2009年J2最終節
2009年J2最終節(2009ねんJ2さいしゅうせつ)は2009年12月5日に行われた日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)ディビジョン2 (J2) 第51節を指す。本項では特に、J2優勝の可能性があったベガルタ仙台(仙台)、セレッソ大阪(C大阪)と、J1昇格の可能性があった湘南ベルマーレ(湘南)、ヴァンフォーレ甲府(甲府)の動向を中心に記す。
最終戦までの経緯
[編集]第48節まで
[編集]2009年は、J2のクラブ数が18になったことを受け、J1・J2入れ替え戦が廃止され、J1への昇格はJ2上位3チームの自動昇格方式となった最初のシーズンだった。
18チーム3回戦総当たりとなったこの年は、C大阪、仙台、湘南、甲府の4チームが序盤から抜け出し、対戦が一巡した第17節終了時点で4位甲府と5位水戸ホーリーホック(水戸)との勝ち点差が既に6ある[1]という「4強」状態となり、この4チームの間の順位が入れ替わりながらそのままシーズン終盤までもつれ込むことになった。
湘南は一時は首位に立つものの第28節から4連敗するなど調子を落としてじりじりと順位を下げ[2]、甲府は負けは少ないものの勝ちきれない試合も多く、第24節からの11試合で4勝4分3敗と波に乗りきれない[2]など、各チームとも中盤では勝ちきれない試合も多く混戦が続いたが、終盤にかけて第33節からの6戦を5勝1分けの無敗で一気に勝ち点を上積みした仙台[3]と第36節から無敗を続けるC大阪[3]がそれぞれ一歩抜け出す展開となった。
11月8日に開催された第48節、C大阪はホームでザスパ草津(草津)に5-0と大勝して[4]12戦無敗(9勝3分け)で勝ち点を101まで伸ばす。この時点でC大阪は甲府・湘南の勝ち点を下回る可能性がなくなり、J1昇格を自力で勝ち取った[5]。仙台は「自身が勝利し、甲府・湘南がともに引き分け以下であれば昇格確定」[5]という条件の中、アウェイにて4-0で水戸に勝利[4]。甲府がアビスパ福岡(福岡)に1-2で敗戦[4]、湘南が東京ヴェルディ(東京V)に2-2と引き分けた[4]ことで仙台の昇格も確定した。これにより、昇格残り1枠は甲府と湘南の争いになった。
第49節・第50節
[編集]迎えた第49節は、首位のC大阪と2位仙台が、勝ち点で並ぶ湘南と甲府がそれぞれ直接対決するという好カードとなり、共に満員の観衆を集めて行われた。11月21日に行われた甲府と湘南の試合は点を取り合う展開となり、終了間際の湘南MF坂本紘司のゴールで湘南が3-2で勝利。一方、その翌日に行われた首位攻防戦はこちらも終了間際に仙台DF朴柱成のゴールで仙台が1-0で勝利してついに首位浮上。いずれも試合も終了間際のゴールで決着するという劇的な展開となった。
2009年11月21日
17:03 |
ヴァンフォーレ甲府 | 2 - 3 | 湘南ベルマーレ |
---|---|---|
金信泳 25分 マラニョン 62分 |
公式記録 | 中村祐也 6分 臼井幸平 10分 坂本紘司 89分 |
この結果、4チームの順位は以下の通りとなり、かろうじて昇格の可能性を持っていた5位サガン鳥栖(鳥栖)の昇格が消滅した。
順位 | クラブ | 試合 | 勝点 | 勝利 | 引分 | 敗戦 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ベガルタ仙台 | 49 | 102 | 31 | 9 | 9 | +44 |
2 | セレッソ大阪 | 49 | 101 | 30 | 11 | 8 | +47 |
3 | 湘南ベルマーレ | 49 | 94 | 28 | 10 | 11 | +31 |
4 | ヴァンフォーレ甲府 | 49 | 91 | 26 | 13 | 10 | +29 |
続く第50節、この節でJ2優勝が確定する可能性のあった仙台[7]だが、仙台は11月29日にアウェーで徳島ヴォルティス(徳島)相手に4-0で大勝した[8]ものの、C大阪がその前日にホームでFC岐阜相手に2-1で勝利しており[8]、優勝決定は最終節まで持ち越しとなった。一方、第50節で昇格を確定できる可能性のあった湘南[7]だが、11月28日に甲府がファジアーノ岡山(岡山)相手に勝利を収めた[8]ことで昇格確定は持ち越しとなり、湘南自身もザスパ草津(草津)相手にスコアレスドローを喫し[8]、両者の勝ち点差は1に縮まって最終節を迎えることとなった。
