勿来発電所
勿来発電所 | |
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勿来発電所(2018年1月) | |
正式名称 |
常磐共同火力株式会社勿来発電所 勿来IGCCパワー合同会社勿来IGCC発電所 |
国 | 日本 |
所在地 | 福島県いわき市佐糠町大島20 |
座標 | 北緯36度54分45.8秒 東経140度48分48.38秒 / 北緯36.912722度 東経140.8134389度座標: 北緯36度54分45.8秒 東経140度48分48.38秒 / 北緯36.912722度 東経140.8134389度 |
現況 | 運転中 |
運転開始 |
7号機:1970年10月26日 8号機:1983年9月9日 9号機:1983年12月15日 勿来IGCC:2021年4月19日 |
運転終了 |
1、2号機:1983年 3~5号機:1987年 6号機:2015年11月20日 10号機:2020年11月16日 |
事業主体 | 常磐共同火力、勿来IGCCパワー |
発電所 | |
主要動力源 | 石炭 |
二次動力源 | 重油(9号機のみ) |
三次動力源 |
炭化燃料、木質バイオマス (勿来IGCCを除く) |
発電機数 | 4基 |
熱効率 | 勿来IGCC:48%(LHV) |
コンバインド サイクル発電 | 勿来IGCC:IGCC方式採用 |
発電量 | |
定格出力 |
総出力:197.5万kW 7号機:25万kW 8号機:60万kW 9号機:60万kW 勿来IGCC:52.5万kW |
ウェブサイト 常磐共同火力株式会社 勿来IGCCパワー合同会社 | |
2021年4月19日現在 |
勿来発電所(なこそはつでんしょ)は福島県いわき市佐糠町大島20にある常磐共同火力の石炭・石油火力発電所。同じ敷地内に勿来IGCCパワーの勿来IGCC発電所が所在する。
概要
[編集]常磐炭田の低品位炭の活用を目的に東北電力と東京電力(後に分社化・事業移管に伴い東京電力フュエル&パワーを経てJERAに持ち株を移管)および炭鉱会社の出資により常磐共同火力株式会社が設立され、1957年に1、2号機が運転を開始、7号機まで順次建設された。1983年には8、9号機を増設し、老朽化した1~5号機は1987年までに順次廃止、6号機は2015年11月20日に廃止された[1]。
燃料は石炭(現在は海外炭)と重油のほか、7~9号機では下水汚泥を原料とした炭化燃料の試用を2007年から開始、1%程度混焼している。2011年3月からは木材を原料とした木質バイオマス燃料(木質ペレット)の使用も開始した[2]。
1~5号機の跡地に株式会社クリーンコールパワー研究所(当時)により石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証機が建設され、2007年9月から2013年3月まで運転試験が行われた後2013年4月から10号機として商用運転を開始、同研究所は常磐共同火力に吸収合併された。その後、2020年4月には計画停止され、2020年11月16日付で廃止された[3]。
2014年5月15日、東京電力と常磐共同火力は、福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画として、当発電所構内及び隣接地に世界最新鋭の大型石炭ガス化複合発電(IGCC)設備を共同で建設する計画を発表[4]、2016年10月20日には同計画を勿来IGCCパワー合同会社(三菱商事パワー、三菱重工業、三菱電機、東京電力ホールディングスおよび常磐共同火力の5社が出資)に承継し、同社が建設・運用を行うことを発表した[5]。これにより建設された勿来IGCC発電所は、2021年4月19日に営業運転を開始した[6]。
発電設備
[編集]常磐共同火力所有分
[編集]- 7号機
- 発電方式:汽力発電方式
- 定格出力:25万kW
- 使用燃料:石炭、炭化燃料、木質バイオマス
- ボイラー形式:強制循環形
- 営業運転開始:1970年10月26日
- 8号機
- 発電方式:汽力発電方式
- 定格出力:60万kW
- 使用燃料:石炭、炭化燃料、木質バイオマス
- ボイラー形式:変圧貫流形
- 営業運転開始:1983年9月9日
- 9号機
- 発電方式:汽力発電方式
- 定格出力:60万kW
- 使用燃料:石炭、重油、炭化燃料、木質バイオマス
- ボイラー形式:変圧貫流形
- 営業運転開始:1983年12月15日
勿来IGCCパワー所有分
[編集]- 総出力:52.5万kW(2021年4月19日現在)
- 勿来IGCC発電所(福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来))
- 発電方式:空気吹き石炭ガス化複合発電方式(IGCC)[8]
- 定格出力:52.5万kW[6]
- ガスタービン 1400℃級 × 1軸
