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JR貨物チキ5500形貨車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
JR貨物チキ5500形貨車
チキ5500-6、1994年1月15日、笠寺駅
チキ5500-6、1994年1月15日、笠寺駅
基本情報
車種 長物車
運用者 日本貨物鉄道
所有者 日鐵物流八幡
製造所 日本車輌製造
製造年 1992年(平成4年)
製造数 21[1][2]
常備駅 黒崎駅
主要諸元
車体色 緑黄
軌間 1,067 mm
全長 18,150 mm(チキ5500形)[3]
15,000 mm(チキ5400形、チキ5450形)[3]
全幅 2,570 mm
全高 3,215 mm
荷重 37
自重 17.0
換算両数 積車 4.0
換算両数 空車 1.6
台車 FT1-2
車輪径 860 mm
台車中心間距離 13,850 mm(チキ5500形)[3]
10,700 mm(チキ5400形、チキ5450形)[3]
最高速度 95 km/h
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JR貨物チキ5500形貨車(JRかもつチキ5500がたかしゃ)は、1992年(平成4年)度に製作された日本貨物鉄道(JR貨物)に在籍し、日鉄物流八幡所有する積載荷重 37 tロングレール輸送専用私有貨車長物車)である。本項目では本形式に組み込まれる車両であるチキ5400形チキ5450形についても記述する。

概要

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レール輸送は国鉄時代は事業用貨物として行われていたが、国鉄分割民営化後は通常貨物となったため、JR各社がレール輸送用として所有していたチキ5500形を、1992年度にJR貨物運用車の増備として新製されたものである。本形式3両1編成で50 mレールを輸送しており、レールセンターや各現場で200 m以上に溶接して使用していた[4]

各現場での溶接などの労力軽減やレール品質向上の観点から[4]、レールメーカーである新日鉄住金(当時)は2014年4月に世界最長となる150 mレール製造設備を整えた[5]。それに対応した輸送を行うにあたり、チキ5400形およびチキ5450形が新規設計され、チキ5500形の追加増備も行われている。

構造

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本形式と同等のFT1形台車(根室本線新富士駅、2005年6月26日)

台枠はコンテナ車と同様、側梁、枕梁、中梁、端梁、横梁などを溶接組立した構造である[4]

台車はコキ100系と同じFT1形を装備している。輪軸は車輪径860 、修正円弧踏面形状、軸受はコキ106形と同様のJT11Bを採用している[6]。前後牽引力はボルスタアンカーを介して行われる[6]。4位軸受の軸端には接地装置を取り付けている[7]

手ブレーキハンドルが車体側面に装備されており、ハンドルを操作することで後位台車の留置ブレーキが作用する[6]入換の際の突放作業が禁止されている。

ブレーキ装置は、最高速度が95 km/hであることから電磁自動空気ブレーキは省略され、応荷重式空気ブレーキである[6]。車体中央部にブレーキ制御装置が搭載され、制御弁からのブレーキ指令圧力は応荷重弁を経由して台車単位でブレーキシリンダ圧力が供給される[6]。供給空気ダメは1個(容量240 L)搭載する。コキ100系は2個(容量120 L×2)搭載であったが、艤装容易化のため個数削減を行った[6]

車体は黄緑色の塗装とされ、150 mレール用編成の場合は側面にレール積載本数に関する注意書きが追加されている[6]。また、側面に白文字で大きく「日鉄物流八幡(過去は日鐵運輸→日鐵物流八幡→日鐵住金物流八幡)」と記されている。

レール積み付け具は、50 mレール用の場合は3両編成の中間車にレール締結用積み付け具を2台とレールの動きを規制するレール滑り台を2台、両端車にレール滑り台を1両あたり4台搭載している[3][7]。150 mレール用の場合はレール拘束力がさらに必要であることから、9両編成の中間に位置するチキ5450形に搭載するレール滑り台の台数はそのままにレール締結用積み付け具は4台に増やされており、残り8両にレール滑り台を1両あたり3台(チキ5400形)もしくは4台(チキ5500形)搭載している[3][7]。レール積載本数は0本もしくは28本のみ対応する[7]

