ホンダ・ADV150
ADV150(エーディーブイひゃくごじゅう)は本田技研工業が2019年から製造販売しているアドベンチャータイプで排気量が150ccのスクーターである。
概要
[編集]2010年代であっても不整地の多いASEANの道路事情も踏まえたコミューターとしてKF30型PCX150をベースに開発された[注 1]アドベンチャータイプのスクーターで、2017年に発売された大型自動二輪車X-ADVのシティアドベンチャーコンセプトやデザインを反映させた排気量149ccの普通自動二輪車である[2]。
インドネシアをリードカントリーとして設定し[2]、2019年7月19日に現地法人のピー・ティー・アストラ・ホンダ・モーター(P.T. Astra Honda Motor)が製造する同国向け仕様車をコンビブレーキ仕様33,500,000ルピア・ABS仕様36,500,000ルピア[注 2]で発売[4][注 3]。同年9月21日にはフィリピンで現地法人のホンダ・フィリピン・インコーポレーテッド(Honda Philippines Inc.)が2020年1月より149,000ペソ[注 4]で同国向け仕様車を発売することを発表[7]。さらに同年10月28日にはタイ王国で現地法人のエー・ピー・ホンダ・カンパニー・リミテッド(A.P. Honda Co., Ltd.)が同国向け仕様車を97,900バーツ[注 5]で発売し[8]、以後は東南アジアで派生展開していく予定であることが明かされた[2]。
タイ・ホンダ・マニュファクチュアリング・カンパニー・リミテッド(Thai Honda Manufacturing Co., Ltd.)が製造し、本田技研工業が輸入事業者となる型式名2BK-KF38の日本国内仕様は[9]、同年10月24日 - 11月4日に開催された第46回東京モーターショーに市販予定車として出典[10]。同年12月20日に2020年2月14日に希望小売価格消費税10%込451,000円で発売することが発表された[9]。
2023年1月26日、後継車種のADV160が発売された[11]。
車両解説
[編集]- ※本項では日本国内仕様[12]を基にして解説を行う。
限界を超えていく都会の冒険者をキーワードに開発が行われた[13]。
車体はダブルクレードル型フレームにX-ADVのイメージを継承したカウルを装着[14]。サイズは、全長x全幅x全高:1,960x760x1,150(mm)・ホイールベース1,325mm・最低地上高165mm・シート高795mm・車重134㎏・最小回転半径1.9mに設定[12]。シート下には容量27Lのラゲッジスペース、ハンドル下左側には容量2Lのアクセサリーソケット付きインナーボックスのほか[15]、手動スライドロック機構により2段階で71mmの高さ調整を可能にした可変スクリーンを装備する[16]。
サスペンションは前輪が正立テレスコピック、後輪がユニットスイング[12]。ストローク量は前輪130mm・後輪120mmとし、リヤショックアブソーバーは3段レートのスプリングを使用したショーワ製リザーバータンク付とした[17]。またキャスター角は26°30´、トレール量は85mmである[14]。
ブレーキは、前輪240mm・後輪220mmのローター径によるウェーブシングルディスクを装着し[注 6]、前輪のみ作動する1チャンネルABSを装備する[19][注 7]。
タイヤは、専用のブロックパターンチューブレスをIRCが開発[注 8][注 9]。サイズは前輪が110/80-14、後輪が130/70-13である[19][注 10]。
搭載されるKF38E型水冷4ストロークSOHC単気筒エンジンは、オフセットシリンダー、ローラーロッカーアームならびにシャフトへシェル型ニードルベアリングを使用、発電制御の知能化など多岐にわたる徹底的な低摩擦化を実施し、さら省燃費性能を向上させたグローバルエンジンeSP[注 11]であり[22]、内径x行程:57.3x57.9(mm)・排気量149㏄・圧縮比10.6・容量8Lのタンクからの燃料供給はPGM-FI電子制御式燃料噴射装置・フルトランジスタ式バッテリー点火装置・セルフ式始動・アイドリングストップ機構・Vマチック無段変速機などはベースとなったPCX150用KF30E型と共通だが[12]、荒れた路面での扱いやすさという観点で低・中回転域のトルク向上を目的に以下の仕様変更が行われた。
- 吸気管を専用設計としエアクリーナーダクトは口径を28mmから23mmへする一方で長さを135mmから156mmへ延長、またコネクティングチューブも322mmから324mmへ延長[22]。
- マフラーは新設計のハイアップ形状とし、内部パイプ構造ならびにキャタライザー配置を最適化することで、低速の扱いやすさと高速域での伸びを両立[23]。
- 駆動系は低・中回転域におけるスロットル操作にダイレクトに応答する加速特性を得るためウエイトローラーのセッティングならびにドリブンフェイススプリングのインストール荷重を変更[23]。
燃費は国土交通省届出値の60km/h定地燃費は2人乗車で54.5km/L、WMTCモード値(クラス2-1)は1人乗車で44.1Km/Lである[12]。
灯火類は、軽量コンパクト化と省電力化の観点からすべてLED化されており[24]、メーターはスクエア形状の液晶ディスプレイと各種情報を表示する別体インジケーターに集約[25]。またABSモジュレーターが走行している時の急ブレーキを判定し、その情報を受け取ったウインカーリレーがハザードランプを高速点滅させるエマージェンシーストップシグナルやアンサーバック機能付スマートキーを標準装備する[26]。
ETC車載器・グリップヒーターはオプション設定となるが[27]、使用による電力消費量増加を想定して日本国内仕様はACG出力ならびにバッテリー容量を増強する[21]。
