コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

イシガメ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イシガメ科
スペングラーヤマガメ
スペングラーヤマガメ Geoemyda spengleri
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : リクガメ上科 Testudinoidea
: イシガメ科
Geoemydidae Theobald, 1868

イシガメ科(イシガメか、Geoemydidae)は、爬虫綱カメ目に属する科。模式属ヤマガメ属。別名アジアガメ科

分布

[編集]

アフリカ大陸北部(チチュウカイイシガメのみ)、北アメリカ大陸南部、南アメリカ大陸北部(南北アメリカ大陸に分布するのはアメリカヤマガメ属のみ)、ユーラシア大陸インドネシア

形態

[編集]

最大種はボルネオカワガメで最大甲長80センチメートル。雌雄で大きさにほとんど差がない種もいれば、カンムリガメのようにオスの最大甲長が17.5cmなのに対し、メスは最大甲長が61cmに達する雌雄差の大きい種もいる。腹甲は12枚の甲板で形成される。

分類

[編集]

以前はヌマガメ科に含まれていた[1][2][3]。形態から1960年代になりバタグールガメ亜科して分割され、1980年代後半にはリクガメ上科内ではリクガメ科単系統群を形成すると推定され独立した科とする説があげられた[1][3]。核DNAやミトコンドリアDNAの全塩基配列を基にした分子系統学的解析でも、本科はリクガメ科と単系統群を形成すると推定されている[4]

以前は属の上位分類としてBatarurina Gray, 1869が最も古いとされ、それを基に本科をバタグールガメ科Bataguridaeとしていた[2]。後にGeoemydini Theobald, 1868の方が古いことが判明し命名規約上の理由からGeoemydidaeを用いるようになった[2]

1980年代には骨格を基にした分岐分類学的解析から、以下の水棲傾向や植物食傾向が強く咬合面が幅広いバタグールガメ亜科Batagurinaeと、陸棲傾向や動物食傾向が強く咬合面が狭いヤマガメ亜科Geoemydinaeに分割する説もあった[1][3]

  1. バタグールガメ亜科 - カラグールガメ属(後にバタグールガメ属)、カンムリガメ属、クサガメ属(後にイシガメ属)、セタカガメ属(後にコガタセタカガメ属、バタグールガメ属)、ニシクイガメ属、バタグールガメ属、ハナガメ属(後にイシガメ属)、ハミルトンガメ属、ヒジリガメ属(後にオオヤマガメ属)、ホオジロクロガメ属、ボルネオカワガメ属、メダマガメ属
  2. ヤマガメ亜科 - アメリカヤマガメ属、イシガメ属、インドヤマガメ属、オオヤマガメ属、オカハコガメ属(後にハコガメ属)、シロアゴヤマガメ属、ハコガメ属、ヒラセガメ属(後にハコガメ属)、ニセイシガメ属、マルガメ属、ムツイタガメ属、ヤマガメ属

1990年代後半から2000年代にかけて行われた分子系統学的解析から上記の2亜科の単系統性(特にヤマガメ亜科の単系統性)は認められず、2012年現在では本科には亜科を設けない説が有力とされる[3]。核DNAとミトコンドリアDNAの分子系統学的解析から、本科は下記の7つの単系統群で構成されると推定されている[2][3]。これらの単系統群間での系統関係に関しては統一した解析結果は得られていないものの、1が初期に分化した可能性が高く、2と4が最も近縁で、2と3と4は全体として単系統群だと推定されている[2][3]

  1. アメリカヤマガメ属
  2. イシガメ属、ハコガメ属
  3. インドヤマガメ属
  4. オオヤマガメ属、シロアゴヤマガメ属、ニセイシガメ属、マルガメ属、ムツイタガメ属
  5. カンムリガメ属、コガタセタカガメ属、ニシクイガメ属、バタグールガメ属、ハミルトンガメ属、ボルネオカワガメ属、メダマガメ属
  6. ホオジロクロガメ属
  7. ヤマガメ属


生態

[編集]

クサガメニホンイシガメといった淡水域に生息する半水棲種を多く含むが、セマルハコガメなどの陸棲種、バタグールガメなどの産卵期のメス以外陸に上がらず河口に生息する完全水棲種など、多様な環境に生息する。

繁殖形態は卵生。発生時の温度により性別が決定(温度依存性決定)する種が多い。

人間との関係

[編集]

生息地や中華人民共和国では食用や薬用とされることもある。水棲種はイスラム圏では不浄な生き物とされ成体は食用にされないものの、卵は食用とされることもある。

開発による生息地の破壊、水質汚染、食用や薬用、ペット用の乱獲などにより生息数は減少している種もいる。2004年に中華人民共和国が国内に分布するほとんどの種をワシントン条約附属書IIIに掲載したため、ユーラシア大陸に分布する構成種の多くはワシントン条約の対象種となっている。

仏教の寺院では池などに放されて飼育される(放生)こともあり、ヒジリガメは名前の由来にもなっている。ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。

画像

[編集]

関連項目

[編集]

参考文献

[編集]
  1. ^ a b c 安川雄一郎 「オカハコガメ属とヒラセガメ属の分類と生活史(後編)」『クリーパー』第23号、クリーパー社、2004年、8-19、40-42頁。
  2. ^ a b c d e 安川雄一郎 「イシガメ属 イシガメ属とその近縁属の分類と自然史(前編)」『クリーパー』第39号、クリーパー社、2007年、24-27頁。
  3. ^ a b c d e f 安川雄一郎 「アメリカヤマガメ属の分類と自然史1」『クリーパー』第63号、クリーパー社、2012年、19-22頁。
  4. ^ 安川雄一郎「オオアタマガメの分類と自然史」『クリーパー』第45号、クリーパー社、2008年、32頁。