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ハプログループO1b2 (Y染色体)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
O1b2 (Y染色体) 系統
系統祖 O-M175
発生時期 31,108(95% CI 22,844~34,893)年前[1]
発生地(推定) 朝鮮半島またはその近くにある北東アジアの一部地域[2]
現存下位系統の
分岐開始年代(下限値)
28,240年前[3]
26,650 (99% CI 33,045 - 21,160) 年前[4]
25,800(95% CI 28,400 ↔ 23,300)年前[5] (但し帰属人口の大半を占める下位系統のO-K10のTMRCAは約7,900 (95% CI 5,624~9,449)年前[1]
親階層 O1b
分岐指標 M176, SRY465, P49, 022454[6]
高頻度民族・地域 日本人(大和民族琉球民族)、朝鮮民族

ハプログループO-M176 (Y染色体)(ハプログループO-M176 (Yせんしょくたい)、系統名称ハプログループO1b2とは、分子人類学で用いられる、人類Y染色体ハプログループの分類のうち、ハプログループO-M268のサブクレード(細分岐)の一つで、「M176」の子孫の系統である。2015年11月にISOGG系統樹[7]が改訂されるまではハプログループO2bと呼ばれていた。

誕生

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最も近縁のハプログループO1b1との分岐は約31,108(95% CI 22,844~34,893)年前[1]とされている。最も近い共通祖先は、25,800 (95% CI 28,400~23,300)年前[5]或いは26,650(99% CI 33,045 - 21,160)年前[4]或いは25,450年前[8]まで遡ると推定されている。

O-M175のサブクレードのひとつで、稲作文化を伝えた弥生人倭人)と推定される[9]

O-M176のサブクレードに属するY-DNAを合計すると、現在日本人の約32%を占める。[10][11][12][13]

2024年9月現在のところ、ハプログループO1b2に属すと判定されたY-DNAは弥生時代中期の人骨と推定されている鳥取県青谷上寺地堆積層出土漂着人骨1(頭蓋 No.34、Y-DNAハプログループはO1b2a1a1)[14]、弥生時代後期の人骨と推定されている鳥取県青谷上寺地遺跡8区西側溝跡(SD38)出土頭骨 No.25(26824、Y-DNAハプログループはO1b2a1)[14]、韓国金海市大成洞古墳群12号墓(金官伽耶国、350–500 CE)にて殉葬されたAKG_10204(Y-DNAハプログループはO1b2a1a2a1b1)[15]、和歌山県田辺市磯間岩陰遺跡出土の磯間1-1(紀元後五世紀後半・古墳時代中期の木国熊野国の境界線付近、Y-DNAハプログループはO1b2a1a1)、韓国群山市堂北里甕棺墓(紀元後六世紀・朝鮮三国時代の百濟国領内)出土のGUC005(Y-DNAハプログループはO-CTS7620即ちO1b2a1a2a1a)[16]、そして島根県出雲市猪目洞窟出土の猪目3-2-2(較正年代1230-1095 cal BP [1σ]、1240-1070 cal BP [2σ]即ち710ー880 CE・奈良時代或いは平安時代初期の出雲国に相当、Y-DNAハプログループはO1b2a1a1[17])から検出されている。

分布

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ハプログループO-M176は現代に於いて、日本人及び朝鮮民族の三割方の男性に見られる[18]

日本国内、韓国国内の各地域の分布では特に偏りは見られない。ただし、サブグループに関して言えば、日本人はO-CTS713が多いのに対し、朝鮮民族はO-CTS723が多い。O-CTS10687は日本や韓国等で稀に見られる。

アイヌ民族には見られない(16人のサンプル中0人[21]、4人のサンプル中0人[10])ことから、弥生時代以降の倭人(弥生人)の遺伝子と推定されている[22]。東アジア北東部に水稲農耕をもたらした集団との考えがある。

