そして父になる
そして父になる | |
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Like Father, Like Son | |
監督 | 是枝裕和 |
脚本 | 是枝裕和 |
出演者 |
福山雅治 尾野真千子 真木よう子 リリー・フランキー 二宮慶多 黄升炫 ピエール瀧 田中哲司 國村隼 井浦新 樹木希林 夏八木勲 |
撮影 | 瀧本幹也 |
編集 | 是枝裕和 |
配給 | ギャガ |
公開 |
2013年5月18日(カンヌ)[1] 2013年9月28日 2013年10月25日 2013年10月31日 2013年12月19日 |
上映時間 | 120分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 32.0億円 |
『そして父になる』(そしてちちになる)は、2013年制作の日本映画。是枝裕和監督。主演の福山雅治が初の父親役を演じた。
第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され[2]、2013年5月18日夜(日本時間5月19日未明)に公式上映された。上映後、約10分間のスタンディングオベーションが起こり、是枝監督や福山らは感極まって涙を流した[3]。2013年5月25日(日本時間26日未明)、第66回カンヌ国際映画祭 審査員賞を受賞した[4]。この受賞による日本国内の反響は大きく、公開日を2013年10月5日から同年9月28日に繰り上げ、公開に先駆けて9月24日から9月27日まで全国で先行上映を行った。
丸の内ピカデリー1、新宿ピカデリー他全国309スクリーンで公開され、2013年9月28日、29日の初日2日間で興収3億1,318万6,500円 動員25万3,370人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった[5]。先行公開分を含む13日間で累計興収13億5,159万5,250円、累計動員は116万8,204人となり映画観客動員ランキング2週連続第1位となった[6]。同年11月11日、アート系映画としては異例となる累計興収30億円を突破した[7]。2014年1月発表の最終興収は32.0億円[8]。
2015年2月7日、フジテレビ系列『土曜プレミアム』枠でテレビ初放映された[9]。
あらすじ
[編集]11月。再開発プロジェクトを進めるエリート建築家の野々宮良多と妻のみどり、6歳になる一人息子・慶多の家族は幸せな日々を過ごしていた。慶多は私立小学校を受験し、面接で「キャンプに行って凧揚げをした」と学習塾で教わった通りに答えて、合格する。
そんなある日、良多とみどりは、慶多が生まれた群馬県前橋市の病院から「重要なお知らせがある」と呼び出される。斎木という夫婦の息子が小学校進学に際して受けた血液検査で両親と血液型が一致しなかったことから調査した結果、出生時に看護師によって子どもの取り違えが起きていたことがわかり、良多たちの実の息子は慶多ではなく、斎木家の琉晴だという話だった。二人は同じ7月28日に生まれていた。管理面の心配から田舎の病院で産むことを反対していた良多は、「なんで分からなかったのか」と妻を責める。
取り違えられたもう一組の家族は、群馬で小さな電気店を営み、3人の子を持つ斎木雄大・ゆかり夫妻だった。二人と対面した良多とみどりは、「子どもの将来のために結論を急いだ方がいい」という病院の提案で斎木家と交流を始める。良多は病院を相手取って裁判を起す一方、子どもを二人とも引き取る手段を探る。両家は「ミッション」と称して慶多と琉晴を相手の家庭で泊まらせる。
入学式の後、斎木家の家計が逼迫している事情を聞いた良多は、慶多と琉晴の両方を引き取りたいと提案するが、雄大は物で解決しようとする良多の考えに立腹し、「負けたことのない奴は本当に人の気持ちが分からないんだな」と激怒、みどりも夫に呆然とする。
裁判が始まる。看護師は事故ではなく、再婚したばかりで継子の子育てでイライラし「野々宮さんの家族が幸せそうだったのでわざとやった」と証言。彼女の行為は公訴時効になっていることも判明する。虫のいい看護師の行動に、斎木夫妻とみどりはいら立ちをみせる。
