鼠食文化
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鼠食文化(そしょくぶんか)は、ネズミの肉を食べる習慣である。一部の文化では病気の恐れや宗教上の理由でタブーである一方で、主食としている文化もある[1][2]。イスラム教とユダヤ教ではネズミの肉を食べることは禁じられている[3]。
地域別
[編集]アフリカ
[編集]東アフリカのマラウイでは、トウモロコシ畑でノネズミを狩って食用とする。棒に刺して調理したり、塩漬けにしたり乾燥させたりして食べられ、市場や道端の屋台では人気ある珍味となっている[4]。アフリカアシネズミが分布するサハラ以南のアフリカには、アフリカアシネズミを食べる習慣がある[5]。
南北アメリカ
[編集]「ラット・シチュー」はウェストバージニア州の特産品であり[6]、これは車両に轢かれた動物を料理する料理法であるロードキル料理の一種でもある[7]。
ペルーのシピボ族とボリビアのシリオノ族においては、ネズミを食べることは文化的なタブーとされている[8][9]。
アジア
[編集]一部の文化では、ネズミの肉は、特定の社会的または経済的階級に受け入れられる形態の食物として制限されている。インドのミシュミ族の女性は、魚、豚肉、野鳥、そしてネズミ以外の肉を食べることはできないため、ミシュミ族にとってネズミの肉は重要な食料となっている[10]。また、北インドの不可触民(ムサハール)のコミュニティは、エキゾチックな珍味としてネズミの飼育を商業化している[11]。
アゼネズミの肉は、ベトナム[12][13][14][15][信頼性要検証]、台湾[16][17][18]、フィリピン、カンボジア[14]、中国で食べられている。ラット・オン・ア・スティックは、ベトナムとカンボジアで消費されているネズミのロースト料理である[19]。
ベトナム南部の3省における野生生物取引に関する2020年の調査では、調査を受けたレストランで販売されていたノネズミの55%が新型コロナウイルスを保有していたことが判明した[20]。
ヨーロッパ
[編集]ネズミのパイはイングランド北部の伝統的な料理である[21]。ヴィクトリア朝イギリスにおいては、鼠肉は極端に貧しい労働者階級の食糧源となった他、金持ちの間でも珍味とされていた[21]。第二次世界大戦期には、イギリスの生物学者らが実験用ラットをクリーム状にして食べていた[22]。
ボルドー風のネズミのグリルのレシピでは、ワインセラーに生息する体内のアルコール濃度が高いネズミを使用し、皮を剥がし内臓を取り除いた上で、オリーブオイルと潰したエシャロットを使った濃厚なソースを塗り、壊れたワイン樽の火の上で焼く[23][24][25][26][27]。
スペインのバレンシアでは、ビセンテ・ブラスコ・イバニェスが小説『蘆と泥』中でアゼネズミの肉を絶賛している。ヌマネズミ (Marsh rat) は、ウナギや地元の豆と並んで、伝統的なパエリアの主要な材料のひとつであった(後にウサギの肉、鶏肉、そしてシーフードが主流となった)[28]。
ポリネシア
[編集]ハワイとポリネシアの伝統的な文化では、ネズミは庶民の日常的な食べ物であった。イースター島では、祝宴で庶民はネズミの肉を食べることができたが、王は島民たちの信仰であるタプと呼ばれる「神聖な状態」にあったため、食べることは許されていなかった[29]。
ハワイにある外部文化との接触前の考古学的遺跡を研究する際、考古学者たちは、一般的な家庭のネズミの残骸の量が富裕層家庭の3倍にのぼることに気付いた。全ての遺跡で見つかったネズミの骨は断片化され、焼かれ、炭で覆われていたことから、ネズミが食物として食べられていたことが判明した。一般的な家庭に比べて富裕層の家庭でネズミが食用にされることが少なかったのは、外部文化との接触前のハワイの富裕層が、社会的地位や好みの問題としてネズミを食べることを好まなかったためかもしれない[30]。
ペットにおける鼠食
[編集]野生であるかペットであるかにかかわらず、ネズミはヘビの一般的な食料である。たとえば、成体のネズミヘビとボールニシキヘビは、飼育下では主にネズミを餌としている。餌となるネズミは、ペットショップや爬虫類動物園だけでなく、ヘビをペットとして飼っている人も、業者から生きたまままたは冷凍された状態で購入することができる。
なお、イギリスでは、2006年に施行された動物福祉法で「餌は、捕食者の健康のために絶対に必要な場合を除いて、給餌前に殺されることを法的に要求されう」[31][32]と定められた。この規則は、主に英国動物虐待防止協会の圧力と、「生きた動物の給餌は残酷である」と言う人々の声を受けて施行された。
脚注
[編集]- ^ Newvision Archive (2005年3月10日). “Rats for dinner, a delicacy to some, a taboo to many”. Newvision.co.ug. 2012年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月24日閲覧。
- ^ “Rat meat taboo”. 2012年9月24日閲覧。
- ^ イスラム圏向け食品 ―食べてよい物と悪い物― (公社)日本技術士会登録 食品産業関連技術懇話会 林技術士事務所 E&H-i 代表 林 英 一
- ^ “Mice, anyone? They make tasty meal in Malawi”. NBC. (2009年8月10日) 2021年8月14日閲覧。
- ^ Gruber, Karl (2015年12月7日). “While rats are met with revulsion in most parts of the world, some communities put rodents pride of place on the dinner menu”. BBC 2021年8月14日閲覧。
- ^ Worrall, Simon (2015年12月20日). “What's Best, Worst, and Most Weird About American Food”. News.nationalgeographic.com. 2016年1月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。 “Rat stew was born out of lean times as a result of the collapse of the mining industry”
- ^ Pollack, Hilary (2016年1月2日). “America's Most Beloved Regional Dishes Have Dark and Fascinating Histories | MUNCHIES”. Vice. 2016年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。 “There were other [people] who actually celebrated the eating of rat as a culinary cultural inheritance, to the point where in Marlinton, West Virginia, for instance, they hold this annual roadkill cookoff in order to celebrate the eating of roadkill in West Virginia. When I visited the annual roadkill cookoff in Marlington, there were two folks preparing rat dishes.”
