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アルコヴァサウルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルコヴァサウルス Alcovasaurus
生息年代: ジュラ紀後期, 150 Ma
見つかっている化石
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithoscia
階級なし : 頬竜類 Genasauria
亜目 : 装盾亜目 Thyreophora
下目 : 剣竜下目 Stegosauria
: ステゴサウルス科 Stegosauridae
亜科 : ダケントルルス亜科 Dacentrurinae?
: アルコヴァサウルス属 Alcovasaurus
学名
Alcovasaurus
シノニム

Stegosaurus longispinus Gilmore, 1914

和名
アルコヴァサウルス属
  • A. longispinus

アルコヴァサウルス Alcovasaurus は、後期ジュラ紀に生息していた装盾類恐竜である。アメリカ合衆国ワイオミング州ナトロナ郡モリソン層で発見された[1]模式種ステゴサウルス・ロンギスピヌスのコンビネーションノヴァ(既に存在している学名に基づき導入される新しい学名)である。アルコヴァサウルス・ロンギスピヌス Alcovasaurus longispinusの一種のみが知られる。なお、2019年にはアルコヴァサウルスはミラガイアの一種であるという説も提唱された[2]

発見と命名

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1908年7月、ウィリアム・リード教授とワイオミング大学の A・C・ダートは、ナトロナ群のアルコヴァ採石場で剣竜類の骨格を発掘した。それはリード主導の下で行われた恐竜の発掘としては最後のものとなった。1914年、チャールズ・ギルモアによりホロタイプ UW 20503(元 UW D54)に基づき、ステゴサウルス・ロンギスピヌスが記載された。これは42個の脊椎骨、断片的な腸骨、2つの座骨、恥骨の一部、右の大腿骨、いくつかの肋骨と4つのサゴマイザーから成る成体の部分骨格である。種小名ラテン語で「長い棘」を意味し、尾のスパイクに由来する[3]。ステゴサウルス・ロンギスピヌスはその尾のスパイクが長いという点で、ステゴサウルス属の独立種として有効なものであると、その後の研究者たちも認めてきた[4][5][6]。1993年、本種はジョージ・オルシェフスキーらにより、本来はアフリカに分布するケントロサウルス属の北米産の種である可能性が指摘された[7]

運悪く、模式標本は1920年代にワイオミング大学博物館の水道管が破裂した際に破損してしまった[8]。そのため、その標本の所在について誤解が生じ、失われたものと考えられたこともあった[9] 。一方、UW 20503 とナンバリングされた大腿骨は、模式標本の最後の残存している部位としてまだ存在していた[10][11]サゴマイザーはプラスターキャスト(石膏模型)が製造されていた。また、発掘中の骨格の証拠写真がまだ残っており、博物館の骨格とともに展示されている[1]

他方でステゴサウルス・ロンギスピヌスの独自性は疑われていた。なぜなら、長いサゴマイザーは個体差性的二形の産物のように思われたからだ[9]。にもかかわらず、アマチュアのフリーランス古生物学者のローマン・ウランスキーは、長い尾の棘はステゴサウルス・ロンギスピヌスをステゴサウルス属から分けるに充分なものであると判断し、新属ナトロナサウルス "Natronasaurus" に移した。ウランスキーはオルシェフスキーとフォードの1993年の系統分析を前提に、ナトロナサウルスをケントロサウルスの近縁属として認めた[12]。ウランスキーは自費出版で電子書籍として論文を発表した。これは独立行政法人によるインタープリターでもISSNによるものでもなかった。そのため、ナトロナサウルスは無効名と見なされ、ピーター・ガルトンケネス・カーペンターによりこの属に別の学名、アルコヴァサウルス Alcovasaurus が2016年に与えられた。

ガルトンとカーペンターはまた、1990年代にクリフ・マイルズがワイオミング州で発見した非常に大きなスパイクに基づいて本種を記載した。それは以前は所在が不明だったが、DMNH 33431 のキャストが製造・保管されていた[1]

記載

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ギルモアはロンギスピヌス種を非常に長いサゴマイザー、遠位尾側椎骨の雌側の突起、およびキノコ型の背側延長部を有する椎間板によって、ステゴサウルスの種とは断定できないとした[3]

2016年、ガルトンとカーペンターは5つの固有派生形質を示した。遠位側、後方側、尾側椎骨には側方の突起が存在する。遠位の尾椎は、短く、長さより高さがある。非常に細長く、細長い2本のスパイクがあり、大腿骨の長さの90%である。最後の1対のスパイクは、シャフトの長さの4分の1で最大の幅を持つ(下から測定)。大腿骨の関節丘の下関節表面は下側に限定される[1]

さらにアルコヴァサウルスは、ジュラ紀の北アメリカのステゴサウルス属のステノプス種、スルカトゥス種、およびヘスペロサウルスとは、仙骨が4つではなく6つであることにおいても違っている。他のステゴサウルス類では最多でも5つである。ギルモアはまた、アルコヴァサウルスは前方のペアと同等の形質の後方のスパイクのペアを持つことで独特だったと主張している。現存する証拠写真からこの形質を確認することは困難であるが、4本のスパイクを持つすべての既知の他の剣竜においては後方のペアの方がより短いため、アルコヴァサウルスはこの点で異なっているとガルトンとカーペンターは示唆している。また、2対のスパイクは互いに非常に離れて配置される[1]