満洲族では、23mofangの統計によれば約3.10% (91/2938) の現代満州族男性に観察されている。満州族に見られるO1b2-P49の詳細については、

  • O-F1204 > O-K4 > O-L682 > O-K485 > O-CTS723(TMRCA約3110年前) 総人口の1.97%(58/2938)
  • O-F1204 > O-47Z > O-CTS713(TMRCA約3330年前) 総人口の0.71%(21/2938)
  • O-F1204 > O-CTS10687(TMRCA約4300年前) 総人口の0.14%(4/2938)
  • O-F1204 > O-47z(xCTS713) 総人口の0.07%(2/2938)、
  • O-P49(xF1204) 総人口の0.20%(6/2938)

を占め、現代の朝鮮民族に於ける比率とほとんど差が無く、現代の満州族男性の約1割が朝鮮系だとすれば簡単に説明がつく様相を呈している[23]

モンゴルに関しては、中華人民共和国内に住む所謂蒙古族は23mofangの統計によれば約1.51%(23/1521)の蒙古族男性がハプログループO-F1204/O-K10に属している[24][25]。サブグループ毎の結果は以下の通りである。

  • O-F1204 > O-47Z > O-CTS713(TMRCA約3330年前) 約0.72%(11/1521)
  • O-F1204 > O-K4 > O-L682 > O-K485 > O-CTS723(TMRCA約3110年前) 約0.46%(7/1521)
  • O-F1204 > O-CTS10687(TMRCA約4300年前)約0.33%(5/1521)

モンゴル国内を対象とした多くの研究論文ではハプログループO1b2に属す可能性のある男性が皆無である:

モンゴル国及び中国「蒙古族」のサンプルの中でハプログループO1b2に属す者が観察された例としては、以下のものがある。

  • Di Cristofaro氏等(2013年)による論文[34] モンゴル国在住モンゴル人計1/160 = 0.6% O2b-M176
    • Mongol-NorthEast 1/20 O2b-M176
    • Mongol-SouthWest 0/2 O2b-M176
    • Mongol-Central 0/18 O2b-M176
    • Mongol-SouthEast 0/23 O2b-M176
    • Mongol-NorthWest 0/97 O2b-M176
  • Xuwei Hou等(2022年)による論文[35]
    • 遼寧省阜新市蒙古族 1/13 O1b2a1a1-K7/CTS11723
  • 何光林等(2023年)による論文[36](中国蒙古族5/175 = 2.86% O1b2a1a; 詳細は以下の通り)
    • 山東省蒙古族1/6 O1b2a1a1
    • 遼寧省阜新市蒙古族1/9 O1b2a1a1
    • 黒竜江省蒙古族1/10 O1b2a1a3a
    • 遼寧省朝陽市蒙古族1/12 O1b2a1a1
    • 内蒙古自治区赤峰市蒙古族1/22 O1b2a1a1

ハプログループO1b2に属すモンゴル民族の人が主にモンゴル民族居住地域の東部、特に南東部の者であるという事がうかがえる。例外として、加藤徹等による2005年の論文では、ハプログループO1b2が、ハルハ(モンゴル国の主流部族)及びホトン(イスラム教徒)のサンプルからは検出されなかったのに対し、ウリャンハイ及びザフチン(いずれもモンゴル国西部に住む部族)のサンプルからはある程度検出されたとしている。[37]

  • ハルハ 0/85 O2b-SRY465)
  • ホトン 0/40 O2b-SRY465)
  • ウリャンハイ 3/60 = 5.0% O2b-SRY465)
  • ザフチン 2/60 = 3.3% O2b-SRY465)

また、韓国のある研究チームによる一連の論文では針原伸二から提供されたという[38]「東モンゴルのブリヤート族」のサンプルを扱っており49人中1人[38]または50人中1人[39]にハプログループO1b2-M176(x47z)が観察されたとしている。