- ^ Behrens, Clifford A. (September 1986) Shipibo Food Categorization and Preference: Relationships between Indigenous and Western Dietary Concepts. American Anthropologist, Nathan New Series, Vol. 88, No. 3. pp. 647–658.
- ^ Priest, Perry N. (October 1966) Provision for the Aged among the Sirionó Indians of Bolivia. American Anthropologist, New Series, Vol. 68, No. 5. pp. 1245–1247
- ^ Mills, J. P. (1952). “The Mishmis of the Lohit Valley, Assam”. The Journal of the Royal Anthropological Institute of Great Britain and Ireland 82 (1): 1–12. doi:10.2307/2844036. JSTOR 2844036.
- ^ Musahar Hindus commercialise rat farming Archived February 21, 2009, at the Wayback Machine.
- ^ “Rats Back on the Menu in Vietnam”. Abcnews.go.com (2006年1月6日). 2015年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。
- ^ “Vietnamese eat rats and are aggressive, Stanford professor says in article, triggering online uproar”. Mercurynews.com (February 2013). 2015年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。
- ^ a b Sou Vuthy (2012年9月12日). “Rat meat on the menu at the Vietnam border, Lifestyle, Phnom Penh Post”. Phnompenhpost.com. 2015年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。
- ^ “Would You Ever Eat a Rat? VIDEO : Dining with Death”. TravelChannel.com. 2014年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。
- ^ Jennings, Ralph (28 January 2008). “No ratatouille on Taiwan menu, but plenty of rat”. Reuters (CHIAYI, Taiwan). オリジナルの9 February 2011時点におけるアーカイブ。 3 September 2016閲覧。
- ^ HUANG, ANNIE (10 February 2002). “Eat, Drink, Man, Rodent”. The Item (CHIAYU, Taiwan) 107 (118): p. 10A 3 September 2016閲覧。
- ^ William Campbell (1915年). “Sketches from Formosa”. p. 131. 2020年12月27日閲覧。 “XXII BREAKFASTING ON RATS”
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- ^ https://www.nytimes.com/2020/06/19/science/coronavirus-rats-vietnam.html
- ^ a b Matt Elton (25 February 2016). “What was the best meal in history? - Boiled rats in a pie”. BBC History. 16 March 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月10日閲覧。
- ^ Jared M. Diamond (January 2006). Collapse: How Societies Choose to Fail Or Succeed. Penguin. pp. 105–. ISBN 978-0-14-303655-5 . "creamed rat."
- ^ Calvin W. Schwabe (1979). Unmentionable Cuisine. University of Virginia Press. pp. 204–. ISBN 978-0-8139-1162-5. オリジナルの2016-09-11時点におけるアーカイブ。
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- ^ “Cooking Rats and Mice”. 2016年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月6日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 2016年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月23日閲覧。
- ^ “Grilled Rats and Other Weird Halloween Recipes”. 2016年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月6日閲覧。
- ^ Manuel Vázquez Montalbán, La cocina de los mediterráneos, Ediciones B – Mexico
- ^ Leach, Helen. (February 2003) Did East Polynesians Have a Concept of Luxury Foods? World Archaeology, Vol. 34, No. 3, Luxury Foods. pp. 442–457.
- ^ Kirch, Patrick V.; Sharyn Jones, O'Day (2003). “New Archaeological Insights into Food and Status: A Case Study from Pre-Contact Hawaii.”. World Archaeology 34 (3): 484–497. doi:10.1080/0043824021000026468.
- ^ “Live-Feeding Prey to Captive Predators”. faunalytics.org (2014年10月17日). 2021年8月14日閲覧。
- ^ “Animal Welfare Act 2006”. lesgislation.gov.uk. 2021年8月14日閲覧。