ジェイ・ルービン
表示
ジェイ・ルービン(Jay Rubin, 1941年 - )は、アメリカの日本文学翻訳家、研究者。ハーバード大学名誉教授。
特に村上春樹の作品を複数英訳したことで広く知られているが、芥川龍之介や夏目漱石の翻訳も行っており、また、日本語の学習書や文学評論も出版している。
経歴
[編集]ワシントンD.C.生まれ。ユダヤ系アメリカ人である[1]。シカゴ大学で日本文学のPh.D.を取得し、18年間ワシントン大学で教鞭を執った後、ハーバード大学の教授に就任。2008年退職、名誉教授。
はじめ明治期の検閲について研究したが、村上春樹の英訳で知られるようになる。謡曲も研究対象とする。
2003年、村上の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』の翻訳により、第14回野間文芸翻訳賞を受賞した。
2015年5月、初めての小説『The Sun Gods』を著した。同書は柴田元幸と平塚隼介に翻訳され、7月31日、新潮社より『日々の光』として刊行された[2]。
エピソード
[編集]- 日本語の意味を忠実に再現する作風で知られる。村上春樹の談によれば「ジェイ・ルービンはハーヴァード大学の正教授で、社会的にもきちんとした偉い人で、ユーモアの感覚みたいなのはすごくあるんだけど、翻訳作業については非常に真面目で厳格な人で、わかんないことがあるといつも電話をかけてくるんです。」[3]
- 2006年6月、村上春樹の短編集『Blind Willow, Sleeping Woman』がフランク・オコナー国際短編賞を受賞した際、アイルランドで開かれた授賞式に村上の代わりに出席した[4]。
- エルサレム賞を受賞した村上春樹は、2009年2月15日、イスラエルで英語でスピーチを行った。ルービンは村上に急遽頼まれて原稿を英語に訳したという[5]。
- NHKラジオ第2の語学番組『英語で読む村上春樹』(2013年4月放送開始)で取り上げられた村上の6作品のうち5作品(「象の消滅」「かえるくん、東京を救う」「踊る小人」「トニー滝谷」「眠り」)は、ルービンの翻訳によるものである。
- 小説『日々の光』は2015年に出版されたが、書かれたのは1987年だという[1]。
翻訳作品(村上春樹)
[編集]長編小説など
[編集]タイトル | 詳細情報 | 日本語タイトル | 備考 |
---|---|---|---|
The Wind-Up Bird Chronicle | クノップフ社(1997年10月21日) | 『ねじまき鳥クロニクル』 | |
Norwegian Wood | Vintage Books(2000年9月12日)[6] | 『ノルウェイの森』 | |
After Dark | クノップフ社(2007年5月) | 『アフターダーク』 | |
1Q84 BOOK 1, BOOK 2 | クノップフ社(2011年9月18日) | 『1Q84』 | 「BOOK 3」はフィリップ・ガブリエルの翻訳 |
Absolutely on Music | ペンギン・ランダムハウス(2016年11月15日) | 『小澤征爾さんと、音楽について話をする』 |
短編小説
[編集]タイトル | 詳細情報 | 日本語タイトル | 備考 |
---|---|---|---|
The Second Bakery Attack | 『Playboy』1992年1月号 | 「パン屋再襲撃」 | 短編集『The Elephant Vanishes』に収録 |
On Seeing the 100% Perfect Girl One Beautiful April Morning | 訳し下ろし | 「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」 | 同上 |
Sleep | 『ザ・ニューヨーカー』1992年3月30日号[7] | 「眠り」 | 同上 |
The Little Green Monster | 訳し下ろし | 「緑色の獣」 | 同上 |
A Family Affair | 訳し下ろし | 「ファミリー・アフェア」 | 同上 |
A Window | 訳し下ろし | 「窓」 | 同上 |
The Dancing Dwarf | 訳し下ろし | 「踊る小人」 | 同上 |
The Elephant Vanishes | 『ザ・ニューヨーカー』1991年11月18日号[8] | 「象の消滅」 | 同上 |
UFO in Kushiro | 『ザ・ニューヨーカー』2001年3月19日号[9] | 「UFOが釧路に降りる」 | 短編集『after the quake』に収録 |
Landscape with Flatiron | 『Ploughshares』2002年9月22日号 | 「アイロンのある風景」 | 同上 |
All God's Children Can Dance | 『Harper's Magazine』2001年10月号 | 「神の子どもたちはみな踊る」 | 同上 |
Thailand | 『Granta』2001年7月7日号 | 「タイランド」 | 同上 |
Super-Frog Saves Tokyo | 『GQ』2002年6月号 | 「かえるくん、東京を救う」 | 同上 |
Honey Pie | 『ザ・ニューヨーカー』2001年8月20日号、27日号[10] | 「蜂蜜パイ」 | 同上 |
Birthday Girl | 『Harper's』2003年7月号 | 「バースデイ・ガール」 | 短編集『Blind Willow, Sleeping Woman』に収録 |
Aeroplane: Or, How He Talked to Himself as If Reciting Poetry | 『ザ・ニューヨーカー』2002年7月1日号[11] | 「飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」 | 同上 |
Dabchick | 『McSweeney's』2000年晩冬号 | 「かいつぶり」 | 同上 |
A "Poor Aunt" Story | 『ザ・ニューヨーカー』2001年12月3日号[12] | 「貧乏な叔母さんの話」 | 同上 |
Nausea 1979 | 訳し下ろし | 「嘔吐1979」 | 同上 |
The Seventh Man | 『Granta』1998年3月号 | 「七番目の男」 | 同上 |
Tony Takitani | 『ザ・ニューヨーカー』2002年4月15日号[13] | 「トニー滝谷」 | 同上 |