また、ロシア国内に居住するウデヘ[39]、そして中国国内に居住するダウール族ナナイエヴェンキシベ族漢族回族ウイグル土家族、四川省カンゼ・チベット族自治州新龍県チベット族(カムパ)などでも稀に観察された例がある。

頻度

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韓国・朝鮮

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トゥングース系

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モンゴル系

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シベリア

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チュルク系
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古シベリア系等
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中央アジア

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漢民族

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中国少数民族

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東南アジア

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オセアニア等

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サブグループ

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O-K10

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O1b2のサブクレードであるO-K10は、現代の日本人や朝鮮民族の男性に多い。

O-K10の最も近い共通祖先はKarmin氏等が2022年に発表した論文によると約7,900 (95% CI 9,449 ↔ 5,624)年前に誕生したと考えられる[1]。また、民間の幾つかの遺伝子検査会社によれば、O-K10/O-F1204の最も近い共通祖先の推定年代は約8,340年前[118]、約8,070年前[119]、約7,436(99% CI 9,395 ↔ 5,782)年前[120]、約7,000(95% CI 8,000 ↔ 6,000)年前[5]となっており、どれもやはりO-K10の最も近い共通祖先が今よりおおよそ七、八千年前に生きたと推定している。

現存するO-K10は三つの異なるサブクレード、O1b2a1a1-K7/O-47z、O1b2a1a2-K4、及びO1b2a1a3-CTS10687に大別される。O1b2a1a1にもO1b2a1a2にもO1b2a1a3にも属さない、所謂O1b2a1a*に分類されるY-DNAは、日本(川崎市のサンプルでは全てのO1b2の4.6%を占め比較的多いが、金沢市、大阪市、徳島市のサンプルでも同様のY-DNAが観察されている[121])と韓国(大田133人のサンプル中1人[122])のサンプルの中から稀に検出されている。

O-K7/O-47z

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O-K7/O-47zの最も近い共通祖先の推定年代は約6,311 [99% CI 8,149 ↔ 4,786]年前[123]とされる。

O-K7/O-47zは日本で高頻度(約22.5%、18%大阪市成人男性[12]~28%九州[10])、朝鮮民族で中頻度(約8.5%[45][38][10][27][43][2][46][124]、4%[10]~14%[27])、中国で極低頻度(約0.18%[125])で観察される。

  • 韓国:
    • 韓国 6.3% (26/412)[45]
    • 韓国 5.8% (9/156)[38]
    • 韓国 4.0% (3/75)[10]
    • 韓国 14.0% (6/43)[27]
    • ソウル及び大田(乙支医科大学及び乙支大学校病院にて募集に応じた者) 9.7% (21/216)[43]
    • 慶尚 11.9% (10/84)、忠清 9.7% (7/72)、済州 9.2% (8/87)、江原 7.9% (5/63)、全羅 7.8% (7/90)、ソウル及び京畿 7.3% (8/110)[2]
    • 大田 11.3% (15/133)、ソウル 9.8% (56/573)[46]
    • 韓国 8.3% (25/300)[124]
    • 朝鮮民族(主に韓国) 7.3%(39/532)[126]
  • 中国: 朝鮮族 8.0% (2/25)[27]、吉林省朝鮮族 6.3% (1/16)[42]、吉林省満州族 6.1% (2/33)[42]、黒竜江省朝鮮族 5.3% (1/19)[42]、遼寧省蒙古族 3.0% (1/33)[42]、遼寧省満州族 1.2% (1/83)[42]、遼寧省大連市漢族 0.55% (1/183)[79]、黒竜江省満州族 0% (0/21)[42]、山東省満州族 0% (0/21)[42]、河北省満州族 0% (0/22)[42]、北京市満州族 0% (0/39)[42]、内蒙古自治区蒙古族 0% (0/87)[42]
  • ベトナム:
    • 2.9% (2/70)[10][82]
    • ハノイ市 0% (0/24)[89]
    • ベトナム中部高原及び南中部エデ族 0% (0/24)、ベトナム中部高原ジャライ族 0% (0/27)、ライチャウ省ムオンテ県ハニ族 0% (0/33)、ハザン省ホアンスーフィー県コーラオ族 0% (0/34)、ディエンビエン省ディエンビエンフー市Hmong族 0% (0/41)、ハザン省ホアンスーフィー県ヤオ族 0% (0/43)、ベトナム北部(ハノイ市及びその周辺)キン族 0% (0/50)[104]
    • ハノイ市キン族 0% (0/76)[110]