遍歴
[編集]- 2019年7月19日
インドネシア向け仕様を発売[4]。
- 2019年9月21日
フィリピン向け仕様を2020年1月に発売することを発表[7]。
- 2019年10月24日
同日から同年11月4日まで第46回東京モーターショーに日本国内仕様を市販予定車として出典[10]。
- 2019年10月28日
タイ王国仕様を発売[8]。
- 2019年12月20日
日本国内仕様を2020年2月14日に販売目標3,000台/年で発売することを発表[9]。
なお、車体色は以下の3種類とされた[28]。
- マットメテオライトブラウンメタリック
- ゲイエティーレッド
- マットガンパウダーブラックメタリック
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ただし90%が新設計である[1]。
- ^ 2019年8月のレートでは日本円換算でそれぞれ約259,000円・約282,500円[3]。
- ^ 日本国内仕様販売以前から独自ルートで並行輸入を行い日本国内で登録された個体も存在する[5][6]。
- ^ 2020年4月のレートでは日本円換算で約320,000円。
- ^ 2019年10月のレートでは日本円換算で約350,000円。
- ^ PCX150の後輪はドラムブレーキ[18]。
- ^ 国土交通省が2015年1月に道路運送車両の保安基準等を改正し、2018年10月1日以降に型式指定または認定もしくは新型車届出取扱を受けた排気量126㏄以上の二輪車の制動装置は先進制動システムとしてABS装着が義務付けられた[20]。ただし日本以外の海外向け仕様は、同様法規が存在しないためABS装着車以外に前後連動のコンビブレーキ仕様を選択することが可能である[3]。
- ^ TRAIL WINNER GP-212[1]
- ^ インドネシア向け仕様は台湾のフェデラル製を装着する[6]。
- ^ PCX150は前輪が100/80-14、後輪が120/70-14[18]。またタイヤ幅が太くなったためエンジンや駆動系はPCXに比較すると左にオフセットして対処した[21]。
- ^ enhanced Smart Powerの略で、日本語訳は「強化洗練された動力」となる[22]。
出典
[編集]- ^ a b ホンダADV150試乗 - モーサイ 八重洲出版 2020年2月9日
- ^ a b c ADV150開発者に聞く - Web ヤングマシン 内外出版社 2019年10月30日
- ^ a b インドネシアで発表されたADV150に大注目!! - Web オートバイ モーターマガジン社 2019年7月21日
- ^ a b ADV150詳細 本格装備のアドベンチャースクーター PCX150との違いは? - Web ヤングマシン 内外出版社 2019年8月2日
- ^ バイク館SOXが都市型アドベンチャースクーターADV150の独自輸入と先行予約を開始 ウェビックニュース 2019年11月29日
- ^ a b ADV150海外仕様【先取り】試乗インプレッション - Web ヤングマシン 内外出版社 2019年12月19日
- ^ a b Top Gear Philippines The Honda ADV 150 scooter is priced at P149,000 2019年9月21日
- ^ a b APホンダ ADV150を発売 - NNA アジア経済ニュース 2019年10月29日
- ^ a b c 2019年12月20日プレスリリース
- ^ a b 本田技研工業公式HP 第46回東京モーターショー出典車両 ADV150
- ^ 『アドベンチャースタイルの軽二輪スクーター「ADV160」を発売』(プレスリリース)本田技研工業、2022年10月28日 。2023年11月23日閲覧。
- ^ a b c d e FACT BOOK p19 主要諸元
- ^ FACT BOOK p1 開発のねらい(1)
- ^ a b FACT BOOK p7 車体(1)
- ^ FACT BOOK p10 車体(4)
- ^ FACT BOOK p9 車体(3)
- ^ FACT BOOK p11 足回り(1)
- ^ a b 2018年3月15日プレスリリース(PCX)
- ^ a b FACT BOOK p12 足回り(2)
- ^ 10月1日からバイクにABS/CBSが義務化された - Web ヤングマシン 内外出版社 2018年10月6日
- ^ a b 休日は郊外に脱出! シティアドベンチャーの実力 ADV150試乗記 - Web Mr.Bike モーターマガジン社 2020年2月21日
- ^ a b c FACT BOOK p13 パワーユニット(1)
- ^ a b FACT BOOK p14 パワーユニット(2)
- ^ FACT BOOK p15 電装(1)
- ^ FACT BOOK p16 電装(2)
- ^ FACT BOOK p17 電装(3)
- ^ FACT BOOK p18 アクセサリー
- ^ FACT BOOK p6 カラーリング
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 本田技研工業公式HP
- 海外公式HP
- PT Astra Honda Motor ADV150(インドネシア)
- AP HONDA NEW-ADV150(タイ王国)
- Honda Philippines,Inc(HPI )ADV150(フィリピン)
カラーバリエーションに関して:本項での車体色は、配色の系統を表しているもので色を再現しているわけではありません。 |