判別分析
判別分析(はんべつぶんせき、英: discriminant analysis)は、事前に与えられているデータが異なるグループに分かれる場合、新しいデータが得られた際に、どちらのグループに入るのかを判別するための基準(判別関数[注釈 1])を得るための正規分布を前提とした分類の手法。英語では線形判別分析[注釈 2]をLDA、二次判別分析[注釈 3]をQDA、混合判別分析[注釈 4]をMDAと略す。1936年にロナルド・フィッシャーが線形判別分析を発表し[1][2]、1996年に Trevor Hastie, Robert Tibshirani が混合判別分析を発表した[3]。
3つ以上のグループの判別は重判別分析[注釈 5]や正準判別分析と呼ばれる。
判別関数の種類
[編集]判別関数には以下の物などがある。
- 線形判別関数[注釈 6]
- 超平面・直線による判別。線形判別分析は等分散性が必要。
- 二次判別関数[注釈 7]
- 楕円など二次関数による判別。二次判別分析は等分散性が不要。
- 非線形判別関数[注釈 8]
- 超曲面・曲線などの非線形判別関数。
前提条件
[編集]線形判別分析は、以下の前提条件が成立する必要がある。
その上で、マハラノビス汎距離[注釈 10]が等距離の所に直線を引く。これらの前提条件が成立しないとおかしな結果になる。
各グループの平均が異なる以上、分散が異なることは多々ある。等分散性の仮定を外した物が二次判別分析である。それぞれのグループで異なる共分散行列を使用してマハラノビス距離を計算して、等距離になる場所を判別曲面とする方法である。この方法は二次関数となり、正規分布が成立している場合は正しい結果になる。
線形判別分析において、グループ間の確率のロジットは線形関数となるが、ここで線形関数という仮定を残したまま、正規分布や等分散性の仮定を外すとロジスティック回帰や単純パーセプトロンになる[4]。
さらに別な方法としては、線形判別関数を使用したい場合は、線形サポートベクターマシンで線形判別関数を求めるという方法もある。
線形判別分析
[編集]線形判別関数は以下の通り。これの正負で判断。 は入力、 は平均、 は共分散行列[注釈 11]。この式は多変量正規分布の式より導出できる。
より細かく、線形判別関数 () の求め方を以下に示す。
- 第一群、第二群についてそれぞれ積和を求める(N はサンプル数)。
- 第一群と第二群の平方和・積和を、同じ2変数について足し、自由度 で除す。
- を、その 行列に対応させて分散共分散行列とし、各変数にかかる係数を行列に並べた行列を、第一群の各変数の平均値から第二群の各変数を引いた数 を行列に並べた行列をとすると以下の式が成り立つ。
- ゆえに
- これにより各変数にかかる係数を求めることができる。
- 定数項は、
- 判別得点が正のとき第一群、負のとき第二群と判別される。
- 変数が標準化されていれば、係数の大きさは、そのままその変数が判別に与える影響の大きさである。
- 変数が定性的な場合は、ダミー変数を用いる。
- ここに、: の番目のカテゴリーに反応するとき、しないとき。
二次判別分析
[編集]グループの平均を中心に回転・軸方向のスケーリングを行い共分散行列を揃え、線形判別分析を行えば良い。
混合判別分析
[編集]単一の正規分布ではなく、混合正規分布で表現した物を混合判別分析という。その場合でも共分散行列は共通の物を使う。混合正規分布を使うことにより複雑な分布も扱えるようになる。混合正規分布はEMアルゴリズムなどで求める。
注釈
[編集]- ^ 英: discriminant function
- ^ 英: linear discriminant analysis
- ^ 英: quadratic discriminant analysis
- ^ 英: mixture discriminant analysis
- ^ 英: multiple discriminant analysis
- ^ 英: linear discriminant function
- ^ 英: quadratic discriminant function
- ^ 英: nonlinear discriminant function
- ^ 英: multivariate normal distribution
- ^ 英: Mahalanobis' generalized distance
- ^ この文脈中には総和を表すシグマ記号「」もあるが、それとは異なるので注意。
出典
[編集]- ^ FISHER, R. A. (September 1936). “The use of multiple measurements in taxonomic problems”. Annals of Eugenics 7 (2): 179–188. doi:10.1111/j.1469-1809.1936.tb02137.x.
- ^ Cohen et al. Applied Multiple Regression/Correlation Analysis for the Behavioural Sciences 3rd ed. (2003). Taylor & Francis Group.
- ^ Trevor Hastie; Robert Tibshirani (1996). “Discriminant Analysis by Gaussian Mixtures”. Journal of the Royal Statistical Society, Series B 58 (1): 155-176.
- ^ Trevor Hastie, Robert Tibshirani, Jerome Friedman『統計的学習の基礎 ―データマイニング・推論・予測―』共立出版、2014年6月25日。ISBN 978-4320123625。