車両番号はJR貨物の新製形式の付番方式に則り、形式+ハイフン+車番(例として、チキ5500-3)になっている。

形式別概説

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チキ編成表[3]
150 mレール用 チキ5400 チキ5500 チキ5500 チキ5500 チキ5450 チキ5500 チキ5500 チキ5500 チキ5400
50 mレール用 チキ5500 チキ5500 チキ5500  

チキ5500形

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荷重37 t積レール輸送用車で1992年に6両(1-6)が登場した。

全長は18,150 mm[3]、全幅は2,570 mm、全高は3,215 mm、台車中心間距離は13,850 mm、自重は17.0 t、換算両数は積車4.0、空車1.6である。3車1連で50 m長のレールを積載するが、1両運用や従来のチキ5500との共通運用が可能である。

2011年(平成23年)度から増備が再開され、台車はFT1F形に変更されており[8]、後述のチキ5400形・5450形登場後は中間車として組成される車両が現れている[9]

2016年時点で21両が在籍する[9]

チキ5400形

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9両編成化に対応するため、チキ5500形の編成の両端に連結される車両で2013年度に登場した[10]。9両編成で編成長を150 mとするため、全長は15,000 mmでチキ5500形より短い[4]。軌道変位に対する追従性を考慮し、台車中心間距離を極力大きくした10,700 mmとした[4]。台車は、空車時の輪重減少率低減を狙い、空車積車で枕ばねの特性を切り替える2段枕ばねを採用したFT1Gを採用する[6][7]。レール滑り台を3台搭載する[7]

2016年時点では6両が在籍する[9]

チキ5450形

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9両編成化に対応するため、チキ5500形の編成の中間に連結される車両で2013年度に登場した[10]。チキ5400形と同様の理由で、全長は15,000 mm、台車中心間距離は10,700 mm、台車はFT1Gを採用する[4][6][7]。レール滑り台を2台、レール締結用積み付け具を4台搭載する[7]

2016年時点では3両が在籍する[9]

運用

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国鉄チキ5500形とともにレール輸送に用いられている(8866レ、EF210-106+JR貨物チキ5500形3両+国鉄チキ5500形6両、2009年12月8日)

黒崎駅から関門トンネルを越えて西浜松駅まで運用されていたが、2014年のダイヤ改正により150 mロングレールの営業輸送を開始した[11]2016年より従来の船舶輸送に代わる形で越中島貨物駅(東京レールセンター)までの運用が開始された。JR東日本管内ではこのほかに東鷲宮駅那須塩原駅岩切駅発着の運用も設定されている。

出典

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  1. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル 2015年6月号別冊 最新 貨物列車 2015』p.75
  2. ^ 交通新聞社『トラベルMOOK 貨物列車の世界』p.132
  3. ^ a b c d e f g h 『Rolling stock & Machinery』第23巻第4号、p.74
  4. ^ a b c d e f 『Rolling stock & Machinery』第23巻第4号、p.73
  5. ^ 世界最長となる鉄道用 150mレールの製造・出荷体制を整備新日鐵住金プレスリリース、2014年4月16日付
  6. ^ a b c d e f g h i 『Rolling stock & Machinery』第23巻第4号、p.75
  7. ^ a b c d e f g h 『Rolling stock & Machinery』第23巻第4号、p.76
  8. ^ 電気車研究会 『鉄道ピクトリアル2012年10月号増刊 鉄道車両年鑑 2012年版』p.88-89
  9. ^ a b c d 交通新聞社『トラベルMOOK 貨物列車の世界』p.133
  10. ^ a b 電気車研究会 『鉄道ピクトリアル2013年10月号増刊 鉄道車両年鑑 2013年版』p.115
  11. ^ 「150メールレール輸送用長物車」『鉄道ファン』第55巻8号(通巻652号)、交友社、2015年8月、68 - 70頁。 

参考文献

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  • 上田一仁(JR貨物鉄道ロジスティックス本部車両部技術開発部)「150mレール輸送用長物車の概要」『Rolling stock & Machinery』第23巻第4号、日本鉄道車両機械技術協会、2015年4月、73 - 76頁。 
  • 「プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑」レイルマガジン 1997年6月号増刊
  • 吉岡心平 『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑(復刻増補)』 2008年、ネコ・パブリッシング刊 ISBN 978-4-7770-0583-3
  • 『日本の貨車―技術発達史』(貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年)

関連項目

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