O-K4

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O-K4の最も近い共通祖先の推定年代は約6,057 [99% CI 7,879 ↔ 4,555]年前[127]とされる。

O-K4は朝鮮民族で高頻度(約19%[122])、日本で中頻度(約6.5%、日本に於ける全てのO1b2の約20.5%[121])、中国で低頻度(約0.44%[3])で観察される。

O-CTS10687

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O-CTS10687の最も近い共通祖先の推定年代は約5,524 [99% CI 8,477 ↔ 3,381]年前[128]とされる。

O-CTS10687も日本人及び朝鮮民族に最も高い頻度で観察される系統だが、それでも3%以下で、中国に於いては極低頻度(約0.04%[129])で観察される。

その他

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O-K10(F1204)に属さないO-M176は日本人(広島[5]、福島[5]、金沢市[121]、札幌市[121]、川崎市[121]、大阪市[121]、長崎市[121]、徳島市[121][4]、日本に於ける全てのO1b2の約3.6%[121])、韓国人(ソウル及び大田に於ける男性人口の約1%即ち全てのO1b2の約3.1%[122]大邱[5]蔚山[119]及び慶尚南道[5])、満洲族(吉林省舒蘭市[119])、漢族(北京[5]吉林省松原市寧江区[3]河北省保定市満城区[3]河南省周口市沈丘県[3]江蘇省句容市[3]安徽省黄山市黄山区[3];中国男性の総人口の約0.03%、中国に於ける全てのO1b2の約4%[130][118])から低頻度ながらも検出されている。

系統樹

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ハプログループO系統の分岐については2020年4月16日改訂のISOGGの系統樹(ver.15.58)による[131]。日本人における割合は佐藤ら(2014)[132]及び井上・佐藤(2023)[133]による。

  • O1b2 (P49, M176) - 最近共通祖先 26,638 (99% CI 33,033 ↔ 21,148)年前[134]。主に日本人及び朝鮮民族に見られ、中国(朝鮮族のほかには、主に満州族ナナイダウール族蒙古族漢族回族)でも低頻度(全国男性人口の約0.69%[130])に見られる。
    • O1b2a (F1942/Page92) - 最近共通祖先 11,500 (99% CI 14,378 ↔ 9,047)年前[135]
      • O1b2a1 (CTS9259) - 最近共通祖先 10,492 (99% CI 13,140 ↔ 8,238)年前[136]
        • O1b2a1a (F1204,F3356,K10) - 最近共通祖先 7,436 (99% CI 9,395 ↔ 5,782)年前[120]
          • O1b2a1a1 (47z, K7) - 最近共通祖先 6,303(99% CI 8,140 ↔ 4,780)年前[123]。主に日本人(22.0%)及び韓国人(約8.5%)に見られ、中国(全国男性人口の約0.18%[125]満洲族約0.78%[137]蒙古族約0.72%[24]回族約0.12%[94])等でも稀に見られる。
            • O-BY45877/Y174038 - 日本[4]、韓国[3][5]、中国[3][5]
            • O-CTS11986 - 最近共通祖先 3,400(99% CI 4,476 ↔ 2,522)年前[138]。日本[5]、韓国[5]、中国(約0.12%[139]
              • O1b2a1a1a(K14,CTS1875) - 日本[5](7.6%)、韓国[5]、中国(山西省[5]遼寧省大連市漢族[79]等、約0.02%[3]
              • O1b2a1a1b(Z24598,Z24599) - 日本[5](5.3%)、韓国(釜山[5])、中国(河北省[5][3]
              • O1b2a1a1c(CTS203) - 日本[5](2.3%)、中国(約0.03%[140]
          • O1b2a1a2 (F2868,F3110,K4) - 最近共通祖先 6,060(99% CI 7,882 ↔ 4,558)年前[127]
          • O1b2a1a3 (CTS10687) - 最近共通祖先 5,524(99% CI 8,477 ↔ 3,381)年前[128]韓国[4][119](3/133 = 2.26% 大田、10/573 = 1.75% ソウル[122][149])、日本(1.6%)[5][4][119]中国(約0.04%[129])で稀に見られる
            • O1b2a1a3a (CTS1215) - 韓国[4]、日本[4]、モンゴル[4]、中国[3]
        • O1b2a1b (CTS562) - 最近共通祖先 5,477(99% CI 8,346 ↔ 3,383)年前[150]。主に韓国(3/573 = 0.52% ソウル[122][149])で見られ、日本(0.05%)と中国(約0.02%[151])でも稀に見られる。[152][5][153]
      • O1b2a2 (Page90)