6年間愛してきた他人の子どもと血の繋がった実の息子を前に、子どもを交換するべきか、このまま育てていくべきかという葛藤の中で、良多はそれまで知らなかった慶多の思いに気づく。慶多は父の日のプレゼントとして、両方の父に造花を手作りする。
慶多と琉晴は本来の親が引き取ることになる。それを前に野々宮家では慶多を連れて一家で河原に出かけ、3人で写真を撮影した。
8月、良多は上司から「裁判を抱えているから」という理由で宇都宮市の研究所への異動を打診される。良多は引き取った琉晴から抵抗される中で「おじさんが本当のパパなんだ」と告げる。裁判には勝ったが、良多は弁護士の鈴本に「勝ってない」という。良多は取り違えの原因を作った看護師から送られてきた「誠意」を返しにいくと、彼女の継子が良多と看護師の間に入る。良多が「関係ないだろ」というと継子は「僕のお母さんだから関係ある」と反論され、血の繋がらない継母・継子の間に親子の絆が出来ていたことを見せつけられる。
琉晴は家出し一人で群馬の斎木家に帰ってしまう。連れ戻しに行った良多は自分も小さい頃、家出したことを琉晴に告白。徐々に絆が深まっていくが、琉晴は「パパとママのところに帰りたい」と涙ながらに訴えた。みどりも「慶多を裏切っているみたいで」と涙する。良多も慶多がこっそり撮っていた良多の写真を見つけて涙ぐんだ。
連休で群馬に行った良多は「ミッションなんか終わりだ」と慶多を抱きしめる。電気店に戻った慶多は「スパイダーマンってクモって知ってた?」と雄大に教わったことを良多に話した。
キャスト
[編集]- 野々宮良多:福山雅治
- 野々宮みどり:尾野真千子
- 斎木ゆかり:真木よう子
- 斎木雄大(ゆかりの夫):リリー・フランキー
- 野々宮慶多(良多の息子):二宮慶多
- 斎木琉晴(雄大の息子):黄升炫
- 斎木美結(雄大の長女):滝沢美結
- 斎木大和(雄大の二男):押場大和
- 宮崎祥子(元看護師):中村ゆり
- 野々宮大輔(良多の兄):高橋和也
- 鈴本悟(弁護士、良多の友人):田中哲司
- 山辺真一(良多の異動先の研究員):井浦新
- 宮崎祥子の夫:ピエール瀧
- 秋山(病院の職員):小倉一郎
- 波留奈(良多が勤務する会社の社員):吉田羊
- 織間忠治(病院側の弁護士):大河内浩
- 野々宮のぶ子(良多の義母):風吹ジュン
- 上山一至(良多の上司):國村隼
- 野々宮良輔(良多の父):夏八木勲
- 石関里子(みどりの母):樹木希林
- 木野花、林剛史、中村倫也、森崎めぐみ、足立智充、清水一彰、遠藤璃菜 ほか
スタッフ
[編集]- 監督・脚本・編集:是枝裕和
- 製作者:亀山千広、畠中達郎、依田翼
- エグゼクティブプロデューサー:小川泰、原田知明、小竹里美
- プロデューサー:松崎薫、田口聖
- アソシエイトプロデューサー:大澤恵
- 音楽:松本淳一、森敬、松原毅
- 撮影:瀧本幹也
- 照明:藤井稔恭
- 録音:弦巻裕
- 美術:三ツ松けいこ
- 衣装:黒澤和子、鍛本美佐子
- 助監督:兼重淳
- スクリプター:冨田美穂
- キャスティング:田端利江
- 制作担当:熊谷悠
- 制作協力:西川美和、砂田麻美、今中康平
- ラインプロデューサー:新野安行
- 企画協力:石原隆、臼井裕詞、市毛るみ子
- 参考文献:奥野修司著『ねじれた絆-赤ちゃん取り違え事件の十七年』(文春文庫刊)
- 取材協力:清水建設、清水建設技術研究所、フジタ、鴻池組、白熊繁一、高橋静夫
- ロケ協力:三菱地所、三菱地所リアルエステートサービス、前橋市、前橋観光コンベンション協会、ヨリイフィルムコミッション、深谷フィルムコミッション ほか
- 制作プロダクション:FILM
- 配給:ギャガ
- 製作:「そして父になる」製作委員会(フジテレビジョン、アミューズ、ギャガ)
ロケ地
[編集]エンディング曲
[編集]- グレン・グールド(ピアノ)「 ゴルトベルク変奏曲〜アリア」
- Music by J.S.バッハ
- Sony Music Japan International Inc.
