救命救急センター
救命救急センター(きゅうめいきゅうきゅうセンター、英文名称:Emergency and critical care center)とは、救急告示医療機関のうち急性心筋梗塞、脳卒中、心肺停止、多発外傷など、二次救急で対応できない複数診療科領域の重篤な患者に対し高度な医療を提供する三次救急医療機関である[1]。
当初は人口100万人あたり最低一か所、現在では人口42万人あたり最低一か所設置されている。2022年4月1日現在、全国299か所[2]。
要件
[編集]救命救急センターは、二次医療機関では対応できない心筋梗塞や脳卒中、多発外傷等の重篤な患者に対する救急医療を行う三次医療機関である[3]。このため、高度な救命医療に対応できる医師や看護師等を確保しておくことや集中治療室(ICU)を整備していることなどが必要とされている[4]。
救命救急センターの要件[5]
- 専用病床(おおむね20床以上)を有し、24時間体制で、重症および複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者に対する高度な診療機能を有すること。
- 24時間診療体制を確保するため、専門的な三次救急医療に精通しているとの客観的評価を受けている専任の医師(救急科専門医等)を適当数有すること、および他科の医師を必要に応じ適時確保できる体制を有すること。
専任医師が一人もしくは少人数の施設では、他科と救急科を兼務する医師も配置している[6]。従来、救命救急センターはおおむね20床の専用病床が必要であったが、おおむね1時間以上を要する医療圏に救命救急センターが所在し、専用病床数が10床程度の施設は地域救命救急センターに指定される[5]。
さらに救命救急センターのうち、特に高度な診療機能を有し、広範囲熱傷や四肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者を受け入れる施設は高度救命救急センターに指定される。また、小児科救急患者を受け入れる施設のうち、小児専用の集中治療室(PICU)を6床以上を有し、重篤な小児救急患者に対して24時間診療が可能な機能を有するものは小児救命救急センターに指定される。
歴史
[編集]救命救急センター設置のきっかけとなったのが、1967年(昭和42年)8月に大阪大学医学部附属病院が設置した「特殊救急部」である。特殊救急部は救急医療を行う診療部門ではあったが、外傷外科や災害外科と呼ばれ、胸腹部外傷や広範囲熱傷といった、重症の外科系救急医療を手術・入院も含め、診療を自己完結して実施していた。
この特殊救急部も、2000年(平成12年)に救命救急センターに改組されて、翌年には高度救命救急センターの認可を受けている。なお、日本で初めて救命救急センターの認可を受けたのは、1977年(昭和52年)1月に認可の日本医科大学付属病院である。
救命救急センターの一覧
[編集]太字は高度救命救急センターを表す
北海道・東北地方
[編集]- 北海道
- 札幌医科大学附属病院
- 旭川赤十字病院
- 旭川医科大学病院
- 市立函館病院
- 市立釧路総合病院
- 北見赤十字病院
- 市立札幌病院
- 帯広厚生病院
- 手稲渓仁会病院
- 国立病院機構北海道医療センター
- 砂川市立病院(地域救命救急センター)
- 名寄市立総合病院(地域救命救急センター)
- 北海道大学病院
- 青森県
- 岩手県
- 宮城県
- 秋田県
- 秋田大学医学部附属病院
- 秋田赤十字病院
- 大館市立総合病院(地域救命救急センター)
- 山形県
- 福島県
関東地方
[編集]- 茨城県
- 栃木県
- 群馬県
- 埼玉県
- 埼玉医科大学総合医療センター
- さいたま赤十字病院
- 自治医科大学附属さいたま医療センター
- 深谷赤十字病院
- 防衛医科大学校病院
- 川口市立医療センター
- 獨協医科大学埼玉医療センター
- 埼玉医科大学国際医療センター
- さいたま市立病院
- 国立病院機構埼玉病院
- 埼玉県済生会加須病院
- 千葉県
- 千葉県総合救急災害医療センター(旧:千葉県救急医療センター)
- 順天堂大学医学部附属浦安病院
- 総合病院国保旭中央病院
- 君津中央病院
- 亀田総合病院
- 松戸市立総合医療センター(旧:国保松戸市立病院)
- 成田赤十字病院
- 船橋市立医療センター
- 日本医科大学千葉北総病院
- 東京慈恵会医科大学附属柏病院
- 東千葉メディカルセンター
- 東京女子医科大学八千代医療センター