稲作・遺跡・土器との関連

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崎谷満は稲の品種を根拠にしてO-M176に属す集団は2800年前に中国江南から山東半島日本列島朝鮮半島水稲栽培をもたらしたと主張しているが中国江南にはO-M176が殆ど発見されていない研究結果から信憑性は低いとされている[22]。O-M176は現代では日本及び韓国・朝鮮に高頻度であり、それら以外の地域に起源をもつと結論付けられる様な証拠が現時点では未だに無い。

縄文時代終末から弥生時代にかけて広くみられる刻目突帯文土器に似た土器が沿海州南西部のシニ・ガイ文化にみられる[154] ことから、刻目突帯文土器およびこれを携えたハプログループO1b2に属す弥生人の起源を沿海州南西部に求める見方がある。

なお、青谷上寺地遺跡より出土した弥生時代の人骨でY-DNAが解析済みの10個体のうち、2体がハプログループO1b2a1に属しており、そのうち1体は現代日本人に多くみられるO1b2a1a1に属していた。他の個体については、3体がハプログループDに、2体がハプログループC1a1に、1体がハプログループO(どの下位系統に属すかは未発表)に属し、2体がどのハプログループに属すか特定できなかったという結果が出ている[155][156]

長崎県佐世保市に所在する下本山岩陰遺跡の箱式石棺から出土した下本山3号という弥生時代の男性人骨(放射性炭素の測定により、年代は2001–1931 cal BP [1σ]と推定されている)もハプログループO(TheYtreeによればO1b2a1a1-CTS713[157])に属すという結果が発表されている[158]

上記2件の研究結果により、ハプログループO1b2が弥生時代には既に因幡国および肥前国の地域に、ハプログループC1a1とハプログループDに関しても既に因幡国の地域に存在していたことが報告された[155]。 現代日本人男性の7割以上がD、O1b2、C1a1のいずれかのハプログループに属しているので、弥生時代の西日本の住民と現代日本人との間には少なくともY染色体(即ち男系)に関しては大差が無いということがうかがえる。(ただし、現代日本人男性の約2割を占めるハプログループであるハプログループO2に属すと特定できたY-DNAは2023年現在、弥生時代の遺跡からは発見されていない。)

一塩基多型分岐図

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A0000
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
A000-T
 
PR2921
 
A00
 
 
A0
 
 
A1a
 
 
A1b1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
L1090
 
 
P305
 
 
V221
 
 
M42
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
サン族
 
 
YAP
 
CTS3946
 
M174
 
CTS11577
 
M64.1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
M168
 
 
P143
 
M89
 
F1329
 
M578
 
L15
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Y27277
 
 
G系統
 
 
H系統
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
M9(P128)
 