- (P) 1982 Sony Music Entertainment
受賞歴
[編集]日本国内
[編集]- 第35回ヨコハマ映画祭
- 日本映画ベストテン第4位
- 主演男優賞(福山雅治)
- 助演男優賞(リリー・フランキー)
- 脚本賞(是枝裕和)
- 第26回日刊スポーツ映画大賞
- 監督賞(是枝裕和)
- 助演男優賞(リリー・フランキー)
- 第87回キネマ旬報ベスト・テン
- 日本映画ベスト・テン 第6位
- 助演男優賞(リリー・フランキー)
- 読者選出日本映画ベスト・テン 第2位
- ムービープラス・アワード 2013
- 映画ファン大賞作品賞(邦画部門)
- スペシャリスト大賞作品賞(邦画部門)
- 第37回日本アカデミー賞[10]
- 第28回高崎映画祭
- 最優秀監督賞(是枝裕和)
- 最優秀主演男優賞(福山雅治)
- 最優秀助演女優賞(真木よう子)
- 映画芸術 2013年日本映画ベストテン&ワーストテン・ワースト5位[11]
- 芸術選奨文部科学大臣賞
- 映画部門(是枝裕和)
- 第23回日本映画批評家大賞
- 助演男優賞(リリー・フランキー)
日本国外
[編集]- 第66回カンヌ国際映画祭
- 第61回サン・セバスティアン国際映画祭 観客賞(PEARLS部門)[15]
- 第32回バンクーバー国際映画祭(英語: Vancouver International Film Festival) 観客賞(Rogers People’s Choice Award)[16]
- 第7回アブダビ国際映画祭 Child Protection Award 脚本賞(Child Protection Award for Best Script)
- 第37回サンパウロ国際映画祭 観客賞
- 第56回アジア太平洋映画祭
- 最優秀作品賞
- 最優秀監督賞(是枝裕和)
Blu-ray / DVD
[編集]2014年4月23日発売。発売元はフジテレビジョン、販売元はアミューズソフトエンタテインメント。
- そして父になるスタンダード・エディション(1枚組)
- 映像特典
- 特報・劇場予告編・TVスポット集
- 映像特典
- そして父になる スペシャル・エディション(2枚組)
- ディスク1:本編ディスク(スタンダード・エディションと共通)
- ディスク:特典DVD
- シーンセレクション ビジュアルコメンタリー(福山雅治×リリー・フランキー×監督:是枝裕和)
- 「そして父になる」公開特番
- 福山雅治×是枝裕和監督スペシャル対談
- クランクアップ集
- 海外映画祭映像集
- カンヌ1日密着ショートムービー
- カンヌ国際映画祭
- トロント
- サン・セバスチャン
- 釜山国際映画祭
- イベント映像集
- ジャパンプレミア
- 初日舞台挨拶
- ティーチイン
- 福山雅治×監督:是枝裕和
- リリー・フランキー×樹木希林×監督:是枝裕和
- ロールナンバーセレクション集
- 封入特典
- ミニブックレット
- 特製アウターケース付きデジパック仕様
テレビ放送
[編集]回数 | テレビ局 | 番組名(放送枠名) | 放送日 | 放送時間 | 放送分数 | 視聴率 | 備考 |
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1 | フジテレビ | 土曜プレミアム | 2015年2月7日 | 21:00 - 23:30 | 150分 | 12.9%[17] | |
2 | 2017年9月16日 | 9.5%[18] | 「三度目の殺人」公開記念としての放送。 | ||||
3 | 2018年6月16日 | 21:30 - 23:40 | 130分 | 6.4%[19] | 『万引き家族』第71回カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞記念2週連続 是枝監督特集としての放送。 是枝裕和監督による「特別再編集版」を放送。 |
- 視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム。
リメイク
[編集]2013年9月28日、同作品に感動したというスティーヴン・スピルバーグ[20]と是枝がロサンゼルスで対談した結果、米映画会社のドリームワークスでリメイクされることが決定した。この日、東京・新宿の映画館で福山ら主要キャストが出席して映画の公開初日舞台挨拶が行われた際、是枝が国際電話で会場にリメイク決定を報告した[21]。
脚注
[編集]- ^ “そして父になる”. IMDb. 2024年3月15日閲覧。
- ^ 公式サイトニュース Archived 2013年10月14日, at the Wayback Machine.