アルコヴァサウルスと人の大きさの比較

大腿骨の長さはギルモアによると1082 mm である。最長のスパイクは86 cm である。このスパイクの先端は壊れており、ギルモアはもともとの長さは985 mm だったと推定した[3]

ガルトンとカーペンターは、そのサゴマイザーは武器として主に使われたと見ている。彼らは尾全体に連続する尾対の側面の突起を調べ、尾を強力に振り回すための発達した筋肉を支持していたと結論づけた。これはまた恐らく、腰椎にもつながって短縮されており、その結果、尾はステゴサウルスよりも4分の1短かったと思われる。より短い尾は、非常に長いスパイクのより大きなモーメントアーム(支点から力の作用点に下ろした垂線の距離)によって引き起こされるねじれを相殺することができると考えられる[1]

分類

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ガルトンとカーペンターは、アルコヴァサウルスはステゴサウルスよりもケントロサウルスに近縁ではないとし、ステゴサウルス科のメンバーであると考えた[1] しかし2017年のトーマス・レイヴン Thomas Raven とスザンナ・メイドメント Susannah Maidment による系統解析によると、アルコヴァサウルスはエウリポダ(剣竜と曲竜)の成体に見られる大腿骨の転子の間の癒合に欠くことから、ステゴサウルス類には分類できないとされた。しかしながら、これはこの標本が未成熟の個体だった可能性を意味し、またホロタイプが失われていることから解明は難しい[13]

出典

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  1. ^ a b c d e f g Galton, Peter M. & Carpenter, Kenneth, 2016, "The plated dinosaur Stegosaurus longispinus Gilmore, 1914 (Dinosauria: Ornithischia; Upper Jurassic, western USA), type species of Alcovasaurus n. gen.", Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie - Abhandlungen 279(2): 185-208
  2. ^ Costa, Francisco; Mateus, Octávio (2019-11-13). “Dacentrurine stegosaurs (Dinosauria): A new specimen of Miragaia longicollum from the Late Jurassic of Portugal resolves taxonomical validity and shows the occurrence of the clade in North America”. PLoS ONE 14 (11): e0224263. doi:10.1371/journal.pone.0224263. ISSN 1932-6203. PMC 6853308. PMID 31721771. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6853308/. 
  3. ^ a b c Gilmore, C.W. 1914. Osteology of the armoured Dinosauria in the United States National Museum, with special reference to the genus Stegosaurus. United States National Museum Bulletin 89: 1–143.
  4. ^ O. Kuhn. 1964. Pars 105. Ornithischia (Supplementum I). In F. Westphal (ed.), Fossilium Catalogus. I: Animalia. IJssel Pers, Deventer, The Netherlands 1-80
  5. ^ P. M. Galton. 1990. Stegosauria. The Dinosauria, D. B. Weishampel, P. Dodson, & H. Osmólska (editors), University of California Press, Berkeley 435-455
  6. ^ P. M. Galton and P. Upchurch. 2004. Stegosauria. In D. B. Weishampel, H. Osmolska, and P. Dodson (eds.), The Dinosauria (2nd edition). University of California Press, Berkeley 343-362
  7. ^ Olshevsky, G., and Ford, T. L., 1993. The origin and evolution of the stegosaurs: Gakken Mook, Dinosaur Frontline, v. 4, p. 65-103.
  8. ^ Southwell, E. & Breithaupt, B. 2007. The tale of the lost Stegosaurus longispinus Tail. 67th Annual Meeting. Society of Vertebrate Paleontology. Journal of Vertebrate Paleontology, 27, 3, 150A.
  9. ^ a b S. C. R. Maidment, D. B. Norman, P. M. Barrett and P. Upchurch. 2008. Systematics and phylogeny of Stegosauria (Dinosauria: Ornithischia). Journal of Systematic Palaeontology 6(4):367-407
  10. ^ Foster, J. (2007). Jurassic West: The Dinosaurs of the Morrison Formation and Their World. Indiana University Press. 389pp. ISBN 978-0-253-34870-8.
  11. ^ Galton, P. M. 2010. Species of plated dinosaur Stegosaurus (Morrison Formation, Late Jurassic) of western USA: new type species designation needed. Swiss Journal of Geosciences 103, 187-198.
  12. ^ Ulansky, R. E., 2014. Evolution of the stegosaurs (Dinosauria; Ornithischia). Dinologia, 35 pp. [in Russian]. [DOWNLOAD PDF] http://dinoweb.narod.ru/Ulansky_2014_Stegosaurs_evolution.pdf.
  13. ^ Raven, T.J.; Maidment, S.C. (2017). “A new phylogeny of Stegosauria (Dinosauria, Ornithischia)”. Palaeontology. doi:10.1111/pala.12291. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pala.12291/full. 

関連項目

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