順位 | クラブ | 試合 | 勝点 | 勝利 | 引分 | 敗戦 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ベガルタ仙台 | 50 | 105 | 32 | 9 | 9 | 86 | 38 | +48 |
2 | セレッソ大阪 | 50 | 104 | 31 | 11 | 8 | 99 | 51 | +48 |
3 | 湘南ベルマーレ | 50 | 95 | 28 | 11 | 11 | 81 | 50 | +31 |
4 | ヴァンフォーレ甲府 | 50 | 94 | 27 | 13 | 10 | 74 | 45 | +29 |
最終節
[編集]概要
[編集]各チームの対戦カードは以下のとおり。優勝争い・昇格争いに絡む4チームがそれぞれ別のスタジアムにおいて同時並行で試合を行うことになっていた。
- ベガルタ仙台 - 愛媛FC(ユアテックスタジアム仙台)
- サガン鳥栖 - セレッソ大阪(ベストアメニティスタジアム)
- 水戸ホーリーホック - 湘南ベルマーレ(ケーズデンキスタジアム水戸)
- ヴァンフォーレ甲府 - ロアッソ熊本(山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場)
左側がホームチーム、太字は優勝争いまたは昇格争いに関係するチーム。
仙台とC大阪の優勝争い、湘南と甲府の昇格争いはいずれも勝ち点差1の勝ち点勝負となっていた。
クラブ | ベガルタ仙台 | |||
---|---|---|---|---|
勝ち (108) | 分け (106) | 負け (105) | ||
セレッソ大阪 | 勝ち (107) | 仙台 | C大阪 | C大阪 |
分け (105) | 仙台 | 仙台 | C大阪 | |
負け (104) | 仙台 | 仙台 | 仙台 |
試合開始前の時点で得失点差が+48で同じであり、勝ち点で並んだ場合は得失点差が同じになることがないため、勝敗のみで勝負が決することが確定していた。
クラブ | 湘南ベルマーレ | |||
---|---|---|---|---|
勝ち (98) | 分け (96) | 負け (95) | ||
ヴァンフォーレ甲府 | 勝ち (97) | 湘南 | 甲府 | 甲府 |
分け (95) | 湘南 | 湘南 | 得失点差 | |
負け (94) | 湘南 | 湘南 | 湘南 |
勝ち点で並んだ場合は得失点差の勝負となるが、湘南の1点差負けなら湘南昇格、湘南が2点差負けで得失点差で並んでも、総得点で湘南が7上回っているため、甲府が逆転で昇格するにはまず勝つことが必須とも言える状況であった。
試合展開
[編集]各会場ともに12時33分キックオフ。小瀬では2分に甲府がFW金信泳のゴールで早々と先制する。鳥栖でも8分にC大阪がMF石神直哉から左サイドのMF乾貴士を経由して中央に飛び込んだMF船山祐二へとつなぎ、船山のゴールで先制点を挙げる[11]。
一方水戸では、湘南が20分にコーナーキックから水戸のMF中村英之に頭で合わされ先制を許すと、その1分後に水戸FW荒田智之に突破されると折り返しのパスに反応した森村昂太に追加点を許して序盤で水戸に2点のリードを許し、さらに25分には水戸FW荒田智之からのクロスをFW高崎寛之があわせて決定的な場面をつくられるなど、苦しい展開となってしまう[12]。この時点まで湘南は監督の反町康治曰く「ある意味パニック状態」[13]となっていたが、逆に選手にとってはMF田村雄三が試合後「2点を取られて逆に吹っ切れました」と語ったように[14]、昇格争いの緊張感から来る堅さがとれて動きが徐々に良くなってくる。
- 鳥栖 0 - 1 C大阪
- 水戸 2 - 0 湘南
- 甲府 1 - 0 熊本
小瀬では甲府が23分に左サイドからのクロスを待っていた金信泳により追加点を奪うが、28分に熊本のFW小森田友明に1点を返される。
水戸では湘南は30分、MF寺川能人のクロスにFW阿部吉朗が頭で合わせ、これをキーパーが弾いたこぼれ球に反応したFW田原豊が押し込み1点を返すと、その4分後の左コーナー近くからのフリーキックに再び阿部が頭で合わせゴール[15]。2点のビハインドを追いついて前半を2-2で折り返す。
優勝を争う2チームは、C大阪は先制点の後も再三攻め込み、前半だけで11本ものシュートを放つもののゴールを割ることは出来ず前半終了[11]。一方、仙台では「普段どおり」のサッカーを意識しすぎるあまり、かえっていつものダイナミックな展開は影を潜め、攻勢がなかなか決定的なチャンスへと結びつかない展開が繰り返され、両チーム無得点のまま前半を終える[16]。