LT系統
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
M526
 
M2308
 
F549
 
M214
 
M175
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
IJ系統
 
I系統
 
 
YSC0000186
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
N系統
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
J系統
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
F265
 
M268
 
M176 (P49)
 
F855
 
CTS9259
 
F1204(K10)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
M122
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
47z (K7)
 
CTS1348
 
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ACT4054
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Y130364
 
CTS2748
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Z24599
 
CTS1351
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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Y130014
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
CTS9852
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
K14
 
Z24594
 
CTS525
 
FT217340
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
FT350225
 
CTS11088
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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BY178096
 
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Y126340
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
F2868
 
L682
 
CTS723
 
Y24057
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
F940
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
CTS7620
 
CTS4596
 
Y61286
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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CTS1175
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
MF14346
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
A12446
 
PH40
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
FGC67537
 
FT41750
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
MF14220
 
 
 
 
 
 
 
FGC67568
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Y72859
 
 
MF16242
 
MF14245
 
FT281275
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(出典)"Y-Full"(Ver.12.00), "FTDNA Big Y Tree"

脚注

[編集]
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  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac Phylogenetic tree of Haplogroup O-P49 at 23mofang
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n FamilyTreeDNA Discover™ Time Tree for Haplogroup O-P49
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak YFullによるハプログループO-P49の系統樹
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  18. ^ ただし、朝鮮半島及び満州地域に多いO1b2a1a2a-L682と日本人に多いO1b2a1a1-47Z/K7の最も近い共通祖先は、約七、八千年前に生きたと推定されている。
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  24. ^ a b c https://www.23mofang.com/gene-club/detail/1768930ac9e
  25. ^ (この統計の対象者の出身地については通遼市232名、赤峰市212名、シリンゴル盟209名、遼寧省152名、フフホト市137名、オルドス市94名、ヒンガン盟85名、フルンボイル市82名、新疆63名、バヤンノール市49名、ウランチャブ市41名、黒竜江省38名、吉林省37名、青海省29名、包頭市25名、アルシャー盟21名、烏海市2名、その他13名となっており、著しく南東に偏っている事に留意する必要がある。)
  26. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r R. Spencer Wells, Nadira Yuldasheva, Ruslan Ruzibakiev, Peter A. Underhill, Irina Evseeva, Jason Blue-Smith, Li Jin, Bing Su, Ramasamy Pitchappan, Sadagopal Shanmugalakshmi, Karuppiah Balakrishnan, Mark Read, Nathaniel M. Pearson, Tatiana Zerjal, Matthew T. Webster, Irakli Zholoshvili, Elena Jamarjashvili, Spartak Gambarov, Behrouz Nikbin, Ashur Dostiev, Ogonazar Aknazarov, Pierre Zalloua, Igor Tsoy, Mikhail Kitaev, Mirsaid Mirrakhimov, Ashir Chariev, and Walter F. Bodmer (2001), "The Eurasian Heartland: A continental perspective on Y-chromosome diversity." PNAS, vol. 98, no. 18, 10244–10249. doi:10.1073/pnas.171305098.
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  52. ^ (Table 2にある地理座標、123.2°E 40.2°Nに基づき、遼寧省鞍山市岫巖満族自治県で採取されたサンプルだろうと推定できる)
  53. ^ Y.V. Bogunov, O.V. Maltseva, A.A. Bogunova, and E.V. Balanovskaya, "The Nanai Clan Samar: the Structure of Gene Pool Based on Y-Chromosome Markers." Archaeology, Ethnology and Anthropology of Eurasia 43/2 (2015) 146–152. doi:10.1016/j.aeae.2015.09.015.
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ヒトY染色体ハプログループ系統樹
Y染色体アダム (Y-MRCA)
A0 A1
A1a A1b
A1b1 BT
B CT
DE CF
D E C F
G H IJK
IJ K
I J K1 K2
L T MS NO P K2*
N O Q R