- 帝京大学ちば総合医療センター(地域救命救急センター)
- 千葉大学医学部附属病院
- 東京ベイ・浦安市川医療センター
- 東京都
- 日本医科大学付属病院
- 杏林大学医学部付属病院
- 東京都立墨東病院
- 帝京大学医学部附属病院
- 国立病院機構東京医療センター
- 国立病院機構災害医療センター
- 日本大学医学部附属板橋病院
- 東京都立多摩総合医療センター
- 東京医科大学八王子医療センター
- 日本医科大学多摩永山病院
- 日本大学病院(旧:駿河台日本大学病院)
- 昭和大学病院
- 国立国際医療研究センター
- 聖路加国際病院
- 東京医科大学病院
- 公立昭和病院
- 東京大学医学部附属病院
- 日本赤十字社医療センター
- 市立青梅総合医療センター(旧:青梅市立総合病院)
- 東京女子医科大学病院
- 東邦大学医療センター大森病院
- 東京都立広尾病院
- 武蔵野赤十字病院
- 東京科学大学病院(旧:東京医科歯科大学病院)
- 東京都済生会中央病院
- 東京女子医科大学足立医療センター(旧:東京女子医科大学東医療センター)
- 順天堂大学医学部附属練馬病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院
- 神奈川県
中部地方
[編集]- 新潟県
- 富山県
- 石川県
- 福井県
- 山梨県
- 長野県
- 岐阜県
- 岐阜大学医学部附属病院
- 岐阜県総合医療センター
- 岐阜県立多治見病院
- 大垣市民病院
- 中濃厚生病院
- 高山赤十字病院(地域救命救急センター)
- 静岡県
- 静岡県立総合病院
- 聖隷三方原病院
- 静岡済生会総合病院
- 順天堂大学医学部附属静岡病院
- 浜松医療センター
- 静岡赤十字病院
- 沼津市立病院
- 磐田市立総合病院
- 聖隷浜松病院
- 掛川市・袋井市病院企業団立中東遠総合医療センター
- 藤枝市立総合病院
- 愛知県
近畿地方
[編集]- 三重県
- 滋賀県
- 京都府
- 大阪府
- 兵庫県
- 兵庫県災害医療センター
- 神戸市立医療センター中央市民病院
- 兵庫医科大学病院
- 兵庫県立加古川医療センター
- 兵庫県立はりま姫路総合医療センター
- 公立豊岡病院
- 兵庫県立西宮病院
- 兵庫県立淡路医療センター(地域救命救急センター)
- 兵庫県立尼崎総合医療センター
- 神戸大学医学部附属病院
- 奈良県
- 和歌山県
中国地方
[編集]- 鳥取県
- 島根県
- 岡山県
- 広島県
- 広島大学病院
- 広島市立広島市民病院
- 国立病院機構呉医療センター
- 県立広島病院
- 福山市民病院
- 廣島総合病院(地域救命救急センター)
- 尾道総合病院(地域救命救急センター)
- 広島市立北部医療センター安佐市民病院(地域救命救急センター)
- 山口県
四国地方
[編集]- 徳島県
- 香川県
- 香川県立中央病院
- 香川大学医学部附属病院
- 三豊総合病院(地域救命救急センター)
- 愛媛県
- 高知県
九州・沖縄地方
[編集]- 福岡県
- 佐賀県
- 佐賀大学医学部附属病院
- 地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館
- 唐津赤十字病院(地域救命救急センター)
- 国立病院機構嬉野医療センター(地域救命救急センター)
- 長崎県
- 熊本県
- 大分県
- 宮崎県
- 鹿児島県
- 鹿児島市立病院
- 鹿児島大学病院
- 鹿児島県立大島病院(地域救命救急センター)
- 社会医療法人緑泉会米盛病院
- 沖縄県
かつて指定されていた救命救急センター
[編集]- 日鋼記念病院(返上)
- 大阪府三島救命救急センター(閉院)
高度救命救急センターの一覧
[編集]小児救命救急センターの一覧
[編集]脚注
[編集]- ^ “疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について”. 厚生労働省. 2024年4月9日閲覧。
- ^ 救命救急センターの現況 - 厚生労働科学研究成果データベース
- ^ “救急科”. 独立行政法人国立病院機構 岩国医療センター. 2024年4月9日閲覧。
- ^ “徳洲会の救命救急センター”. 徳洲会グループ. 2019年3月6日閲覧。
- ^ a b “救急医療対策事業実施要綱”.厚生労働省.
- ^ “令和3年度医師確保対策事業について”. 大分県. 2024年12月19日閲覧。