- 仙台 0 - 0 愛媛
- 鳥栖 0 - 1 C大阪
- 水戸 2 - 2 湘南
- 甲府 2 - 1 熊本
順位 | クラブ | 試合 | 勝点 | 勝利 | 引分 | 敗戦 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | セレッソ大阪 | 51 | 107 | 32 | 11 | 8 | +49 |
2 | ベガルタ仙台 | 51 | 106 | 32 | 10 | 9 | +48 |
3 | ヴァンフォーレ甲府 | 51 | 97 | 28 | 13 | 10 | +30 |
4 | 湘南ベルマーレ | 51 | 96 | 28 | 12 | 11 | +31 |
ハーフタイムで、甲府監督の安間貴義は「こういう状況でも(点数を伝えてもいつも通り)出来ると思って」湘南戦の得点の動向を選手に伝え[17]、逆に湘南監督の反町康治は「前半で追いついたのですから、ハーフタイムには甲府の結果を我々は知っていましたが、教える気はありませんでした。この試合を勝つんだということを話しました」[13]と、対照的な対応をしていた。
後半8分、湘南はカウンターからチャンスを作る。田原を経由してボールを右サイド半ばで受け取ったMF坂本紘司のクロスに逆サイドでDFの裏を抜けた阿部が再び決めて、ついに2点ビハインドをひっくり返すことに成功[15]、昇格圏内の3位を取り戻すことに成功した。逆転を許した水戸も攻撃の手を緩めないが、後半20分過ぎから足の止まり始めた水戸に対して、湘南の組織的な守備が反撃を許さない[15]。
このころ、追加点がほしいC大阪だったが、後半は鳥栖の前線からのプレスを許す展開が続き、後半28分にC大阪の前線の起点となっていたMF乾貴士が立て続けに2回の警告をうけて退場になってしまうと、1人多い鳥栖の攻勢がさらに強まり、C大阪は防戦一方となってしまう[11]。逆に仙台では後半20分、MF梁勇基の右コーナーキックからDFエリゼウのヘッドで先制、この時点で再び仙台が首位に立つ[16]。
- 水戸 2 - 3 湘南
- 仙台 1 - 0 愛媛
順位 | クラブ | 試合 | 勝点 | 勝利 | 引分 | 敗戦 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ベガルタ仙台 | 51 | 108 | 33 | 9 | 9 | +49 |
2 | セレッソ大阪 | 51 | 107 | 32 | 11 | 8 | +49 |
3 | 湘南ベルマーレ | 51 | 98 | 29 | 11 | 11 | +32 |
4 | ヴァンフォーレ甲府 | 51 | 97 | 28 | 13 | 10 | +30 |
試合も終盤にさしかかり各会場とも膠着した展開が続き、このまま試合終了かと思われたが、首位攻防の2会場でロスタイムの展開が待っていた。
仙台では後半の愛媛のシステム変更に手を焼いていたDF陣が愛媛MF赤井秀一の突破を許し、赤井からのセンタリングを後半出場のFWジョジマールのヘディングシュートで同点に追いつかれてしまう[16]。同じころ、鳥栖では鳥栖MF野崎陽介からのパスを受けたMF高地系治がC大阪GKキム・ジンヒョンの股を抜いてゴール、同点に追いつく[11]。
- 仙台 1 - 1 愛媛
- 鳥栖 1 - 1 C大阪
この時点で試合終了すれば優勝は仙台なのだが、この時点でまだ仙台にはC大阪が同点に追いつかれた報は伝わっておらず、「勝ち越さなければ優勝を逃す」と考えていた仙台選手によるロスタイム残り時間の総攻撃も実らずそのまま試合終了。仙台の選手はピッチに倒れこみがっくりうなだれ、ユアスタは水を打ったかのような静寂に包まれた[16]。
一方、同点に追いつかれたC大阪だったが、仙台が引き分けて試合終了したため「再度勝ち越せばJ2優勝」となる状況だったが、数的不利を覆せず、逆にその2分後、再び鳥栖MF高地に勝ち越しゴールを許して試合終了。鳥栖はロスタイムに2点を奪い逆転する劇的勝利を収めた[11]。このゴールに喜びを爆発させた鳥栖ベンチおよび選手は、この試合を最後に退任が決まっていた岸野靖之監督になだれ込むように駆け寄り、岸野監督の脚を肉離れさせてしまうという珍事すら起こった。また、「ロスタイムが長すぎる」と執拗な抗議を行ったC大阪GKキム・ジンヒョンが退場処分を受けている。
