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井伊直親

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
井伊 直親
時代 戦国時代
生誕 天文5年(1536年[1][2]
死没 永禄5年12月14日1563年1月8日
改名 亀之丞(幼名)→ 直親
戒名 大藤寺殿剣峯宗惠大居士
墓所 龍潭寺浜松市浜名区引佐町井伊谷
東光院(浜松市浜名区引佐町渋川)
渋川井伊家墓所(浜松市浜名区引佐町渋川)
灰塚(浜松市浜名区細江町中川)
官位 肥後守
主君 今川義元氏真
氏族 井伊氏
父母 父:井伊直満
母:鈴木重勝娘(鈴木重時妹)
養父:井伊直盛
兄弟 義妹:次郎法師井伊直虎?)
正室:ひよ奥山朝利娘)
側室:塩澤氏娘?
高瀬姫川手良則室)、吉直?、直政
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井伊 直親(いい なおちか)は、戦国時代武将今川氏の家臣。遠江国国人井伊氏19代当主。

生涯

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天文5年(1536年)、井伊直満の子として誕生。

天文13年(1544年)、小野政直の讒言によって父・直満を今川義元に誅殺されると、更なる誅殺対象になりかねない幼少の直親は家臣に連れられ、井伊谷を出奔。祖父・直平から龍潭寺の住持に招聘された文叔瑞郁禅師の縁を頼って、武田領であった信濃国伊那郡松源寺へ落ち延びた。一説によると、信濃では塩澤氏の娘との間に高瀬姫吉直の1男1女を儲けたとされる。

弘治元年(1555年)に井伊谷への帰参が叶うと、祝田(静岡県浜松市北区細江町)を拠点とし、奥山朝利の娘・ひよを娶る。永禄3年(1560年)、従兄であり養父・直盛桶狭間の戦いで戦死したため、家督を継ぐ。しかし当時の遠江は「遠州錯乱」と呼ばれる混乱状態にあり、直親は小野政直の子・道好(政次)の讒言により、主君・今川氏真から松平元康(のちの徳川家康)との内通の疑いを受ける。縁戚であった新野親矩の取りなしで、陳謝のために駿府へ向かう道中の永禄5年12月14日(1563年1月8日)または同年3月2日[注釈 1]掛川で今川家の重臣・朝比奈泰朝の襲撃を受けて殺害された[3]。享年28。

直親殺害の背景には、支配領域が三河に近い井伊氏の中で、親今川派と反今川派で政治的な対立があり、直親が反今川派で元康に接近して、小野が親今川派であったのかもしれないとする指摘がある[4]

これにより井伊氏は一時的に衰退した。家督は養父・直盛の娘でかつて許嫁であったとされる直虎が継いだ[注釈 2]。嫡男・虎松は三河鳳来寺などにかくまわれ、15歳の時に徳川家康に仕えると共に直虎に代わって当主となり、のちの徳川四天王である井伊直政となった。また、遠江が家康の支配下になった後、直親の無実が証明され、讒言した小野道好は獄門となっている。

具体的な事績には乏しいが、遠江から逃れる際に直親を射殺そうとした右近次郎を復帰後に機略を用いて成敗したという伝承や、笛の名手で逃亡した際に援助を受けた僧に愛用の笛(青葉の笛)を寄進した伝承などがある。

なお鈴木将典によると、同時代史料を見ると直親は実在した形跡がなく、後世に作成された系図で初めて存在が見られるとし、その存在を疑問視している[5]。黒田基樹は直親は実在はしたが井伊氏当主ではなく(直盛戦死後は無主扱いされて今川の支配下に置かれたが、今川氏一門の関口氏から婿養子を迎えることで再興が許され、直親はその補佐役であったとする)、殺害事件も事実ではないとしている[6]

脚注

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注釈

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  1. ^ 井伊家伝記』では、永禄5年12月14日とする。『静岡県史 資料編』は、「異本塔寺長帳」などの史料を典拠として、直親が討たれた日を永禄5年3月2日とする。黒田基樹は直親は討たれた事実ではなく、永禄8年(1566年)頃に井伊氏が直盛の婿養子を当主に擁立した時点で健在であったとしている(後述)。
  2. ^ 直親と直盛娘が許嫁であった点については、『井伊家伝記』などの伝承による。

出典

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  1. ^ 『井伊年譜』
  2. ^ 大石泰史『井伊氏サバイバル五〇〇年』(星海社新書、2016年)136頁
  3. ^ 千葉篤志「相次ぐ一族・家臣の死と、直虎登場の背景とは?」(歴史と文化の研究所編『井伊一族のすべて』洋泉社、2017年、47頁)
  4. ^ 千葉篤志「相次ぐ一族・家臣の死と、直虎登場の背景とは?」(歴史と文化の研究所編『井伊一族のすべて』洋泉社、2017年、47-48頁)
  5. ^ 鈴木将典『国衆の戦国史-遠江の百年戦争と「地域領主」の興亡-』(洋泉社、2017年)130頁
  6. ^ 黒田基樹「総論 今川氏真の研究」『今川氏真』戎光祥出版〈シリーズ・中世関東武士の研究 第三五巻〉、2023年9月、13-14・42-43・50頁。ISBN 978-4-86403-485-2 

登場する作品

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