The Rise and Fall of Sharpie Cakes | 訳し下ろし | 「とんがり焼の盛衰」 | 同上 |
Hanalei Bay | 『ガーディアン』2006年4月15日号 | 「ハナレイ・ベイ」 | 同上 |
The Kidney-Shaped Stone That Moves Every Day | 『ザ・ニューヨーカー』2005年9月26日号[14] | 「日々移動する腎臓のかたちをした石」 | 同上 |
翻訳作品(その他)
[編集]- Sanshiro / Natsume Sōseki ; Tokyo : University of Tokyo Press. - Seattle : University of Washington Press , c1977. (夏目漱石『三四郎』)
- The Miner / Natsume Sōseki ; Tokyo : Carles E. Tuttle , c1988.(夏目漱石『坑夫』)
- Rashōmon and Seventeen Other Stories / Ryūnosuke Akutagawa ; London : Penguin , 2006. - (Penguin classics) (『芥川龍之介短篇集』 新潮社、2007年6月、村上春樹序文)
- Rashōmon (羅生門)
- In a Bamboo Grove (藪の中)
- The Nose (鼻)
- Dragon: the Old Potter's Tale (竜)
- The Spider's Thread (蜘蛛の糸)
- Hell Screen (地獄変)
- Dr. Ogata Ryōsai: Memorandum (尾形了斎覚え書)
- O-Gin (おぎん)
- Loyalty (忠義)
- The Story of a Head That Fell Off (首が落ちた話)
- Green Onions (葱)
- Horse Legs (馬の脚)
- Daidōji Shinsuke: The Early Years (大導寺信輔の半生)
- The Writer's Craft (文章)
- The Baby's Sickness (子供の病気)
- Death Register (点鬼簿)
- The Life of a Stupid Man (或阿呆の一生)
- Spinning Gears (歯車)
主要な著書
[編集]- 文芸評論・学術・学習書・小説・エッセイ
- Injurious to public morals : writers and the Meiji state / Seattle : University of Washington Press , c1984.(『風俗壊乱―明治国家と文芸の検閲』 世織書房、2011年4月8日、今井泰子・大木俊夫・木股知史・河野賢司・鈴木美津子訳)[15]
- Making sense of japanese : what the textbooks don't tell you / Tokyo : Kodansha International , 1998.
- Haruki Murakami and the music of words / London : Vintage , 2005. (『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』 新潮社、2006年9月、畔柳和代訳)
- The Sun Gods / Seattle : Chin Music Press , 2015. (『日々の光』 新潮社、2015年7月、柴田元幸・平塚隼介訳)
- 『村上春樹と私』 東洋経済新報社、2016年11月24日
- 編纂
- Modern Japanese writers / New York : Charles Scribner's Sons , c2001.
脚注
[編集]- ^ a b 初小説 『The Sun Gods』 上梓 村上春樹作品の英訳者 ジェイ・ルービン氏インタビュー | シアトル最大の日本語情報サイト Junglecity.com
- ^ ジェイ・ルービン 柴田元幸 平塚隼介『日々の光』|新潮社
- ^ 村上春樹・柴田元幸『翻訳夜話』文藝春秋、2000年、18頁。
- ^ “村上春樹氏にフランク・オコナー国際短編賞”. 産経新聞 ENAK. (2006年6月29日) 2014年4月25日閲覧。
- ^ 『文藝春秋』2009年4月号、「僕はなぜエルサレムに行ったのか」、158頁。
- ^ 『ノルウェイの森』はアルフレッド・バーンバウムが翻訳したものも存在する。ただしバーンバウム版は現在絶版となっている。
- ^ FICTION SLEEP BY HARUKI MURAKAMI. March 30, 1992The New Yorker
- ^ FICTION THE ELEPHANT VANISHES BY HARUKI MURAKAMI. November 18, 1991The New Yorker
- ^ FICTION UFO IN KUSHIRO BY HARUKI MURAKAMI. March 19, 2001The New Yorker
- ^ FICTION HONEY PIE BY HARUKI MURAKAMI. August 20, 2001The New Yorker
- ^ FICTION AIRPLANE BY HARUKI MURAKAMI. July 1, 2002The New Yorker
- ^ FICTION A POOR-AUNT STORY BY HARUKI MURAKAMI. December 3, 2001The New Yorker
- ^ FICTION TONY TAKITANI BY HARUKI MURAKAMI. April 15, 2002The New Yorker
- ^ FICTION THE KIDNEY-SHAPED STONE THAT MOVES EVERY DAY BY HARUKI MURAKAMI. September 26, 2005The New Yorker
- ^ 世織書房 書籍案内 風俗壊乱―明治国家と文芸の検閲 ジェイ・ルービン=著
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- The Rubins Jay and Gen Rubin's web site(ジェイ・ルービンと息子のゲン・ルービンのウェブサイト)