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外傷性大動脈破裂

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
外傷性大動脈破裂
大動脈(赤色部分)
概要
診療科 救急医学
分類および外部参照情報
ICD-10 S25.0, S35.0
ICD-9-CM 901.0, 902.0
MeSH D001019

外傷性大動脈破裂英語: Traumatic aortic rupture)は、外傷によって大動脈が破裂を来した病態である。大血管損傷: Great vessel injury)とも称される。

疫学

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原因となる外傷としては、刺創英語版銃創爆傷などの創傷、また交通事故や高所転落といった高エネルギー外傷が多い。胸部よりも腹部に受傷することが多く、約2倍の頻度とされている。好発部位としては、胸部においては左鎖骨下動脈分岐部、上行大動脈大動脈峡部、腹部においては腹部大動脈腸骨動脈腹腔動脈肝動脈などがある。

胸部に受傷した場合は縦隔血腫血胸、腹部の場合は後腹膜血腫、腹腔内出血となる。急死となる例も多く、特に下行大動脈損傷の場合は85%が現場死亡となり、生存して病院に到着した場合も、極めて短時間で状態が悪化することから、緊急に対処が必要となる。一方で、大動脈周囲の密な組織によって封印されてsealed ruptureとなる場合もある。またこの場合、仮性動脈瘤を形成することがあり、後日再破裂する危険もある。

症状と診断

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上記のとおり、来院時死亡(DOA)ないし心肺停止(CPAOA)であることが多い。生存状態で来院する場合も、多くは顔面蒼白、頻脈、血圧低下などの出血性ショックを呈している。

上行大動脈に破裂を来した場合には心タンポナーデに至る事があり、このときにはBeckの三徴および心電図上のlow voltageが見られる。腹部大動脈や腸骨動脈に破裂を来した場合、下肢の脈拍欠損や冷感、麻痺が見られることがある。

また上腸間膜血管の損傷では、出血による症状よりは、血行障害による腹痛・イレウス症状が表面に現われることもある。

検査

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超音波検査
通常、まず迅速外傷超音波検査(FAST)法が行なわれる。
血管造影
確定診断のgold standardとされており、造影剤の漏出像、血管壁の断裂像、血栓閉塞像などが特徴的な所見である。
X線撮影
胸部(CXR)
上縦隔拡大、Apical Cap、左主気管支角の開大、下行大動脈辺縁の消失などが特徴的な所見である。
腹部(AXR)
腹腔内に液体が貯留することによるびまん性陰影(homogeneous sign)、腸腰筋陰影の消失、腸管の異常圧排像などが特徴的な所見である。
コンピュータ断層撮影(CT)
とくにヘリカルCT、造影CTにおいては、血管造影に匹敵する診断精度が得られるとされている。

治療

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まず出血性ショックに対する治療が最優先とされ、気道確保(重篤であれば気管挿管)に続いて直ちに静脈路確保を行ない、輸液輸血を開始する。腹部大動脈破裂において、これらの治療を行なってもバイタルサインが不安定であったり、一般状態の悪化が認められる場合、開腹術によって損傷血管の再建、血腫除去および合併損傷の修復を行なう。特に上腸間膜動脈の損傷においては、腸管虚血に注意が必要である。

また、上行大動脈破裂から心タンポナーデに至った場合は、心嚢穿刺に続いて開胸手術を行なう。

参考文献

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  • 小濱啓次『救急マニュアル 第3版』医学書院、2005年。ISBN 978-4-260-00040-6 
  • 中川儀英「胸部外傷に対する開胸術の適応」『今日の治療指針』医学書院、2006年。ISBN 978-4260001014