仙台ではその報が試合終了からやや遅れて届いた。ユアテックスタジアム仙台(ユアスタ)の場内アナウンスで「C大阪敗れる」との報告がなされた瞬間、会場は大歓声に包まれた[16]。ピッチでうなだれていた選手も狐につままれるようではあったが笑顔を見せた。なお、この後に仙台のサポーターが鳥栖の栄誉をたたえるためにサガン鳥栖コールを行った。また対戦チームの愛媛のサポーターも試合終了後に行われたクラブ年間MVPの表彰式において、選出された梁勇基のサポーターコールである通称「梁ダンス」を仙台サポーターと一緒に踊るなど、優勝チームを祝った[18]。
水戸対湘南、甲府対熊本の試合はその後得点が動くことなくそのまま試合終了。湘南の勝利により、湘南の11年ぶりとなるJ1昇格が確定した。
- 仙台 1 - 1 愛媛
- 鳥栖 2 - 1 C大阪
- 水戸 2 - 3 湘南
- 甲府 2 - 1 熊本
順位 | クラブ | 試合 | 勝点 | 勝利 | 引分 | 敗戦 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ベガルタ仙台 | 51 | 106 | 32 | 10 | 9 | 87 | 39 | +48 |
2 | セレッソ大阪 | 51 | 104 | 31 | 11 | 9 | 100 | 53 | +47 |
3 | 湘南ベルマーレ | 51 | 98 | 29 | 11 | 11 | 84 | 52 | +32 |
4 | ヴァンフォーレ甲府 | 51 | 97 | 28 | 13 | 10 | 76 | 46 | +30 |
試合データ
[編集]※ 表記等は公式記録に基づく(この当時、後半ロスタイムの計時はすべて「89分」で統一されている)。
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出典
[編集]- ^ 2009Jリーグ ディビジョン2【第17節】順位表
- ^ a b 2009Jリーグ ディビジョン2 節別動向 【第51節】(2/3ページ)
- ^ a b 2009Jリーグ ディビジョン2 節別動向 【第51節】(3/3ページ)
- ^ a b c d 2009Jリーグ ディビジョン2 第48節 試合結果一覧 - Jリーグ公式サイト内
- ^ a b 【J1昇格への道:J2第48節】今節でC大阪、仙台の昇格はあるか? - J's GOAL2009年11月7日
- ^ 2009Jリーグ ディビジョン2 第49節 順位表 - Jリーグ公式サイト
- ^ a b 【J1昇格への道:J2第50節】今節優勝決定の可能性も! 3位争いは直接対決を制し、湘南が一歩リード - J's GOAL2009年11月25日
- ^ a b c d 2009Jリーグ ディビジョン2 第50節 試合結果一覧 - Jリーグ公式サイト内
- ^ 2009Jリーグ ディビジョン2 第50節 順位表 - Jリーグ公式サイト
- ^ a b 【J1昇格への道:J2第51節】湘南、甲府の昇格争い最終章。そして優勝は仙台かC大阪か!? - J's GOAL2009年12月2日
- ^ a b c d e 【J2:第51節 鳥栖 vs C大阪】レポート:『負けたらアカン』と最後まで岸野サッカーをやり遂げた鳥栖が、ロスタイムに2得点で逆転勝利。先制するも、乾の退場で鳥栖に勢いを増したC大阪は優勝を逃す。 - J's GOAL 2009年12月6日
- ^ 【J2:第51節 水戸 vs 湘南】水戸側レポート:敗れて悔いなし! 最後まで攻め続けた水戸。この姿を見たかった。 - J's GOAL 2009年12月6日
- ^ a b 【J2:第51節 水戸 vs 湘南】反町康治監督(湘南)記者会見コメント - J's GOAL 2009年12月5日
- ^ 【J2:第51節 水戸 vs 湘南】試合終了後の湘南選手コメント - J's GOAL 2009年12月5日
- ^ a b c 【J2:第51節 水戸 vs 湘南】湘南側レポート:11年ぶりの、あの場所へ - J's GOAL 2009年12月6日
- ^ a b c d e 【J2:第51節 仙台 vs 愛媛】レポート:終了間際の失点で一時は凍りついたユアスタ。しかし鳥栖からの知らせを受け一転沸騰。ハラハラな記憶と共に、仙台が初戴冠。
- ^ 【J2:第51節 甲府 vs 熊本】安間貴義監督(甲府)記者会見コメント - J's GOAL 2009年12月5日
- ^ [ J2:第51節 仙台 vs 愛媛 最終戦後セレモニー ] - J's GOAL 2009年12月5日
- ^ 2009Jリーグ ディビジョン2 第51節 順位表 - Jリーグ公式サイト