発見された小惑星であることを意味する。プシケは既知のM型小惑星の中で最大かつ最も質量が大きく、最も質量が大きい小惑星の上位10個の1つである。平均直径は約 220 km で、小惑星帯の全質量の約 1% を占めている。プシケは太陽系形成時の原始惑星の核が露出した天体であるという仮説が歴史的に立てられていたが[11]、最近の多くの研究ではその可能性はほぼ否定されている[2][5][6]。プシケは、2023年10月13日に打ち上げられ、2029年に到着予定[12]である同一表記の宇宙探査機サイキによって探査が行われる予定で、金属を多く含んだM型小惑星としては初めて接近探査が行われる小惑星となる[13]。
特徴
大きさ
最初の推定されたプシケの大きさは 253 km で、IRASの熱赤外線放射観測から得られた値であった[1]。これは現在知られている大きさの平均値より 15% 大きいが、この測定時はプシケが自転軸をほぼ地球に向けている状態で観測されていたため、このときの地球に向けていた面の大きさの推定値がIRASによる観測から求められていたことが後に判明した[4][14]。
2004年[4]と2010年[15][16]、2014年[15]、2019年[17]に発生したプシケによる恒星の掩蔽観測では、異なる地点における観測結果から示される複数の弦のデータセットを生成させることに成功しており、補償光学イメージングと3次元モデリングとともにプシケの平均直径の推定に使用されてきた。最近のモデルでは全て、等価体積における平均直径は 222 ± 3 km 程度に収束している[3][5][18][19][20]。
バルク密度と質量
プシケは、明確に観測できるほどその重力によって他の小惑星の軌道を変化させることができる質量を持っており、これを質量の推定値の計算に用いることができる。プシケの質量として歴史的に用いられてきた値は、1.6×1019 kg から 6.7×1019 kg までの範囲であった[6]。しかし、最も最近の推定値では (2.287 ± 0.070)×1019 kg という値の周辺に収束してきている[6][21]。平均体積を (5.75 ± 0.19)×106 km3 であると仮定すると計算されるバルク密度 (Bulk density) は 3.977 ± 0.253 g/cm3 となり、ほとんどの太陽系小天体が持つ密度よりもかなり大きな値が算出される[2][6][21]。2020年には、4 g/cm3 を超えるとする研究結果も公表されている[3]。
形状と自転軸
最初に公開されたプシケ3次元形状モデルは、多数の光度曲線分析から導き出されたものであった[22]。それ以来、光度曲線の反転や補償光学観測、レーダー観測、サーマルイメージング (Thermal imaging)、掩蔽観測に基づいて、プシケの形状に対する更なる観測結果の改良が行われてきた[2][3][4][5][18][19][23]。最新のモデルでは、プシケの形状はヤコビ楕円体と一致しており、三方向の寸法が 278 km x 238 km x 171 km の前後数 km 以内であることが示されている[2][3][4][19]。
各形状モデルにおいては、北極が向いている方向(自転軸)の推定値も示されている。最近のモデルではすべて、プシケは黄道座標における黄経35度、黄緯-8度周辺を指している自転軸を中心に自転することが示唆されており、その不確実性は3度となっている[3][4][5][18][19][23]。これは、プシケが基本的に黄道面に向けた状態で傾いており、その赤道傾斜角が98度となっていることを意味している。
地形
プシケはその地表において多くの地形が報告されている。その中で最も大きいのは、形状に最も適合する名目上の楕円体 (nominal ellipsoid shape) に比べて質量が不足している領域であり、(4) ベスタの地表に存在しているレアシルヴィア盆地と類似している[3][4][5][19]。
この大規模な質量減少地域に加えて、プシケの表面にはいくつかの明確な衝突クレーターの存在が報告されている。超大型望遠鏡VLTに搭載されている補償光学観測機器SPHEREを用いて観測を行った研究者らは、プシケの表面に直径が90 km 程度の2つの大型クレーターが存在していると報告した。これらの地形は暫定的に、アプレイウスのラテン語小説『黄金の驢馬』に登場する双子の魔女に因んで Meroe と Pantia と命名された[19][24]。アレシボ望遠鏡を用いて観測を行った研究者らは、南極付近、南中緯度地域、および北極付近にクレーター状の地形が存在していることを報告しており、それぞれのクレーターは Delta、Eros、Foxtrot と呼称されている[4][5]。いくつかの独立した形状モデルから示されるプシケの地形を分析した結果では、Pantia と Eros はほぼ確実にクレーターとして存在しており、Foxtrot も実在する可能性が高いことが示唆されている。しかし、Delta と Meroe についてはクレーターであると完全に認めるには不確実性が残されている[5]。