- 蒸気タービン × 1軸
- 使用燃料:石炭
- ガス化炉:乾式給炭酸素富化空気吹き二段噴流床⽅式
- ガス精製:湿式化学吸収法および湿式石灰石・石膏法併用
- SOx排出濃度:19ppm
- NOx排出濃度:6ppm
- 煤塵排出濃度:5mg/m3N
- 熱効率:約48%(低位発熱量基準)
- 営業運転開始:2021年4月19日[6]
廃止された発電設備
[編集]- 発電方式:1~6号機:汽力発電方式、10号機:1,200℃級石炭ガス化複合発電方式(IGCC)
- 1号機(廃止)
- 定格出力:3.5万kW
- 使用燃料:石炭、重油(当時は石炭専焼)
- 営業運転期間:1957年11月 - 1983年
- 2号機(廃止)
- 定格出力:3.5万kW
- 使用燃料:石炭、重油(当時は石炭専焼)
- 営業運転期間:1957年11月 - 1983年
- 3号機(廃止)
- 定格出力:7.5万kW
- 使用燃料:石炭、重油(当時は石炭専焼)
- 営業運転期間:1960年 - 1987年
- 4号機(廃止)
- 定格出力:7.5万kW
- 使用燃料:石炭、重油(当時は石炭専焼)
- 営業運転期間:1960年 - 1987年
- 5号機(廃止)
- 定格出力:7.5万kW
- 使用燃料:石炭、重油(当時は石炭専焼)
- 営業運転期間:1961年 - 1987年
- 6号機(廃止)
- 定格出力:17.5万kW
- 使用燃料:重油(当時は石炭)
- ボイラー形式:定圧貫流形
- 営業運転期間:1966年11月30日 - 2015年11月20日
- 10号機(廃止)
- 定格出力:25万kW
- ガスタービン:12.42万kW × 1軸[9]
- 蒸気タービン:12.58万kW × 1軸
- 使用燃料:石炭
- ガス化炉:二室二段噴流床方式
- 熱効率:42.4%(低位発熱量基準)
- 営業運転期間:2013年4月1日-2020年4月(11月16日廃止)[3]
東北地方太平洋沖地震による被害
[編集]2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって長期計画停止中の6号機、定期検査中の8号機、IGCC実証機を含めた全機と、石炭の陸揚げに使用していた小名浜港からの重油導管が被災した[10]。
6月30日に9号機が運転を再開[11]、発電所構内への石炭コンベヤー、港からの送油導管も復旧した。7月17日には8号機[12]、7月28日にはIGCC実証機[13]、12月21日には7号機が運転を再開した[14]。2012年4月21日には長期計画停止中だった6号機も運転を再開[15]、これによりすべての発電設備が運転再開した。
石炭外航船の受け入れに使用していた小名浜港の7号埠頭は大きな被害を受けたが、従来東京電力が広野火力発電所向けに使用していた6号埠頭を交代で使用することで6月17日から受け入れを再開した[16]。
参考文献
[編集]「50年のあゆみ 1955-2005 人と事業の記録」常磐共同火力株式会社(2005年)
出典
[編集]- ^ 勿来発電所6号機の廃止について 2015年11月20日 (PDF)
- ^ 再生可能エネルギーの利用拡大に向けた取り組み
- ^ a b 勿来発電所10号機の廃止について (PDF) 2020年11月16日 常磐共同火力株式会社
- ^ 福島復興大型石炭ガス化複合発電設備の実証計画に係る計画段階環境配慮書の送付及び縦覧について 2014年5月15日 東京電力
- ^ 福島復興に向けた世界最新鋭の石炭火力発電所を建設・運営する事業会社の設立について 2016年10月20日 東京電力
- ^ a b c “勿来IGCC発電所の営業運転を開始いたしました。”. 勿来IGCCパワー合同会社 (2021年4月19日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ 設備概要
- ^ 発電設備の概要 (PDF) 2016年10月20日 東京電力
- ^ 「石炭ガス化複合発電(IGCC)実証プラントの開発」 (PDF) (社)日本ガスタービン学会誌 Vol37 No2 2009.3
- ^ 再開目指す“地域の象徴”常磐共火勿来発電所 2011年4月20日付 電気新聞 2011年4月29日閲覧
- ^ 常磐共同火力勿来発電所 9号機の再稼働について 2011年6月30日 (PDF)
- ^ 常磐共同火力勿来発電所 8号機の再稼働について 2011年7月19日 (PDF)
- ^ IGCC実証機 運転再開にあたって 2011年7月28日 クリーンコールパワー研究所
- ^ 常磐共同火力勿来発電所 7号機の再稼働について 2011年12月21日 (PDF)
- ^ 常磐共同火力勿来発電所 6号機の再稼働について 2012年4月21日 (PDF)
- ^ 常磐共火・勿来9号、震災被害から復活 2011年7月1日付 電気新聞 2011年7月3日閲覧