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ジャカピル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャカピル
Jakapil
生息年代: 後期ジュラ紀, セノマニアン
97–94 Ma
皮骨を省く発見された部分を示す骨格図
既知の部分を示す骨格図
ジャカピルの復元図
ジャカピルの復元図
地質時代
後期白亜紀セノマニアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
階級なし : Saphornithischia
階級なし : ゲナサウルス類 Genasauria
亜目 : 装盾亜目 Thyreophora
: ジャカピル属 Jakapil
学名
Jakapil
Riguetti, Apesteguía & Pereda-Suberbiola, 2022
  • J. kaniukura Riguetti, Apesteguía & Pereda-Suberbiola, 2022模式種

ジャカピル学名 : Jakapilテウェルチェ語英語版で「盾を持つ者」の意味)は、アルゼンチンのカンデレロス層から発見された装盾類恐竜模式種は、ジャカピル・カニウクラJakapil kaniukura[1]。2022年に記載された[2]

発見と命名

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ホロタイプであるMPCA-PV-630は、2012年にマリルアン家の所有地で発見され、2014年から2019/2020年にかけて発掘された、いくつかの皮骨と完全な下顎を含む部分骨格からなる。また、プレパレーションはL. PazoとJ. Kaluzaによって行われた。属名の"Jakapil"はテウェルチェ語英語版で「盾を持つ者」を意味する"Ja-Kapïl"に由来する[2]。これはThyreophoraという名と同様の意味でもある。種小名マプチェ語の"kaniu"(とさか)と"kura"(石)からなっており、下顎の下部が腹側に峰状に突出し独特の深いを形作っていることにちなんでいる[1]

説明

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ヒトと比較したジャカピルの大きさ

ジャカピルは装盾類の中で新しい形態型を示し、とりわけ、前歯骨の存在(他の基盤的な装盾類には存在しないか軟骨状である)[3]、高さが低く平らで円盤状の皮骨、スクテロサウルスに似た二足歩行の姿勢などが挙げられる。全長は1.5メートル未満[2]体重大腿骨周囲長から推定して4.5~7キログラムとされる。ホロタイプの化石幼体ではないが、成長しきっておらず、性的に成熟していなかった可能性が高い[1]

分類

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基部系統鳥盤類、装盾類、曲竜類に見られる特徴の組み合わせから、系統学的解析の結果、ほとんどのデータマトリックスでは、寛脚類の外側に位置する装盾類とされた。2022年Riguettiらは、ジャカピルがこれまで既知されていなかった装盾類の分岐群に属することを示唆しているとした。この分岐群は、シネムーリアン期に他の装盾類から分岐した可能性がある[1]。後期白亜紀に発見された本属は、長いゴーストリネージ英語版の系統の存在を示唆している。

装盾類

スクテロサウルス

エマウサウルス

スケリドサウルス

ジャカピル

寛脚類

剣竜類

曲竜類

ジャカピルが装盾類に属するかどうかについては、一部の研究者から異論が出ている。また、装盾類の系統関係に焦点を当てた研究では、ジャカピルが有する唯一の装盾類的特徴は皮骨であるが、その皮骨は他の装盾類には見られない特徴を示していると指摘されている。ジャカピルの前上顎骨にはがなく、これは他の装盾類では知られていない特徴であるが、歯骨の形状と深さは基盤的な新角竜類のものとよく似ていた。さらに、ジャカピルの歯は他のどの鳥盤類とも異なる形態をしていた。したがってこの研究は、ジャカピルが装甲を持つ周飾頭類、あるいはまだ知られていない非装盾類の分岐群に属する可能性が高いと結論づけられた[4]

2024年、Fonsecaらはこれまでの系統解析とステゴウロスとの解剖学的比較に基づき、装盾様類であるジャカピルを曲竜類に分類し、具体的にはEuankylosauriaパラアンキロサウルス類姉妹群に位置づけた。またFonsecaらは、ジャカピルは16段階の追加の工程が必要だったため、角竜類や周飾頭類である可能性は低いと主張した[5]

古生物学

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ジャカピルのホロタイプの下顎

2022年Riguettiらは、まっすぐで狭い鼻先を考慮して研究した結果、ジャカピルはを剪断するために歯や顎を使ったのではなく、歯の摩耗の程度の高さからわかるように、咀嚼によって硬い植物を処理していた可能性が高いと示唆している[1]

古環境

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カンデレロス層は、ココルコム砂漠として知られる古代の砂漠で、その中にはいくつかのオアシスが存在すると考えられており、その化石はゴンドワナ大陸西部の跡にある中期白亜紀の生態系に典型的な動物群を示している[1]。この地層生息していた他の生物には、ムカシトカゲ目Tika英語版プリオフェノドン英語版ヘビナジャシュ哺乳類Cronopio dentiacutusen英語版獣脚類アルナシェトゥリ英語版ブイトレラプトルエクリクシナトサウルス英語版ギガノトサウルス竜脚類アンデサウルスリメイサウルス英語版などがいる。

脚注

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  1. ^ a b c d e f “A new Cretaceous thyreophoran from Patagonia supports a South American lineage of armoured dinosaurs”. Scientific Reports 12 (1): Article number 11621. (2022). Bibcode2022NatSR..1211621R. doi:10.1038/s41598-022-15535-6. PMC 9372066. PMID 35953515. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9372066/. 
  2. ^ a b c 橋本千絵 編『講談社の動く図鑑MOVE 恐竜2 最新研究 新訂版』小林快次 監修、講談社、2023年、5頁。ISBN 978-4-06-532918-4 
  3. ^ Norman, David B. (2020). “Scelidosaurus harrisonii from the Early Jurassic of Dorset, England: cranial anatomy”. Zoological Journal of the Linnean Society 188 (1): 1–81. doi:10.1093/zoolinnean/zlz074. 
  4. ^ Raven, Thomas J.; Barrett, Paul M.; Joyce, Chris B.; Maidment, Susannah C. R. (2023-05-18). “The phylogenetic relationships and evolutionary history of the armoured dinosaurs (Ornithischia: Thyreophora)” (英語). Journal of Systematic Palaeontology 21 (1). Bibcode2023JSPal..2105433R. doi:10.1080/14772019.2023.2205433. ISSN 1477-2019. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14772019.2023.2205433. 
  5. ^ Fonseca, A. O.; Reid, I. J.; Venner, A.; Duncan, R. J.; Garcia, M. S.; Müller, R. T. (2024). “A comprehensive phylogenetic analysis on early ornithischian evolution”. Journal of Systematic Palaeontology 22 (1): 2346577. Bibcode2024JSPal..2246577F. doi:10.1080/14772019.2024.2346577.