初期の光度曲線研究では、プシケの表面の明るさには大きなばらつきがあることが示唆されていた[25]。この明るさの変動は、光度曲線を反転させて形状モデルを生成させる試みが行われたことでさらに明白になった[4][22]。光度曲線反転に基づいた最新の形状モデルでは、表面のアルベドの変動を同時に示すことにも成功しており、結果として得られるプシケ表面の地図には、局所的にアルベドが全体平均とは 20% 以上も異なる領域が示されている。特に、Meroe は平均よりも 8% も暗い地域となっており、Pantia は平均よりも 7% 明るい地域となっている[19]。
アレシボ望遠鏡によるレーダー観測により、プシケのレーダーアルベドのバックグラウンド値は = 0.27 ± 0.03 となっており、(21) ルテティアなどの他のM型小惑星と同等の値が示されている[5]。この値は、金属相が豊富なケイ酸塩(岩石質)から成るレゴリスと一致している[26]。しかし、プシケの表面にはレーダーアルベドがこの値のほぼ2倍を示す地域が少なくとも3ヵ所あり、これらの地域には金属相が高濃度で存在していることを示唆している[5]。これらの地域のうち1つは光学的に明るいことが知られている Pantia に対応する領域に存在しており、他の2つも光学的に明るいと報告されている領域に存在している[3][5][19]。プシケの光学的アルベドとレーダーアルベドの間に見られるこの明らかな相関関係は、金属含有量の高い領域とより明るい地形を作り出すプロセスとの間に関連があるという仮説に繋がっている[5]。
組成
これまでに知られているプシケのかさ密度(3.9 ± 0.3 g/cm3 前後)の値はプシケ全体を構成する組成の種類や割合に制約を課すことができる。ほとんどの鉄隕石に含まれる鉄やニッケルのかさ密度は 7.9 g/cm3 となっている。プシケが初期の微惑星の核部分が残された天体とする場合、全体のおよそ 50% が空洞になっている必要があるが、プシケの大きさを考えると、これはとてもあり得そうにないと考えられている[6]。しかし、エンスタタイト・コンドライトやBencubbinite、メソシデライトを含む、金属を多く含んだ他の種類の隕石はプシケに組成が似ている可能性が示唆されており、それぞれがプシケと同様のかさ密度を持っている[6][19][27]。
何人かの研究者らは、プシケの表面にケイ酸塩鉱物が存在していると報告している[28][29][30]。マウナケア天文台にあるNASA赤外線望遠鏡施設で2016年10月に撮影されたプシケのスペクトルからは、水和ケイ酸塩の存在を示唆する可能性のある小惑星にみられるヒドロキシ基イオンの証拠(波長が約 3 μm の領域を吸収)が示された[31]。プシケは水が存在しない乾燥した条件下で形成されたと考えられているため、ヒドロキシ基はより小さな炭素質小惑星が過去にプシケへ衝突したことを介してプシケにもたらされた可能性がある[26][31]。
プシケのレーダーアルベドの値は表面上で大きく異なっていて、その範囲は 0.22 ~ 0.52 に及んでおり[5]、これは小惑星帯に存在している小惑星の2倍から4倍となっている[32]。レーダー反射のモデルでは、この範囲の値だとレゴリスのかさ密度である 2.6 ~ 4.7 g/cm3 に相当する[26]。この範囲は、上記の金属が豊富なほとんどの種類の隕石およびケイ酸塩鉱物の分光観測から検出される値と一致しており、内部がとても多孔的でない限り、純粋な鉄やニッケルで出来たレゴリスとは矛盾している。
起源
プシケの起源にはいくつかの仮説が提唱されている。その中で最も初期のものは、プシケは元々の直径が約 500 km と現在よりも大型で内部が分化した母天体に地殻とマントルを剥ぎ取らせるような天体衝突が発生し、それによって中心部の金属核が露出して残されたものであるという説だった[11]。この仮説の別の解釈には、1回の大規模な天体衝突の結果でこうなったのではなく、同等またはそれ以上の大きさの天体と比較的遅い速度で横滑りするような形での衝突が複数回(3回以上)起きた結果であるという見解も含まれている[33]。しかし、質量と密度の推定値が、衝突の結果として残される核の予想値と一致しないため、この理論は最近では受け入れられなくなってきている[6]。