- ^ “福山雅治、感無量の男泣き 主演作、カンヌで10分総立ちの喝さい”. 映画.com. (2013年5月19日)
- ^ a b “福山雅治主演作『そして父になる』、カンヌ映画祭審査員賞を受賞!日本人では26年ぶり!【第66回カンヌ国際映画祭】”. シネマトゥデイ. (2013年5月27日) 2013年5月27日閲覧。
- ^ 福山雅治主演『そして父になる』が初登場1位! 5億円突破の大ヒットスタート!【映画週末興行成績】シネマトゥデイ 2013年10月1日
- ^ 『そして父になる』100万人突破でV2!松本人志『R100』は初登場7位!【映画週末興行成績】シネマトゥデイ 2013年10月8日
- ^ 映画『そして父になる』が興収30億円突破! 米リメイク版の期待も高まる。2013年11月15日
- ^ “2014年記者発表資料(2013年度統計)” (PDF). 日本映画製作者連盟 (2013年1月28日). 2013年1月28日閲覧。
- ^ 土曜プレミアム・そして父になる
- ^ “第37回日本アカデミー賞優秀作品発表!”. 日本アカデミー賞公式サイト. 2014年3月7日閲覧。
- ^ 「映画芸術」2013年日本映画ベストテン&ワーストテン決定!!(2014年1月17日)、映画芸術、2014年1月28日閲覧。
- ^ “カンヌ映画祭、是枝監督「そして父になる」が審査員賞を受賞 スピルバーグが評価”. 夕刊フジ. (2013年5月27日) 2013年5月27日閲覧。
- ^ “是枝監督「そして父になる」特別表彰 カンヌ映画祭”. 日本経済新聞. (2013年5月26日) 2013年5月26日閲覧。
- ^ “是枝監督「そして父になる」が特別表彰 カンヌ国際映画祭”. 産経新聞. (2013年5月26日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ “サンセバスチャン国際映画祭:「そして父になる」が観客賞”. 毎日新聞. (2013年9月28日). オリジナルの2013年10月5日時点におけるアーカイブ。 2013年10月5日閲覧。
- ^ “Vancouver International Film Festival: VIFF Award Winners”. VIFF (13 October 2013). 15 October 2013閲覧。
- ^ 週間高世帯視聴率番組10 VOL.6/2015年 2月2日(月)~2月8日(日)
- ^ 週間高世帯視聴率番組10 VOL.38 2017年 9月11日(月)~9月17日(日)
- ^ 週間高世帯視聴率番組10 VOL.24 2018年 6月11日(月)~6月17日(日)
- ^ カンヌ国際映画祭の長編コンペ部門で審査員長を務めている。
- ^ “「そして父になる」ハリウッドへ=ドリームワークスでリメーク”. 時事通信社. (2013年9月28日)