2つ目の仮説は、プシケが天体衝突で破壊された際に、重力によって金属とケイ酸塩の混合物が再度降着して現在のプシケとなったというものである[34]。この場合、プシケは石鉄隕石の一種であるメソシデライトの母体である天体の候補となる可能性がある[34]。
3つ目の仮説は、プシケは(1) ケレスや(4) ベスタのように内部が分化された天体である可能性があるが、高温だった形成時からまだ冷却している間に「鉄の火山活動 (ferrovolcanism)」としても知られる、鉄などがマグマとして噴出されるという一種の火山活動を経験したというものである[35] 。これが事実であれば、このモデルではかつての火山の中心部を含む地域でのみ金属が高度に濃縮されていると予測している。この見解は、最近のレーダー観測の結果によっても裏付けられている[5]。
探査
プシケを訪れた宇宙探査機は現時点で存在しないが、2014年にプシケへの探査ミッションがNASAへ提案された[36][37]。アリゾナ州立大学の地球宇宙探査学校 (the School for Earth and Space Exploration) の校長を務める Lindy Elkins-Tanton が率いるチームは[38]、サイキ計画のコンセプトを発表した。この研究チームは、プシケがこれまでに発見されている唯一の金属核のような特性を持つ天体であるため、研究対象として貴重であると主張した[37]。
この探査機はプシケの周囲を約20ヶ月間に渡って周回し[36]、プシケの地形や表面の特徴、重力、磁気、その他の特性を研究し、現在の技術に基づいて計画にかかる高いコストと全く新しい技術開発の必要性を避ける取り組みを行う予定である。2015年9月30日、サイキ計画は次期ディスカバリー計画で実施される探査プログラムの最終候補5件のうちの1件に選定された[39]。
サイキ計画は2017年1月4日にNASAによって正式に承認され、当初は2023年10月に打ち上げられ、2024年に地球をスイングバイ、2025年に火星をフライバイした後に、2030年にサイキに到着する予定であった[40]。しかし2017年5月、より効率的な軌道でプシケへ向かうことを目標とするために打ち上げ日が繰り上げられ、2022年に打ち上げ、2023年に火星をスイングバイした上で2026年にプシケに到着する予定になった[41]。しかし、サイキの飛行ソフトウェアに問題があったため、2023年1月にNASAはサイキの打ち上げと運用のスケジュールを当初の予定に戻すと発表した[42]。
2020年2月28日、NASAはスペースX社に対して、ファルコンヘビーロケットでサイキと、二次ミッションの為の2つの小型衛星を打ち上げるための1億1700万アメリカドルの契約を締結したと発表した[43]。サイキは2023年10月13日14時20分(協定世界時)に打ち上げに成功し[13]、2029年にプシケに到着する予定となっている[12]。
記号
天文学者らは七曜に属する天体の古い表記と一致する一種の速記記号として、最初に発見された15個の小惑星に対して、それぞれ自身のことを示す記号を作成した。プシケには、その後に発見された他のいくつかの小惑星と同様に特徴的な記号が与えられた。ギリシャ語で蝶は魂の象徴であったため、プシケの記号は蝶の羽の上に星( または )を付けたものだった(Psyche にはギリシャ語で「蝶」と「魂」の両方の意味がある)[44]。
しかし、全ての小惑星の記号は、プシケの記号が広く用いられる前に置き換えられることになる。十数個以上の小惑星が発見されるようになると、個々の記号をすべて覚えることが面倒がられるようになり、1851年にドイツの天文学者であったヨハン・フランツ・エンケは、代わりに小惑星番号の数字を丸で囲った記号を使用することを提案し、これに則るとプシケの記号は ⑯ となる。この新しい体系に則って指定された最初の小惑星がプシケであり、アメリカの天文学者であったジェイムズ・ファーガソンが1852年にプシケの観察結果を発表した際に用いられた[45]。
脚注
注釈
出典
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関連項目
外部リンク
- 16 Psycheの軌道(NASA・HPより 英語版)
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